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得体の知れぬものじゃ
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「ウウォゥゥゥーッ!!」
ヴォルフが遠吠えをすると穴を巻き込む形で広範囲の岩石地帯を凍土へと変える。
穴より這い出た【それ】は人の胴体とカマキリ、クワガタを取ってつけたような肉体をしていた。
「なんじゃ、あの気色の悪い体は……!?」
「……神……ではないな……。ベルゼブブとか辺りかと思ったけど、どうやら違うみたいだ」
(べるぜぶぶ……?!また変な名前じゃ……)
凍って落ちた腕を自ら切り落とすと、緑色の血液をまき散らしながら腕がじゅるりと生えてくる。
非常に早い再生速度にふくとヴォルフは驚き、睨みつける。
そして緑の体液は腐っているのか非常に臭いものであった。
「再生が面倒だから傷口を凍らせてやったのに、自分で切り落として再生させるとは……知能も凄いんじゃないか……?」
「そのようじゃの……。ここならばネズミ族の迷惑にはならんじゃろう。わしも魔法で応戦しよう。準備は良いかの?」
「もちろん!」
ふくは少し離れた場所で魔力をみなぎらせ、【それ】の動きを見ながら使う魔法を吟味する。
ヴォルフの戦う姿を見たのは初めてであり、そもそも魔獣程度では彼の相手をできるものはいなかった。
しかし今目の前にいる【それ】はヴォルフと互角にも見える。
出鱈目な魔力と理不尽な氷の魔法でふくや【それ】の戦い方とは全然違う。
鎌が振り下ろされると、その鎌を前足で少しだけ弾き、軌道をずらしながら体をきりもみ回転させ、そのまま人体である部分を噛みちぎり、内臓をズタズタに引き裂いていく。
引き裂かれた場所はすぐに塞がり、振り向てヴォルフを背後を襲う。
合計六本の手足は一瞬で凍り付き、動いていた腕は肩から落ち、粉々に砕け散る。
ヴォルフは着氷した瞬間、姿が見えなくなったかと思いきや、四本の脚をすべて噛み落とし、だるまの状態にする。
【それ】は手足のない状態でもヴォルフを殺そうと腹部の伸縮を利用してクワガタの一対の牙で噛み殺そうと跳びかかる。
ヴォルフはゆっくりと振り向き、【それ】を金色の瞳で睨む。
睨まれた【それ】はぴたりと釘で打ち付けられたように動かなくなった。
一歩、また一歩と近づいていくと、【それ】もじりじりと後ろに下がっていく。
穴の淵まで追い込むと風の刃が【それ】の首をぼとりと落としていく。
振り向くと人差し指を向けていたふくが立っていた。
にやりとヴォルフは笑みを浮かべると【それ】の全身を絶対零度の冷気で包み込む。
外殻も、血も、内臓も、神経も、細胞もすべて時を歩むのをやめた。
狼特有の大きな前足で【それ】を打ち砕いた。
粉々に打ち砕かれた【それ】はどす黒いこぶし大の石だけを残して消えていく。
その石はヴォルフの冷気にも耐えきり、脈を打っていた。
「これが虫人間の体内に入ってあって、嫌な魔力の発生源なのかもしれない」
「この石はお前の力でも壊せんのか?」
「どうやらそのようだね……。ふく、壊してみる?氷が効かないだけかもしれないし」
ふくが魔法で石を砕こうと手を翳した瞬間、どす黒い負の感情を纏った黒い靄が発生した。
ヴォルフは瞬時にふくを抱え、高台の安全な場所に連れていく。
直感的にアレに触れては不味いと感じ、ヴォルフのおかげで助かり、ほっと胸をなでおろした。
「た、助かったのじゃ。礼を言う、ぼるふ」
「うん……。何だあれは……」
二人は高台から様子を見ていると、石はだんだんと透明な色になっていき、すべての何かを吐き切ってすっきりしたような色身になると、砂のように崩れ去っていった。
黒い靄のようなものは残り続け、土地を侵食していく。
大穴から突風が吹くと靄が一気に移動を開始する。
