84 / 806
神の修行。
少年と僕。
新しい毎日が始まった。僕はリーリシアと共に起きて、美味しい朝食を創り、リーリシアを送り出してから修行に行く。1日1回ナーディルさんに修行を見てもらい、ナーディルさんにご飯を振る舞う。たまにアネーシャさんが覗きにくるので採取の成果を見せ、また新たな薬草を教えてもらい、代わりに甘味をご馳走する。イサリナさんは何かと世話を焼いてくれるので、お礼に家事の便利グッズを。夕方、リーリシアが帰ってくる。その前に僕は夕食を用意する。最近はキッチンを作ってたまに料理をするようになった。リーリシアが帰ってきたら食事。食事が終わるころマデリエネさんとグンヴォルさんが来るので一緒にお茶とデザートを楽しみながら会話をする。マデリエネさんとは科学や化学、物理学の話をする。グンヴォルさんとは物作りの話や経済の話。どれも学校で習った程度の物だが二人は満足そうだ。二人が帰ったのちはリーリシアと二人で過ごす。そして二人でベッドに入る。そんな毎日だ。
リーリシアは僕と同じ時間を過ごす為に職場の時間環境を調整したらしい。おかげで仕事が捗ると言っていたが大丈夫なのだろうか。休日はぐったりと寝て過ごしている事が結構ある。それだけ重圧がかかっているのだろう。僕は僕なりに彼女のサポートをしようと頑張っている。
そんなある日、僕はかなり遠くから僕を見ている少年がいる事に気づいた。修行の途中だったから気にせずに続ける。修行を終えた時彼は消えていた。
その日を境に少年は1日に一度僕の様子を観に来るようになった。もし彼だったら急に話しかけたりしたら逃げてしまうだろう。だから知らないふりをして剣を振るい、走り、薬草を取り続けた。
そんな日々を過ごしていたある日…20日が経っていた…彼は根負けしたように僕に話しかけてきた。
「お前は僕が見えないのかい?」
自分が無視されているのに腹が立ってるのかな?
「見えてますよ。ただ、話したそうに見えなかったのでそのままにしておいたのです」
「そ、そうか。僕が偉いから、お前は遠慮していたのだな」
「そうですね。偉いと思っています」
「そ、そうか。お前は何でここにいるんだ?」
「創造神様から言われてここにいます。お聞きになっていますよね?ロスハーン様」
「お、お前は僕の事を知っているのか?」
「いえ。知りません。ただ、自分がロスハーン様の立場なら同じように僕の事を観察するだろうと思いますので」
「お、お前と一緒にするな」
「そうですね。失礼しました」
「お前、僕の事を馬鹿にしてるな?」
「いえ。ただただ感心してますよ。ロスハーン様の仕事は誰にでもできるものじゃないです。人々は一歩間違えれば宗教にのめり込むものですからね」
「お、おう。お前は話せそうなやつだな」
「ありがとうございます」
「そ、それはそれとしてだな、お前、お母さんから離れろ!」
「うーん。困りました」
「なんでだ。お母さんは創造神様から言われてお前と結婚させられるんじゃないのか?」
「確かにその一面はあります。ですがこれはリーリシアの意思でもあります」
「呼び捨てするな!」
「失礼しました。リーリシアさんはようやく、ようやく自分の事を大事にしようとしています。今まで身を粉にして働いてきましたよね、リーリシアさんは?」
「そうだが、何だ?」
「障害である兄の問題が片付いて、初めて自分らしく生きようとしています。リーリシアさん、創造神様に言われたからでなく、僕をパートナーに選んでくれました」
「そうなのか?」
「はい。その気持ちを僕は踏みにじれないんですよ。そんな事をすればリーリシアさんが悲しむ。だからロスハーン様の言うように離れることはできないんです」
「だが、お前は許せない!ぽっと出のお前にお母さんは渡さない!」
「困りましたね。僕も諦めるつもりはないんですよ。いっそのこと僕の事殺してください」
「何故だ?」
「そうして初めて諦めがつくからです」
「だが殺したらお母さんが悲しむだけじゃないか!」
「そうですね」
「金や名誉や力や女をくれてやるぞ?」
「そんなものにこの想いは変えられません」
ロスハーンさんは僕の襟首を掴む。
「本当に殺すぞ。いいのか?」
殺気がまるでないから怖くない。
