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第五章 竜が啼く
闇の誘い 5
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イルギネスが介入したことで、啼義たちは隣のテーブルの男たちと打ち解け、必要な情報を集めることが出来た。彼らは炭鉱のある山の中腹から二日ほど前に下りて来たところで、まさにその光の柱を目撃していた。
「あんなのは本当、見たことねえな。綺麗ってよりなんか…恐ろしい雰囲気だった」
「音までは聞こえなかったけど、気味が悪かったよな。凄みがあったと言うか」
屈強にすら見える男たちが、みな不吉そうに頷くのを見れば、不穏な予感が増す一方だ。
「集落が消えたかもっていう噂は?」
イルギネスの問いに、彼と同じくらいの年齢に見える褐色肌に短い金髪の青年が答える。
「光の柱のことがあって、この辺からも早馬で何人か様子を探らせに行かせたらしいんだけど、一人は行方不明で、馬だけ帰ってきて──もう一人はなんか、ちょっと」
どう言ったらいいものかと悩んだ隣で、壮年の白髪髭面の男が口を開いた。
「帰って来たんだが、軽く錯乱状態らしい。人の形をした化け物が出たって、うわ言みたいに繰り返したりしててな」
癖のある赤髪を背に束ねた男が、煙草を燻らせながら続く。
「そいつの話だと、ソダナの集落が廃墟と化していたとか。集落全体が焼き払われたみたいだったって」
驃が眉根を寄せた。「集落が丸ごと?」
褐色肌の青年が、持っている皿ごと驃に向いて、補足する。
「ああ。炎でも吐かれたみたいな有様だったようだぜ」
その言葉に、啼義が反応した。
「炎──」
それは、ダリュスカインが操る魔術の中でも、特に得意とする属性だ。
<でも、まさか>
彼には、集落を焼き払う理由などない。それに、さすがに一人では無理だろう。とすれば、ダリュスカイン以外にも、何か別の生き物が、この先に潜んでいる可能性もあるのではないか?
「そんな、集落がなくなるほどの炎を吐くような魔物もいるのか?」
思わず聞いた啼義に、彼らは一様に首を傾げた。
「炎を吐く奴はいるが、一体の威力は限られるな」
「集落がなくなるほどってなるとなぁ」
「群れの報告はないみたいだが、最近の魔物は、タチの悪さが増してるからな」
聞けば聞くほど、口に入れる料理の味が不味くなるような気がして、啼義はため息をついた。ダリュスカイン以外に対峙しなければならない何かがいるとなると、状況は予想以上に困難だ。
滅入った気分で次の一口を運んだところで、イルギネスが独り言のように呟いた。
「明らかな魔物ならまだしも、人の形をした……ってのは、なんとも不気味だな」
褐色肌の青年が、その呟きを拾って笑う。
「魔物じゃないんなら、幽霊ってやつかね」
するとイルギネスが、傍目にも分かるほど青ざめた。
「幽霊だけは、勘弁願いたい」
啼義は目を見張った。彼がこんな顔色になるのを、見たことがない。
「具合が悪いのか?」心配になり声をかけると、イルギネスは苦いものを口に含んだみたいな顔で返した。
「いや……大丈夫だ。どうも、幽霊だけは、その──苦手でな」
「へ?」
イルギネスの向こう側で、驃がむしろ面白そうな顔で補足する。
「こいつ、幽霊話にはめっぽう弱いんだよ」
啼義は拍子抜けした。だが、恐怖に対しての耐性が完璧とも思える青年の中に意外な弱点を見つけて、場の空気とは裏腹に、なんとなく気持ちが和んだ。
<こいつにも、怖いものなんてあるのか>
驃が、「相変わらずだな」と苦笑しながらも、その目に鋭い光を走らせ、黙ってしまった相棒の代わりに尋ねる。
「ちょっと引っ掛かるな。その御仁には、どこで会える?」
壮年の男が、顎髭を撫でながら「うーん」と天井を仰いだ。
「そうだな。今はもう、家にいるとか言ってたっけ? ここの料理長の知り合いらしいから、聞いてみればいい」
「あんなのは本当、見たことねえな。綺麗ってよりなんか…恐ろしい雰囲気だった」
「音までは聞こえなかったけど、気味が悪かったよな。凄みがあったと言うか」
屈強にすら見える男たちが、みな不吉そうに頷くのを見れば、不穏な予感が増す一方だ。
「集落が消えたかもっていう噂は?」
イルギネスの問いに、彼と同じくらいの年齢に見える褐色肌に短い金髪の青年が答える。
「光の柱のことがあって、この辺からも早馬で何人か様子を探らせに行かせたらしいんだけど、一人は行方不明で、馬だけ帰ってきて──もう一人はなんか、ちょっと」
どう言ったらいいものかと悩んだ隣で、壮年の白髪髭面の男が口を開いた。
「帰って来たんだが、軽く錯乱状態らしい。人の形をした化け物が出たって、うわ言みたいに繰り返したりしててな」
癖のある赤髪を背に束ねた男が、煙草を燻らせながら続く。
「そいつの話だと、ソダナの集落が廃墟と化していたとか。集落全体が焼き払われたみたいだったって」
驃が眉根を寄せた。「集落が丸ごと?」
褐色肌の青年が、持っている皿ごと驃に向いて、補足する。
「ああ。炎でも吐かれたみたいな有様だったようだぜ」
その言葉に、啼義が反応した。
「炎──」
それは、ダリュスカインが操る魔術の中でも、特に得意とする属性だ。
<でも、まさか>
彼には、集落を焼き払う理由などない。それに、さすがに一人では無理だろう。とすれば、ダリュスカイン以外にも、何か別の生き物が、この先に潜んでいる可能性もあるのではないか?
「そんな、集落がなくなるほどの炎を吐くような魔物もいるのか?」
思わず聞いた啼義に、彼らは一様に首を傾げた。
「炎を吐く奴はいるが、一体の威力は限られるな」
「集落がなくなるほどってなるとなぁ」
「群れの報告はないみたいだが、最近の魔物は、タチの悪さが増してるからな」
聞けば聞くほど、口に入れる料理の味が不味くなるような気がして、啼義はため息をついた。ダリュスカイン以外に対峙しなければならない何かがいるとなると、状況は予想以上に困難だ。
滅入った気分で次の一口を運んだところで、イルギネスが独り言のように呟いた。
「明らかな魔物ならまだしも、人の形をした……ってのは、なんとも不気味だな」
褐色肌の青年が、その呟きを拾って笑う。
「魔物じゃないんなら、幽霊ってやつかね」
するとイルギネスが、傍目にも分かるほど青ざめた。
「幽霊だけは、勘弁願いたい」
啼義は目を見張った。彼がこんな顔色になるのを、見たことがない。
「具合が悪いのか?」心配になり声をかけると、イルギネスは苦いものを口に含んだみたいな顔で返した。
「いや……大丈夫だ。どうも、幽霊だけは、その──苦手でな」
「へ?」
イルギネスの向こう側で、驃がむしろ面白そうな顔で補足する。
「こいつ、幽霊話にはめっぽう弱いんだよ」
啼義は拍子抜けした。だが、恐怖に対しての耐性が完璧とも思える青年の中に意外な弱点を見つけて、場の空気とは裏腹に、なんとなく気持ちが和んだ。
<こいつにも、怖いものなんてあるのか>
驃が、「相変わらずだな」と苦笑しながらも、その目に鋭い光を走らせ、黙ってしまった相棒の代わりに尋ねる。
「ちょっと引っ掛かるな。その御仁には、どこで会える?」
壮年の男が、顎髭を撫でながら「うーん」と天井を仰いだ。
「そうだな。今はもう、家にいるとか言ってたっけ? ここの料理長の知り合いらしいから、聞いてみればいい」
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