89 / 108
国民のために何ができるのか
しおりを挟む
国内ではミスリルが女王の手によって大量に手に入ったと言う情報が出回っていた。
それを流したのはセイラであり、彼女はふくの思惑と反対の事をしていた。
「もう、ふく様が悪者になる必要はないですよ……。十分貴女は苦しんだと思います。それ以上は傷つく必要がありません……」
そう呟きなが、町中を歩いていた。
セイラは町中を歩き、国民の生活を見ていた。
住居は種族によってまちまちだが、一番良い住処は洞穴であり、運悪く岩山や砂山が手に入らなかった種族や掘る力や爪を持たぬものは申し訳程度の岩で壁を作った貧相な住宅ばかりであった。
それを住宅といっていいのか不明だが、鳥人族も似たようなものの巣を作ることしかできないため、セイラは住宅と言い張ることしかできなかった。
そして、生活レベルは非常に差があった。
元素魔法【火】と【水】を使える者は非常に快適な生活ができているようであった。
特にヴォルフの魔法の影響で凍土と化しているこの世界に【火】を扱えることは非常にアドバンテージであった。
暖を取ることも、調理をすること(肉を焼くぐらいしかしない)ができるため、火種を作る必要がなく、扱えないものは必死に火をおこし、それが途絶えないようにしていた。
水に至っても【飲水】の魔法で飲み水を作ることができるので、水がなくなる度に川まで水を汲みに行かなくてもよい。
便利な一方、使えないと重労働である。
セイラの住んでいた国では魔道具を作っていたため、国民が等しく魔道具を扱って水や火の確保ができていた。
獣の国は魔道具の文化が発達しておらず、水をくむのが面倒ならば川沿いに住めばよいという思考であった。
それはそれで、下流に住むものに汚水を流すことにつながるため、トラブルの種となっていた。
ヴォルフのこともあるが、正直この国の生活基盤を整えていく必要が早急であると考える。
セイラは頭を悩ませながら町中を歩いていくと見慣れた姿を発見し、足って駆け寄る。
「ポチおさん、何をされているのですか?」
「あ、セイラちゃん。今、火の魔道具の実演をして、普及させていたんだ。みんな頑張って火おこししてるじゃん?魔道具使えば簡単にできるよってお手本してたってわけ」
セイラは驚いていた。
この世界には商売という概念は野狐族にしかなく、物を得るためには自分で獲りに行くか、作るか、盗るのどれかであった。
ポチおはその三択ではなく『譲る』という行動であった。
弱肉強食の世界であるはずのこの世界に新たな風を取り込んできたこの男の行動に感動する。
「??どしたの?」
「い、いえ……。あなたのようなヒトは千年生きてきましたが、一人も見たことがありませんでした。やはり、生まれ育った環境が大切なようですね」
ポチおとにゃんが地上の世界から来た元ニンゲンであることは機密事項であるため、セイラは言葉を選んで話す。
ポチおがニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべながら見てくることに苛立ちを覚え、城に帰ったら説教をすると心に決める。
山羊族で恰幅の良い女性が魔道具を持って訊ねる。
「なあセイラ様。本当にこの魔道具ってものは誰でも扱うことができるのかい?」
「はい。わたくしたち鳥人族に伝わるもので、魔力を流してあげることで魔道具に封印された魔法を誰でも扱えられます。まぁ、使いすぎると壊れてしまうので、壊れたら新しいものを作らないといけませんが、それでも生活は楽になれると思いますよ?」
「じゃあさ!じゃあさ!【水】の元素魔法も封印した魔道具もあるの?」
ネズミ族の少年が身を乗り出して、目を輝かせて質問をすると、セイラはニコリと笑みを浮かべて答える。
「ええ!【飲水】を封じ込めれば使えるようになりますよ。」
「やったー!これで水を汲みに行かなくて済むよー!!」
本当に嬉しかったようで、ピョンピョンと跳ねながら他の仲間たちにも教えていく。
(さて……どう普及しましょうか……)
「そこの少年。ちょっとこっち来て?」
ポチおは先ほどのネズミ族の少年を招く。
魔道具と桶を取り出し、魔道具を持たせる。
急須のような形をした魔道具はミスリルの塊であり、急須の形に削り出したものだった。
実際には魔力を込めると素材が柔らかくなる特性を活かして叩いて形を整えたものである。
空洞もなく、金属の塊を見て少年は首を傾げる。
ポチおはニカっと笑い、説明をする。
「魔力をこの魔道具にこめてごらん?」
言われるように魔力を込めると、先端から水が流れ出し、少年は驚く。
そして、穴もないところから出てくるのが面白かったのか、さらに魔力を込めて大量の水を生み出した。
もちろん、後に魔力切れになったのは言うまでもない。
魔力切れは日常茶飯事ではないが、狩りをする者には付きものであり、国民には知られているので特に少年が倒れたことに何も問題はなかった。
ポチおはヘラヘラと笑いながらぼそっと呟く。
「魔道具の見返りが貰えたらいいなぁ……」
セイラは眉間にシワを寄せてポチおを睨む。
その表情に、ヘラヘラとした笑みは引き攣ったものに変わる。
「見返りなんてありませんよね!?ね?」
「は、はい……国民の生活基盤活性のため無償で譲渡いたします……」
セイラの怒気に圧倒され、渋々、魔道具を無償譲渡することになったのである。
こうして、国民の生活は少しずつ良くなっていくのであった。