「どうぞ、おやりなさい。あなたがそれほどにしかリーリシアを思っていない証明になります。僕は勝ち逃げできます」
「くそっ。何なんだお前は」
「ただの地球から転生してきた5歳児です」
「くっ」
「そうだ、僕は三年経ったら地上に降ります…5歳児として。そして人間として生きます。その生涯で僕と言う人間を見極めてください、ロスハーン様」
「くっ。わかった。そうしよう。お前が大したやつだったら認めてやる。せいぜいがんばるんだな」
「はい。がんばります」
僕はニコリとした。
「気持ち悪いやつだな」
「笑わないより良いと思いますよ」
「お前、三年間ずっとそうやって訓練するつもりか?」
「ええ。なるべく長生きするつもりですからね」
「それじゃあお母さんを待たせることになるだろ?」
「そうですが、自分のために早死にしたと思われたらリーリシアさんが悲しむじゃないですか。だから天寿を全うするまで僕は生きます」
「変なやつだ、お前は」
「ええ。変なやつです」
「お前と話してたらおかしくなる。僕は行くぞ」
「ええ。また」
リーリシアは僕と同じ時間を過ごす為に職場の時間環境を調整したらしい。おかげで仕事が捗ると言っていたが大丈夫なのだろうか。休日はぐったりと寝て過ごしている事が結構ある。それだけ重圧がかかっているのだろう。僕は僕なりに彼女のサポートをしようと頑張っている。
そんなある日、僕はかなり遠くから僕を見ている少年がいる事に気づいた。修行の途中だったから気にせずに続ける。修行を終えた時彼は消えていた。
その日を境に少年は1日に一度僕の様子を観に来るようになった。もし彼だったら急に話しかけたりしたら逃げてしまうだろう。だから知らないふりをして剣を振るい、走り、薬草を取り続けた。
そんな日々を過ごしていたある日…20日が経っていた…彼は根負けしたように僕に話しかけてきた。
「お前は僕が見えないのかい?」
自分が無視されているのに腹が立ってるのかな?
「見えてますよ。ただ、話したそうに見えなかったのでそのままにしておいたのです」
「そ、そうか。僕が偉いから、お前は遠慮していたのだな」
「そうですね。偉いと思っています」
「そ、そうか。お前は何でここにいるんだ?」
「創造神様から言われてここにいます。お聞きになっていますよね?ロスハーン様」
「お、お前は僕の事を知っているのか?」
「いえ。知りません。ただ、自分がロスハーン様の立場なら同じように僕の事を観察するだろうと思いますので」
「お、お前と一緒にするな」
「そうですね。失礼しました」
「お前、僕の事を馬鹿にしてるな?」
「いえ。ただただ感心してますよ。ロスハーン様の仕事は誰にでもできるものじゃないです。人々は一歩間違えれば宗教にのめり込むものですからね」
「お、おう。お前は話せそうなやつだな」
「ありがとうございます」
「そ、それはそれとしてだな、お前、お母さんから離れろ!」
「うーん。困りました」
「なんでだ。お母さんは創造神様から言われてお前と結婚させられるんじゃないのか?」
「確かにその一面はあります。ですがこれはリーリシアの意思でもあります」
「呼び捨てするな!」
「失礼しました。リーリシアさんはようやく、ようやく自分の事を大事にしようとしています。今まで身を粉にして働いてきましたよね、リーリシアさんは?」
「そうだが、何だ?」
「障害である兄の問題が片付いて、初めて自分らしく生きようとしています。リーリシアさん、創造神様に言われたからでなく、僕をパートナーに選んでくれました」
「そうなのか?」
「はい。その気持ちを僕は踏みにじれないんですよ。そんな事をすればリーリシアさんが悲しむ。だからロスハーン様の言うように離れることはできないんです」
「だが、お前は許せない!ぽっと出のお前にお母さんは渡さない!」
「困りましたね。僕も諦めるつもりはないんですよ。いっそのこと僕の事殺してください」
「何故だ?」
「そうして初めて諦めがつくからです」
「だが殺したらお母さんが悲しむだけじゃないか!」
「そうですね」
「金や名誉や力や女をくれてやるぞ?」
「そんなものにこの想いは変えられません」
ロスハーンさんは僕の襟首を掴む。
