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アクアマリンの章
1. Ep-1.身支度
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一柱の女神インテリデットによって創造された世界、ルーン・エキューム。
そこに浮ぶ浮遊大陸フォリサニアの南東に位置する水竜の国、アルヴァーニ王国の離宮の朝はとても早い。
まだ夜も明けきれない部屋の中、カーテンの隙間からほんのりと空が明るみを宿す時間。
真っ白な天蓋付きの寝台が僅かに動き大きな寝台で埋もれるようにして眠っていたこの国の王女であるルゼリアがゆっくりと目を覚ました。
スルスルとシーツを滑る音とチリン、チリンっと言う音を響かせて上半身を起こす。
小さく白い両の手首には綺麗な装飾が施されたブレスレットがつけられていて鈴が数個付いている。先程のチリンっと鳴っていたのはこのブレスレットの鈴の音のようだ。
小さく音を響かせながらルゼリアは静かに髪を掻き上げるとさらりと零れるパステルブルーの髪が隠れていたシーツから姿を現した。
小さく口を開けて欠伸をし両腕を天高く掲げて伸びをし寝起きの頭で部屋の中を見渡してみる。
薄暗い部屋の中、大きな部屋に美しい装飾が施されたアンティーク調の家具がいくつも並んでいるようだ。
白色を基調にしているのだろうか、色合いの薄い部屋は何処か物寂しさを覚える。
見慣れた部屋を見渡してから眠気を払うように顔を振ると柔らかく癖のない髪を体で踏まないように気をつけながらルゼリアは寝台の端へと移動していく。
一人で眠るには余りにも大きすぎる寝台は降りるのも大変そうだ。そのままルゼリアは寝台の端まで移動してふわふわの毛足の長い絨毯に足を下ろした。
そのまま寝台に備え付けられている、テーブルに置いてある器と水の入った水差しを見つめて水差しの中の水を器に注ぎ顔を洗う。
冷たい水が肌に触れると僅かに残っていた眠気も一気に払われたようだ。顔を拭きながらも一息いれて立ち上がると素足のまま窓の方向へと歩いていった。
床に付く髪を気にする事もなく窓辺へと移動しカーテンの隙間に指をかけて僅かに開けるとそのまま大きな両開きの窓を指先でトンと押した。
いつもであればすっと開くそれは今はピクリとも動かない、すぐにああ、と納得して寝台まで戻ると備え付けられているテーブルの引き出しを開けて中から何かを取り出した。
それは丸いクリスタルだった、何の飾りもないただの丸い塊で宝石と言うわけでもなさそうに見える。それを手に取って再び窓に移動すると徐に持っていたクリスタルの塊を窓の取っ手部分に押し付ける。
窓とクリスタルがぶつかりコツンと硬質な音が響けばクリスタルは弱弱しく光った。すぐに光は消えてしまったけれどそれだけで十分だった様だ。
クリスタルを持った手でそのままもう一度、先程の様に窓をトンっと押せば音もなく今度はあっさりと開いていく。
窓が開いた瞬間、冷たい風が部屋の中に流れ込んできた、水を含んだ湿り気を帯びた風が温められた部屋を急激に冷やしていく。風を受けた瞬間ぶるりと震えはしたものの凍えるような寒さではない。朝特有の冷たい空気は暖められ火照った体には気持ちが良いものだ、朝の空気を吸い込むと気分が落ち着くのが分かる。
そのままルゼリアはバルコニーに出て辺りを見渡してみる。
そのバルコニーは半円形の形をしていて欄干には見事な彫刻が施され手摺子にも細かな彫刻がされていて植物の蔦が撒き付いている。
ゆっくりと欄干に近づくとクルリと体を反転させて欄干に背中を預けながら建物自全体を見つめる。
白色を基調にしたクリスタルで出来たこの建物は『静寂の花』と呼ばれるアルヴァーニ王国の離宮の一つだった。
三階建ての建物で装飾だけで言えばこのアルヴァーニ王国で一番美しいと言われる程だ。少しの間建物を見ていたルゼリアは再び体を反転させて外の景色を見つめる。
もうすぐ朝日が出るのだが今は辺りは深い霧で覆われている。
アルヴァーニ王国は水の豊かな国であり、王都全体が大きな湖の上に浮んでいてその為朝は大抵深い霧が掛かっている。ふわりと舞い込む風を受けて瞳を閉ざしながら清々しい空気を胸いっぱいに吸い込んでルゼリアは大きく息を吐き出した。
新鮮な空気を吸い込んでいるとコンコンっと背後で音がした、誰かが部屋の扉を叩いているようだ。
ルゼリアは振り返りながらも返事をするように手首を小さく振る。
チリンチンリンっとブレスレットの鈴が音を奏でその直後失礼しますと言う声と共に扉が開き40歳程の年齢の老女が一人入ってきた、侍女頭でありルゼリアの乳母のシュネリアノだ、昔はとても美しかったであろうシュネリアノは見た目の年齢よりも大分年を召しているのだがそれでも凛とした佇まいや柔らかな笑みを浮かべるその表情は実年齢よりも遥かにシュネリアノを若く見せている。
「おはようございますルゼリア様、相変わらず早起きですね」
シュネリアノの言葉に返事を返すように頷きながらルゼリアは足早に部屋の中へと戻って行った。
窓をぱたりと閉めてから手に持っていたクリスタルを引き出しに戻し座り心地の良さそうな長椅子に座る。
それを見てからシュネリアノはルゼリアの顔を見ておやっと首を傾げた。
「姫様……お顔の色が優れない様ですが体調は大丈夫ですか?」
問いかけられてルゼリアは少し夢見が悪かったと手をパタパタ動かして話していく。
「…………また幼い頃の夢を見られたのですか?」
偽る事無く頷くルゼリアをシュネリアノは痛ましそうに見つめる。
「貴方様がお声を失われてから見る夢は貴方様のお心が深く傷ついていると言う事なのでしょう…………一度お医者様に見ていただいた方が良いのではないですか?手配いたしましょうか」
『シュネ、大丈夫だから…………心配を掛けてごめんなさい。そんな顔をしないでください』
手話で話すルゼリアにシュネは心配そうな顔をしてはいたけれど、ルゼリアにねっ?と言われて息を吐き出しながら分かりましたと答えた。
「姫様、無理をなさらないで下さいね、貴方はこのアルヴァーニ王国の時期王位継承者、貴方に何かあれば我々水竜は悲しみます」
分かっていますと頷いてルゼリアはニコリと笑う。
シュネはルゼリアのそんな笑みを見てから、父王からと贈られてきた服を手にルゼリアにどれにしますかっと尋ねていく。一つは幼さを残した小さな体を隠すようにふんだんにフリルが付いた服だ、ルゼリアは動きづらいかもっと首を横に振った。次に最初の服よりも動きやすそうな服だったがやはり気乗りしない。
いくつかの服を見てからルゼリアはシュネにもっとシンプルで動きやすい服はないかと尋ねた。
『部屋でじっとしているならシュネが持って来た服も素敵だと思うのですが今日は移動が多いので…………それに本心を言うともう少し大人びた服を着たいと思うのです。仕立ててくださってる方には感謝しているのです、可愛いとも思うのです…………きっと子竜が着て走り回っていれば愛らしいと思うような素敵な服である事は間違いないです……でも自分で着るとなると…………』
見せられた服はどれも幼さを引き立てる様なデザインのものが多い、
歳相応の服が着たいのですがと言い必死に言い繕っているルゼリアにシュネもそうですわねっと苦笑を漏らす。
「贈られてくる服の大半が動きづらい服であり姫様の容姿に合わせたものですから自然と幼さが表現されてしまいますものね」
自分の体系が幼児体系だと気にしているルゼリアにはシュネの言葉はチクチク刺さる。
