♀→♂への異世界転生~年上キラーの勝ち組人生、姉様はみんな僕の虜~

高嶺 蒼

文字の大きさ
496 / 545
第四部 王都の新たな日々

第446話 獣王国へ

しおりを挟む
GWなので頑張ってみました。
もうちょっと頑張れれば、もう1話くらいGW中にアップできる、かも。
アップできたら褒めてください。
頑張ります。

********************

 獣王国は北の地だ。
 夏であってもどこか涼しい。
 今回の件が解決したら、避暑地としての別荘を獣王国に1カ所持つのも悪くないかもしれない、そんなことを考えながらシュリは獣王国の辺境の町中を歩く。
 獣人の町を歩いても違和感が無いように、自前の猫耳・猫しっぽを生やしてぴくぴくさせながら。
 スキルの副産物とも言えるものなので、自前と言い切るのは少々違うかもしれないが。

 ちなみに今回使用中のスキルはこちら。

 スキル[猫耳]。
 使用すると耳の感覚が鋭敏になり、内緒話を聞くのもお手の物。
 でもその代わりに、他のスキルが無効化されるちょっと使い勝手の悪いスキルである。
 獣人に見える姿を確保できるスキルとしては、[モード・チェンジ]もあるのだが、今回の同行者や諸々の事情を考え合わせた上で、前者を選ぶことになった。

 獣王国に潜入するにあたり、子供のシュリが単身でうろついていると目立つので、獣人であるという事と冒険者としての経歴からナーザに協力を仰ぐことに。
 ジャズに冒険者としての経験をつませたい、というナーザの意向を受け入れてジャズも同行することとなり、シュリはナーザの息子でジャズの弟という設定となった。猫獣人のナーザの息子なら犬科の狼形態の[モード・チェンジ]のハーフビーストモードより、猫形態をとれる[猫耳]の方がいいだろう、と言うことになり、現在に至る。

 イルル、ポチ、タマは、イルルを探す氷の上位古龍ハイエンシェントドラゴンのことがあり、王都に置いていくのが不安だったことと、彼女達の獣っ娘形態は獣人にしか見えないという利点もあり、今回の旅も同行することとなった。
 立場的には、シュリ達親子と仲のいい冒険者、あるいは護衛をしている冒険者と言うことにするため、彼女達には事前に冒険者ギルドに登録もしてもらってある。

 そんな訳で、猫耳猫しっぽのシュリは、可愛いことと耳がいいこと以外全くの無力なのだが、周囲を固める面々の実力はかなりのものなので全く問題ないだろう、と言うのが愛の奴隷達の判断だった。
 別れ際、猫獣人の姿になったシュリを見つめる彼女達の鼻息が若干荒く感じられたのは、きっと気のせいに違いない。

 獣王国に密かに入国する際は、オーギュストの力を借りた。
 彼のスキルで、オーギュストとシャイナがリューシュを見つけた場所まで移動した後、人目につかないポイントを見つけて崖を上り、とりあえず近場の町に宿をとった。
 今晩はここで休み、準備を整えて、明日は獣王国の城下町を目指す予定だ。


 「シュリ。ほら、母の膝へ来い。食事を食べさせてやろう」

 「だめだよ、お母さん。シュリは私と食べるんだから。シュリはお姉ちゃんのお膝の方がいいよね?」

 「シュリ様、マザコンもシスコンも流行らないでありますよ? ここは無難にポチのお膝でご飯というのも」

 「ポチ。シュリ様はタマとご飯が食べたいって言ってる。タマの膝が1番座り心地がいい。ね、シュリ様」

 「シュリ~!! 見てみよ。うまそうな肉じゃぞ。さすが肉好きの獣人達が住まう国は違うのぉ。塊肉のクオリティがすごいのじゃ!! 妾はこっちからかじり付くから、シュリは特別に反対からガブガブしても良いぞ!!」


