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二章
「町と砂漠と女盗賊」その①
しおりを挟む南に向かって二時間ほど進むと流れの緩やかな大きな川へと辿り着いた。
「ちょっと休憩しよう」
「はいにゃ」
クリスは元気に答えたが、俺は色々ありすぎてもう疲れていた。
大木の下に座り休憩する。クリスは川の方に行って何やらはしゃいでいたが、少しすると満面の笑みで駆け寄ってきた。
「ご主人様、この川には大きなお魚がいっぱいいるのにゃ。クリスチーナがお魚いっぱいとって、ご主人様に喜んでもらうにゃ。クリスチーナは狩りが得意なのにゃ」
「お、おう。じゃあ頼む。これで今日のご飯の心配はしなくていいな」
「お任せなのにゃ」
クリスは笑顔で自信満々に言うと突然、剣を地面に置いて競泳水着のような白い服を脱ぎ始めた。
「こらこら、なにやってんだ⁉」
「川の中に入るので、服を脱いでいるのにゃ」
そう返すと見られていることなど微塵も気にせず、クリスはあっという間に全裸になった。
ちょっとぉぉぉっ、セクシーすぎるんですけどぉ‼ 生で女の裸を見たの初めてなんですけどぉ‼
身長も胸も尻もデカいから迫力が凄い、凄すぎる。しかも猫耳に尻尾まであるんだから最強さ半端ねぇ。
クリスは裸になることも見られることも全然抵抗ないけど、これは奴隷だからなのか? こっちでは普通なのかな。まあ可愛いからなんでもいいけど。
ってよくないぞ。年齢=彼女いない歴のオタには刺激強すぎる。こっちに来て早々父さんの二の舞になりかねん。
絶対奴隷に手は出さないからな。と言いたいが、ずっと我慢するとか無理ゲーでしょ。この世界の人間はホンとに人外に手を出してないの? これはきっちりと調べなくてはならんな、裏の常識を。
とか脳内会議をしながら18禁の妄想を暴走させていたその時、クリスはもう川へと行っていた。
程なくしてクリスが帰ってきたが、わんわん泣いている。
「ど、どした?」
「お魚一匹も取れないのにゃあああんっ」
「やっぱフラグだったかコノヤロー、得意とか言いやがって、そっこう回収してんじゃねぇよ‼」
「ごべんなざーい、うわああああんっ、ちゃんとお仕置き受けますにゃぁぁぁっ」
まだ全裸のままのクリスはそう言って四つん這いになり高くお尻を突き出す。いわゆる女豹のポーズで、それを真後ろから見ている。
「うわあっ⁉ コ、コラっ、お前なにやってんだよ、まっ、丸見えじゃねぇかよ」
「どうぞ好きなだけ叩いてお仕置きしてください、ご主人様。クリスチーナは悪い子なのにゃ」
いやもうお仕置きっていうよりご褒美だろ、この変態ドM奴隷にとっては。まあ俺得でもあるけど。
「もういいよ、このぐらいで叩く必要はない。とりあえず服を着なさい」
ドM奴隷が残念そうな顔すんじゃないよ。無茶しやがって。てか凄いもの生で見てしまった。
くそっ、今すっげぇ一人になりたい。あぁ、誰か俺の理性を完全にぶっ飛ばしてくれ。そうすりゃ楽になれるのに。
「更にドッと疲れた気がするけど、早く村か町に行きたいから、もう休憩は終わりにしよう」
「はいにゃ」
「だからさっさと服を着ろ‼」
「ごめんなさいにゃ。すぐに着るのにゃ」
クリスは慌てて服を着はじめたが、なんか違和感がある。
「ってコラ、それ逆じゃね。背中のぱっくり開いた部分が前にきてオッパイ飛び出してるだろ。ねぇそれ、わざとなの、それボケなの?」
「にゃは、間違えちゃったのにゃ。クリスチーナはあわてんぼうさんなのにゃ」
くっそ萌えるぅぅぅっ、超絶かわえぇぇぇっ‼ 今すぐ抱きしめて頭ナデナデしてぇ。しかし我慢だ。まだこの世界の常識を知らないんだから、奴隷との距離感とか接し方には気を付けないと。
