可憐な花は咲き乱れる

翠恋 暁

文字の大きさ
18 / 18

作家の思惑

しおりを挟む
 流石に春の夕方とは言っても寒さがある。でも今はそんなことよりも謎が解けたことの方が嬉しい。早く報告しなければと、ペダルを漕ぐ足には力がこもる。
 そのおかげでいつもの半分の時間で目的地に到着することができた。
「はぁ、はぁ……千春さん、わかりましたよ」
 遂にこの事件の真相へたどり着いた。一番に報告しないとって思ったし、何より期限が明日までなのだ。悠長にしているわけにはいかない。
「望君、今日はお休みでは?」
「ゲホッ……解けたんですよ、きょ、脅迫文の謎が……」
 自転車を使っていたとはいえ全力を出してくるとかなりの体力を持っていかれる。筋トレとかしたほうがいいかもしれないな。
「とりあえず落ち着いて、深呼吸して、ね」
「は、はい……」
 ということで、深呼吸をする。
 2、3回吸って吐いてを繰り返すとどうにか呼吸も落ち着いてきた。
「ふぅ、落ち着きました」
「それで、謎が解けたの?」
「えぇ、説明しますね」
 そうして、脅迫文の謎についてわかったことを全部伝える。
「……なるほどね。傾きし文は1つずつずれる、確かにその通りになってるね、でも他にはなってない、たまたまってことはないの?」
「僕もそう思ったんですけど、ここですよ。最初のみ有効、傾いてる分の最初ってことはここしかないと思うんです」
「それはそうとしても、常葉坂ときわざか緑丘みどりおかなんてところあったっけ?」
「三丁目に緑丘公園って公園があるんですよ」
 なぜか逆に……いや、もしかしたら思い違いなのかもしれないが、少なくとも常葉坂三丁目に行けばいいのは確定であろう。
「なるほど、多分そこだね、にしてもよく気づいたね」  
 ここで胸を張って僕の実力ですって言えたらカッコイイんだけど、今回のMVPは桜ちゃんだ。
「まぁ、それは僕と言うか桜ちゃんのおかげなんですけどね」
 本当、あの時桜ちゃんがクルクル回してたおかげでそして、たまたまだろうけど僕に向かって斜めにおいてくれたから気づけたのだ。
 やっぱり持つべきものは良き隣人だね。
「……桜ちゃんって誰?」
 ひぃっ、なんだろうこの異様な重圧プレッシャーは。ななななんだかよくないことでもしてしまったのだろうか。
「い、いや隣人ですよ。べちゅに怪しい人とかそんなんじゃ……」
 盛大に噛んでしまった。いや、さっきのは本当に恐怖だ。軽く死ぬのかと思うくらいに。
「それは、女の子?」
「はははい、女の子です。小5の女の子です」 
 未だに僕へとのしかかる重しはさっきよりも重くなっている気がした。
「……まさか、望君。ロリコンだったの、それだと……」
 なんでそうなった。
 なんか凄い飛躍をしているような気がします。誹謗中傷はやめていただきたい。
「ロリコンなんてやめてください。確かに彼女は可愛いしお兄と呼ばれるのは嬉しいですけど、ロリコンではありません」
 あれれ? 言っていて僕も僕自身が怪しくなってきた。少しロリコンがあるのではないだろうか。 
「本当に?」
「はい、ほんとうです」
 それはともあれ、これでこの事件の犯人がわかるわけだ。僕としては若干というか、ちょっと犯人が誰なのかという予測が付いているのだが、そうではないことを願おう。
「ね、望君。日曜日空いてる?」
 それって明後日だよね。その日は……
「あ、その桜ちゃんと買い物に行くんですけど……」
 千春さんの目にはみるみるうちに涙が溜まっていく。
「やっぱり、ロリコンじゃぁ~ん」
 そう言って千春さんは走り去っていく。
「えぇー、千春さん誤解ですってばぁ~」
 その後、千春さんの誤解を解くのに小一時間かかったのだった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...