21 / 108
最期の挨拶……
しおりを挟む
コムギ、チュータローは死んでしまった。
その事実がふくの心を抉る。
ヴォルフは泣き崩れたふくの手を取るが、力なくすり抜けていく。
「ふく……少しだけいいか?」
「……」
顔もむけず、二人の苦しそうな表情の亡骸を見続けていた。
返事がないのはヴォルフでもわかっていたことなのでそのまま話を続ける。
「これからネズミたちを集めて弔ってやろうと思う。ふくにも協力してほしい。このまま死ぬとネズミ族は悪意や後悔、憎悪に満ち溢れ、冥骸獣となってしまう。そうしないために霊体を呼び出す。最後の挨拶をふくにやってもらいたい。」
冥骸獣という聞いたことのない単語が出てくるが、それよりももう一度ネズミ族たちと挨拶できるということから顔をヴォルフの方へ向ける。
涙でぐしゃぐしゃになったその表情は、少しだけ明るくなる。
「できるのか……?」
「オレは神だよ!それくらいできるさ!……悲しいけれど、早く弔ってあげよう?」
ふくはよろよろと立ち上がり、並べられたネズミ族の死体を目の当たりにする。
ヴォルフはコムギとチュータローをふくの目の前に並べる。
二人は長と守り人という立場であり、ヴォルフなりに配慮したものだった。
運び終えたヴォルフは「フーッ」と息をつくと、ふくの方へ向く。
「頑張ってみんなと話しができるくらいの時間は作るけど、そのあとはオレはしばらく動けなくなる。それまではふく一人で生活することになるけれど、大丈夫かい?」
「……ここまでしてくれるのじゃ、それくらいやって見せるのじゃ。」
「わかった。それじゃあ始めるよ。」
ヴォルフは狼の姿に戻り、詠唱を始める。
ヴォルフの詠唱を聞くのは初めてであり、不思議な感じがした。
「『迷える死者の魂よ、今ここに集いわれの魔力にてその姿を顕現せよ。その魂に安寧と安らぎを与え、地の呪縛から解放せよ』」
詠唱が終わると同時にヴォルフは力を失ったのかその場に伏せ動かなくなった。
同時に白い靄がヒトの形を取り始める。
うっすらとだが顔の形、表情などが見え始め、先ほどまで一緒にいたコムギとチュータローと認識する。
ほかの民たちも生前と変わらない姿をし、ふくの周りに集まる。
ネズミ族の姿を見て、泣き崩れる。
コムギとチュータローは目を合わせ、頷くと、ふくの背中をゆっくりと優しくなでる。
霊体ではあるのだがヴォルフの力で、多少ものに触れることができ、ふくにその感触が伝わる。
『ふく様ごめんなさい。』
「なぜじゃ!?なぜわしを責めぬのじゃ!?わしのせいでお前たちは死んだのじゃ……。わしが……わしが……」
『アンタのせいじゃないさ。オレたちが弱かったから、今まで何もしなかったから、きっと罰が当たったんだ』
「そのようなことはないのじゃ!民を……弱き者を助けるのが、上に立つ者のやるべきことじゃ……。わしはそれができなかった……」
『ふく様。あちらをご覧ください』
コムギの指をさす方向にはネズミ族一同が並んでいた。
誰もふくに対し、怒りや恨みの表情はなく、ニコニコとしていた。
『ふくさまが頑張って風を止めてくれたの嬉しかったよ!』
『畑づくり教えてくれてありがとう!』
『お肉焼いたのとっても美味しかったよ!』
『最初服を着ていない変なヒトだと思ったけど、いっぱいお話してくれたの嬉しかった!』
ネズミ族たちは思い思いにふくに感謝の言葉を投げかける。
ふくは抑えていた感情があふれ出し、号泣した。
その姿を見たコムギはふくのことを抱きしめる。
『わたくしの可能性を見つけてもらい本当にありがとうございました。ふく様がいなければただ、野垂れ死んでいただけでしたが、最期にふく様に出会えて幸せでしたよ?』
コムギの胸の中でわんわんと泣き、涙が止まらないふくの頭をチュータローはポンポンと叩く。
