あの約束を、もう一度

夕凪

文字の大きさ
8 / 104
第一章

夕焼け空の下で

しおりを挟む
「帰りのホームルームはここまで。気を付けて帰るように」



栗林が言葉が終わるとほぼ同時にクラスメイトが一斉に椅子から立ち上がる。



「やっと終わった!」
「また明日なー」
「今からカラオケ行こ!」
「あー、部活だるいわー」



各々に喋りだすクラスメイト。



長い一日がやっと終わった・・・。



「加藤くん、野球頑張ってね」



声のした方に目をやると、小柄な可愛らしい男子生徒がさっきの球児に労いの声をかけていた。



「おう、ありがとう」



あいつ、加藤っていう名前なのか。



そんなことを考えながらぼーっと見つめていると、ふと目が合った。



今度は俺から声をかけに行こうと席を立とうとする。



しかし加藤は話しかけるなと言わんばかりに目を反らし、そそくさと教室から出て行ってしまった。



なんか俺、完全に嫌われたような気がする。



「なあ久保田、この後なんか用事ある?」



諒太の声がする。



「特に何もないけど」



「じゃあちょっと付き合えよ。飯でも行こうぜ」



加藤とのことは俺だけで考えても仕方ないか。



何より俺には心当たりが全くないのだ。



今は考えるだけ無駄だろう。



少しずつ距離を縮めていけばいい。



「うん、なんかうまいもん食いに行こ!」



俺は諒太の誘いを快諾した。



2人で教室を出て、シューズロッカーへと向かう。



階段を降りようとしたその時。



「きゃー!!!三宅せんぱーい!!!」
「やばい!ほんとにかっこいいッッ!」



語尾にハートマークが間違いなく付いているであろう黄色い悲鳴。



諒太はすぐに大勢の女子生徒に囲まれてしまった。



学年を問わず諒太人気は相当高いようだ。



もみくちゃにされながらも爽やかな笑顔を振りまき、優しく対応する諒太。



しばらく諒太は女子たちに離してもらえそうにない。



・・・今日は疲れたしもう帰ろう。



諒太には後で連絡入れておけばいいだろう。



相変わらず女子に囲まれている諒太にバレないようにコソコソと階段を下りた。



ロッカーにサンダルを入れ、靴に履き替え校舎を出る。



空を見上げると、オレンジ、赤、淡い紫。



いろんな色が美しいコントラストを描いていた。



綺麗な夕焼けだ。



いろいろあったけど、今日は楽しかったな。



ふとグラウンドの方に目をやると、運動部が元気に声を出して汗を流していた。



見て分かる限りだとサッカー部、ラグビー部、野球部あたりの部員だろうか。



まだ時間あるし、ちょっとだけ見てみようかな。



俺がグラウンドの端の方につくや否や、サッカー部とラグビー部は走り込みに行ってしまい、残っているのは野球部だけになってしまった。



・・・まぁ別にどれが見たいっていうのはなかったし、せっかく来たから野球部の練習だけでも見てみよう。



周りを見渡す。



部活動が盛んな高校であるため、来客数も多いのだろう。



安っぽいベンチがたくさん設置されてた。



幸い今日は俺だけのようだ。



適当にベンチに座り、声を出して練習をする野球部たちを眺める。



・・・あ、あれ加藤かな?



三塁側でひと際大きな声を出し、土で汚れたボールを追っている。



ユニフォームが泥だらけになりながらも、がむしゃらにボールに食らいついていく姿は純粋にかっこよかった。



加藤は近寄りがたい雰囲気を醸し出してはいるものの、精悍な顔立ちをしているため普通にモテると思う。



スポーツをしている男は尚のことかっこよく見えるものだ。



──────頬に当たる風が心地いい。



その日、結局俺は1時間くらいずっとベンチに座って練習を眺めていたのだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...