こう見えてもルゼリアは竜の年齢で言えば21歳になる、竜の21歳と言えば成熟していて背も高く豊満な体を持つ個体が多い、だがルゼリアは21歳でありながらその見た目はとても幼く、幼子のような体系をしている、恐らく10歳程度だろうか?成長速度がとても遅いのか背も同世代の竜と比べてもあからさまに体は成長していないようだ。
その為父王から贈られて来る服と言うのは子供っぽさを残したものばかりでルゼリアはかなり気にしていた、かといって作り直してくれと言うような我侭を言えない為にルゼリアは今まで気恥ずかしく気にしながらもフリルたっぷりの愛らしい服を着続けたが流石に限界が来ていたようだ。
「では衣裳部屋からシンプルで動きやすい服を見てまいりましょうか、私の好みになりますが構いませんか?」
シュネの言葉にルゼリアは頷いて快諾した、シュネであればこの愛らしすぎる服達よりもルゼリア好みの服を選んでくれる事だろう。
シュネが出て行ってからルゼリアは鏡に映った自分の姿を見つめてみた。
鏡に映るのは大きすぎるディープスカイブルーの瞳と床に付く程長いパステル・ブルーの髪を持つ幼い存在だ。
他の竜と比べて決定的に違う『竜』と『人』の容姿を合わせ持つアルヴァーニ王国の第一王女、『ルゼリア・アルヴァーニ・アクアエリウス』の姿。21歳とは思えぬ幼児体系でぱっとみれば10歳児よりも幼く見える、全く成長しない体、胸はまったいらであり幼児体系特有の丸みでもある。
シュネにすぐに大きくなりますよと言われ続けてすでに長い時間が経過している。
ルゼリア自体、もうこの体が成長する事はないんではないかと半分は諦めている。
成長期を過ぎてしまっているのだからこれから成長する事はありえないだろう。
竜と言うのは身長がとても高い生き物だ。
成熟した竜は人の姿でも雄で2メートルを軽々と超える、雌も2メートル近くまで伸びるのだが今のルゼリアは140センチにも満たない。
毎日毎日こっそりと背を測るものの一ミリも伸びないのだ。
『もう少し成長してくれるとよかったのに…………残念です』
ぺたりと平らな胸を押さえながら溜息を漏らしシュネが戻ってくれば慌てて手を下ろす。
シュネはルゼリアの要望どおりある服の中からシンプルで動きやすく、それでいてフリルの付いていない服を持ってきてくれた。
王女が着るにしては質素ではあるけれどルゼリアは贅沢が苦手だ。それにあのフリフリの服を着ないで済むのなら質素な服の方が着たいとさえ思っている。
そのままシュネに手伝ってもらいながら身支度をしてシュネに長い髪を整えてもらう。
最後に手作りの白いレースで美しく装飾されたヘッドドレスを頭に付ける。
他の部位に関してはシュネに任せるルゼリアだがこのヘッドドレスだけは毎日自分で調えている。
鏡を見ながら何度もヘッドドレスの位置を確認し最終的にはシュネに見てもらった。
『ずれてませんか?上手く角は隠せてるでしょうか?』
毎日同じ事を言うルゼリアにシュネは一度確認し花丸ですよと太鼓判を押す。
竜が人型になった最は三つの独特の特徴を持っている、一つはその瞳だ。
竜達の瞳は竜族特有の針のような縦長の瞳孔をしている、そしてもう一つがその耳だ、ツンと尖っていて聴力に優れている。
最後は角で竜達はそれぞれ必ずと言って良いほど鋭い角を持っていてより大きく鋭い角を持っている竜こそが誇らしいと言われている。
竜の本質的な力は角に宿っていて角が僅かに傷つくだけで魔力を大幅に削られてしまうのだ。
そんな角を勿論の事ながらルゼリアも持っている。
ただ他の竜とは違いセルリアン・ブルーの髪から覗くその角は小さくて丸みを帯びている。
