ひさめんとこ

zausu

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10章 ~ひさめんとこの来客~

その8

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「それよりもおばあちゃーん」
「なんじゃ」
「いきなりこんなところに来て何してるんですか」
「そんなもんは私の勝手じゃろ。それともなにか?私は出掛ける度にお前達に告げねばならぬのか?」
「…普段なら良いけどさ…」
「…普段なら?もしかして先生…」
「なんか病気とか?」
「え~、たいへ~ん」
「そんなわけ無いじゃろうが。ただちょっと熱があるだけじゃ」
「41度9分程な」
「死にかけじゃねえか」
「こんな熱に負けるほどひ弱ではないぞ」
「あと1分上がったら脳みそ茹で上がって死ぬんだけど?」
「そうですよ、おばあちゃん。おばあちゃんはそんな死に方は合いません。もっとダイナミックかつエレガントに死んでもらわないと」
「なんじゃそれは」
「例えば通りすがりのピエールにトレビアンに辻斬りされたり」
「誰じゃピエールって、なんじゃトレビアンって。私がピエールに何をした」
「まぁそれはともかくもう帰りますよ」
「あぁー、ちょっと待て」
「…一分までです」
「じゃあ俺は車のエンジンかけて二人が来るまで待ってるぜ。ってな☆」
「おっけーじゃ。…あー、ごほん」
「和馬、伊藤、大沢。お前達にひとつだけ言いたいことがある」
「何?」
「はい」
「なになに~?」
「まず和馬、お前さんは本当に立派になったのぅ。なんだかんだで家族に愛されてるようじゃしのぅ…」チラ
「…え?なんで私見るの?」
「…まぁ少しばかり愛が重いかもしれんがのぅ。まぁこれからもがんばれ」
「ははは、了解」
「そして伊藤。お前さんはいつまでもお前さんらしく生きてる、これからも自由で愉快なお前さんを保ち続けることじゃ」
「は~い♪」
「そして大沢…。お前は「はーい一分経過でーす」流石に空気読まんかいこのバカ孫!」
「いやだって一分って言ったじゃないですか」
「タイミング!タイミングを考えろ!わざととしか思えなかったぞ!」
「わざとです」
「言い切りおったコイツ!」
「まぁ冗談ですよ。さぁ、最後の別れを告げてください」
「不吉なことを言うのぅ…。大沢。電話ではあんなことを言ってしもうたが…この街は平和じゃったり別の町と比べて変態に襲われる回数が少なかったからのぅ。よくやってる。これからも精進せよ」
「…はいっ!」
「それじゃあ行きますよー」
「あ、それじゃあ見送りに…」

外に出た
「…これなに?」
「自家用ジェットです」
「さっき車って…」
「只の駄洒落なので」
「すご~い、維持費とか凄いでしょ?」
「はい。でも整備と運転は全部お父さんができるので。着陸できるとこが少ないのが難点ですかね」
「いや…それ以前に色々…」
「細かいことは気にしてはいけません」
「そうだよオッサン」
「それじゃあの!またいつか会おうぞ!」
「…ま、いいか。はい、またいつか会いましょう!」
「まぁ久々にあえて嬉しかったよ!また!」
「じゃ~ね~。今度はゆっくり話そうね~」
「…さらばじゃ!」
ジェットが飛んでいった。

「嵐みたいな人だったな」
「はは、本当」
「あの人が一番昔から変わってないよ~」
「…なぁ」
「なに~?和くん」
「これからどっか行かない?三人で。昔みたいにさ」
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