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第18章
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十八
塾を立ち上げて、半年が過ぎた。
塾の運営は問題なく進んでいる。塾生たちは真面目に生活し、勉強している。村の住民からも感謝されていた。塾生たちは彼らの助けになり、また張り合いでもあるようだった。
意外だったのは、主に首都から、この村へ訪ねてくる商人がいることだ。
塾生に数人、商人の息子がいるのだけど、基本的に僕の塾は面会は年に数回しか許されない。
だから、商人は子供の顔を見に来るわけではなく、商売をしにやってくるのだ。
最初、僕はルールを破っていると判断し、面会する時もやや苛立っていたのだが、それは見当違いだったのである。
商人たちは僕の塾に様々なものを売ろうとしてここまで来て、さらにこの村を発展させる手伝いをしたい、と申し出た。自分の息子に会いたいとは一言も言わなかったし、そんな気配は微塵も出さなかった。
遠くまで買い出しに行かなくてはいけないものを、僕はこの商人から仕入れることにした。
そうすると、また別の商人がやってきた。僕たちを相手に商売をしたいのではなく、彼らは挨拶だけして村人の家へ訪ねて行った。とにかく人里離れた村なので、今度は村人達が喜んで、彼らを迎えた。
こうして村は少しだけ豊かになってきた。
そんなところ、シグナルが訪ねてきた。
「どういうつもりですか?」
母屋の応接室で席に着くなり、彼は切り出した。
「あなたが首都でどう思われているか、お分かりですか?」
「いや、わからないな」
「剣聖は私兵を養成している」
なるほど。
「それは見当違いだよ。僕が育成している人材は、いずれ連合王国に必要になると確信している。それに、僕に私兵が必要だと思うかい?」
「ご冗談を。あなたの塾生が一個の部隊となった時、連合王国軍と行動を共にできるとは、とても思えません」
「言うことを聞かない兵隊は、邪魔ということか?」
シグナルは黙る。それに対して、僕は自分で淹れたお茶を飲んだ。
「何も気にすることはない。悪い方向へは進ませない」
断言したが、シグナルは、受け入れ難いようだった。
「私もそう信じたい。ですが、全員が信じるわけもないのです。この村に、商人が出入りしているでしょう? それが良くない噂を生んでいます」
「どういう噂かな」
「剣聖は商人と取引し、関係を持つことで、いずれ兵を挙げるための下準備をしている」
やれやれ、そんなことは現実離れした、まさに噂だ。
「本気にしているのか? シグナルは」
「ラグーン様はお忘れですか? アルス派を追放した時には、情報が重要でした。私は様々な情報で、相手に揺さぶりをかけました。今、全く逆のことが起こりつつあります」
「こんな老人一人、放っておけばいい。すでに隠棲の身だしね」
「私は違います」
そう言われて、やっと気づいた。
「そうか、シグナルにも影響があるわけだ」
「私はあなたに見出されたのです。剣聖の部下という地位を積極的に利用したことはありませんが、しかし、世間はもう、ラグーン様と私を別個には捉えません」
今度は僕が黙る番だった。
やはり、剣聖の位を返上するべきかもしれない。
いや、しかし首都の連中は、僕の塾を警戒している。その点を解消するのに、剣聖位の返上で足りるわけもない。塾の解散を願っているのだ。
それでもやるべきことはやっておくべきか。
「剣聖の称号は、返上する」
僕がそういうと、シグナルは頭を手を当て、顔を歪める。
「あなたに」シグナルがこちらを歪んだ顔で見た。「剣聖の地位を勧めた時、私はそれが正しいと思った。人類軍を安定させ、また連合王国軍の足並みを揃える支えになると思った。それは、正しかったはずだ」
「わからないものだね。僕にも、よく分からないよ」
