竜の騎士と水のルゼリア

月城

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アクアマリンの章

1. Ep-4.近道2

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 内開きの扉の向こうから顔を出すのは二人の騎士だった、ルゼリアと歳が近い雄の竜で確か西方騎士団所属だったはず。騎士達はルゼリアを見てどうされたのですかっと驚いた表情を浮かべている。それに対してルゼリアは扉を指差してから自分の手にあるクリスタルを差し出した。そのまま首を横に振る、アリシアやシュネなど身近に居る竜達はルゼリアの手話を理解している。その為早く手話をしても伝わるのだが今目の前に居るのはそうではない、最初こそ首を傾げていた二人だがルゼリアの言わんとしている事を理解したようだ。

「もしやクリスタルの魔力が切れてらっしゃるのですか?」

 頷くルゼリアに成る程と言いながら二人の騎士はルゼリアに近づき頭を下げた。

「気付くのが遅くなってしまい申し訳ありませんでした」

『いいえ、僕の方こそごめんなさい、クリスタルの魔力が切れた事に気づきませんでした。手間を掛けさせてしまいましたね』

 騎士達が読み取れるようにゆっくりと口を動かす、本来であればこれ程臣下が王族を凝視する事などないのだがルゼリアの場合は別だ。ルゼリアから視線を逸らせれば当然ながらルゼリアの考えがわからない、ルゼリアの言葉を読み取った騎士達は、いえっと恐縮する、それを見ながらルゼリアは通っても良いですかと問いかければ二人は難しい顔をした。

「失礼ながら姫様、シュネ様はご一緒ではないのですか?」

 常にルゼリアの側に控えている侍女頭であるシュネが居ない事を騎士達は不思議がっているようだ。使用人に呼ばれて離れている事を伝えれば騎士の二人はそうですかと答えた。

「こちらの通路は余り使われていないと思うのですが何故こちらに?」

 一人の為に薬草園に近道をしようとした事を伝えれば二人はルゼリアにお供しますと告げる。

「此処から先にもいくつかの扉がありますのでお供させていただきます」

 迷惑ではないですかと尋ねるルゼリアに騎士二人はいいえと首を横に振った。

「姫をお一人にさせる事など騎士としてあってはならない事です」

 離宮にいる間は大袈裟なその言葉でも騎士達にとってすれば重要な事なのだろう。騎士の言葉にお願いしますと頭を下げるルゼリアに二人は恐縮しながらもルゼリアを守るように先導していく。次の扉を開いた時、その扉を守る騎士が驚いた顔をしていたがルゼリアがいる事に気づいて慌てた様子で礼を取る。ルゼリアが扉が開けれない事を告げながら騎士達は他の騎士達にも伝えるように頼みルゼリアを導いていく。

『…………騎士達に迷惑を掛けてしまいました』

 近道しなければよかったと思いながらもルゼリアは歩いていく。いくつかの扉が開かれれば薬草園へと続く森に続く道へと辿り着いた。最短で近道をする予定だったが足止めを食った為に本来通る道よりも時間が掛かってしまったようだ。

「姫様!!」

 別の方向からシュネが慌てた様子で駆けてくるのが見えた。その後ろには数人の騎士も一緒のようだ、彼等はこの離宮を守る騎士でもある。駆け寄ってきたシュネはルゼリアに怪我はありませんかっと尋ねている。ただの移動でそこまでっと思うもののルゼリアが正規のルートを通らなかった為に騒ぎになってしまったようだ。

「いつも通る道を通らないので皆心配したのですよ」

『ごめんなさい、近道をしようとしたのです、でもクリスタルの魔力が切れてしまったようで扉が開けれなくて…………』

「ああ、申し訳ありません、それは私の失態です。クリスタルの魔力が切れている事に気付きませんでした」

 シュネが慌てて頭を下げるた、侍女としてルゼリアの身の回りの事を完璧にしているシュネの珍しい失敗だ。

『いいえ、この魔道具は僕しか使わないのでシュネが気付かなく当然です。僕が気付くのが遅かったんです、シュネが謝る事ではありません、騎士達にも迷惑をかけてしまいました、皆すみません』

 そう言って頭を下げるルゼリアにシュネは頭をお挙げくださいっと慌てている。

「姫が頭を下げるなんてもってのほかです、威厳と言うものをお持ちください」

『でも、これは僕の失態でそれに巻き込まれた騎士達に迷惑を掛けた事は事実です、シュネは幼い頃に僕に言いましたでしょ?素直に謝る事が出来なくなったら終わりですよと』

 だからこそ迷惑を掛けてしまったのだから謝るのは当然の事ですとルゼリアは告げた。そのままシュネに薬草園に行きましょうと促せば渋々頷いてくれる。騎士達にも礼を言いルゼリアはシュネと歩き出そうとするが4人の騎士が共をすると名乗りでる。

『ですが、お忙しいでしょう?』

「これは我々の仕事です」

 薬草園にも別の騎士が居る筈だがそこまで連れて行くと言う事でそれ以上言わずに頷く事にした、今でこそ騎士達には迷惑を掛けているのでこれ以上は迷惑を掛けたくないのだ。

 歩き出せば付き従うように歩いていたシュネが姫様っと小さく声を掛けた。ルゼリアがなんでしょうと首を傾げればシュネが静かにルゼリアに説教を始めた。

「姫様はこのアルヴァーニ王国の王位継承者、それは忘れてはおりませんね?」

『もちろん忘れてはいません』

「御身に何かあれば国が揺らぐ事も分かっておいでですね?」

『…………もちろんです』

 頷くルゼリアにならばっとシュネは少しきつい口調でルゼリアを叱る。

「貴方の行動は慎重にならざるを得ないと言う事もわかりますね?貴方の身に何かあれば国が揺らぎお父上はこの国を滅ぼしてしまいますよ、離宮が多くの者に守られているとは言え安全とはいえない事をご理解ください、そして一人で移動するなとは申しませんがもう少し考えて行動なさってくださいますようお願い申し上げます」

 シュネに叱られたルゼリアはごめんなさいと素直に謝った、ルゼリアは近道したい気持ちと、ほんの僅かに気分転換がしたくて本来通るべき道を外れた。それによってシュネや騎士達を心配させ、何人かの騎士達には余計な仕事さえ押し付けているのだ。反省した様子のルゼリアにシュネは分かってくだされば良いのですと言って説教は終わる。今度からは気をつけねばなりません、そう考えながらルゼリアは騎士達に守られながら森の中の薬草園を目指す。
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