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第五章
おかしいのは俺かお前か[智也編]
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ユニフォーム、野球ボール、バット、冷却スプレー、ダンベル。
誰のものかもわからない様々なものが無造作に置かれている男臭い部室。
他の部員たちは20分くらい前に帰った。
いつもなら今の時間だとまだここで部員達と中身のない下世話な話をしているだろう。
今日は監督が出張だとかで練習は少し早めに切り上げられた。
物音一つしない部室の中で、俺は上半身裸になって筋トレに励む。
イライラしているときや気持ちが晴れないときの対処法。
それをしたところで問題は解決するわけはもちろんないのだが、何もしないよりかは気が紛れる。
15㎏のダンベルを上げ下げしながら腹式呼吸を意識する。
汗が胸筋から腹筋に流れ落ちるのを感じる。
───少しでも気を抜くと思い浮かんでしまう龍の顔。
いつもそうだが、今日の昼休みに”あのこと”を聞かされてから余計にだ。
昨日、雄大は龍の家に泊まったらしい。
・・・なんでわざわざ泊まる必要がある?
龍も龍だ。
昨日の夜メッセージ送ったときもそんなこと一言も言ってなかった。
何事もなく家にひとりで帰りました、みたいな返事よこしてきやがって。
雄大が龍を抱いている姿が脳裏に浮かぶ。
現に2人のセックスを見せつけられているから余計に生々しく、よりリアルなものとして想像できてしまう。
───マジでイライラする。
雄大にも龍にも。
・・・俺自身にも。
ダンベルを持つ腕に力を込めて、上下運動の速度を上げる。
その時、ドアがノックされた。
誰だ?
見回りに来たのかと思って時計を見たがまだ20時半。
用務員ではなさそうだ。
俺はそのままの格好で汗をぬぐいながらドアに近付き、ゆっくりと開く。
「よかった。物音が全然しなかったから誰もいないかと思った」
目の前には想像もしてなかった人物。
「───龍?」
一瞬幻覚でも見ているかのような不思議な気分になる。
「どんな格好してんの。もし俺じゃなかったらどうすんだよ」
俺の気持ちも知らないで穏やかに笑う。
「まあとりあえず入れよ」
招き入れようとする俺を制止する龍。
「他の野球部いるんだろ?すぐ終わるからここで───」
「もう俺しかいねえよ」
「え、そうなの?」
「ああ」
不思議そうに言う龍の手を引き部室に入れる。
「へー、野球部の部室ってこんな感じなんだね」
龍は長椅子に座りながら辺りを見回した。
「これ栗林から」
鞄の中から取り出した茶封筒を受け取る。
「これのためにわざわざ来たのか?」
「うん、そだよ」
「そ、そうか。ありがとう」
笑ったつもりだったが上手く笑えているかわからない。
「てかいつもひとりで残ってんの?」
「今日はたまたまだ」
「ふーん。一緒に帰る?」
「ああ」
空返事をして龍に背を向けて水を飲む。
「───なあ」
「?」
「雄大昨日お前んちに泊まったんだな」
努めて普通に聞く。
「うん、泊まったよ」
動揺する様子もなく、あまりにも普通な返事にいらつきは増していく。
「なんで?」
「昨日帰りが遅くなっちゃってさ、終電間に合わなくて土砂降りの中走って帰るとか言い出したから泊めたんだ。風邪ひかれても困るからさ」
「・・・で?」
───ああ駄目だ。
ほんとにイライラする。
「な、なに怒ってんの?」
わけがわからない様子の龍。
当たり前だ。
いつも通りの優しさで、気を利かせただけの龍が責められる謂れはない。
誰にでも平等に優しくする龍。
俺はその中の一人なだけか?
「ヤッたかどうか聞いてんだよ」
長椅子に座っている龍にゆっくりと距離を詰めていく。
「あのさあ、なんでそうなるんだよ?」
あからさまな怪訝な顔。
「質問に答えろ」
俺を見上げるその顔はただただ綺麗で。
「雄大だよ?お前の親友の。───智也ちょっとおかしいって」
おかしい?
