【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

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13歳の沈着。

志を募る。

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 先王の遺言で建つ静養の家は、王の安寧を司る場所だ。ならば、その安寧を皆で支えたい……そう思って、匿名援助を募る仕立てを整えることにした。王都の財務大臣、侍従長サイスさん、ローランと僕の四人で卓を囲み、紙の上に方法を組み立てていく。

「大きく三つに絞りましょう」ローランが言う。
「王都とルステインに据える募金箱。商業ギルドが発行する志券。そして速文で受け付ける志。この三つを一本の勘定で束ね、名は出さず、用途は明記」

 財務大臣は帳面を指で叩いた。
「匿名ゆえに、政治の礼に絡め取られてはならぬ。志が優遇や口利きに変わる余地を紙で潰せ」
「そこは私が文言を起草します」サイスさんが頷く。「志は名誉ではなく、安寧の糧。名札は掲げず、礼状は出さず、ただ使途だけを掲示する」

 まずは募金箱。箱は厚い木で作り、鍵は三つ。王都の箱は宮内と工務と商業ギルド、ルステインの箱は領主家と詰所と商業ギルド……それぞれ三者で鍵を分け、開封は三者立ち会いで行う。箱の口には薄い布を張って音をやわらげ、箱の側面には小さく札を掲げた。

一、声を小さく、歩をゆっくり、香りを薄く。
二、志は名を問わず、使途のみを問う。
三、志は礼に替えず、安寧に替える。

 箱の脇に、用途を選べる小札も用意する。庭の樹一本、手すり一間、軽い匙十本、文庫の本一冊、湯守の薪一日、夜の灯一刻……選んだ小札を志とともに差し入れれば、勘定と連動する。名は書かない。

 次に志券。商業ギルドが刷り、額面は七つ。ひと札は匙十本、ふた札で小鉢十、三札で手すりの半間……と、すべて使途と結びついている。志券は誰でも買えるが、記名欄はない。変色インクの細い帯を入れて偽造を防ぎ、購入時に用途番号だけを選んでもらう。志券はギルドの窓口と各詰所で受け取り、回収された志券は八日ごとに集計して掲示板に二行要旨で載せる。

例)手すり一間×七、庭の樹×五、文庫の本×十八……合計。

 最後に速文の志。遠方でも志が届くよう、王都塔とルステイン塔で志状を受ける。志状は二枚複写で、一枚は勘定へ、一枚は掲示へ。金子は商業ギルドの信用札で裏打ちし、速文の紙と番号を紐づける。志状の文面は簡潔に。

「静養の家へ志。用途……任せる/番号を記す。名……記さない」

 速文の受信は八日ごとにまとめ、志券と同じ掲示に合算する。

「名を出したいと望む者は、必ず現れる」財務大臣が言う。
「掲げません」サイスさんはきっぱりと言った。「掲げるのは使途だけだ」
「ただ、志を祭り事にしてしまうと、音がやかましくなる」僕が続ける。「静養の礼に反します。だから、箱も券も速文も、音の薄い所作に」
「もう一つ」ローランが紙を返す。「志は金だけでなく、物と労も受ける窓を設けましょう。物志……布や紙や薪。労志……石積み、回廊磨き、庭の植え替え。その場合も、名は書かせない。『今日の労志、手すり磨き二間分』とだけ二行要旨に記す」
 財務大臣がうなずく。
「勘定は本体工事と分け、志勘定として簿冊を独立させる。監査は三者。掲示は八日ごと。よかろう」

 その場で役割が決まった。サイスさんは公示文の言葉を整え、財務大臣は志勘定の簿冊を設け、商業ギルドは志券の版と流通路を作る。僕は掲示の意匠と用語を決め、ローランが運用票と集計表を引く。決まり事は三呼吸で異論、七呼吸で支え。拍は崩れない。

 王都とルステインで同時に公示が出た日、僕はルステインの箱の前に立った。箱は静かで、風だけが通る。最初に近づいたのは、荷車を押す若い父親だった。小さな手が父の手から離れて、布の上に小さな硬貨が落ちる。音はほとんどしない。父は用途札から「文庫の本一冊」を選び、子は「軽い匙十本」を選んだ。二人は礼をして、黙って去っていった。
 昼過ぎ、棟梁が来て志券を一札分だけ買い、「手すり半間」とだけ言って去る。夕刻、年配の女将が薪の束を置いていった。札は「湯守の薪一日」。夜には旅の商人が速文の窓口で志状を一通託し、「任せる」に印をつけた。名は記さない。

 八日目。掲示板に最初の二行要旨が並ぶ。

志券……手すり半間×三、軽い匙十本×九、文庫の本×二十四。
箱志……薪一日×十二、小鉢十×四、庭の樹一本×五。
速志……任せる×十七、医の間の布×六。

 名前はどこにもない。あるのは、安寧に形を与える言葉だけだ。詰所の前で紙を見上げる人々の顔は静かで、どこか明るい。

 その日の夕方、商業ギルドの会所で小さな合評を開いた。財務大臣、サイスさん、ギルド長、ローラン、僕。
「音が薄い。良い兆候です」サイスさん。
「偽券の気配なし。帯もしっかり変色する」ギルド長。
「物志・労志の受付は想定より多い」財務大臣。
「掲示の言葉をもう少し短く。見る人がわかるように」ローラン。
 三呼吸の異論は出ず、七呼吸の支えが落ちる。

 夜、箱を三者で開封する刻。鍵が三つ、音なく回り、布の向こうから志が現れる。僕は札ごとに用途を分け、志券分と速志分の帳を突き合わせ、二行要旨を添える。
例)軽い匙……志券九、箱志なし、速志二。合計十一。
 紙が積み上がるたび、静養の家のどこかが確かに前へ進むのが見えた。手すりの半間が一本になり、庭の樹が三本になり、文庫の本が十冊ずつ束になる。誰の名もないが、誰かの呼吸がそこに宿る。

 帰り道、ローランが肩を並べた。
「志は、名を薄くすると強くなる」
「うん。名は風に、形は石に」
「八日ごとに掲げる二行は、街の拍になるでしょう」
「そうなれば良いな」
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