方角を確認するとそこにはネズミ族が避難している場所だった。
ふくは牙をむき、ヴォルフの胸ぐらをつかむ。
「わしをあそこに連れてゆくのじゃ!今すぐに!」
「わ、わかったから、落ち着いて!」
ヴォルフの背に乗り、全速力でその場所へと向かうのだった。
§
コムギは地鳴りと激しい魔力のぶつかり合いを肌で感じ取り、ネズミ族の避難を迅速に進めていた。
「おい、この道で合ってるのかよ……」
「合っているも何も、あの二人の邪魔にならないところまで逃げなくては足手まといになります」
足手まといになるといわれ、チュータローは一瞬ムッとするが、ふくにコテンパンにされたことを思い出し、その通りだと理解をする。
こういう時、自分の力不足を呪った。
戦闘に向いていない種族は魔法特性も戦闘に向かないことがほとんどであり、一族で唯一闘いに出られるチュータローですら魔法は【掘削】しか使うことができない。
「こ……ムギ。」
「なんですか?」
「お前の魔法は何だったんだ……?」
「わたくしの魔法は、【風化】です。風と土の元素魔法の複合になります。……魔力が少ないから全然発動できませんが」
チュータローはコムギの所持魔法が複合魔法であったことに驚き、あの狐女「ふく」から認められるのも納得がいった。
「……結局、魔法が強くないと大したことができないんだよな……」
「そんなことはありません。チュータローは毎日頑張って魔獣を追い払ってくれたじゃないですか?無事に逃げ切ったら、チュータローはわたくしの傍で働いてもらって、ネズミ族を強くするという目的を達成してもらうんですから」
「マジかよ……。それじゃあ、全員で生き残らなくちゃな!はははっ!」
そう笑い飛ばすと先ほどまでの重たい空気が取り払われたようで、ネズミ族の雰囲気も一気に明るくなる。
ふくとヴォルフの戦闘が終わったのか、地鳴りと荒ぶる魔力が落ち着く。
一同が終わったことを確信していると、ビュウッと突風が吹き、危うく飛ばされそうになる。
そして、気づかない間に黒い靄に侵食されていくのであった。
ヴォルフが遠吠えをすると穴を巻き込む形で広範囲の岩石地帯を凍土へと変える。
穴より這い出た【それ】は人の胴体とカマキリ、クワガタを取ってつけたような肉体をしていた。
「なんじゃ、あの気色の悪い体は……!?」
「……神……ではないな……。ベルゼブブとか辺りかと思ったけど、どうやら違うみたいだ」
(べるぜぶぶ……?!また変な名前じゃ……)
凍って落ちた腕を自ら切り落とすと、緑色の血液をまき散らしながら腕がじゅるりと生えてくる。
非常に早い再生速度にふくとヴォルフは驚き、睨みつける。
そして緑の体液は腐っているのか非常に臭いものであった。
「再生が面倒だから傷口を凍らせてやったのに、自分で切り落として再生させるとは……知能も凄いんじゃないか……?」
「そのようじゃの……。ここならばネズミ族の迷惑にはならんじゃろう。わしも魔法で応戦しよう。準備は良いかの?」
「もちろん!」
ふくは少し離れた場所で魔力をみなぎらせ、【それ】の動きを見ながら使う魔法を吟味する。
ヴォルフの戦う姿を見たのは初めてであり、そもそも魔獣程度では彼の相手をできるものはいなかった。
しかし今目の前にいる【それ】はヴォルフと互角にも見える。
出鱈目な魔力と理不尽な氷の魔法でふくや【それ】の戦い方とは全然違う。
鎌が振り下ろされると、その鎌を前足で少しだけ弾き、軌道をずらしながら体をきりもみ回転させ、そのまま人体である部分を噛みちぎり、内臓をズタズタに引き裂いていく。
引き裂かれた場所はすぐに塞がり、振り向てヴォルフを背後を襲う。
合計六本の手足は一瞬で凍り付き、動いていた腕は肩から落ち、粉々に砕け散る。
ヴォルフは着氷した瞬間、姿が見えなくなったかと思いきや、四本の脚をすべて噛み落とし、だるまの状態にする。
