あの約束を、もう一度

夕凪

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第一章

返事は「はい」だ!

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もう一度ベンチで寝ていた男子生徒に場所を教えてもらい、何とか職員室まで辿り着くことができた。



名前、聞けば良かったな。



後でお礼したかったんだけど。



かなり大人っぽかったし、多分上級生だろう。



俺は高校2年生だからもしそうだとしても1歳しか変わらないだろうが。



まあ同じ学校だし、どこかで会うことはあるだろうからその時に改めてお礼を言おう。



・・・さて。



咳ばらいをひとつ。



「失礼します」



先生達の視線が俺に集まる。



この状況、早く逃げたい。



入口から一番近いデスクに座って書類整理をしている若い教師に声をかける。



「今日からここに通うことになった久保田ですが、栗林先生はいらっしゃいますか?」



「はい。こちらですよ」



案内してくれるようだ。



「どうも」



軽く礼を言う。



入口から少し離れたデスクに座ってパソコンを睨んでいる眼鏡をかけた30手前くらいの教師の元へ案内された。



「栗林先生、久保田くんです」



「やっと来ましたか。高橋先生、ありがとうございました」



いえ、と小さくお辞儀をして、高橋と呼ばれたその女教師は自分のデスクに戻っていった。



「お前が久保田か」



「よろしくどうぞ」



「遅いじゃないか」



このクソ学校が広すぎんだよと思わず口から出そうになったが、ぐっと堪える。



「すいません」



そう言うと栗林は間髪入れず、



「まあいい。俺は担任の栗林誠也だ」



ゴツゴツした豆だらけの手を差し出してきた。



俺も手を差し出し、握手する。



ふと栗林と目が合う。



かなり日に焼けており、ガッシリしている。



眼鏡の奥の眼光は鋭く、冷たい印象を与えた。



「久保田龍之介です。先生、部活の顧問やってんの?」



「ソフトボール部の顧問だ」



「あーね」



「ところでお前、年に何回か実施される頭髪服装検査時はピアスとネックレスは外して髪も黒染めしとけよ。シャツのボタンも上までちゃんと留めて、ネクタイをしてから検査を受けるように」



「へいへーい」



「返事は『はい』だ!」



「はいはい」



「『はい』は一度!」



「はーい」



「チャラチャラしやがって・・・」



多分栗林も同じことを思っているだろうが・・・。



俺、この先生苦手かも。



「・・・お前、今俺のことウザいと思っただろ?」



「ううん、ウザいとは思ってないよ。苦手だなと思っただけ」



「安心しろ。俺も同じだ」



「・・・」



「さあ、そろそろ朝のホームルームの時間だ」



そう言うと栗林は、バインダー的な何かを持って椅子から立ち上がった。



「ついてこい」



黙って栗林の後についていく。



「なあ先生」



「なんだ」



「俺がこれから入るクラスってどんな感じ?」



「さっきまでの威勢の良さはどうした」



「うるさい」



「2年5組はいいやつばっかりだぞ」



「ふーん」



全然答えになってない。



「着いたぞ。お前は俺が合図したら入って来てくれ」



そう言うと、俺の返事も待たずに教室に入ってしまった。



「先生今日も機嫌悪そうだねー」
「彼女とケンカでもしたのー?」
「先生ドSだからいけないんだよ(笑)」



一気に賑やかになる教室。



「おらっ、静かにしろ!!!!」



生徒の質問など聞こえなかったとでも言うように栗林が場を収める。



沈黙が広がる。


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