竜の騎士と水のルゼリア

月城

文字の大きさ
26 / 26
アクアマリンの章

1. Ep-25.結晶花 ~ソーティア~ 1

しおりを挟む

 執務室ではルゼリアを前にしてレザリックが優しそうに笑っていた。
 
「ルゼリア、突然呼び出してしまってすまなかったね。今日しかないと思って呼んだんだ」

 そう言うとレザリックは近くにいた騎士を見た、騎士は頷いて一つの箱を取り出しそれをレザリックに渡す。受け取ったレザリックは箱の裏に手を伸ばして何かを回している、そうしてルゼリアにその箱を差し出した、白い箱には緑色で蔦の模様の綺麗な装飾が施されている、受け取ったルゼリアは不思議そうに首を傾げた。
 
「開けてご覧」

 言われるままにそっと箱を開けると中から綺麗な音が流れてきた、その箱はオルゴールのようだ。
部屋に響く小さく綺麗な音色はルゼリアを一瞬で惹き付けた。そうしてそのオルゴールには一つの首飾りが入っていた。装飾自体は華美ではなくシンプルな作りの可愛らしい物だ、美しい花の形のクリスタルは薄い水色で澄んだ浅い水底のような綺麗な色をしている。そのクリスタルの両隣には小振りな花の蕾のような形のクリスタルも付いていて、素敵な首飾りである。目を奪われながらもすぐに視線をレザリックに戻す、これは何だろうと首を傾げて尋ねるルゼリアにレザリックはそれはねっと教えてくれた。
 
「それはね、特別な結晶花で出来ているんだよ、ルゼリアは結晶花の魔石の事は知っているかな?」

 結晶花と言われてもぴんと来ない、首を横に振ればそうだよねっとレザリックは笑う。
 
「ルゼリアは魔力を持っていないから今までに見る機会も触れる機会もなかっただろうから、知らなくても当然だね」

 ルゼリアは魔力を持たない姫だ、その為魔力にとても弱くて魔力に触れただけでも体調を崩して寝込むことがあった。

「結晶花というのは特別な魔石の事を言うんだよ、この世界には魔石と呼ばれるものが存在する、名前の通り魔力の源で三種類の魔石が存在するんだ、一つは魔獣や魔物の命の源である石、これは良く取れるものだが魔獣や魔物を倒せば倒した魔獣や魔物の核が結晶化する、それがよくある魔石だよ、弱い魔獣や魔物からは小さな結晶が、強く大きな魔獣や魔物を倒せば大きな結晶が取れる」

 魔獣というのは動物に何らかの形で闇の因子が紛れ込んで生まれる固体だ、飼っている羊が突然魔獣になるというのは良く聞く話しだ。
 
 魔物というのは魔獣とは違って突然現れる存在で魔獣とはまったく別の生き物だ、魔獣になった動物というのは元の固体の性格よりも少し攻撃的な物が多い。

 例を挙げれば羊が魔獣化すれば突進して頭突きをする回数が多くなる、魔獣の特徴は額に黒い角が生える事、目が赤くなる事なのだろうか。それとは違い魔物というのはとても凶暴でだれかれ構わず見境なしに襲ってくる危険な存在だ、王都周辺では見ることがないが、辺境などにいくと街道で人を襲うなどするものもあると聞く。
 
 この二種類を討伐する事で魔石を手に入れる事が出来、冒険者と呼ばれる者達はこういった魔石を集め売って生計を立てるのだ。
 
「魔石のもう一つの種類は獣人や竜の中である特別な条件を満たした者の涙で出来る特別な石だ、涙する者の魔力が高ければ高い程生成された涙はより硬度でより強力な魔石になる、『獣珠』や『竜珠』と呼ばれるものだがこれは本当に珍しくて滅多に作る事が出来ない、作れる条件を満たした獣人や竜がいないからなのだけれど俺も以前に一度だけ見た事がある程度だよ」
 
 そういうものがあるのかっとルゼリアはコクコクと頷いている。
 
「最後の一種類が『結晶花』、正式名称はソーティアと呼ばれる珍しい花の種だ、大抵の者が結晶花と言っているものだが、この結晶花というのはね、獣人の住む地域でしか栽培できないとても希少な花なんだよ。
育つ事が出来る気候がとても限定された結晶花は名前の通り芽吹いて成長し、蕾が開花して大輪の花を咲かせると種子になる、結晶花は一本に付き大体2~3個の種になるのだけれど、その種が結晶化して美しい魔石になるんだ、色も花の色を受け継ぐから赤、黄色、白と色々な色が存在して次に芽吹かせる為に取れた種から一個しか魔石が作る事が出来ない珍しいものだ」

 確かにあ一個しか魔石にならないというのであれば貴重な事は頷ける。

「この結晶花はさっき言った二つの魔石とは根本的に使い方が違うんだ」

 魔獣や涙から取れる魔石は強い魔力を帯びているというのは分かるのだが根本的に違うとはどういう事だろうか。首を傾げるルゼリアにレザリックは魔力がない魔石なんだよっと答えた。不思議そうなルゼリアにレザリックは面白い魔石でねっと楽しげに話していく。
 
「結晶花の魔石はね、魔石って言われるけれど最初は内部が空っぽな状態なんだ。…………そうだな、分かりやすく言うと」
 
 そう言ってレザリックは徐にお茶の入ったカップを手にとるとぐいっと飲み干してしまった。そして空っぽになったカップをルゼリアに見せる。
 
「結晶花というのはこのように何も入っていない空っぽの魔法の入れ物なんだよ。例えば今はお茶が入っていたけれど、水を入れればこれは水入りのカップになるね?野菜ジュースを入れれば野菜ジュースのカップになる、スープを入れればスープのカップに」

 頷くルゼリアに結晶花の魔石は魔法の入れ物なのだと説明した。
 
「空っぽの結晶花に外部から魔法を注ぎ込む事で、その魔法を一時的に保存する事が出来る、これが結晶花と呼ばれる魔石なんだよ。俺は回復魔法以外の魔法が使えるのは知っているね?」

 叔父であるレザリックはアルヴァーニ王国で指折りの魔法を扱う竜だ。
 
「実際見たほうが早いだろうね」

 そう言うとレザリックは立ち上がった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】逃がすわけがないよね?

春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。 それは二人の結婚式の夜のことだった。 何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。 理由を聞いたルーカスは決断する。 「もうあの家、いらないよね?」 ※完結まで作成済み。短いです。 ※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。 ※カクヨムにも掲載。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】シュゼットのはなし

ここ
恋愛
子猫(獣人)のシュゼットは王子を守るため、かわりに竜の呪いを受けた。 顔に大きな傷ができてしまう。 当然責任をとって妃のひとりになるはずだったのだが‥。

不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。

翼 うみ
恋愛
父の会社を立て直す交換条件のため、ほぼ家族に身売りされた形で関東最大級の極道・桜花組の次期組長に嫁入りしたジェシカ。しかし母を亡くして以降、義母と義妹に虐げられていたジェシカは実家を出られるなら、と前向きだった。夫となる和仁には「君を愛することはない」と冷たく突き放される。それでもジェシカは傷つくことはなく、自分にできることを探して楽しんでいた。 和仁には辛い過去がありそれ故に誰のことも愛さないと決めていたが、純真で健気なジェシカに段々と惹かれてゆき――。 政略結婚から始まる溺愛シンデレラストーリー。

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。

処理中です...