【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

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14歳の助走。

マチルダの合流。

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 領都を出て、僕らは一度ルステインへ戻った。運河沿いの風は涼しく、街の気配が胸の奥の緊張をほどいていく。寄り道にドワーヴンベースへ入ると、作業棟の裏手で小声の輪。怪しい密談……というより顔つきが楽しそうだ。僕が足音を立てると、ドワーフたちは一斉に振り向き、ばつの悪そうに帽子を脱いだ。

「ヂョウギはどこ?」

「長屋の設計台でさ。呼んでくる」

 ほどなく、ヂョウギが小走りに現れた。図板を抱えたまま、息を弾ませている。

「リョウ様、どうされました」

「王都で会議だ。来てほしい」

「王都で速文板を借りられるなら良いですよ。図のやり取りが要りますので」

「うちのを使えば良い。用意する」

「では、参りましょう」

 そうして皆で運河船に乗り、王都へ戻る。タウンハウスに着くや、キースが玄関まで迎えに出てきて、柔らかく頭を下げた。

「お帰りなさい。妻のマチルダです」

 久しぶりのマチルダは、あの頃のまま、背筋の伸びた笑顔だった。すでに庶務として働き始め、机の上の書類は厚み別に美しく揃っている。

「改めて、よろしく」

「はい。滞りなく回しますね」

 そこへアインス、ツヴァイ、フィアが顔を出す。

「また探って参りやす」「王都筋は任されます」「すぐ出ます」

 三人は影のように消え、入れ替わるようにローランが来た。

「リョウ様、宰相から。戻り次第、来るようにと。ご一緒に」

 僕らは王城へ向かう。侍従に先導され、宰相の執務室に通されると、宰相は開口一番、封蝋の施された書付を差し出した。

「工事許可書、領の運営許可書です。新領の工事開始、人材募集や役所の運営は、陞爵の日の十五日前から。日程的に無理をさせる詫びと今回の代官の件の詫びだと、陛下のお言葉。ありがたくお受けください」

「陛下に御礼をお伝えください。必ず良い働きでお返しします」

 許可書を胸に抱え、タウンハウスへ戻るとすぐ会議。顔をそろえたのは、ローラン、ストーク、キース、アール、カレル、ミレイユ、マチルダ、ヂョウギ、エメイラ、ミザーリ。

 まずローランから報告が上がる。

「王都は役人筋、貴族筋、周知完了。おおむね好意的。ただ、一部のギルドが新街の件で難色です。ギルドがギルド員から集めたお金は運上金として国や領に回る。流れが変わるのを嫌っている。ここを宥めるのが骨ですね」

「僕が回る。全部のギルドを挨拶して歩く。今は顔を出す価値がある」

「本来なら伯爵がやることではありませんが、今回は効果的でしょう」

 頷き合ってから、僕の番。耳役を置いたこと、港、旧領都、町や村を回ったこと、港の図面が上がったこと、見回りが回り始めたこと、採石場を見つけ運用に向けた段取りをしたこと。要点を短く並べ石を収納から取り出す。

 ヂョウギが目を輝かせた。

「採石場が見つかりましたか! 出る石は花崗岩と。目は素直、肌は締まり、乾き見本はお持ちですか」

「ここに。『一尺立方』も『半尺二段』も十分。刻印は上書きで通す。検収は二重表記で」

「申し分なし。基礎も敷も、目地の癖まで揃えられます」

 話は自然と都市計画へ移る。ヂョウギは図板を開き、短い言葉で要点を打つ。どこに何を置く……と細かく言い立てるのではなく、人の流れと作業の流れを合わせる考え方、火と水の距離感、荷が自然に集まって自然に散る通し方。聞いているうちに、机の上にまだない街の息づかいが、うっすら見えてくる。

「必ず良いものを作ります。リョウ様の領にふさわしい、息の通った街を」

「頼む。それからグラドがドワーフが五十人派遣してくれる。その職種の割合と差配を頼む」

「かしこまりました」

 そこへ僕は工事許可書と役所の運営許可書を卓の中央に置いた。

「そして、工事開始日。役所の運営開始日。人材募集開始日。陞爵の十五日前から許可が出た」

「なんですとー!」

 ヂョウギが素で声を上げ、次の瞬間には図板を抱えて立っていた。

「速文、速文……材料、職人、運び、全部前倒し……!」

「うちの速文板、使っていい。ヂョウギの名で通す」

「助かります!」

 彼は嵐のように部屋を飛び出していった。残った僕らは、笑い合いながら次を詰める。

「ギルド巡りは明日から。キース、動線を。誰から会う?」

「まずは大きいところの顔を押さえつつ、現場とつながりの強い中小を挟みます。三日で一巡、五日で二巡目」

「ストークは先触れを」「承知しました」

「アールは文案を短く。『何をし、何をしないか』だけ。長い口上は要らない」

「任せてください」

「カレルは支払い線の再確認。港、採石、丁場、耳役。遅れを出さない」

「すでに台帳を引き直しています。マチルダ、写しを」

「こちらに」

「ミレイユは小人の書記たちと仕事のすり合わせ。どこでも『二つの高さ』を忘れずに」

「用意します」

「エメイラ、現場の手当の要点をもう一式。粉、目、胸、休み、うがい」

「書いて置いていくわ。薬も手配する」

「ミザーリは護衛の割り振り。王都巡りは人目が多い。荒立てない」

「心得た。陽炎隊と組ませる」

 段取りがひと通り整ったところで、ローランが許可書を見つめて静かに言った。

「十五日前。王様の配慮です。これを力にしましょう」

「うん。走る日が早まった。なら、呼ぶ日も早められる」

 窓の外は暮れ色に変わり始めている。アインスたちが集めてくる風の噂、ヂョウギが流す手配の速さ、王都の空気に混じる期待と不安。そのすべてを、短く束ねて明日に渡すだけだ。

「よし。動こう」

 僕は立ち上がり、許可書を収納に収めた。机の上に残ったのは、薄く乾き始めた墨の匂いと、皆の頷きだった。
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