ひさめんとこ

zausu

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6章~ひさめんとこのお父さんとおじいちゃん~

その5

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「…ただいま」
「…おかえり紫園」
「お父さん?久しぶり」
「あぁ、そうだな」
「うん」
「学校は、どうだ?」
「別に、普通」
「そうか」
「うん」
物凄いローテンションで会話をする二人。
「あの二人ってさ、すごく似てるよねぇ」
それを見ている奴ら。
「なんかお父さんの血か滅茶苦茶濃い感じ?」
「むしろクローン?」
「ぶんしんのじゅつ!」
「んー、此方が思うにクローンと分身はあり得ないと思うっすよ?」
「いや、それは例えだからさ」
「あ、そうっすか」
「…ていうか、誰?」
聞き覚えのない声だ。
「あ、初めましてっす。堂出萌の“堂”に、堂出萌の“出”に、堂出萌の“萌”で、堂出萌っす。よろしくっす。しおちん紫園の知り合いっすか?」
「いや、自己紹介になってないだろそれ。ていうか家族だよ」
「ていうか怒られるから止めて」
「あ…あの、すみません」
「またか…誰?」
「あ…その、紫園さんと同じ学年の守手熊すてぐま那由多なゆたと申します…えっと、い…いきなり堂出さんが紫園さんを尾行すると言って教室を飛び出しまして…止めたのですが力不足で…すみません」
「いや、それは別にいいが、不法侵入は止めてくれないか?警察に通報するところだったぞ」
「すみません…」
「まぁとりあえずせっかく来ていただいたのだし、ゆっくりお茶でもしませんか?」
「え?いいんすか?では遠慮無く頂くっす」
「あ、あの、そんなつもりでは…すぐに帰るのでお構い無く…」
「そんなの気にしなくて良いんですよ、守手熊さんはもう少し自分に自信を持ったほうが良いと思うわ。今の様子を見ているととても気配りができる性格というのがわかります。…それに…」
「…なんか…息が荒くなってない?」ヒソヒソ
「あぁ…多分アレだろう。何かあったらすぐ押さえるぞ、閑柯はそっちに、和真はあっちに移動しろ」ヒソヒソ
「ラジャー」
「え、えっと…大丈夫ですか…辛そうな顔ですけど…」
「そんなに可愛いんだもの!可愛いものに罪はないわ!」ガバッ
那由多に綾香が抱きつく。俗に言うキマシタワー。
「ふぇっ!?い、いきなりなにするですか!?」
「あ!ずるいっす!此方も参加っす!」ガバッ
「た、助けてくださーい!」
「取り押さえろー!」
「姉さん落ち着いて!」
「はい、君も一旦離れようねー」
「あー!待って!あと5年だけ抱きつかせて!」
「長いわ!」
「た、助かりました…」
「いやー、危なかったっすねー!」
「お前が言うな」

一方その頃、こっちの方では、
「ところで何でいきなり帰ってきたの?」
「あぁ、もう少しで母さんの誕生日だろ?だから帰ってきたんだ。いつも祝わないっていうのは悪いと思ってな」
「ふーん」
「どんな感じで祝うんだ?ホームパーティーか?それとも外食か?」
「おじいちゃんの家でパーティー」
「え?」
「おじいちゃんの家で」
「おじいちゃんってあのおじいちゃん?」
「そのおじいちゃん」
「…胃が痛んできた…」
「太田胃散あるよ」
「ありがとう…」
「大丈夫、滅多になにも起こらないから…」
「…そうだよな…なにもないよな…」
「自己暗示?」
「そうでもしないとプレッシャーが…うっ」バタッ
「あ、ストレスで倒れた。母さん呼んでこよ」
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