可憐な花は咲き乱れる

翠恋 暁

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作家の現実

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「実は豊さん、誘拐されてるんだ。で、その手紙は脅迫状」
「……誘拐事件の解決をしろってこと?」
「そう、その通り。しかも時間があるわけでもない、猶予ゆうよは今日から、丁度5日後」
「そんな無茶苦茶な……」
 ほんとその通りだ。無茶苦茶だ。
 真実はいつも1つだとしてもその真実に辿り着くまでの道は凡人には厳しすぎる。
「大丈夫だよ、なんとかなる」
「根拠なき自信は罪だよちーさん」
 花凛はそうは言っても仕方ないという様子で脅迫状を見返す。
 内容はこうだ。

 常に変わりゆく季節のよう
 に葉のありし木は
 その坂が途中で 
 変わり緑の木は染まりに染まり
 そこには丘が広がる
 未だにその三番目の花
 咲かない時に丁度現れし
 燦々と降り注ぐ目を焼く
 あの太陽は昇り、日は経ち続け
 未だに終わり知らず没落する
 訳もなく、まだ彷徨いまさしく
 探し物を求め徘徊するのである
 必ずその先に何かがあると
 確信して
 
 傾きし文は一つづつズレが生じる
 そこより読み解きし目的の場所に来たれり。なおそれは最初のみ有効である。一週間後、くることができれば人質は解放しよう。

 と、言うものだった。
 一体どこに行けばいいのだろうか。1週間後と言う情報以外の指定はないように思う、というか意味不明な文である。
 というか、文が傾くわけがない。
「……どういうこと?」
「それは僕が聞きたい、千春さんわかりました?」
「いや、まだなんとも言えない」
「とりあえず、場所がわからないと話になりませんよね」
「そうね、必ずこの何処かに書かれている……はずなんだけどね」
 どんなに見返してもそれらしきことが書かれているようなところはない。場所は明言されてないけど
「……もしかしたら、豊さんの家からの地図」
「特徴的な部分は確かに豊さんの家の周辺に当てはまるところもある、でもそれだけなのかな」
「でも、そうすると季節のようにをなんでにだけ下の段に移したんだろう、別に紙の余白がないわけではないし」
 そう、この文どうも日本語として少し引っかかるところがいくつかある。
「そう考えると犯人は外国人かな?」
 そう花凛が言うが
「いや、それはないだろう」
「どうして?」
「外人が燦々、没落、徘徊、彷徨うなんて言葉使うか、古典的は用法を使うか、それに豊さんは外人との付き合いはない、その線は低いだろうな」
「う~ん……」
 結局いい案が出る訳もなく、早めに店を閉めて帰宅することになった。
「それじゃ、また明日ね望君、花凛ちゃん」
「お疲れ様です」
「おつかれさまぁ~」
 一応、脅迫文を書き写したものがあるが僕にこの謎が解けるのだろうか。正直かなりきつい気がする。
「望くん、わかりそう?」
「厳しいかな、まぁやれることはやってみるよ」
「私も頑張るね、じゃまた明日ね」
 不自然な文章にチグハグな部分全体的にまとまりがなく支離滅裂、どうしようにもどうにもならない気がする。傾きし文ってなんだよ。
 ふと頭に友人の顔が浮かぶがこれは一応刑事事件な訳だし千春さんにも念を押されたように他言するのはまずいだろう。
 となると、3人で解決するしかない訳だ。三人寄れば文殊の知恵とは言うが三人寄ってもわからないものはわからないよな。
 
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