竜にすれば丸みを帯びた角など論外らしく、ルゼリアはそれがコンプレックスになっていてその角を隠す為にヘッドドレスを常に着用しているようだ。
鏡を見ながらもヘッドドレスを気にするルゼリアにシュネは全て隠れておりますよと言ってそろそろ朝食にしましょうとルゼリアの意識をヘッドドレスから逸らすのだった。
そこに浮ぶ浮遊大陸フォリサニアの南東に位置する水竜の国、アルヴァーニ王国の離宮の朝はとても早い。
まだ夜も明けきれない部屋の中、カーテンの隙間からほんのりと空が明るみを宿す時間。
真っ白な天蓋付きの寝台が僅かに動き大きな寝台で埋もれるようにして眠っていたこの国の王女であるルゼリアがゆっくりと目を覚ました。
スルスルとシーツを滑る音とチリン、チリンっと言う音を響かせて上半身を起こす。
小さく白い両の手首には綺麗な装飾が施されたブレスレットがつけられていて鈴が数個付いている。先程のチリンっと鳴っていたのはこのブレスレットの鈴の音のようだ。
小さく音を響かせながらルゼリアは静かに髪を掻き上げるとさらりと零れるパステルブルーの髪が隠れていたシーツから姿を現した。
小さく口を開けて欠伸をし両腕を天高く掲げて伸びをし寝起きの頭で部屋の中を見渡してみる。
薄暗い部屋の中、大きな部屋に美しい装飾が施されたアンティーク調の家具がいくつも並んでいるようだ。
白色を基調にしているのだろうか、色合いの薄い部屋は何処か物寂しさを覚える。
見慣れた部屋を見渡してから眠気を払うように顔を振ると柔らかく癖のない髪を体で踏まないように気をつけながらルゼリアは寝台の端へと移動していく。
一人で眠るには余りにも大きすぎる寝台は降りるのも大変そうだ。そのままルゼリアは寝台の端まで移動してふわふわの毛足の長い絨毯に足を下ろした。
そのまま寝台に備え付けられている、テーブルに置いてある器と水の入った水差しを見つめて水差しの中の水を器に注ぎ顔を洗う。
冷たい水が肌に触れると僅かに残っていた眠気も一気に払われたようだ。顔を拭きながらも一息いれて立ち上がると素足のまま窓の方向へと歩いていった。
床に付く髪を気にする事もなく窓辺へと移動しカーテンの隙間に指をかけて僅かに開けるとそのまま大きな両開きの窓を指先でトンと押した。
いつもであればすっと開くそれは今はピクリとも動かない、すぐにああ、と納得して寝台まで戻ると備え付けられているテーブルの引き出しを開けて中から何かを取り出した。
それは丸いクリスタルだった、何の飾りもないただの丸い塊で宝石と言うわけでもなさそうに見える。それを手に取って再び窓に移動すると徐に持っていたクリスタルの塊を窓の取っ手部分に押し付ける。
窓とクリスタルがぶつかりコツンと硬質な音が響けばクリスタルは弱弱しく光った。すぐに光は消えてしまったけれどそれだけで十分だった様だ。
クリスタルを持った手でそのままもう一度、先程の様に窓をトンっと押せば音もなく今度はあっさりと開いていく。
窓が開いた瞬間、冷たい風が部屋の中に流れ込んできた、水を含んだ湿り気を帯びた風が温められた部屋を急激に冷やしていく。風を受けた瞬間ぶるりと震えはしたものの凍えるような寒さではない。朝特有の冷たい空気は暖められ火照った体には気持ちが良いものだ、朝の空気を吸い込むと気分が落ち着くのが分かる。
そのままルゼリアはバルコニーに出て辺りを見渡してみる。
そのバルコニーは半円形の形をしていて欄干には見事な彫刻が施され手摺子にも細かな彫刻がされていて植物の蔦が撒き付いている。
ゆっくりと欄干に近づくとクルリと体を反転させて欄干に背中を預けながら建物自全体を見つめる。
白色を基調にしたクリスタルで出来たこの建物は『静寂の花』と呼ばれるアルヴァーニ王国の離宮の一つだった。