シグナルは頭に当てていた手を下げると、身をかがめ、じっと動きを止めた。
それからゆっくりとカップを手に取ると、中身を少しだけ飲み、こちらを見た。
「後悔しておられますか?」
「何を?」
剣聖の位のことだとわかったが、僕は誤魔化した。
僕は後悔していない、でも、シグナルは後悔しているようだった。
僕の顔をじっと見ながら、シグナルは黙っていたが、やがて小さく頷いた。
「では、剣聖の称号を返上する旨、一筆いただけますか? あるいは、首都へ来ていただく必要があると思います」
それから僕たちは剣聖の称号について、意見を交わした。剣聖には任期を決めるべきか、何かしらの条件で退位とするべきか、など、今後において剣聖の称号が混乱の原因にならないように、仕組みを変えるべきだと二人とも考えていた。
「剣聖の権威は、ラグーン様一人では、やはり弱められませんでしたね」
シグナルは去り際に、そう言った。
「歴史というものは、覆せないようだね」
「ところで、最近、お体は?」
「いや、大丈夫だよ、安定している。心配しないでいい」
挨拶の後、シグナルは、「首都の軍本部宛に、剣聖返上の書状を送ってください。あとはお任せを」と告げて去って行った。
僕はすぐに剣聖の称号を返上する旨を記した書状を書いた。
ふと思いついて、二通目を書いた。それぞれに速達で送るため、村の役場へ持って行った。首都に届くのに一週間ほどだろう。
僕は家に戻るとちょうど午後だった。道場に机を並べ、塾生相手に、いつも通りに講義をした。みんな真面目な顔で講義を聞いている。
講義の最後、塾生たちには討論をする時間を作っている。
今日のテーマを僕は、剣聖の称号、とした。塾生たちも驚いたようだが、それでも最初はポツポツと意見が出て、それから徐々に盛り上がり始めた。
それを聞きながら、僕は、剣聖というものの価値を再認識しながら、同時に、子供達には剣聖というのは、まるで天上人なのだ、と思っていた。いるはずだが、人ではないような。
塾生の一人が、静かな声で発言したのが、まるで静寂の中から聞こえるように、耳に届いた。
「剣聖だって、兵士の一人じゃないの?」
僕は思わず、まじまじとその塾生を見た。塾生もこちらを見てくる。
「うん」
僕はその塾生の前に行き、視線の高さを合わせるために膝を折った。
「純粋な意見で、良いと思う。もうちょっと考えを聞かせてくれ」
突然に僕が問いかけたので、混乱したらしく、塾生はまごまごと続けて喋ったが、軸がぶれた内容だった。
でも僕は満足だった。新しい発想の萌芽の存在を見ることができた。
シグナルが訪ねてきた日から、五日ほどが過ぎた。
夜、僕はなかなか眠れずに、ベッドの中で考え事をしていた。首都からの返信の内容を想像し、やはり首都へ出向く必要があるだろうな、と考えていた。
何か、かすかな音がした。
そっと手を伸ばして、剣を手に取る。感覚を研ぎ澄まして、何が起こるのかを、知ろうとする。誰かの気配が、廊下を進んでくる。床が軋むわけでもなく、気配もかすかだが、張り詰めた意識のようなものが、伝わってくる。
僕はベッドを降り、剣を手に、身をかがめた。不意を打つ必要がある。
寝室のドアが、ゆっくりと開いていく。
僕はためらわなかった。剣を抜いて床を強く蹴り、ドアごと、相手を突き通す。
しかし相手は予測していたようだ。一瞬の間の後、逆にドアを相手の剣が貫通し、僕の腹部を掠める。
後退し、仕切り直し。
相手が部屋に入ってきた。顔に仮面をつけていた。今、僕は仮面をつけていない。
まるで自分が襲いかかってきたような錯覚。
相手の黒装束は、動きを探りづらい。
僕は一歩後退し、相手は構わずに一歩前進。
僕は剣で背後を切り払った。
切っ先が、カーテンを切り落とした。
月光が寝室に差し込んだ。
相手はこの瞬間、僕の剣が逸れているのを咎めて、切り掛かってくる。だが、それはこちらも織り込み済み。
二つの剣先が複雑な軌跡を描いた。風を切る音と、湿った音。