そんなことは自分でも十分わかってる。
お前の言葉、行動で一喜一憂して、ああでもないこうでもないっていっつも考えて考えて考えて。
雄大にまで妬くなんてほんとどうかしてる。
こんなことになったのは全部───。
「・・・お前のせいなんだぞ」
言葉を聞き取れなかったらしい龍が、俯いている俺の顔を覗き込む。
「え?なんて?」
「・・・ッ!」
「あっ───!」
気が付けば俺は無防備な龍に襲い掛かっていた。
誰のものかもわからない様々なものが無造作に置かれている男臭い部室。
他の部員たちは20分くらい前に帰った。
いつもなら今の時間だとまだここで部員達と中身のない下世話な話をしているだろう。
今日は監督が出張だとかで練習は少し早めに切り上げられた。
物音一つしない部室の中で、俺は上半身裸になって筋トレに励む。
イライラしているときや気持ちが晴れないときの対処法。
それをしたところで問題は解決するわけはもちろんないのだが、何もしないよりかは気が紛れる。
15㎏のダンベルを上げ下げしながら腹式呼吸を意識する。
汗が胸筋から腹筋に流れ落ちるのを感じる。
───少しでも気を抜くと思い浮かんでしまう龍の顔。
いつもそうだが、今日の昼休みに”あのこと”を聞かされてから余計にだ。
昨日、雄大は龍の家に泊まったらしい。
・・・なんでわざわざ泊まる必要がある?
龍も龍だ。
昨日の夜メッセージ送ったときもそんなこと一言も言ってなかった。
何事もなく家にひとりで帰りました、みたいな返事よこしてきやがって。
雄大が龍を抱いている姿が脳裏に浮かぶ。
現に2人のセックスを見せつけられているから余計に生々しく、よりリアルなものとして想像できてしまう。
───マジでイライラする。
雄大にも龍にも。
・・・俺自身にも。
ダンベルを持つ腕に力を込めて、上下運動の速度を上げる。
その時、ドアがノックされた。
誰だ?
見回りに来たのかと思って時計を見たがまだ20時半。
用務員ではなさそうだ。
俺はそのままの格好で汗をぬぐいながらドアに近付き、ゆっくりと開く。
「よかった。物音が全然しなかったから誰もいないかと思った」
目の前には想像もしてなかった人物。
「───龍?」
一瞬幻覚でも見ているかのような不思議な気分になる。
「どんな格好してんの。もし俺じゃなかったらどうすんだよ」
俺の気持ちも知らないで穏やかに笑う。
「まあとりあえず入れよ」
招き入れようとする俺を制止する龍。
「他の野球部いるんだろ?すぐ終わるからここで───」
「もう俺しかいねえよ」
「え、そうなの?」
「ああ」
不思議そうに言う龍の手を引き部室に入れる。
「へー、野球部の部室ってこんな感じなんだね」
龍は長椅子に座りながら辺りを見回した。
「これ栗林から」
鞄の中から取り出した茶封筒を受け取る。
「これのためにわざわざ来たのか?」
「うん、そだよ」
「そ、そうか。ありがとう」
笑ったつもりだったが上手く笑えているかわからない。
「てかいつもひとりで残ってんの?」
「今日はたまたまだ」
「ふーん。一緒に帰る?」
「ああ」
空返事をして龍に背を向けて水を飲む。
「───なあ」
「?」
「雄大昨日お前んちに泊まったんだな」
努めて普通に聞く。
「うん、泊まったよ」
動揺する様子もなく、あまりにも普通な返事にいらつきは増していく。
「なんで?」
「昨日帰りが遅くなっちゃってさ、終電間に合わなくて土砂降りの中走って帰るとか言い出したから泊めたんだ。風邪ひかれても困るからさ」
「・・・で?」
───ああ駄目だ。
ほんとにイライラする。
「な、なに怒ってんの?」
わけがわからない様子の龍。
当たり前だ。
いつも通りの優しさで、気を利かせただけの龍が責められる謂れはない。
誰にでも平等に優しくする龍。
俺はその中の一人なだけか?
「ヤッたかどうか聞いてんだよ」
長椅子に座っている龍にゆっくりと距離を詰めていく。
「あのさあ、なんでそうなるんだよ?」
あからさまな怪訝な顔。
「質問に答えろ」
俺を見上げるその顔はただただ綺麗で。
「雄大だよ?お前の親友の。───智也ちょっとおかしいって」
おかしい?
そんなことは自分でも十分わかってる。
お前の言葉、行動で一喜一憂して、ああでもないこうでもないっていっつも考えて考えて考えて。
雄大にまで妬くなんてほんとどうかしてる。
こんなことになったのは全部───。
「・・・お前のせいなんだぞ」
言葉を聞き取れなかったらしい龍が、俯いている俺の顔を覗き込む。
「え?なんて?」
「・・・ッ!」
「あっ───!」
気が付けば俺は無防備な龍に襲い掛かっていた。
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