『アンタを嫁にできなかったことが未練だが、あの邪神が守ってくれるってなら、安心して逝けるわ。ボクもふくと出会えてボコボコにされたけど、楽しかったし……その、大好き……だよ』
未だに泣き続けるふくを見て二人は困った様子をするが、段々と体が薄くなっていることに気が付く。
『こんなに長く話せるなんて、邪神だけどやっぱりすごいねヴォルフ様は』
『アイツ嫌いだけど、ふくと最期に話す機会をくれたんだ。ふく、礼を言っておいてくれ。それと、この世界はまだまだオレたちと同じように困っている人がいるはずだから、助けてあげてくれよな』
二人はふくから離れ、一族が集まる。
『『『ふくさま!ありがとう……』』』
ネズミ族は笑顔のまま消えていき、亡骸も一緒に霧散していった。
叫びにも似たふくの鳴き声は、外に響くことはなく、自身の作った森の木々に吸いこまれていった。
夜が明け、太陽と思われるものが辺りを照らし、元ネズミ族の集落に日を照らす。
緑豊かな木とどす黒くなった木が半分半分の森の中で蹲っている狐の女性がいた。
彼女は散々泣きはらしたであろう顔をあげ、辺りを確認する。
ネズミ族は最期に彼女と話をすることで成仏し、亡骸とともに消えてしまったが、きらりと輝く石が二つ落ちていた。
よろよろと四つん這いのまま、石の元へ這い、それを手にする。
薄暗い太陽とは違い、非常にきれいな輝きを放つ石を見て呟く。
「小麦……忠太郎……。お前たちはこんなに小さくなりおって……」
石を大事そうに抱え、ヴォルフの元へ行く。
あれから目を覚ます気配がなく、呼吸が非常に浅く弱弱しくなっていた。
いつもは暖かい体毛も氷のように冷たく、硬くなっていた。
土の魔法を利用し、洞穴状の隠れ家を作り、石になったネズミたちと氷のように冷たく動かなくなったヴォルフと同じ空間で塞ぎこむように眠りに就いたのだった。
その事実がふくの心を抉る。
ヴォルフは泣き崩れたふくの手を取るが、力なくすり抜けていく。
「ふく……少しだけいいか?」
「……」
顔もむけず、二人の苦しそうな表情の亡骸を見続けていた。
返事がないのはヴォルフでもわかっていたことなのでそのまま話を続ける。
「これからネズミたちを集めて弔ってやろうと思う。ふくにも協力してほしい。このまま死ぬとネズミ族は悪意や後悔、憎悪に満ち溢れ、冥骸獣となってしまう。そうしないために霊体を呼び出す。最後の挨拶をふくにやってもらいたい。」
冥骸獣という聞いたことのない単語が出てくるが、それよりももう一度ネズミ族たちと挨拶できるということから顔をヴォルフの方へ向ける。
涙でぐしゃぐしゃになったその表情は、少しだけ明るくなる。
「できるのか……?」
「オレは神だよ!それくらいできるさ!……悲しいけれど、早く弔ってあげよう?」
ふくはよろよろと立ち上がり、並べられたネズミ族の死体を目の当たりにする。
ヴォルフはコムギとチュータローをふくの目の前に並べる。
二人は長と守り人という立場であり、ヴォルフなりに配慮したものだった。
運び終えたヴォルフは「フーッ」と息をつくと、ふくの方へ向く。
「頑張ってみんなと話しができるくらいの時間は作るけど、そのあとはオレはしばらく動けなくなる。それまではふく一人で生活することになるけれど、大丈夫かい?」
「……ここまでしてくれるのじゃ、それくらいやって見せるのじゃ。」
「わかった。それじゃあ始めるよ。」
ヴォルフは狼の姿に戻り、詠唱を始める。
ヴォルフの詠唱を聞くのは初めてであり、不思議な感じがした。
「『迷える死者の魂よ、今ここに集いわれの魔力にてその姿を顕現せよ。その魂に安寧と安らぎを与え、地の呪縛から解放せよ』」
詠唱が終わると同時にヴォルフは力を失ったのかその場に伏せ動かなくなった。