「本当に殺すぞ。いいのか?」
殺気がまるでないから怖くない。
「どうぞ、おやりなさい。あなたがそれほどにしかリーリシアを思っていない証明になります。僕は勝ち逃げできます」
「くそっ。何なんだお前は」
「ただの地球から転生してきた5歳児です」
「くっ」
「そうだ、僕は三年経ったら地上に降ります…5歳児として。そして人間として生きます。その生涯で僕と言う人間を見極めてください、ロスハーン様」
「くっ。わかった。そうしよう。お前が大したやつだったら認めてやる。せいぜいがんばるんだな」
「はい。がんばります」
僕はニコリとした。
「気持ち悪いやつだな」
「笑わないより良いと思いますよ」
「お前、三年間ずっとそうやって訓練するつもりか?」
「ええ。なるべく長生きするつもりですからね」
「それじゃあお母さんを待たせることになるだろ?」
「そうですが、自分のために早死にしたと思われたらリーリシアさんが悲しむじゃないですか。だから天寿を全うするまで僕は生きます」
「変なやつだ、お前は」
「ええ。変なやつです」
「お前と話してたらおかしくなる。僕は行くぞ」
「ええ。また」
あなたにおすすめの小説
異世界転生したので、文明レベルを21世紀まで引き上げてみた ~前世の膨大な知識を元手に、貧乏貴族から世界を変える“近代化の父”になります~
夏見ナイ
ファンタジー
過労死したプラントエンジニアの俺が転生したのは、剣と魔法の世界のド貧乏な貴族の三男、リオ。石鹸すらない不衛生な環境、飢える家族と領民……。こんな絶望的な状況、やってられるか! 前世の知識を総動員し、俺は快適な生活とスローライフを目指して領地改革を開始する!
農業革命で食料問題を解決し、衛生革命で疫病を撲滅。石鹸、ガラス、醤油もどきで次々と生活レベルを向上させると、寂れた領地はみるみる豊かになっていった。
逃げてきた伯爵令嬢や森のエルフ、ワケありの元騎士など、頼れる仲間も集まり、順風満帆かと思いきや……その成功が、強欲な隣領や王都の貴族たちの目に留まってしまう。
これは、ただ快適に暮らしたかっただけの男が、やがて“近代化の父”と呼ばれるようになるまでの物語。
最強魔法は生活魔法!? ~異世界ではモンスター退治も生活のうち~
gagaga
ファンタジー
神の気まぐれにより異世界へと転移した主人公田辺竜太(大学生)が生活魔法を駆使して冒険したり町の人と触れ合ったりする物語です。
なお、神が気まぐれすぎて一番最初に降り立つ地は、無人島です。
一人称視点、独り言多め、能天気となっております。
なお、作者が気ままに書くので誤字脱字は多いかもしれませんが、大目に見て頂けるとありがたいです。
ただ、敢えてそうしている部分もあり、ややこしくてすいません。(^^;A
ご指摘あればどんどん仰ってください。
※2017/8/29 連載再開しました!
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ひだまりのFランク冒険者
みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。
そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。
そんな中
冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。
その名は、リルド。
彼は、特に何もない感じに毎日
「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。
この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
[完]異世界銭湯
三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。
しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。
暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…