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第三部 学校へ行こう
特別短編 ふくろうカフェに行きたいとこぼしたら、ふくろうカフェもどきが出来た件④
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(長い、夢だったな……)
使い慣れたベッドの上で、ゆっくりと夢の世界から戻ってきたシュリは、ぼんやりと天井を見つめた。
幸せな、夢だった。けど、夢から覚めてしまえば胸の奥に言いようのない切なさが残った。
今の自分、シュリナスカ・ルバーノ(♂)に生まれ変わる前。
まだ、高遠瑞希(♀)だった頃の思い出のままの内容の夢だった。
懐かしくて、楽しくて、愛しくて、ちょっぴり切ない。
シュリは寝起きのぼんやりした頭のまま、もう二度と会えない友人の事を思って、そっと目を閉じる。
そしてそのまま、日が昇ってメイドのシャイナが起こしにきてくれるまでのしばらくの間、今度は夢も見ず、シュリは心地よい微睡みに身を任せたのだった。
その日のシュリは、どこか様子がおかしかった。
今もぼーっとしたまま、ソファーの上で膝を抱えて、話しかけてもどこか上の空だ。
シュリに遊んでもらおうと、住処から出てきた忠実(?)な眷属三人組は、ちょっと遠巻きにそんな主の様子を伺っていた。
「今日のシュリはどうしちゃったのじゃ?なんだかぽや~っとして変な感じじゃぞ?まあ、ちょっとぽややんなシュリもかわゆいから、妾的には全然おっけーなんじゃが」
そんな発言をしたのは鮮やかな紅い髪をツインテールにした小さな女の子。
ごく普通の女の子の様に見えるが、そんな彼女の本性は強大な炎のドラゴン。
シュリの眷属になる際に、特殊なスキルの効能で可愛らしい姿になってはいるが、彼女が本気で暴れれば人間の王国の一つや二つは軽く壊滅させられる程の力を有している。
だが、まあ、今の彼女にそんな事をするつもりはかけらもない。
今の彼女……イルルにとって一番大事なのは、大好きな主の側にいて、常に構って貰うことだった。
「そ、そうでありますね……落ち込んでいる……のとも違いそうでありますが、何となく、元気がないような……ですが、元気のないシュリ様を見てると、際限なく甘やかしてあげたくなって、なんだか胸がきゅんきゅんするでありますよ……」
次にそんなことを言い出したのは、高い身長に胸元の二つのボールも破壊力抜群な妙齢の女性。
その頭からは白銀の毛皮ももふもふな、見事な犬耳……いや狼耳をはやしている。
彼女の名前はポチ。
イルルと同様、シュリの眷属であり、その本性はフェンリルという魔獣である。
イルルには及ばないものの、フェンリルもかなり強大な力を持つ魔獣であり、その力量は災厄級とも災害級ともいわれる。
だが、ポチもイルルと同様、周囲を脅かすつもりはかけらもない。
彼女の頭の中を占めるのは、愛しい主の事だけだ。今日も今日とて彼女の手には、シュリに遊んで貰おうと持ってきた、愛用のボールやらロープやらフリスビーやらが抱えられているのである。
「二人とも、シュリ様観察がまだなっていない。あれはきっと寝不足。恐らく、夢見が悪かったに違いない。急いでタマのしっぽでくるみ込んで、寝かせてあげないといけないと思う……くふふ。シュリ様と二人でお昼寝……役得、役得」
最後に、今のシュリの状況を恐らく一番的確に指摘してみせたのは、身長こそはポチよりかなり低いものの、その胸のボリュームに関してはポチを軽く凌駕する、ちょっと眠そうな目をした女の子。
その頭には、ポチと同様二つの獣耳が飛び出していた。
毛皮の色と形状を、ポチのものとはわずかに違えるその耳は黄金色のキツネ耳。
着崩した和服の様な服装のお尻からは、もっふぁもっふぁとボリューム満点な複数の尻尾が生えていた。
その数を数えてみれば、実に九本もの数に上る。
その尻尾の数からも想像できるように、彼女もまたイルルやポチと同様、シュリの眷属であり、九尾のキツネという希少な魔獣であった。
名前はタマ。
フェンリルであるポチに負けず劣らずの力を持つ魔獣でありながら、彼女も他の二人と同じく、シュリの忠実なしもべである。
