可憐な花は咲き乱れる

翠恋 暁

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作家の真意

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 結局、何もわからないまますでに4日目の夕方にさしか掛かっていた。
 もう、明日が期限だ。
「一体何処に場所が書いてあるんだ」
 1人部屋で悩んでいても一向にそれらしい答えは見つからない。
「お兄、何やってるの?」
 僕に兄弟はいない、隣に住んでる家の子で最近よくうちに遊びに来る。そしてなぜか僕はお兄と呼ばれている。嫌じゃないからいいのだが……
「お、桜ちゃん。来てたのか、今なぞなぞを解いてるんだ」
「なぞなぞ、私もやりたい」
 ま、小学生になら見せてもそれほど問題はないだろう。言いふらすなんてこともしない子だし。
「これなんだけどな……」
 紙を見せてみる。桜ちゃんはそれを熱心に読み始める。しばらくすると
「お兄、これなんて読むの?」
 と、尋ねてきた。
「ん? これはさんさんだよ」
 そうだよな、やっぱり普通に使う言葉じゃないもんな、歌とかでは使うんだけど。
「ねぇねぇ、お兄、これは?」
「さまよう、とこっちは、はいかいだよ」
 しばらくすると読み終わったのか腕を組んでむーと言った唸り声を上げている。それもそうだろう。僕たち3人が4日も悩んで解けていないのだ。
 なんだろう、なんかフラグが立った気がした。
「わかるか? わかったらなんか買ってあげるよ」
「本当だね。言質取ったよ」
 どうして小学5年生の少女が言質なんて言葉を知っているいるのだろうか。教育がいいのかな。
「あぁ、僕が買えるものならなんでもいいよ」
 俄然がぜんやる気になった桜ちゃんはじーっと紙とにらめっこを始める。
 お茶とお菓子でも持ってこよう。
 桜ちゃんはビスケットが好きだったな。倉庫にあっただろうか、最近減りがいちじるしいからな。
 数分の奮闘ののちに無事、ビスケットを発見しお茶を組んで自分の部屋に戻ると桜ちゃんが紙をクルクル回していた。
「そんなに回しても何も出てこないと思うぞ、休憩にしよう」
 紙から目を離した視線は僕が持つものに集中する。
「頑張ってるご褒美に今日はビスケットですよ」
「やったぁ、ビスケットビスケットお兄はよくわかってる」
 そう言って、ビスケットをモグモグと食べるのを片目に脅迫文を見る。
「あれ? これもしかしたら……」
 常 葉 坂 緑 丘 三 丁 目 日 没 ま で
「そうかそう言うことだったのか」
 まさしくそれは僕の読み通りだった。
「お兄、なんかわかった?」
「うん、解けたよこのなぞなぞ」
「えぇ! そんなぁ……」
「でも、この答えにたどり着けたのは桜ちゃんのおかげだよ、約束通りなんでも買ってあげるよ」
「それなら、お洋服がいい」
 即答だった。
 でもやっぱり、女の子だなって思う。多分男の子ならおもちゃをねだると思う。
「うん、いいよ。今日は無理だから、明後日でいいかな?」
「うん、朝ここに来るね……あ、そろそろ帰らないと」
「気をつけて帰るんだよ……いや送っていくか」
 丁度僕も用事ができたことだし。
 玄関の前まで行くと鼻歌交じりの足音が聞こえてきた。そうして扉が開いた。
「母さん。お帰り」
「あら、望ちゃん、いたのね。あら桜ちゃんもいらっしゃい」
「お邪魔してます」
「もう帰るの? それならこれを持って行って」
 そう言って、お菓子を取り出す。
 目を輝かせて貰う桜ちゃんを見ていると、いい目の保養になるなと思う。
「じゃ、僕送ってくる。そのまま寄るところあるからちょっと遅くなる」
「わかったわ、気をつけてね」
 そう送り出され、桜ちゃんを家に送り届け、喫茶タカナシへと直行した。
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