【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

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13歳の沈着。

運河船就航。

 まずは三通の手紙から始めた。エフェルト公爵、商業ギルド本部、そしてラジュラエン翁へ。本文は短く、同封の条件票を厚くする。月一回・半刻/守秘/議事は二行要旨+押印/退出自由/饗応なし。言った言わないが起きないように、末尾には双方の拒否条件欄も設けた。

 三日で返書が揃う。三通とも快諾。公爵筋から法衣貴族が一名、ギルドから上席が一名、翁の紹介で政治学者が一名。僕は順に面接へ向かい、その場で条件票を契約書に起こし、三者の印を受けた。

 法衣は第一声がそれだった。「“慈善”は施し手の満足に堕ちやすい。規範文では“扶助”に」赤で一線。
 ギルド上席は「数を三つだけ」と笑った。枚数・金額・待ち時間、それ以外は捨てる。
 政治学者は「制度は反対者のために設計」と書き、反対者地図の凡例と、塗り直し日=月3回の夕刻を指定した。

 窓枠の日程表に赤い丸が三つ増える。王都とルステインを毎月三往復……と眉をひそめたところで、エメイラが半眼で刺す。

「何のために運河に投資したのよ。1日半で来られるじゃない」

 目から鱗が落ちた。僕はすぐ運河管理局に航行許可を出し、社交シーズン中だが急いで獣人隊商に乗り込みルステイン・ドワーヴンベースへ向かった。ここはリョウエスト商会の拠点だ。工房長のヂョウギが図面台の前で一礼する。

「リョウ様、要件を賜れますか」
「通い舟を作る。小型推進器(二重反転・囲い)を載せたい。規定波高は厳守。それから名誉貴族の単独乗船は禁止、必ず帯同者を」
「承知いたしました。乗員構成は」
「船頭一・機関一・護衛二・書記一・監督(僕)で常時六。交代要員はベースから」

 ヂョウギはすぐに仕様をまとめ上げる。
• 船型:細長平底・浅喫水、全長八間半/梁二間。
• 推進:囲い輪付二重反転×2(左右独立)。低渦モードと巡航モードを足ペダルで切替。
• 操舵:片手操縦桿+小卓、幌付。
• 乗員席:後部二列四座、舳左右立ち台。安全帯・速脱係留具あり。
• 整備:推進軸は油槽窓で即点検、絡み止め枠は手払い可能。
• 規制:閘門・市街は人歩き、巡航区間のみ加速。追い越し禁止。

「収納で全ては御身に。したがって貨物室は不要、で相違ございませんね」
「相違ない。盗難は僕の側で潰す」
「では、通いの靴として仕立てます。十五日で叩き上げます」

 丁重な口ぶりの中に、ヂョウギの仕事の早さが滲む。僕は安心して社交に戻る為獣人隊商にのりこんだ。

  ◇

 進水と同時に試験航行。船頭は水竜人のエイミル、機関はドワーフのブロム、護衛アインスとフィア、書記はストーク、僕を含めて六名。出航前にストークが帯同名簿を回し、全員が時刻と印を二行で残す。名誉貴族の単独旅行禁止は、紙で担保する。

 囲い輪の中で逆回りの二枚羽が低く唸り、舟は波を立てない。閘門前で人歩き、速脱の係留、昇降待ちの間に小卓で二行要旨を一本仕上げ、扉が開けば足で低渦モードのまま滑る。巡航に移れば河心のみ標準速、土手の草は揺れない。対向の曳舟とすれ違うときは左右推進を微妙にずらし、舟体を筆先のように捌く。規程内、合格。

  ◇

 初便で王都入り。第一日目の最初は法衣。
「“扶助”を先に置く」赤で二行、押印。
 正午前に商業。枚数・金額・待ち時間の板を見せると、「三つ以外は捨てる」と印。
 夕刻手前に政治。反対者地図の凡例と塗り直し日=8日毎夕刻、合意。どれも半刻で切れた。

 舟へ戻り、操舵席の小卓でローランへの診療案件三本を束ね、ストークが清書する。護衛は交代で立ち台、機関は囲い輪の耳を傾け「異音なし」。収納から必要書類を出し入れしつつも、二行要旨+押印を舟外に必ず残す。見せるより、残す。

  ◇

 その夜、進捗報告をローランへ。

【借りる眼・運用開始/運河便】
・合議:法衣・商業・政治、三件とも半刻で完了。要旨二行・押印済み。
・舟:囲い輪付二重反転×2、規定波高内。帯同6名(名誉貴族の単独移動禁止遵守)。
・行程:ルステイン、王都間=一昼夜+半日(閘門待ち含)。
・備考:帯同名簿(出航前)を毎便作成・保存。


 返札は短い。「翌日の速度が上がった。帯同名簿の写しを診療に持参せよ。……R.D.」

  ◇

 ルステインへ戻ると、ヂョウギが待っていた。
「リョウ様、航行はいかがでございましたか」
「上々だ。靴として最高だよ。替えの“底”も用意を」
「承りました。浅瀬用の囲い縁と、流れ強い区間用の縁を差し替え式に。推進器本体は触らずに済みます」
「助かる。次は五日後の診療。昨日印の版木二丁と印影照合票、舟で王都に持っていく」

「版木は本日中に仕上げます。台帳にも製作番号を記入させます」

 工房の灯が増え、槌音が続く。借りる眼は月三度。そして診察は八日毎。借りる眼は基本的に診察の日をお願いしている。舟は通いの靴として動き、収納が要を守る。
 僕は新しい帯同名簿の紙束を収納へ滑らせ、ストークに一言。

「記録は国の血だ、と彼は言った。だから紙が先だ。台帳を増やしておいて」

「はい、リョウ様」

 水面は静かに流れ、時刻は守られる。僕は操舵席の幌を畳み、次の診断日に向けて、舟を靴のまま磨いた。
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