彼女の頭にあるのは、人間を害してやろうとかそう言う魔獣的な思考ではなく、ただシュリと一緒に、シュリに最大限密着して惰眠を貪りたいという、至極単純で強い欲望だけ。
彼女はその欲望のまま、ぼんやりとソファーで膝を抱える主へ近づくと、自慢の尻尾でもっふぁ~っと主の小さな体を包み込んだ。
「ぬうっ!?タマ、抜け駆けは死刑なのじゃぞ!?」
「あうっ、ずっ、ずるいであります!!ポチもシュリ様を抱っこしたいでありますぅぅ」
外野がちょっとうるさいが、超マイペースなタマはそんなことは気にしない。
九本ある尻尾を駆使してシュリを包み込み、そのままシュリをむぎゅうと抱きしめた。
自分の尻尾で相手を包みながら抱きしめるなんて、どういう体の構造をしているんだと思われるだろうが、タマの尻尾は変幻自在。
大きさや長さを変えるなんて事はお手の物なのである。
「シュリ様?」
「ん~?タマ~??」
「夢見が悪かった?眠りが足りないなら、もう少し寝ればいい。一緒に寝よ?」
「夢見が悪い、かぁ。むしろいい夢だったとは思うんだけど、なんだか色々思い出しちゃって……だから、眠くてぼーっとしてる訳じゃないんだよ。でも、気にしてくれてありがと、タマ」
そう言って微笑むシュリ。
それを見て、我慢できない子の代表なイルルが、ぷっくぅ~とほっぺたを膨らませて、だだだっと駆け寄ってきた。
「心配しておったのはタマだけじゃないんじゃぞ?妾だって、心配しておったのじゃ。妙に元気がなくて、シュリがぺしょんとしておるの~って思っておったのじゃ!ぽやんとしたシュリもかわゆくてたまらん、などとは全然思って無かったのじゃ~~~!!」
「……そっかぁ。イルルも心配してくれたんだね。ありがと」
ぽやんとした僕を、可愛いって思ってたんだね?とはあえてつっこまず、無理矢理、大して体格差のないシュリの膝ににじにじよじ登って正面からむぎゅーと抱きついてきたイルルの頭を、シュリは撫でてあげた。
途端にむふ~っと幸せそうにイルルが笑い、それに対抗するように、後ろから抱きついているタマの腕に力が入る。
結果、背中に押しつけられている暴力的なまでにおっきな二つの固まりが、さらにぐいぐいと押しつけられてぐにぐにと形を変えた。
(……僕がごく一般的な成年男子だったら、鼻血を吹くか、狼さんになってるところだよねぇ)
妙に冷静にそんなことを考えながら、シュリは背後のちょっぴり幸せな感触と、体の正面にくっついたのっぺりとした感触を大人しく味わった。
後門の大山脈、前門の大平原……といった感じか。
「退くのじゃ!」
「退くのはイルル様」
「邪魔なのじゃ」
「邪魔なのはイルル様」
二人のそんなやりとりをほのぼのと聞いていると、おっきな影がおずおずと近づいてきた。
二人にちょっと出遅れた感のある、ポチである。
「ポチもシュリ様の事を心配していたであります、よ?」
いつもはピンと立っている耳がぺたりとしおれ、きゅーんきゅーんと鳴く声が聞こえてくるようだ。
体は大きいけど、妙に可愛らしいその仕草に胸をほんわかさせながら、
「うん、分かってる。ありがとう、ポチ。ほら、ポチもおいで?」
仲間外れは可哀想だと、ポチを呼ぶ。
大好きな主のお呼びに、耳をピンと立て、尻尾をばっさばっさと降りながら、まるで瞬間移動してきたのかと思うほどのスピードでシュリの傍らに移動したポチは、イルルとタマの舌打ちなど耳に入らないように、その両手を伸ばしてシュリの頭をきゅっと抱きしめた。
ポチとしては、抱きつける場所がそこしか残っていなかったからそうしただけだが、結果として、シュリの顔の半分程が、ポチの胸の谷間に埋まる。
(……うん。こうなるよね~)
シュリの後ろはタマがゲットし、前側はイルルが陣取っている。
そうなってみれば、まだちっちゃなシュリの体で残っている部分は少ない。
さらに言うなら、ポチの身長は結構高く、そんな彼女がシュリの中の一番高い部位を確保したのは、当然の結果だったといえよう。
後ろに特大、前にまっ平ら、顔に大……とバラエティ豊かなおっぱい配置に瞠目し、シュリを抱っこした三者によって繰り広げられる舌戦に耳を澄ませる。