三階建ての建物で装飾だけで言えばこのアルヴァーニ王国で一番美しいと言われる程だ。少しの間建物を見ていたルゼリアは再び体を反転させて外の景色を見つめる。
もうすぐ朝日が出るのだが今は辺りは深い霧で覆われている。
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新鮮な空気を吸い込んでいるとコンコンっと背後で音がした、誰かが部屋の扉を叩いているようだ。
ルゼリアは振り返りながらも返事をするように手首を小さく振る。
チリンチンリンっとブレスレットの鈴が音を奏でその直後失礼しますと言う声と共に扉が開き40歳程の年齢の老女が一人入ってきた、侍女頭でありルゼリアの乳母のシュネリアノだ、昔はとても美しかったであろうシュネリアノは見た目の年齢よりも大分年を召しているのだがそれでも凛とした佇まいや柔らかな笑みを浮かべるその表情は実年齢よりも遥かにシュネリアノを若く見せている。
「おはようございますルゼリア様、相変わらず早起きですね」
シュネリアノの言葉に返事を返すように頷きながらルゼリアは足早に部屋の中へと戻って行った。
窓をぱたりと閉めてから手に持っていたクリスタルを引き出しに戻し座り心地の良さそうな長椅子に座る。
それを見てからシュネリアノはルゼリアの顔を見ておやっと首を傾げた。
「姫様……お顔の色が優れない様ですが体調は大丈夫ですか?」
問いかけられてルゼリアは少し夢見が悪かったと手をパタパタ動かして話していく。
「…………また幼い頃の夢を見られたのですか?」
偽る事無く頷くルゼリアをシュネリアノは痛ましそうに見つめる。
「貴方様がお声を失われてから見る夢は貴方様のお心が深く傷ついていると言う事なのでしょう…………一度お医者様に見ていただいた方が良いのではないですか?手配いたしましょうか」
『シュネ、大丈夫だから…………心配を掛けてごめんなさい。そんな顔をしないでください』
手話で話すルゼリアにシュネは心配そうな顔をしてはいたけれど、ルゼリアにねっ?と言われて息を吐き出しながら分かりましたと答えた。
「姫様、無理をなさらないで下さいね、貴方はこのアルヴァーニ王国の時期王位継承者、貴方に何かあれば我々水竜は悲しみます」
分かっていますと頷いてルゼリアはニコリと笑う。
シュネはルゼリアのそんな笑みを見てから、父王からと贈られてきた服を手にルゼリアにどれにしますかっと尋ねていく。一つは幼さを残した小さな体を隠すようにふんだんにフリルが付いた服だ、ルゼリアは動きづらいかもっと首を横に振った。次に最初の服よりも動きやすそうな服だったがやはり気乗りしない。
いくつかの服を見てからルゼリアはシュネにもっとシンプルで動きやすい服はないかと尋ねた。
『部屋でじっとしているならシュネが持って来た服も素敵だと思うのですが今日は移動が多いので…………それに本心を言うともう少し大人びた服を着たいと思うのです。仕立ててくださってる方には感謝しているのです、可愛いとも思うのです…………きっと子竜が着て走り回っていれば愛らしいと思うような素敵な服である事は間違いないです……でも自分で着るとなると…………』
見せられた服はどれも幼さを引き立てる様なデザインのものが多い、
歳相応の服が着たいのですがと言い必死に言い繕っているルゼリアにシュネもそうですわねっと苦笑を漏らす。
「贈られてくる服の大半が動きづらい服であり姫様の容姿に合わせたものですから自然と幼さが表現されてしまいますものね」
自分の体系が幼児体系だと気にしているルゼリアにはシュネの言葉はチクチク刺さる。