 夕食の席で、シュリはみんなのお誘いを吟味した。
 吟味した結果、イルルの塊肉のご相伴に預かることを選ぶ。
 難しい決断だったが、それが1番無難そうだったから。

 イルルがあぐあぐしている反対側から肉に挑んだシュリは思う。
 おいしいけど固い、と。

 普段であればなんてこと無く食べられたのだろうが、今のシュリはとにかく非力。
 あごの力も一般の人間の子供程度しかなく。
 シュリは己のあご力を頼ることを早々に諦め、ナイフとフォークを手にした。
 ナイフで獣人好みの歯ごたえ抜群の肉と格闘し、どうにか切り取った肉をあぐあぐ食べる。

 噛んでも噛んでもなかなか飲み込める状態に持ち込めない肉を味わいながら思う。
 早く色々を解決して、こんな窮屈な格好からはおさらばするぞ、と。
 まずそのためには情報収集だ。
 そう目標を定めたシュリは、腹が減っては戦は出来ぬ、と言わんばかりに、せっせと肉を口に詰め込むのだった。

◆◇◆

 1泊した翌日、早速情報収集に動き出す。
 シュリはナーザと、ジャズはポチと。
 最後の1組は恐らくなんの役にも立たないであろうイルルとタマの2人組だが、ポチはともかくジャズにイルルやタマを押しつけるのが気が引けたため、こういう組み合わせになった。

 そんな3組で情報収集に励んだが、最初の町ではめぼしい情報を得ることが出来なかった。
 3組が持ち寄った情報は全て事前にリューシュから聞いていたような話ばかり。
 国境近くの小さな町では仕方がないかもしれないが。
 国境の町での情報収集に早々に見切りをつけたシュリ達は、獣王国の王都を目指し旅立った。
 途中の村や町で情報収集をすればいいか、と割と気楽に考えて。

 だが、その思惑は見事に外れた。
 王都から遠い場所ではめぼしい情報はなく、王都に近づくにつれ住民達の口は重くなった。


 「あまり目立つ真似をしない方がいい」


 そんな忠告を受けたのは、王都にほど近いある村でのことだった。
 中央に近い割には荒れ果てた印象のその村の住人達はみんな年老いており、ひどくおびえたような目をしていた。


 「女王に味方する者は容赦なく処刑される。よくても強制労働送りだ。だが、あんたらは綺麗どころが多いからな。もっと悲惨な目にあう。この村も、こんなことになる前は豊かな村だった。働けば働いただけの見返りがちゃんとあることに感謝し、その国を治めている女王に敬意を抱いていた。だが、それが徒となったんだ。女王が捕らえられたとの情報が流れ、村の男達はすぐに立ち上がった。近隣の村や町の男衆と手を組み、女王を救い出そうと。しかし、すぐに潰された。彼らは見せしめとして吊され、その妻子も連れ去られた。この村にはもう、わしのような年寄りしかおらん」


 言われて改めて見回せば、疲れ果てたように村のあちこちで座り込んでいる人達のほとんどが老人だった。


 「悪いこたぁいわない。これ以上王都へ近づくのはやめておきな。女王様のことは他の偉い人に任せておけばいい。宰相様が動いているという噂もある。宰相様は頭のいいお方だ。きっと女王様を助けて下さるさ」


 老人はそれっきり口をつぐみ、シュリ達もその村を離れた。
 その後は無駄な情報収集を諦めてまっすぐに王都を目指したのだった。
 そして今。
 王都の街中で、シュリとナーザはなぜか柄の悪い兵士に絡まれていた。
しおりを挟む
感想 221

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

美醜逆転世界の学園に戻ったおっさんは気付かない

仙道
ファンタジー
柴田宏(しばたひろし)は学生時代から不細工といじめられ、ニートになった。 トラックにはねられ転移した先は美醜が逆転した現実世界。 しかも体は学生に戻っていたため、仕方なく学校に行くことに。 先輩、同級生、後輩でハーレムを作ってしまう。

処理中です...