そうしていると、今朝、目を覚ましてからずっと感じていた寂しさが優しく和らいでいくのを感じて、シュリはふよりとその口元を緩めるのだった。
使い慣れたベッドの上で、ゆっくりと夢の世界から戻ってきたシュリは、ぼんやりと天井を見つめた。
幸せな、夢だった。けど、夢から覚めてしまえば胸の奥に言いようのない切なさが残った。
今の自分、シュリナスカ・ルバーノ(♂)に生まれ変わる前。
まだ、高遠瑞希(♀)だった頃の思い出のままの内容の夢だった。
懐かしくて、楽しくて、愛しくて、ちょっぴり切ない。
シュリは寝起きのぼんやりした頭のまま、もう二度と会えない友人の事を思って、そっと目を閉じる。
そしてそのまま、日が昇ってメイドのシャイナが起こしにきてくれるまでのしばらくの間、今度は夢も見ず、シュリは心地よい微睡みに身を任せたのだった。
その日のシュリは、どこか様子がおかしかった。
今もぼーっとしたまま、ソファーの上で膝を抱えて、話しかけてもどこか上の空だ。
シュリに遊んでもらおうと、住処から出てきた忠実(?)な眷属三人組は、ちょっと遠巻きにそんな主の様子を伺っていた。
「今日のシュリはどうしちゃったのじゃ?なんだかぽや~っとして変な感じじゃぞ?まあ、ちょっとぽややんなシュリもかわゆいから、妾的には全然おっけーなんじゃが」
そんな発言をしたのは鮮やかな紅い髪をツインテールにした小さな女の子。
ごく普通の女の子の様に見えるが、そんな彼女の本性は強大な炎のドラゴン。
シュリの眷属になる際に、特殊なスキルの効能で可愛らしい姿になってはいるが、彼女が本気で暴れれば人間の王国の一つや二つは軽く壊滅させられる程の力を有している。
だが、まあ、今の彼女にそんな事をするつもりはかけらもない。
今の彼女……イルルにとって一番大事なのは、大好きな主の側にいて、常に構って貰うことだった。
「そ、そうでありますね……落ち込んでいる……のとも違いそうでありますが、何となく、元気がないような……ですが、元気のないシュリ様を見てると、際限なく甘やかしてあげたくなって、なんだか胸がきゅんきゅんするでありますよ……」
次にそんなことを言い出したのは、高い身長に胸元の二つのボールも破壊力抜群な妙齢の女性。
その頭からは白銀の毛皮ももふもふな、見事な犬耳……いや狼耳をはやしている。
彼女の名前はポチ。
イルルと同様、シュリの眷属であり、その本性はフェンリルという魔獣である。
イルルには及ばないものの、フェンリルもかなり強大な力を持つ魔獣であり、その力量は災厄級とも災害級ともいわれる。
だが、ポチもイルルと同様、周囲を脅かすつもりはかけらもない。
彼女の頭の中を占めるのは、愛しい主の事だけだ。今日も今日とて彼女の手には、シュリに遊んで貰おうと持ってきた、愛用のボールやらロープやらフリスビーやらが抱えられているのである。
「二人とも、シュリ様観察がまだなっていない。あれはきっと寝不足。恐らく、夢見が悪かったに違いない。急いでタマのしっぽでくるみ込んで、寝かせてあげないといけないと思う……くふふ。シュリ様と二人でお昼寝……役得、役得」
最後に、今のシュリの状況を恐らく一番的確に指摘してみせたのは、身長こそはポチよりかなり低いものの、その胸のボリュームに関してはポチを軽く凌駕する、ちょっと眠そうな目をした女の子。
その頭には、ポチと同様二つの獣耳が飛び出していた。
毛皮の色と形状を、ポチのものとはわずかに違えるその耳は黄金色のキツネ耳。
着崩した和服の様な服装のお尻からは、もっふぁもっふぁとボリューム満点な複数の尻尾が生えていた。
その数を数えてみれば、実に九本もの数に上る。
その尻尾の数からも想像できるように、彼女もまたイルルやポチと同様、シュリの眷属であり、九尾のキツネという希少な魔獣であった。
名前はタマ。
フェンリルであるポチに負けず劣らずの力を持つ魔獣でありながら、彼女も他の二人と同じく、シュリの忠実なしもべである。
彼女の頭にあるのは、人間を害してやろうとかそう言う魔獣的な思考ではなく、ただシュリと一緒に、シュリに最大限密着して惰眠を貪りたいという、至極単純で強い欲望だけ。