こう見えてもルゼリアは竜の年齢で言えば21歳になる、竜の21歳と言えば成熟していて背も高く豊満な体を持つ個体が多い、だがルゼリアは21歳でありながらその見た目はとても幼く、幼子のような体系をしている、恐らく10歳程度だろうか?成長速度がとても遅いのか背も同世代の竜と比べてもあからさまに体は成長していないようだ。
その為父王から贈られて来る服と言うのは子供っぽさを残したものばかりでルゼリアはかなり気にしていた、かといって作り直してくれと言うような我侭を言えない為にルゼリアは今まで気恥ずかしく気にしながらもフリルたっぷりの愛らしい服を着続けたが流石に限界が来ていたようだ。
「では衣裳部屋からシンプルで動きやすい服を見てまいりましょうか、私の好みになりますが構いませんか?」
シュネの言葉にルゼリアは頷いて快諾した、シュネであればこの愛らしすぎる服達よりもルゼリア好みの服を選んでくれる事だろう。
シュネが出て行ってからルゼリアは鏡に映った自分の姿を見つめてみた。
鏡に映るのは大きすぎるディープスカイブルーの瞳と床に付く程長いパステル・ブルーの髪を持つ幼い存在だ。
他の竜と比べて決定的に違う『竜』と『人』の容姿を合わせ持つアルヴァーニ王国の第一王女、『ルゼリア・アルヴァーニ・アクアエリウス』の姿。21歳とは思えぬ幼児体系でぱっとみれば10歳児よりも幼く見える、全く成長しない体、胸はまったいらであり幼児体系特有の丸みでもある。
シュネにすぐに大きくなりますよと言われ続けてすでに長い時間が経過している。
ルゼリア自体、もうこの体が成長する事はないんではないかと半分は諦めている。
成長期を過ぎてしまっているのだからこれから成長する事はありえないだろう。
竜と言うのは身長がとても高い生き物だ。
成熟した竜は人の姿でも雄で2メートルを軽々と超える、雌も2メートル近くまで伸びるのだが今のルゼリアは140センチにも満たない。
毎日毎日こっそりと背を測るものの一ミリも伸びないのだ。
『もう少し成長してくれるとよかったのに…………残念です』
ぺたりと平らな胸を押さえながら溜息を漏らしシュネが戻ってくれば慌てて手を下ろす。
シュネはルゼリアの要望どおりある服の中からシンプルで動きやすく、それでいてフリルの付いていない服を持ってきてくれた。
王女が着るにしては質素ではあるけれどルゼリアは贅沢が苦手だ。それにあのフリフリの服を着ないで済むのなら質素な服の方が着たいとさえ思っている。
そのままシュネに手伝ってもらいながら身支度をしてシュネに長い髪を整えてもらう。
最後に手作りの白いレースで美しく装飾されたヘッドドレスを頭に付ける。
他の部位に関してはシュネに任せるルゼリアだがこのヘッドドレスだけは毎日自分で調えている。
鏡を見ながら何度もヘッドドレスの位置を確認し最終的にはシュネに見てもらった。
『ずれてませんか?上手く角は隠せてるでしょうか?』
毎日同じ事を言うルゼリアにシュネは一度確認し花丸ですよと太鼓判を押す。
竜が人型になった最は三つの独特の特徴を持っている、一つはその瞳だ。
竜達の瞳は竜族特有の針のような縦長の瞳孔をしている、そしてもう一つがその耳だ、ツンと尖っていて聴力に優れている。
最後は角で竜達はそれぞれ必ずと言って良いほど鋭い角を持っていてより大きく鋭い角を持っている竜こそが誇らしいと言われている。
竜の本質的な力は角に宿っていて角が僅かに傷つくだけで魔力を大幅に削られてしまうのだ。
そんな角を勿論の事ながらルゼリアも持っている。
ただ他の竜とは違いセルリアン・ブルーの髪から覗くその角は小さくて丸みを帯びている。
竜にすれば丸みを帯びた角など論外らしく、ルゼリアはそれがコンプレックスになっていてその角を隠す為にヘッドドレスを常に着用しているようだ。
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