【それ】は手足のない状態でもヴォルフを殺そうと腹部の伸縮を利用してクワガタの一対の牙で噛み殺そうと跳びかかる。
ヴォルフはゆっくりと振り向き、【それ】を金色の瞳で睨む。
睨まれた【それ】はぴたりと釘で打ち付けられたように動かなくなった。
一歩、また一歩と近づいていくと、【それ】もじりじりと後ろに下がっていく。
穴の淵まで追い込むと風の刃が【それ】の首をぼとりと落としていく。
振り向くと人差し指を向けていたふくが立っていた。
にやりとヴォルフは笑みを浮かべると【それ】の全身を絶対零度の冷気で包み込む。
外殻も、血も、内臓も、神経も、細胞もすべて時を歩むのをやめた。
狼特有の大きな前足で【それ】を打ち砕いた。
粉々に打ち砕かれた【それ】はどす黒いこぶし大の石だけを残して消えていく。
その石はヴォルフの冷気にも耐えきり、脈を打っていた。
「これが虫人間の体内に入ってあって、嫌な魔力の発生源なのかもしれない」
「この石はお前の力でも壊せんのか?」
「どうやらそのようだね……。ふく、壊してみる?氷が効かないだけかもしれないし」
ふくが魔法で石を砕こうと手を翳した瞬間、どす黒い負の感情を纏った黒い靄が発生した。
ヴォルフは瞬時にふくを抱え、高台の安全な場所に連れていく。
直感的にアレに触れては不味いと感じ、ヴォルフのおかげで助かり、ほっと胸をなでおろした。
「た、助かったのじゃ。礼を言う、ぼるふ」
「うん……。何だあれは……」
二人は高台から様子を見ていると、石はだんだんと透明な色になっていき、すべての何かを吐き切ってすっきりしたような色身になると、砂のように崩れ去っていった。
黒い靄のようなものは残り続け、土地を侵食していく。
大穴から突風が吹くと靄が一気に移動を開始する。
方角を確認するとそこにはネズミ族が避難している場所だった。
ふくは牙をむき、ヴォルフの胸ぐらをつかむ。
「わしをあそこに連れてゆくのじゃ!今すぐに!」
「わ、わかったから、落ち着いて!」
ヴォルフの背に乗り、全速力でその場所へと向かうのだった。
§
コムギは地鳴りと激しい魔力のぶつかり合いを肌で感じ取り、ネズミ族の避難を迅速に進めていた。
「おい、この道で合ってるのかよ……」
「合っているも何も、あの二人の邪魔にならないところまで逃げなくては足手まといになります」
足手まといになるといわれ、チュータローは一瞬ムッとするが、ふくにコテンパンにされたことを思い出し、その通りだと理解をする。
こういう時、自分の力不足を呪った。
戦闘に向いていない種族は魔法特性も戦闘に向かないことがほとんどであり、一族で唯一闘いに出られるチュータローですら魔法は【掘削】しか使うことができない。
「こ……ムギ。」
「なんですか?」
「お前の魔法は何だったんだ……?」
「わたくしの魔法は、【風化】です。風と土の元素魔法の複合になります。……魔力が少ないから全然発動できませんが」
チュータローはコムギの所持魔法が複合魔法であったことに驚き、あの狐女「ふく」から認められるのも納得がいった。
「……結局、魔法が強くないと大したことができないんだよな……」
「そんなことはありません。チュータローは毎日頑張って魔獣を追い払ってくれたじゃないですか?無事に逃げ切ったら、チュータローはわたくしの傍で働いてもらって、ネズミ族を強くするという目的を達成してもらうんですから」
「マジかよ……。それじゃあ、全員で生き残らなくちゃな!はははっ!」
そう笑い飛ばすと先ほどまでの重たい空気が取り払われたようで、ネズミ族の雰囲気も一気に明るくなる。
ふくとヴォルフの戦闘が終わったのか、地鳴りと荒ぶる魔力が落ち着く。
一同が終わったことを確信していると、ビュウッと突風が吹き、危うく飛ばされそうになる。
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