彼女はその欲望のまま、ぼんやりとソファーで膝を抱える主へ近づくと、自慢の尻尾でもっふぁ~っと主の小さな体を包み込んだ。
「ぬうっ!?タマ、抜け駆けは死刑なのじゃぞ!?」
「あうっ、ずっ、ずるいであります!!ポチもシュリ様を抱っこしたいでありますぅぅ」
外野がちょっとうるさいが、超マイペースなタマはそんなことは気にしない。
九本ある尻尾を駆使してシュリを包み込み、そのままシュリをむぎゅうと抱きしめた。
自分の尻尾で相手を包みながら抱きしめるなんて、どういう体の構造をしているんだと思われるだろうが、タマの尻尾は変幻自在。
大きさや長さを変えるなんて事はお手の物なのである。
「シュリ様?」
「ん~?タマ~??」
「夢見が悪かった?眠りが足りないなら、もう少し寝ればいい。一緒に寝よ?」
「夢見が悪い、かぁ。むしろいい夢だったとは思うんだけど、なんだか色々思い出しちゃって……だから、眠くてぼーっとしてる訳じゃないんだよ。でも、気にしてくれてありがと、タマ」
そう言って微笑むシュリ。
それを見て、我慢できない子の代表なイルルが、ぷっくぅ~とほっぺたを膨らませて、だだだっと駆け寄ってきた。
「心配しておったのはタマだけじゃないんじゃぞ?妾だって、心配しておったのじゃ。妙に元気がなくて、シュリがぺしょんとしておるの~って思っておったのじゃ!ぽやんとしたシュリもかわゆくてたまらん、などとは全然思って無かったのじゃ~~~!!」
「……そっかぁ。イルルも心配してくれたんだね。ありがと」
ぽやんとした僕を、可愛いって思ってたんだね?とはあえてつっこまず、無理矢理、大して体格差のないシュリの膝ににじにじよじ登って正面からむぎゅーと抱きついてきたイルルの頭を、シュリは撫でてあげた。
途端にむふ~っと幸せそうにイルルが笑い、それに対抗するように、後ろから抱きついているタマの腕に力が入る。
結果、背中に押しつけられている暴力的なまでにおっきな二つの固まりが、さらにぐいぐいと押しつけられてぐにぐにと形を変えた。
(……僕がごく一般的な成年男子だったら、鼻血を吹くか、狼さんになってるところだよねぇ)
妙に冷静にそんなことを考えながら、シュリは背後のちょっぴり幸せな感触と、体の正面にくっついたのっぺりとした感触を大人しく味わった。
後門の大山脈、前門の大平原……といった感じか。
「退くのじゃ!」
「退くのはイルル様」
「邪魔なのじゃ」
「邪魔なのはイルル様」
二人のそんなやりとりをほのぼのと聞いていると、おっきな影がおずおずと近づいてきた。
二人にちょっと出遅れた感のある、ポチである。
「ポチもシュリ様の事を心配していたであります、よ?」
いつもはピンと立っている耳がぺたりとしおれ、きゅーんきゅーんと鳴く声が聞こえてくるようだ。
体は大きいけど、妙に可愛らしいその仕草に胸をほんわかさせながら、
「うん、分かってる。ありがとう、ポチ。ほら、ポチもおいで?」
仲間外れは可哀想だと、ポチを呼ぶ。
大好きな主のお呼びに、耳をピンと立て、尻尾をばっさばっさと降りながら、まるで瞬間移動してきたのかと思うほどのスピードでシュリの傍らに移動したポチは、イルルとタマの舌打ちなど耳に入らないように、その両手を伸ばしてシュリの頭をきゅっと抱きしめた。
ポチとしては、抱きつける場所がそこしか残っていなかったからそうしただけだが、結果として、シュリの顔の半分程が、ポチの胸の谷間に埋まる。
(……うん。こうなるよね~)
シュリの後ろはタマがゲットし、前側はイルルが陣取っている。
そうなってみれば、まだちっちゃなシュリの体で残っている部分は少ない。
さらに言うなら、ポチの身長は結構高く、そんな彼女がシュリの中の一番高い部位を確保したのは、当然の結果だったといえよう。
後ろに特大、前にまっ平ら、顔に大……とバラエティ豊かなおっぱい配置に瞠目し、シュリを抱っこした三者によって繰り広げられる舌戦に耳を澄ませる。
そうしていると、今朝、目を覚ましてからずっと感じていた寂しさが優しく和らいでいくのを感じて、シュリはふよりとその口元を緩めるのだった。
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