あの約束を、もう一度

夕凪

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第四章

思い描く理想

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「お前の親父さんマジでかっこよすぎだろ」



ハンバーグを口に含んだまま喋る雄大。



「そんなことないって」



付け合わせのマッシュポテトを箸で少し取りながら答える。



「卵焼き食っていいか?」



「雄大のために作ったんだから全部食べていいよ。───でもちょっと冷めちゃったな」



「そんなの気にしねえよ!・・・うっめえ!!!」



1つ2つ3つと一気に食べる。



「そんな焦って食べなくてもなくならないんだからもっとゆっくり食えよ」



俺は笑いながらスープを飲む。



「宿泊訓練の時は1つしか食えなかったんだよな。ここにある卵焼きは全部俺のもんだ!」



「1つだけ!?」



具体的にどれだけ作ったかは覚えてないが、いつもの手順通りに作ったとすればそれなりの量になるはずだ。



「智也と諒太がほとんど食っちまったんだよ。潤なんか1つも食ってないんじゃねえかな」



そう言ってさらに1つ口に運ぶ。



「・・・ったく、あいつらほんとに」



───ハンバーグの付け合わせはマッシュポテト、ブロッコリー、にんじんのグラッセ。



雄大は迷うことなくにんじんのグラッセを箸で取り、なんとなしに食べた。



「へー、えらいじゃん」



感心したように雄大に向き直る。



「お前のおかげで好きになったんだよ。にんじんってうまいな!」



「将来お前が結婚して子どもができた時に食べれないと情けないしな」



少しからかうように言ってみる。



「もし結婚するなら───、お前みたいに料理が上手い女がいいな」



雄大は皿の上で箸を遊ばせながらぼそっと呟く。



「なにそれ。そんな女探さなくてもいくらでも───」



「いや真面目に!」



身を乗り出して言葉を被せる。



「”人の手料理ってこんなにあたたかくてうまいんだ”って、お前の手料理食ってからそう思うようになったんだ。───もちろんお袋の手料理もうまいよ?でも、血が繋がってない誰かのためにこんなにうまいもん作れるのってほんとにすごいと思うんだ。俺は・・・、そんな人と結婚したい」



いつになく真面目に、真っ直ぐな瞳で俺を見つめる雄大。



「・・・ふふっ」



今まで真面目な雄大を見たことがなかった俺は笑ってしまう。



「なっ、なに笑ってんだよ」



雄大も正気に戻ったのか、恥ずかしそうに小突いてくる。



「ごめんごめん。お前のそんな顔今まで見たことなかったからさ。───でも」



「?」



「そんな風に言ってくれて嬉しいよ。俺さ、学校から帰ってきて1人で夕飯の用意して1人で食うってことが多いんだ。誰かと一緒に食卓囲んで、こうやって賑やかに食事するってことがほんとに楽しくて、ありがたいことなんだなって、そう思ってんだよ?」



「龍・・・」



「またいつでも夕飯食べに来なよ。前もって言ってくれれば好きなもの作るからさ!」



「ほんとに来てもいいのか?」



「当たり前じゃん。なに遠慮してんの」



「・・・龍ッ!」



いきなりガバッと俺を抱き締める雄大。



「───龍・・・、なんでお前女じゃないんだよ」



ぼそっと耳元で呟く。



どういう意味なのかわからない。



感情を含んでないような、無機質な声。



「さあ、なんでだろうね」



俺を包む腕の力が強くなったのがわかる。



「───ほら、早く食べないとハンバーグ固くなるよ」



ポンポンと雄大の背中を叩く。



「おわっ、せっかくのご馳走が!」



いつものように明るい口調でそう言った雄大は俺を解放した。



「ご飯まだあるから」



「おかわり!!!」



俺の前にぐっと茶碗を差し出す。



「はいはい」



───ほんとに作った人間を喜ばせる食べ方するな。



心の中で呑気にそんなことを思いながら茶碗を受け取った。


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