あの約束を、もう一度

夕凪

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第二章

”久保田”から”龍”へ[智也編]

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食堂に入ると、各グループの調理係がそれぞれに与えられた調理台で夕飯の用意をしていた。



どうやら初日の夕飯はカレーのようだ。



3人で久保田と雄大を探す。



ぐるりと見渡してみると───いた!



入口のドアから一番離れた調理台で包丁を持つ久保田を見つけた。



「いたぞ。あそこだ」



2人に声をかけ、その調理台の方へ向かう。



久保田と雄大は支給されたらしい白いエプロンを身に纏っていた。



「あれ?お前らどうしたんだ?」



久保田の横で皿の用意をしていた雄大が不思議な顔をして言う。



「何か手伝えることがあるかなと思って。龍ちゃんはエプロン似合ってるけど・・・」



「お前のエプロン姿はなんかコントやり出しそうな感じだな」



潤と三宅が茶化す。



「うるせーんだよ!!!」



そう言いながら皿を勢いよく置く。



久保田は包丁を使い器用に野菜を切っている。



にんじんとじゃがいもを乱切りに、玉ねぎをみじん切りにリズムよく切り、温めた鍋に玉ねぎを入れる。



そのままの流れで牛肉をまな板の上に置き、フォークで突き刺している。



「なんでそんなことしてんだ?」



三宅が聞く。



「こうしたら煮込んだ時に柔らかくなって、味も染み込みやすいんだよ」



一口大に肉を切りながら久保田が言う。



俺も含め全員がなるほどと感心したように頷く。



「龍、俺サラダ用の野菜切ろうか?」



雄大が言う。



大丈夫なんだろうか。



料理をするなんて雄大から聞いたことないが・・・。



「指だけは切らないように気を付けなよ」



心配そうに言いながら玉ねぎと切った肉を炒める久保田。



「任せとけ!」



得意気にそう言って鮮やかな色の野菜をおっかなびっくり切る雄大。



危なっかしいことこの上ない。



「見てるこっちがひやひやするぜ」



「ね、ねぇ。ほんとに大丈夫?」



そう言いながら三宅と潤が心配そうに見ている。



「・・・雄大。もういいから包丁触んないで」



「お、おう」



久保田も見てられなかったのだろう。



雄大から包丁を取り上げると、ものの数秒で野菜が綺麗に切れた。



見事としか言いようがない。



俺は器用に淡々と調理をこなす久保田に見とれていた。



「なにニヤニヤしてんの?」



俺の視線に気付いた久保田が包丁を握る手を緩め、俺を見る。



久保田に言われて気付いたが、知らないうちににやけてしまっていたようだ。



「ニヤニヤなんかしてねぇよ!」



「どうせ俺のエプロン姿が面白くて笑ってんだろ」



「そ、そんなことない!よく・・・似合ってる」



思わず本心が出てしまった。



久保田は一瞬驚いた顔になり、



「智也のカレーには肉いっぱい入れといてあげる」



そう笑って言って、またサラダ用の野菜を切り始めた。



「雄大、この野菜を人数分皿に分けて入れて」



そう言った久保田は鍋の前に立ち、カレーを作りを再開した。



30分後、ほとんど出来上がったようだ。



スパイシーないい匂いに腹の虫が鳴る。



「誰か味見してくれる人いる?」



久保田が鍋から顔を上げ、俺達を見る。



「俺だ!」
「いや俺だ!」
「俺も一応調理係だから俺だろ!」
「じゃあ間を取って僕が!」



全員が我こそがと口にする。



「じゃあじゃんけんして決めて」



笑いながら言う久保田をよそに俺達4人は真剣にじゃんけんをする。



・・・三宅に軍配が上がった。



小皿ににんじんとルウが少しだけ盛られる。



「悪いなお前ら」



そう言いながら小皿の中のものをぺろりと平らげる三宅。



「・・・どう?」



心配したように久保田が三宅を見つめる。



「・・・いや、真面目にうまい。にんじんもよく火が通ってる」



「良かった」



そう言った久保田は、雄大が用意した皿を手に持って炊き立てのご飯を左側に盛り、右側にルウをたっぷり注ぐ。



一人前ずつ丁寧に盛り付けをする久保田。



久保田からカレーを受け取ったやつは調理台のすぐ近くにあるテーブルに腰かけた。



一番最後に俺の番が来た。



「はい、智也。お待たせ」



さっき約束してくれた通り、肉をたくさん入れてくれていた。



「・・・龍。ありがとう」



俺は思い切って下の名前で呼んでみる。



「どういたしまして。”久保田”じゃないんだ?」



いたずらに笑う久保田。



「な、なんだよ。なんか文句あるのか?」



自分で顔が赤くなるのが分かる。



「文句なんかあるわけないだろ。ただ嬉しいなって思ったってだけの話」



久保田は無意識に思わせぶりな言葉を俺にくれる。



でもその言葉が、嬉しかった。



「加藤くーん、龍ちゃーん。早く食べようよー!」



潤が我慢できないとでも言うように座ったテーブルから声をかけてくる。



「さ、早くみんなのところに行って食べよ。冷めちゃうよ」



そう言って龍は、俺の肩をポンと叩いた。


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