4 / 19
第1章 それぞれの旅立ち
第4話 大陸侵攻作戦
しおりを挟む結局、シュラは宝石を三個も貰ったので、かなり機嫌が良くなっていた。そして、何気なく巨大なアイスゴーレムを見上げて、思案している。
(しかし、おっきいなぁ。建物でいうと五階くらいかな、わかんないや・・・。てか、ちゃんと動くんかな?)
「冴子さん、ゴーレムの動くとこみたいんだけど・・・」
(どうせハッタリで動かせないんでしょ?とは言わないでおこう。この人、怒ると恐いから)
「ああ、私の芸術作品が踊るところを見たいのね?」冴子は戦利品の【遠見の水晶】を大事そうに秘薬バックにしまい込み、ゴーレムに命令を伝える詠唱を始める。
「あ、いや・・・別に踊らなくても・・・いいんだけど」何だか面倒なことになったとシュラは思った。
皆が疲れているだろうと思い、ソドムが中止を提案する。
「冴子殿、まともに相手しなくていいんですよ。小娘の無意味な 戯言ですから」
「いえいえ、踊らせはしませんよ。歩かせるだけです」
ソドムは、「そこじゃない」と思ったが面倒くさくなって言葉を飲み込んで、溜息と分からない程度に「ふ~」と息を吐く。実年齢では還暦のソドムであるが、いくつになっても人の考えることはわからないし、コントロールすることは難しいと感じている。
まさに そびえ立つというに相応しい 巨大なアイスゴーレムが、ゆっくり足をあげ一歩目を踏み出す。その巨大さは、ネオギオンを護る守護神といった風格があり、皆が息を呑んだ。
シュラは二十年前、巨大なアークデーモンに踏まれて死にかけたことを今さらながら思い出し、足がすくむ。物理耐性など圧倒的質量に対しては意味をなさない。もし、アイスゴーレムの下敷きになったとしたら、普通に潰されて即死 もしくは大量出血で死ぬだろう。
この時、不運があった。丘の僅かな傾斜がゴーレムのバランスを崩した。倒れまいと後ろに片足を出したが、コレが滑った。徐々にゴーレムは後ろに重心が移り、支えようとした足がまた滑り、逆に蹴り出すような形になって、後ろに仰向けのまま倒れ込んだ。
そのままゴーレムは雪原を滑り、ついには城の城壁まで到達し、「ゴゴゴォォン!!」と大きな音を立てて砕け散る。その様子は、大規模な雪崩が村落に襲い掛かったかのようだった。
当然、城壁も崩れた。その損害は城壁の三割にも及び、城の防衛力は半減した。「うそだろう」と皆が思い、絶望の声がこぼれる。
この一瞬で、タクヤの酔いは醒め、頭脳をフル回転させ被害額の算出と補填方法をはじき出した。城壁といっても、厳重な二重城壁であり、しかも それぞれの壁の内側は兵士の宿舎や一般住居にしているため、建設には金と時間がかかっている。加えて、壁が崩壊している箇所から容易に敵が侵入できるので、警備の兵を大幅増員せねばならず、その人件費も相当かかる。
「おめっだ、何してくれでんなやぁ!あいだば金貨一万枚(大和帝国十億円)は飛んだぞ!」怒りで我を忘れたタクヤが、帝国訛り丸出しでソドムらを叱りつけた。
「待で待で。俺ら悪ぃけど、まずは住人助けねば!」と、ソドムは釣られて訛りながら、近習に救出部隊の派遣を指示した。
シュラと冴子は、「やっちまった」と後悔して佇んでいる。レウルーラは、とりあえず場を和ませようと冴子に声をかけた。
「冴子ちゃん、転ぶ様子を見て気がついたんだけど、ゴーレムの足の裏・・・あれじゃダメね。鉱石ならまだしも、氷でできてるんだから、踏ん張りがきくようにアウトソールに凹凸とか付けるべきよ」と、魔術師の先輩としてアドバイスした。
「確かに・・・。真っ平では滑るのは道理でした。勉強になります、ルーラ姉」レウルーラ相手には素直な冴子。シュラも、責任逃れのために頷きながら会話に参加している風に装った。
多少冷静さを取り戻したタクヤが、ソドムらを諭すように語気を弱めて・・・金の話に戻す。
「ともかく・・・、金だ。せっかく領土まで削って得た金がパーになったんだからな。さあ、どうするんだ?ネオギオン総帥・影王ソドム、宮廷魔術師長・冴子殿、神殿代表・レウルーラ卿」と、事務的に詰め寄った。
当然、胸中に解決策がある。だが、成し遂げさせる為にも彼等自らの口で言わせる必要があった。
「それは・・・だな、責任もって俺たちが~」上司に渋々 戦果の約束や売り上げ目標を掲げるかのような感じでボソボソとソドムが話し出す。レウルーラは、ソドムに責任が一切無いので助け舟を出した。
「私たちが大陸に渡り、冒険者ギルドに登録して稼いでくるわ」そう言い切って、冴子とレウルーラに目で合図した。
「そう、そのための戦艦です。大陸に蔓延る魔神を殲滅し、財宝を手に入れて来ましょう」と、自信満々に冴子は言い放ち、取り乱したため乱れ放題だった紫の長髪を整えた。
「そんで、障害がなくなった所に進軍するのね」と、シュラは楽しげに言った。冒険と戦争が今から楽しみでしょうがない様子である。
「そういうことだ。元から大陸進出は悲願である。準備が整い次第、戦艦で南にある港湾都市スウィートに向かい、そこを拠点に活動する。なお、送金などのために連絡員も常駐させることとする。・・・これでいいかな?宰相殿」ソドムは上手くまとめて、金庫番の意思を確認した。
単純な奴らだ・・・思惑通りに動いてくれる、と思ったタクヤ。嬉々として行くのであれば言うことはない。逆に生真面目な冴子も巻き込めたのは好都合であった。彼女がいれば、ソドムらが遊びにかまけて逃げ出すことはないだろう、とも思った。
「貴殿らの覚悟は伝わった。武運を祈る」と、白々しい台詞を吐くタクヤ。彼らの能力ならば、冒険者ギルドでぶっちぎりの存在になるのは間違いないから、その稼ぎは領地を切り取るよりも多いとみている。
(待てよ、冴子は連邦の恩赦があれば簡単に寝返るかもしれん。念のため俺の息のかかったエルディック一家の掃除人を同行させよう。お、そんなことより経費・食料の節約のため、ゾンビと魔人らには再び寝てもらわなくては・・・)
「そうと決まれば、祝勝パーティだ!主だった者を広間に集めろ!兵たちには国庫から金を出して存分に旨いものと酒を飲ませよ。さて、久しぶりに俺も料理を作るぞ」と、ソドムは包丁を持つ素振りをして張り切った。
(このようなときに暗さは厳禁だ。ともかく明るく振舞い、その明るさで失態をかすめさせ、かつ船出は贖罪ではなく、華々しい栄光の一歩と印象付けなくてはならん)
タクヤが抗議しないというのは、承認したという意味である。それならば、とシュラがはしゃぐ。
「おー、いいね。アンタの料理久しぶりだから楽しみ!」バシバシとソドムの背中を叩く。
「あ、シュラちゃん。せっかくだから鹿でも捕まえて行きましょ」と、レウルーラもノリノリである。「おっけー」と、シュラは快諾した。
「ソドム殿の料理は つい宮廷を思い出してしまいますが、何かとアレンジされてるので毎回発見があって好きです」と、冴子も喜ぶ。
(一番美味しいのは始祖たるソドムの・・とは言えないわね)
ともあれ、戦勝と影王復活の宴は深夜まで続く・・・。
0
あなたにおすすめの小説
魔力ゼロの落ちこぼれ貴族、神々のエラーメッセージが読めるようになる~「神罰」のシステム権限で学園無双しつつ、本人だけはただのデバッグ作業だと
蒼月よる
ファンタジー
魔法(ナノマシン干渉)が使えず、名門アルマンド家の恥晒しとされた三男アッシュ。
実技試験に落ちて旧図書棟の掃除をさせられていた彼は、謎の遺物(管理デバイス)に触れたことで、世界の最高管理者権限(デバッガー権限)を手に入れてしまう。
「魔法」とは環境中の魔素を操作する事象。そして「神の奇跡」とは環境管理AIの気まぐれであるこの世界において。
アッシュの目には、相手の放つ魔法が単なる『不正なプロセスのエラーログ』として映り、頭の中で『YES(強制終了パッチ)』を選択するだけで完全に消去できるようになったのだ!
一切の詠唱も魔力発生も伴わずに、同級生の最大魔法をフッと消し去り、暴走する巨大魔物をワンボタンで光の粒子に還元するアッシュ。
本人はただ「うるさい警告文が出たからOKを押してデバッグ(人助け)しているだけ」のつもりなのだが……。
これは、エラーログを消しているだけの落ちこぼれ少年が、王都の至高魔法学園で「神の奇跡を下す聖者」として盛大に勘違いされながら成り上がっていく、痛快無双ファンタジー!
この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。
・世界観・設定の管理補助
・プロット段階の壁打ち
・作者による執筆後の校正
ダンジョン嫌いの元英雄は裏方仕事に徹したい ~うっかりA級攻略者をワンパンしたら、切り抜き動画が世界中に拡散されてしまった件~
厳座励主(ごんざれす)
ファンタジー
「英雄なんて、もう二度とごめんだ」
ダンジョン出現から10年。
攻略が『配信』という娯楽に形を変えた現代。
かつて日本を救った伝説の英雄は、ある事情から表舞台を去り、ダンジョン攻略支援用AI『アリス』の開発に没頭する裏方へと転身していた。
ダンジョンも、配信も、そして英雄と呼ばれることも。
すべてを忌み嫌う彼は、裏方に徹してその生涯を終える……はずだった。
アリスの試験運用中に遭遇した、迷惑系配信者の暴挙。
少女を救うために放った一撃が、あろうことか世界中にライブ配信されてしまう。
その結果――
「――ダンジョン嫌いニキ、強すぎるだろ!!」
意図せず爆増するファン、殺到するスポンサー。
静寂を望む願いをよそに、世界は彼を再び『英雄』の座へと引きずり戻していく。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
器用貧乏な赤魔道士は、パーティーでの役割を果たしてないと言って追い出されるが…彼の真価を見誤ったメンバーは後にお約束の展開を迎える事になる。
アノマロカリス
ファンタジー
【赤魔道士】
それは…なりたい者が限られる不人気No. 1ジョブである。
剣を持って戦えるが、勇者に比べれば役に立たず…
盾を持ってタンクの役割も出来るが、騎士には敵わず…
攻撃魔法を使えるが、黒魔道士には敵わず…
回復魔法を使えるが、白魔道士には敵わず…
弱体魔法や強化魔法に特化していて、魔法発動が他の魔道士に比べて速いが認知されず…
そして何より、他のジョブに比べて成長が遅いという…
これは一般的な【赤魔道士】の特徴だが、冒険者テクトにはそれが当て嵌まらなかった。
剣で攻撃をすれば勇者より強く…
盾を持てばタンクより役に立ち…
攻撃魔法や回復魔法は確かに本職の者に比べれば若干威力は落ちるが…
それを補えるだけの強化魔法や弱体魔法の効果は絶大で、テクトには無詠唱が使用出来ていた。
Aランクパーティーの勇者達は、テクトの恩恵を受けていた筈なのに…
魔物を楽に倒せるのは、自分達の実力だと勘違いをし…
補助魔法を使われて強化されているのにもかかわらず、無詠唱で発動されている為に…
怪我が少ないのも自分達が強いからと勘違いをしていた。
そしてそんな自信過剰な勇者達は、テクトを役立たずと言って追い出すのだが…
テクトは他のパーティーでも、同じ様に追い出された経験があるので…
追放に対しては食い下がる様な真似はしなかった。
そしてテクトが抜けた勇者パーティーは、敗走を余儀無くされて落ち目を見る事になるのだが…
果たして、勇者パーティーはテクトが大きな存在だったという事に気付くのはいつなのだろうか?
9月21日 HOTランキング2位になりました。
皆様、応援有り難う御座います!
同日、夜21時49分…
HOTランキングで1位になりました!
感無量です、皆様有り難う御座います♪
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