同時に白い靄がヒトの形を取り始める。
うっすらとだが顔の形、表情などが見え始め、先ほどまで一緒にいたコムギとチュータローと認識する。
ほかの民たちも生前と変わらない姿をし、ふくの周りに集まる。
ネズミ族の姿を見て、泣き崩れる。
コムギとチュータローは目を合わせ、頷くと、ふくの背中をゆっくりと優しくなでる。
霊体ではあるのだがヴォルフの力で、多少ものに触れることができ、ふくにその感触が伝わる。
『ふく様ごめんなさい。』
「なぜじゃ!?なぜわしを責めぬのじゃ!?わしのせいでお前たちは死んだのじゃ……。わしが……わしが……」
『アンタのせいじゃないさ。オレたちが弱かったから、今まで何もしなかったから、きっと罰が当たったんだ』
「そのようなことはないのじゃ!民を……弱き者を助けるのが、上に立つ者のやるべきことじゃ……。わしはそれができなかった……」
『ふく様。あちらをご覧ください』
コムギの指をさす方向にはネズミ族一同が並んでいた。
誰もふくに対し、怒りや恨みの表情はなく、ニコニコとしていた。
『ふくさまが頑張って風を止めてくれたの嬉しかったよ!』
『畑づくり教えてくれてありがとう!』
『お肉焼いたのとっても美味しかったよ!』
『最初服を着ていない変なヒトだと思ったけど、いっぱいお話してくれたの嬉しかった!』
ネズミ族たちは思い思いにふくに感謝の言葉を投げかける。
ふくは抑えていた感情があふれ出し、号泣した。
その姿を見たコムギはふくのことを抱きしめる。
『わたくしの可能性を見つけてもらい本当にありがとうございました。ふく様がいなければただ、野垂れ死んでいただけでしたが、最期にふく様に出会えて幸せでしたよ?』
コムギの胸の中でわんわんと泣き、涙が止まらないふくの頭をチュータローはポンポンと叩く。
『アンタを嫁にできなかったことが未練だが、あの邪神が守ってくれるってなら、安心して逝けるわ。ボクもふくと出会えてボコボコにされたけど、楽しかったし……その、大好き……だよ』
未だに泣き続けるふくを見て二人は困った様子をするが、段々と体が薄くなっていることに気が付く。
『こんなに長く話せるなんて、邪神だけどやっぱりすごいねヴォルフ様は』
『アイツ嫌いだけど、ふくと最期に話す機会をくれたんだ。ふく、礼を言っておいてくれ。それと、この世界はまだまだオレたちと同じように困っている人がいるはずだから、助けてあげてくれよな』
二人はふくから離れ、一族が集まる。
『『『ふくさま!ありがとう……』』』
ネズミ族は笑顔のまま消えていき、亡骸も一緒に霧散していった。
叫びにも似たふくの鳴き声は、外に響くことはなく、自身の作った森の木々に吸いこまれていった。
夜が明け、太陽と思われるものが辺りを照らし、元ネズミ族の集落に日を照らす。
緑豊かな木とどす黒くなった木が半分半分の森の中で蹲っている狐の女性がいた。
彼女は散々泣きはらしたであろう顔をあげ、辺りを確認する。
ネズミ族は最期に彼女と話をすることで成仏し、亡骸とともに消えてしまったが、きらりと輝く石が二つ落ちていた。
よろよろと四つん這いのまま、石の元へ這い、それを手にする。
薄暗い太陽とは違い、非常にきれいな輝きを放つ石を見て呟く。
「小麦……忠太郎……。お前たちはこんなに小さくなりおって……」
石を大事そうに抱え、ヴォルフの元へ行く。
あれから目を覚ます気配がなく、呼吸が非常に浅く弱弱しくなっていた。
いつもは暖かい体毛も氷のように冷たく、硬くなっていた。
土の魔法を利用し、洞穴状の隠れ家を作り、石になったネズミたちと氷のように冷たく動かなくなったヴォルフと同じ空間で塞ぎこむように眠りに就いたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる