155 / 806
旅立つ者。
役人さん達がやってきたぞ。
王様とエフェルト公爵様に手紙を送った6日後、僕はギピアとキースを呼んだ。
「キース、ギピア、あのね、僕の工房の、役人との、打ち合わせ付いてきて、お願い」
「かしこまりました」
「役人との折衝は僕に任せてください」
「キース、どういう、話し合いに、なるかわかる?」
「はい。基本は予算をどれだけ取れるかの攻め合いですね。なるべく多くの予算を勝ち取りましょう」
「なるほど」
「私は行政部に所属しておりましたが、財務部には色々とお世話になっておりました。その頃の人脈が活かせたらいいのですが……ともかく文官のやり口はよくわかっております。大船に乗ったつもりでいて下さい」
「ありがと。ギピア、僕の秘書で、よろしくね」
「はい。リョウ様がのちのち困らないように動いていきます」
「お城で折衝は行われるんですよね?マクシミリアン閣下のお膝元でやれるというのは一つのアドバンテージですね。閣下が後見についている、というのも表せますし、ルステインで働く役人も気楽に呼ぶこともできますし」
「キースが、戦いやすい、ようにして」
「はい」
「ギピアは僕の、無理な注文、しりぞけてね。あと役人にこれを伝えて」
「かしこまりました。これは?ふふふ…のちのち不利になりそうな点は注意してまいります」
「じゃあ、お願いね」
「行きましょう」
「かしこまりました」
馬車に乗って城に向かう。もう通いなれちゃったね。城の城壁では馬車から手を振るとすんなり通してくれる。
城門でしばらく門番さんと話した。実は門番さんて兵士の中でも偉い人がなるんだよね。この城はルステイン伯爵家に連なる家系の人達が勤めているの。じゃなきゃ簡単に色々通しちゃうもんね。
今日も門番さんに可愛がられて城に入る。侍従さんもすっかり顔馴染みだ。今日の会議の場所に連れてってくれる。マックスさんは今日は付き合ってくれない。でも困った時は呼べと言ってくれている。
3人で待っていると3人の人が入ってきた。一人がキースを見ると、「ぎょ、行政部の千手……」と呟いた。キース、そんな字名があったんだね。
キースは役人二人が知り合いだったらしい。とりあえずみんなで名乗りあったあとキースと和やかに話をしていた。
「ジャーニーキース君、久しぶりだね。良い就職先に巡り会えたようだね!心配してたけど元気そうでなによりだ」
「セルジ先輩、その節はお世話になりました。先輩もお元気そうで」
「ああ。閣下と子爵様のおかげで目の上のたんこぶの行政部が大分風通しがよくなったからね。財務部としては大助かりだよ」
「今日はよろしくお願いします」
「ああ、よろしく頼むよ」
「よろしいでしょうか?それでは『王国の料理番の工房』の会議を始めたいと思います」
「よろしく」
「はい。よろしくお願い致します」
「まずは会議に先立ちまして、こちらを会議終了後、ストラスト様にお渡ししていただけませんでしょうか?」
「拝見します」
「王城に入る際必要な書類です。こちらに来る際は必ずお持ち下さいとお伝え下さい」
「かしこまりました」
「それでは打ち合わせをはじめたいと思います」
打ち合わせは始まった。まずキースと二人で驚いたのは予算が青天井だった事だ。いくら使っても良いらしい。
「土地はスサン商会から徒歩5分のこの場所を抑えてあります」
「広すぎ。そんな広く、なくて、いいよ。こことここぐらいで」
「現実的にそれでは周りから反感を持たれると思います。子爵がおっしゃられるようにここと、ここを使う形なら周りから反感もなく、王国所有の建物ができるという安心感を与えられると思います」
「そうですか…」
という感じで逆にこっちが制限をかける始末。
「工廠部としては以下の三つのパターンの建物が良いのではないかと考えております。一つは重厚感のあるデザイン、二つ目は繊細で精緻な彫刻が施されたデザイン、三つ目は天使らしく少しメルヘンな形のデザインですね」
「キース、ギピア、どう思う?」
「私が意見を申し上げていいですか?」
「ギピア、良いよ」
「まず重厚感のある建物と精緻な彫刻の建物は周りから浮いており、子爵様が使われるとすると弊害が生まれると思われます。それは子爵様の人々に対する親しみやすさという魅力を半減してしまうと言う事です。子爵様はルステインの一領民としてのスタンスも大事にされている方なので、私としては三番をもう少し街に馴染ませる形が良いと思っております」
「自分もそう思います」
「設計変更、お願い」
「かしこまりました」
今度は内装の話だ。
「先程の建物の設計変更は、一応置いておきまして、内装の方は以下のような形が良いと思います。まずは主寝室1、ゲストルーム1、使用人の部屋3、空き部屋2。これが2階です。一階は作業室3、一つはご要望通り鍛治などの高温対応の部屋です。それから警備室1、最新式キッチンが1、ダンスルーム1、ダイニング1、風呂1、それから遊戯室1、サロン1です。いかがですか?」
「工房、じゃない」
「子爵様がおっしゃられている意味はわかりますが、急な来客対応に対して用意しておく事が必要だと思われます。ここに領民を時々招くなどの催しをすればギピア氏言うところの親しみやすさが増すのではないでしょうか」
「ダンスルームは、いらない」
「子爵様はダンスはなさらないのですか?」
「僕、料理番だから」
「キース君はどう思うかね」
「はい。子爵様、すいませんがこの内装は貴族としては標準装備、いや最低限の設備です。ない事によって弊害が生まれます。ご勘弁下さい」
「ギピア?」
「はい。キースさんと全く同意見です。王室に対しても失礼に当たります」
おおう。味方はいないのね。
「キース、ギピア、あのね、僕の工房の、役人との、打ち合わせ付いてきて、お願い」
「かしこまりました」
「役人との折衝は僕に任せてください」
「キース、どういう、話し合いに、なるかわかる?」
「はい。基本は予算をどれだけ取れるかの攻め合いですね。なるべく多くの予算を勝ち取りましょう」
「なるほど」
「私は行政部に所属しておりましたが、財務部には色々とお世話になっておりました。その頃の人脈が活かせたらいいのですが……ともかく文官のやり口はよくわかっております。大船に乗ったつもりでいて下さい」
「ありがと。ギピア、僕の秘書で、よろしくね」
「はい。リョウ様がのちのち困らないように動いていきます」
「お城で折衝は行われるんですよね?マクシミリアン閣下のお膝元でやれるというのは一つのアドバンテージですね。閣下が後見についている、というのも表せますし、ルステインで働く役人も気楽に呼ぶこともできますし」
「キースが、戦いやすい、ようにして」
「はい」
「ギピアは僕の、無理な注文、しりぞけてね。あと役人にこれを伝えて」
「かしこまりました。これは?ふふふ…のちのち不利になりそうな点は注意してまいります」
「じゃあ、お願いね」
「行きましょう」
「かしこまりました」
馬車に乗って城に向かう。もう通いなれちゃったね。城の城壁では馬車から手を振るとすんなり通してくれる。
城門でしばらく門番さんと話した。実は門番さんて兵士の中でも偉い人がなるんだよね。この城はルステイン伯爵家に連なる家系の人達が勤めているの。じゃなきゃ簡単に色々通しちゃうもんね。
今日も門番さんに可愛がられて城に入る。侍従さんもすっかり顔馴染みだ。今日の会議の場所に連れてってくれる。マックスさんは今日は付き合ってくれない。でも困った時は呼べと言ってくれている。
3人で待っていると3人の人が入ってきた。一人がキースを見ると、「ぎょ、行政部の千手……」と呟いた。キース、そんな字名があったんだね。
キースは役人二人が知り合いだったらしい。とりあえずみんなで名乗りあったあとキースと和やかに話をしていた。
「ジャーニーキース君、久しぶりだね。良い就職先に巡り会えたようだね!心配してたけど元気そうでなによりだ」
「セルジ先輩、その節はお世話になりました。先輩もお元気そうで」
「ああ。閣下と子爵様のおかげで目の上のたんこぶの行政部が大分風通しがよくなったからね。財務部としては大助かりだよ」
「今日はよろしくお願いします」
「ああ、よろしく頼むよ」
「よろしいでしょうか?それでは『王国の料理番の工房』の会議を始めたいと思います」
「よろしく」
「はい。よろしくお願い致します」
「まずは会議に先立ちまして、こちらを会議終了後、ストラスト様にお渡ししていただけませんでしょうか?」
「拝見します」
「王城に入る際必要な書類です。こちらに来る際は必ずお持ち下さいとお伝え下さい」
「かしこまりました」
「それでは打ち合わせをはじめたいと思います」
打ち合わせは始まった。まずキースと二人で驚いたのは予算が青天井だった事だ。いくら使っても良いらしい。
「土地はスサン商会から徒歩5分のこの場所を抑えてあります」
「広すぎ。そんな広く、なくて、いいよ。こことここぐらいで」
「現実的にそれでは周りから反感を持たれると思います。子爵がおっしゃられるようにここと、ここを使う形なら周りから反感もなく、王国所有の建物ができるという安心感を与えられると思います」
「そうですか…」
という感じで逆にこっちが制限をかける始末。
「工廠部としては以下の三つのパターンの建物が良いのではないかと考えております。一つは重厚感のあるデザイン、二つ目は繊細で精緻な彫刻が施されたデザイン、三つ目は天使らしく少しメルヘンな形のデザインですね」
「キース、ギピア、どう思う?」
「私が意見を申し上げていいですか?」
「ギピア、良いよ」
「まず重厚感のある建物と精緻な彫刻の建物は周りから浮いており、子爵様が使われるとすると弊害が生まれると思われます。それは子爵様の人々に対する親しみやすさという魅力を半減してしまうと言う事です。子爵様はルステインの一領民としてのスタンスも大事にされている方なので、私としては三番をもう少し街に馴染ませる形が良いと思っております」
「自分もそう思います」
「設計変更、お願い」
「かしこまりました」
今度は内装の話だ。
「先程の建物の設計変更は、一応置いておきまして、内装の方は以下のような形が良いと思います。まずは主寝室1、ゲストルーム1、使用人の部屋3、空き部屋2。これが2階です。一階は作業室3、一つはご要望通り鍛治などの高温対応の部屋です。それから警備室1、最新式キッチンが1、ダンスルーム1、ダイニング1、風呂1、それから遊戯室1、サロン1です。いかがですか?」
「工房、じゃない」
「子爵様がおっしゃられている意味はわかりますが、急な来客対応に対して用意しておく事が必要だと思われます。ここに領民を時々招くなどの催しをすればギピア氏言うところの親しみやすさが増すのではないでしょうか」
「ダンスルームは、いらない」
「子爵様はダンスはなさらないのですか?」
「僕、料理番だから」
「キース君はどう思うかね」
「はい。子爵様、すいませんがこの内装は貴族としては標準装備、いや最低限の設備です。ない事によって弊害が生まれます。ご勘弁下さい」
「ギピア?」
「はい。キースさんと全く同意見です。王室に対しても失礼に当たります」
おおう。味方はいないのね。
あなたにおすすめの小説
異世界転生したので、文明レベルを21世紀まで引き上げてみた ~前世の膨大な知識を元手に、貧乏貴族から世界を変える“近代化の父”になります~
夏見ナイ
ファンタジー
過労死したプラントエンジニアの俺が転生したのは、剣と魔法の世界のド貧乏な貴族の三男、リオ。石鹸すらない不衛生な環境、飢える家族と領民……。こんな絶望的な状況、やってられるか! 前世の知識を総動員し、俺は快適な生活とスローライフを目指して領地改革を開始する!
農業革命で食料問題を解決し、衛生革命で疫病を撲滅。石鹸、ガラス、醤油もどきで次々と生活レベルを向上させると、寂れた領地はみるみる豊かになっていった。
逃げてきた伯爵令嬢や森のエルフ、ワケありの元騎士など、頼れる仲間も集まり、順風満帆かと思いきや……その成功が、強欲な隣領や王都の貴族たちの目に留まってしまう。
これは、ただ快適に暮らしたかっただけの男が、やがて“近代化の父”と呼ばれるようになるまでの物語。
最強魔法は生活魔法!? ~異世界ではモンスター退治も生活のうち~
gagaga
ファンタジー
神の気まぐれにより異世界へと転移した主人公田辺竜太(大学生)が生活魔法を駆使して冒険したり町の人と触れ合ったりする物語です。
なお、神が気まぐれすぎて一番最初に降り立つ地は、無人島です。
一人称視点、独り言多め、能天気となっております。
なお、作者が気ままに書くので誤字脱字は多いかもしれませんが、大目に見て頂けるとありがたいです。
ただ、敢えてそうしている部分もあり、ややこしくてすいません。(^^;A
ご指摘あればどんどん仰ってください。
※2017/8/29 連載再開しました!
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ひだまりのFランク冒険者
みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。
そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。
そんな中
冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。
その名は、リルド。
彼は、特に何もない感じに毎日
「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。
この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
[完]異世界銭湯
三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。
しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。
暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…