何かが床に落ちた。
暗殺者が一歩、後退する。
僕は不思議な気分だった。暗殺者の剣の腕の冴えが、想像よりも鈍い。代わりに、まるでこちらのことを研究し尽くしたような、そんな剣筋だった。
どこかで見たことのある剣技。
暗殺者が、剣を取り落とす。薄暗い中で見えたその剣も見覚えがあった。
やっと、相手のことがわかった。
「スカルス、なのか?」
暗殺者が重い音とともに倒れこんだ。その体の下に、血の海が広がっていく。
僕は屈みこんで、暗殺者の仮面を外した。
やはり、スカルスだった。もうずっと会っていない。噂では首都で働いているはずだ。顔は最後に会った時より、少し痩せて見えた。
スカルスはまだ意識があった。僕を見ているが、何も言おうとしない。
「すまなかった」
僕の口が、無意識に言葉を発した。
「申し訳ない」
スカルスは小さく首を振ろうとして、息絶えた。目は薄く開いている。まるで微笑んでいるようだった。僕はその目を完全に閉じさせ、立ち上がった。
連合王国軍は、僕を排除するつもりらしい。
自体は逼迫している。
僕はスカルスの遺体にベッドから剥がしたシーツを被せて、後詰の暗殺者の存在も考え、愛剣二本を手に、家を出た。警戒しつつ、素早くラルクの住んでいる小屋へ向かう。
ラルクは眠っていたようだが、すぐに起き出してきた。僕が夜中に訪ねてくる、という異常事態をすぐに察したようだった。
小屋の中に入れてもらい、状況を分析した。
首都には剣聖の称号を返上することは伝わっているはずだ。それでも僕を暗殺する、というのは、剣聖ではなくなっても、僕が生きていることが邪魔になる、ということだろう、と二人の意見は一致した。
ラルクは強い不安を感じ、僕に逃げるように勧めた。
塾を開いたのに、もう手放さなければならないと思うと、惜しい。
そんなことに縛られるな、とラルクは僕を諌め、素早く荷造りをして、僕を脱出させるように動き出した。路銀はラルクが密かに貯めていた金銭を渡してくれた。
僕は一つの策を思い描いていた。
塾を立ち上げて、半年が過ぎた。
塾の運営は問題なく進んでいる。塾生たちは真面目に生活し、勉強している。村の住民からも感謝されていた。塾生たちは彼らの助けになり、また張り合いでもあるようだった。
意外だったのは、主に首都から、この村へ訪ねてくる商人がいることだ。
塾生に数人、商人の息子がいるのだけど、基本的に僕の塾は面会は年に数回しか許されない。
だから、商人は子供の顔を見に来るわけではなく、商売をしにやってくるのだ。
最初、僕はルールを破っていると判断し、面会する時もやや苛立っていたのだが、それは見当違いだったのである。
商人たちは僕の塾に様々なものを売ろうとしてここまで来て、さらにこの村を発展させる手伝いをしたい、と申し出た。自分の息子に会いたいとは一言も言わなかったし、そんな気配は微塵も出さなかった。
遠くまで買い出しに行かなくてはいけないものを、僕はこの商人から仕入れることにした。
そうすると、また別の商人がやってきた。僕たちを相手に商売をしたいのではなく、彼らは挨拶だけして村人の家へ訪ねて行った。とにかく人里離れた村なので、今度は村人達が喜んで、彼らを迎えた。
こうして村は少しだけ豊かになってきた。
そんなところ、シグナルが訪ねてきた。
「どういうつもりですか?」
母屋の応接室で席に着くなり、彼は切り出した。
「あなたが首都でどう思われているか、お分かりですか?」
「いや、わからないな」
「剣聖は私兵を養成している」
なるほど。
「それは見当違いだよ。僕が育成している人材は、いずれ連合王国に必要になると確信している。それに、僕に私兵が必要だと思うかい?」
「ご冗談を。あなたの塾生が一個の部隊となった時、連合王国軍と行動を共にできるとは、とても思えません」
「言うことを聞かない兵隊は、邪魔ということか?」
シグナルは黙る。それに対して、僕は自分で淹れたお茶を飲んだ。
「何も気にすることはない。悪い方向へは進ませない」
断言したが、シグナルは、受け入れ難いようだった。
「私もそう信じたい。ですが、全員が信じるわけもないのです。この村に、商人が出入りしているでしょう? それが良くない噂を生んでいます」
「どういう噂かな」
「剣聖は商人と取引し、関係を持つことで、いずれ兵を挙げるための下準備をしている」
やれやれ、そんなことは現実離れした、まさに噂だ。
「本気にしているのか? シグナルは」
「ラグーン様はお忘れですか? アルス派を追放した時には、情報が重要でした。私は様々な情報で、相手に揺さぶりをかけました。今、全く逆のことが起こりつつあります」
「こんな老人一人、放っておけばいい。すでに隠棲の身だしね」
「私は違います」
そう言われて、やっと気づいた。
「そうか、シグナルにも影響があるわけだ」
「私はあなたに見出されたのです。剣聖の部下という地位を積極的に利用したことはありませんが、しかし、世間はもう、ラグーン様と私を別個には捉えません」
今度は僕が黙る番だった。
やはり、剣聖の位を返上するべきかもしれない。
いや、しかし首都の連中は、僕の塾を警戒している。その点を解消するのに、剣聖位の返上で足りるわけもない。塾の解散を願っているのだ。
それでもやるべきことはやっておくべきか。
「剣聖の称号は、返上する」
僕がそういうと、シグナルは頭を手を当て、顔を歪める。
「あなたに」シグナルがこちらを歪んだ顔で見た。「剣聖の地位を勧めた時、私はそれが正しいと思った。人類軍を安定させ、また連合王国軍の足並みを揃える支えになると思った。それは、正しかったはずだ」
「わからないものだね。僕にも、よく分からないよ」
シグナルは頭に当てていた手を下げると、身をかがめ、じっと動きを止めた。
それからゆっくりとカップを手に取ると、中身を少しだけ飲み、こちらを見た。
「後悔しておられますか?」
「何を?」
剣聖の位のことだとわかったが、僕は誤魔化した。
僕は後悔していない、でも、シグナルは後悔しているようだった。
僕の顔をじっと見ながら、シグナルは黙っていたが、やがて小さく頷いた。
「では、剣聖の称号を返上する旨、一筆いただけますか? あるいは、首都へ来ていただく必要があると思います」
それから僕たちは剣聖の称号について、意見を交わした。剣聖には任期を決めるべきか、何かしらの条件で退位とするべきか、など、今後において剣聖の称号が混乱の原因にならないように、仕組みを変えるべきだと二人とも考えていた。
「剣聖の権威は、ラグーン様一人では、やはり弱められませんでしたね」
シグナルは去り際に、そう言った。
「歴史というものは、覆せないようだね」
「ところで、最近、お体は?」
「いや、大丈夫だよ、安定している。心配しないでいい」
挨拶の後、シグナルは、「首都の軍本部宛に、剣聖返上の書状を送ってください。あとはお任せを」と告げて去って行った。
僕はすぐに剣聖の称号を返上する旨を記した書状を書いた。
ふと思いついて、二通目を書いた。それぞれに速達で送るため、村の役場へ持って行った。首都に届くのに一週間ほどだろう。
僕は家に戻るとちょうど午後だった。道場に机を並べ、塾生相手に、いつも通りに講義をした。みんな真面目な顔で講義を聞いている。
講義の最後、塾生たちには討論をする時間を作っている。
今日のテーマを僕は、剣聖の称号、とした。塾生たちも驚いたようだが、それでも最初はポツポツと意見が出て、それから徐々に盛り上がり始めた。
それを聞きながら、僕は、剣聖というものの価値を再認識しながら、同時に、子供達には剣聖というのは、まるで天上人なのだ、と思っていた。いるはずだが、人ではないような。
塾生の一人が、静かな声で発言したのが、まるで静寂の中から聞こえるように、耳に届いた。
「剣聖だって、兵士の一人じゃないの?」
僕は思わず、まじまじとその塾生を見た。塾生もこちらを見てくる。
「うん」
僕はその塾生の前に行き、視線の高さを合わせるために膝を折った。
「純粋な意見で、良いと思う。もうちょっと考えを聞かせてくれ」
突然に僕が問いかけたので、混乱したらしく、塾生はまごまごと続けて喋ったが、軸がぶれた内容だった。
でも僕は満足だった。新しい発想の萌芽の存在を見ることができた。
シグナルが訪ねてきた日から、五日ほどが過ぎた。
夜、僕はなかなか眠れずに、ベッドの中で考え事をしていた。首都からの返信の内容を想像し、やはり首都へ出向く必要があるだろうな、と考えていた。
何か、かすかな音がした。
そっと手を伸ばして、剣を手に取る。感覚を研ぎ澄まして、何が起こるのかを、知ろうとする。誰かの気配が、廊下を進んでくる。床が軋むわけでもなく、気配もかすかだが、張り詰めた意識のようなものが、伝わってくる。
僕はベッドを降り、剣を手に、身をかがめた。不意を打つ必要がある。
寝室のドアが、ゆっくりと開いていく。
僕はためらわなかった。剣を抜いて床を強く蹴り、ドアごと、相手を突き通す。
しかし相手は予測していたようだ。一瞬の間の後、逆にドアを相手の剣が貫通し、僕の腹部を掠める。
後退し、仕切り直し。
相手が部屋に入ってきた。顔に仮面をつけていた。今、僕は仮面をつけていない。
まるで自分が襲いかかってきたような錯覚。
相手の黒装束は、動きを探りづらい。
僕は一歩後退し、相手は構わずに一歩前進。
僕は剣で背後を切り払った。
切っ先が、カーテンを切り落とした。
月光が寝室に差し込んだ。
相手はこの瞬間、僕の剣が逸れているのを咎めて、切り掛かってくる。だが、それはこちらも織り込み済み。
二つの剣先が複雑な軌跡を描いた。風を切る音と、湿った音。
何かが床に落ちた。
暗殺者が一歩、後退する。
僕は不思議な気分だった。暗殺者の剣の腕の冴えが、想像よりも鈍い。代わりに、まるでこちらのことを研究し尽くしたような、そんな剣筋だった。
どこかで見たことのある剣技。
暗殺者が、剣を取り落とす。薄暗い中で見えたその剣も見覚えがあった。
やっと、相手のことがわかった。
「スカルス、なのか?」
暗殺者が重い音とともに倒れこんだ。その体の下に、血の海が広がっていく。
僕は屈みこんで、暗殺者の仮面を外した。
やはり、スカルスだった。もうずっと会っていない。噂では首都で働いているはずだ。顔は最後に会った時より、少し痩せて見えた。
スカルスはまだ意識があった。僕を見ているが、何も言おうとしない。
「すまなかった」
僕の口が、無意識に言葉を発した。
「申し訳ない」
スカルスは小さく首を振ろうとして、息絶えた。目は薄く開いている。まるで微笑んでいるようだった。僕はその目を完全に閉じさせ、立ち上がった。
連合王国軍は、僕を排除するつもりらしい。
自体は逼迫している。
僕はスカルスの遺体にベッドから剥がしたシーツを被せて、後詰の暗殺者の存在も考え、愛剣二本を手に、家を出た。警戒しつつ、素早くラルクの住んでいる小屋へ向かう。
ラルクは眠っていたようだが、すぐに起き出してきた。僕が夜中に訪ねてくる、という異常事態をすぐに察したようだった。
小屋の中に入れてもらい、状況を分析した。
首都には剣聖の称号を返上することは伝わっているはずだ。それでも僕を暗殺する、というのは、剣聖ではなくなっても、僕が生きていることが邪魔になる、ということだろう、と二人の意見は一致した。
ラルクは強い不安を感じ、僕に逃げるように勧めた。
塾を開いたのに、もう手放さなければならないと思うと、惜しい。
そんなことに縛られるな、とラルクは僕を諌め、素早く荷造りをして、僕を脱出させるように動き出した。路銀はラルクが密かに貯めていた金銭を渡してくれた。
僕は一つの策を思い描いていた。
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