でもさぁ、マジでどうなってんだよ。数時間前に来たばかりなのに超展開のオンパレードすぎだ。さっきから脳内会議では変態の俺の意見が優勢なんですけど……落ち着け、落ち着くんだ俺。
そしてこの後はムラムラやモヤモヤした思いを疲れで忘れさせるため、一心不乱に歩き続けた。その甲斐あってか、空がオレンジ色に染まる黄昏時に砂漠の手前にある町に辿り着いた。
運よくモンスターや盗賊などと出会わなかったので、時間のロスなく移動できたのが大きい。それに思ったより砂漠が近くにあって良かった。ジャングルで素人旅人が野宿とか危険すぎる。まあ今は一文無しだから結局は野宿になるけど、町の中なら安全なはずだ。
その町はサンドブールという名でそこそこ大きく防御壁で守られている。門には軽装備の兵士がいたが止められることなく町の中へと入れた。ぱっと見、人間がいっぱいいるからなんだか一安心だ。
町並みはゲームやアニメでよく見る中世ヨーロッパ風。人々の服装も中世風だがそこまで古さは感じない。どこか俺たちの世界の影響を受けている気がする。
女神の祝福を受けて職業を持っている奴らはすぐに分かる。明らかに冒険者風の恰好をしているからだ。剣を携え鎧を纏っていたり、マントや魔女のトンガリ帽子をかぶって杖を持っていたりする。皆ベタというか王道の恰好すぎる。まあ分かりやすくていいけどね。ただ気になるのは女性冒険者だ。薄着でセクシーな人が多い。水着みたいな服の上に冒険者装備を纏っている感じ。防御もクソもないと思う。もしかしたら向こうの世界の影響だったりして。
「さてと、町を見て回るか」
「はいにゃ」
まず服飾店や八百屋など色々な店を回って、買わないが値段を聞いたりして貨幣価値を調べていった。
どうやらエルディアナには紙幣はなく、金貨、銀貨、銅貨の三種が基本で大きさの違いによって金額が変わるらしい。
銅貨は三種類あり、小銅貨は一円玉よりも少し小さく、価値は百円ぐらい。中銅貨は百円玉ぐらいの大きさで、千円ぐらいの価値がある。そして普通サイズの銅貨は五百円玉ぐらいで、五千円程の価値がある。同じ大きさの銀貨は一万円の価値、金貨になれば三万円の価値になる。
コインには女神エルディアナの横顔が刻印されている。更にノーマルの金貨より太く重いものがあって価値は十万円にもなり、女神の正面顔が刻印されているとのこと。
ゲームばかりやってたからちょっと調べればこれぐらいは簡単に理解できますよ。ファンタジーっぽい異世界だとオタクの適応力最強かも。
因みに魔法の力で理解できている言葉のことだが、とにかく万能に作られていた。勝手に脳内変換されるため、自分の世界の特殊な、例えばオタク用語や和製英語などを使っても、相手は理解できている。そして相手の言葉は分かりやすいように変換され聞こえてくる。しかもごく自然に喋っているように見える。
それから町を回っていたら冒険者御用達っぽい店を発見した。中に入るとやはり、武器や防具、魔道具などを売り買いする店だった。こういう店が一番テンション上がる。
「旦那、後ろの半獣人は奴隷ですかい」
レトゲーロープレに登場するような、いかにも商人という服装の三十代ぐらいの褐色肌の店員の男が、気さくに話しかけてきた。
「あぁ、そうだけど」
「なかなか良さそうだし、高く買いますよ」
ごく普通に奴隷の売買を持ちかけてくる。やはりこのエルディアナでは奴隷が当たり前の文化になっているようだ。
「今は売るつもりはないよ」
断るとクリスはホッとした顔をしていた。それがまた可愛い。
「そうですか、そりゃ残念。でも良さそうな半獣人か妖精族が手に入ったら、いつでも売りに来てくださいよ。他より高く買いますから」
スゲー世界だエルディアナは。人外奴隷があまりにも普通すぎて怖いっての。
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