それを流したのはセイラであり、彼女はふくの思惑と反対の事をしていた。
「もう、ふく様が悪者になる必要はないですよ……。十分貴女は苦しんだと思います。それ以上は傷つく必要がありません……」
そう呟きなが、町中を歩いていた。
セイラは町中を歩き、国民の生活を見ていた。
住居は種族によってまちまちだが、一番良い住処は洞穴であり、運悪く岩山や砂山が手に入らなかった種族や掘る力や爪を持たぬものは申し訳程度の岩で壁を作った貧相な住宅ばかりであった。
それを住宅といっていいのか不明だが、鳥人族も似たようなものの巣を作ることしかできないため、セイラは住宅と言い張ることしかできなかった。
そして、生活レベルは非常に差があった。
元素魔法【火】と【水】を使える者は非常に快適な生活ができているようであった。
特にヴォルフの魔法の影響で凍土と化しているこの世界に【火】を扱えることは非常にアドバンテージであった。
暖を取ることも、調理をすること(肉を焼くぐらいしかしない)ができるため、火種を作る必要がなく、扱えないものは必死に火をおこし、それが途絶えないようにしていた。
水に至っても【飲水】の魔法で飲み水を作ることができるので、水がなくなる度に川まで水を汲みに行かなくてもよい。
便利な一方、使えないと重労働である。
セイラの住んでいた国では魔道具を作っていたため、国民が等しく魔道具を扱って水や火の確保ができていた。
獣の国は魔道具の文化が発達しておらず、水をくむのが面倒ならば川沿いに住めばよいという思考であった。
それはそれで、下流に住むものに汚水を流すことにつながるため、トラブルの種となっていた。
ヴォルフのこともあるが、正直この国の生活基盤を整えていく必要が早急であると考える。
セイラは頭を悩ませながら町中を歩いていくと見慣れた姿を発見し、足って駆け寄る。
「ポチおさん、何をされているのですか?」
「あ、セイラちゃん。今、火の魔道具の実演をして、普及させていたんだ。みんな頑張って火おこししてるじゃん?魔道具使えば簡単にできるよってお手本してたってわけ」
セイラは驚いていた。
この世界には商売という概念は野狐族にしかなく、物を得るためには自分で獲りに行くか、作るか、盗るのどれかであった。
ポチおはその三択ではなく『譲る』という行動であった。
弱肉強食の世界であるはずのこの世界に新たな風を取り込んできたこの男の行動に感動する。
「??どしたの?」
「い、いえ……。あなたのようなヒトは千年生きてきましたが、一人も見たことがありませんでした。やはり、生まれ育った環境が大切なようですね」
ポチおとにゃんが地上の世界から来た元ニンゲンであることは機密事項であるため、セイラは言葉を選んで話す。
ポチおがニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべながら見てくることに苛立ちを覚え、城に帰ったら説教をすると心に決める。
山羊族で恰幅の良い女性が魔道具を持って訊ねる。
「なあセイラ様。本当にこの魔道具ってものは誰でも扱うことができるのかい?」
「はい。わたくしたち鳥人族に伝わるもので、魔力を流してあげることで魔道具に封印された魔法を誰でも扱えられます。まぁ、使いすぎると壊れてしまうので、壊れたら新しいものを作らないといけませんが、それでも生活は楽になれると思いますよ?」
「じゃあさ!じゃあさ!【水】の元素魔法も封印した魔道具もあるの?」
ネズミ族の少年が身を乗り出して、目を輝かせて質問をすると、セイラはニコリと笑みを浮かべて答える。
「ええ!【飲水】を封じ込めれば使えるようになりますよ。」
「やったー!これで水を汲みに行かなくて済むよー!!」
本当に嬉しかったようで、ピョンピョンと跳ねながら他の仲間たちにも教えていく。
(さて……どう普及しましょうか……)
「そこの少年。ちょっとこっち来て?」
ポチおは先ほどのネズミ族の少年を招く。
魔道具と桶を取り出し、魔道具を持たせる。
急須のような形をした魔道具はミスリルの塊であり、急須の形に削り出したものだった。
実際には魔力を込めると素材が柔らかくなる特性を活かして叩いて形を整えたものである。
空洞もなく、金属の塊を見て少年は首を傾げる。
ポチおはニカっと笑い、説明をする。
「魔力をこの魔道具にこめてごらん?」
言われるように魔力を込めると、先端から水が流れ出し、少年は驚く。
そして、穴もないところから出てくるのが面白かったのか、さらに魔力を込めて大量の水を生み出した。
もちろん、後に魔力切れになったのは言うまでもない。
魔力切れは日常茶飯事ではないが、狩りをする者には付きものであり、国民には知られているので特に少年が倒れたことに何も問題はなかった。
ポチおはヘラヘラと笑いながらぼそっと呟く。
「魔道具の見返りが貰えたらいいなぁ……」
セイラは眉間にシワを寄せてポチおを睨む。
その表情に、ヘラヘラとした笑みは引き攣ったものに変わる。
「見返りなんてありませんよね!?ね?」
「は、はい……国民の生活基盤活性のため無償で譲渡いたします……」
セイラの怒気に圧倒され、渋々、魔道具を無償譲渡することになったのである。
こうして、国民の生活は少しずつ良くなっていくのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる