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6歳の力走。
初めての林。
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「リョウー。あなたこれ着てみてね」
「主よ、それを着て早く外に行きましょう」
工房に突然来たエメイラとミザーリにそんな事を言われたのは次の日の午前の事であった。
渡されたのはレザーの上下。いわゆる革鎧ってやつだった。
「これ、どうしたの?」
「マダム・ルステインにサイズを聞いて革細工師に作ってもらったの。魔法技師使って防御力をあげているわ」
「これ、着るの?」
「そうです。早く着て私たちと一緒に今日は林に行くわよー」
「ああ。修行かあ」
「主よ、行かない選択肢はありません。準備して早速出かけましょう」
「うん、良いけど。ストーク」
「かしこまりました。ツヴァイを付けましょう」
「いらないわ。私たちがいるし」
「ストークさん、怒るよ」
「しかし…」
「ストーク、とりあえず2人いるから、大丈夫」
「かしこまりました」
「ナビは?」
「ナビはあなたの力の一部だから大丈夫だわ」
「問題は主がどこまで戦うかって話です。ナビに全てまかすのか、ナビの援護に入るのか、それとも自分一人で戦うのか。できれば一人で戦って欲しいです」
「わかった。とりあえず着るね」
レザーアーマーを着込む。結構動くのに邪魔だね。
「着たよー」
「じゃあ、行きましょう。場所は馬車で30分ほど走った林よ」
「何か出る?」
「小物の魔物と魔の亜人でも力のない者たちだわ」
「そこでまず戦闘訓練です」
「わかった。ストーク、アレクとボルクに馬車を用意させて」
「かしこまりました」
『収納』から伸縮する槍を出す。
「これで行く」
「良いわね。最初に槍というのは良い選択だわよ。間合いをとりやすいわ」
アレク、ボルクが馬車を回してくる。
「私も同道を」
「わかったわ。あなたは馬車を守る事、いいわね?」
「かしこまりました」
「行きましょう」
馬車はルステインの街中を走り、門から外へ出ていつもとは違う方向に走る。しばらく走ると木々が増え出し林となった。
「もう少し奥に行ったところで止まりましょう」
「ここはまだ魔物でないの?」
「でないわ。ここはよく薬草や植物採取で人がよく入り込んでいるところだもの」
「なるほど」
馬車が突然止まる。
「リョウ様、ま、魔物です!」
「行きましょう」
「うん」
降りると大きな鼠の魔物と小さな魔の亜人達が戦っている所だった。
「リョウ、あれと戦える?」
「なんとか」
「じゃあ、お願い」
「うん」
僕は亜人に狙いをつけて魔法を唱える。
『水の、刃』
一人の亜人に当たったが当たりどころが悪くそれほどダメージを与えられなかった。
『水の、槍』
同じ亜人に当たり右肩から先を消失させる。鼠の魔物は僕に気づいて狙いを僕に変える。飛びかかってきた。槍を構える。まだ距離があるのでもう一度魔法。
『風の刃』
不可視の刃が飛んでいく。鼠の魔物の足を傷つける。距離がつまってきた。白兵戦だ。しっかりと足を踏ん張り槍を構える。
「しっ!」
前突き。前足に当たり機動力を奪う。もう一度突き。顔に当たる。嫌な感触がするがまだ致命傷ではない。鼠は噛みつきに来るが大きく避け胸に突き。またも嫌な感触が槍から伝わる。鼠の魔物は絶命した。
今度は魔の亜人達が徒党を組んで襲ってくる。右腕を失ったものを合わせて3匹だ。一対一の状況を作らないと。
『風の嵐』
風の嵐で3匹を吹き飛ばす。一番近くにいるものに対して槍を構えてチャージする。喉に当たり首を貫く。槍を引き抜くと赤い血が吹き出し亜人は倒れ込む。あと二匹か。
「油断なく、油断なく」
そう言いきかせて相手の行動を見る右腕のない個体が左手で棍棒を握り走ってきた。槍を払う。足に当たり倒れ込む。すかさず頭に槍を刺す。苦悶の表情を浮かべる亜人。ぞくっと寒気がするが槍を更に押し込む。ぴくっと動くと動かなくなる。
「残り、一匹」
最後の亜人は逃げ腰だった。逃げないように森側に回り込む。槍を構える。逃げるのを諦めたのか亜人は左手に握った短剣を見せつけるように構える。あれ、元は誰かが使ってたものだな。そして亜人は右手に石を握り投げつけてきた。僕は冷静に避ける。亜人は走ってくる。槍を構え直して構えを取る。ナーディルさんに散々習った基本の構えだ。
「ギュへっ!」
亜人が飛びかかってくる。カウンター気味に左肩に一撃、素早く槍を引いて腹に一撃。亜人はよろけるが死んでいない。槍を引き抜く。亜人は膝をつく。ガラ空きの首に槍を当てる。亜人と睨み合いになる。亜人は短剣に目をやる。まだやる気か。僕は諦めて首を槍で貫いた。亜人は息をひゅっと出し絶命した。
僕は残心を残し油断なく周囲を見る。とりあえず何も動くものはない。力を抜く。疲れた。
「終わり」
「まあまあね。最初としては悪くない。むしろ命を躊躇なく奪えた事は称賛に値するわ」
「主は生まれながらの戦士のようだった」
「だけどね、まだまだだわ。狙いは粗いし無駄な動きが多い。最後の敵に情けは無用よね」
「魔の亜人と魔物は人類の不倶戴天の敵です。主よ情けは無用ですよ」
「ナビのような存在は稀よ。常に敵だと考えてほしいわ」
「わかった」
「あなたは鼻垂れの小僧でもなかったし軟弱でもなかった。これから鍛えたらあなたは良い戦士にも、良い魔術師にもなれる。これからがんばりましょ」
「主よ、それを着て早く外に行きましょう」
工房に突然来たエメイラとミザーリにそんな事を言われたのは次の日の午前の事であった。
渡されたのはレザーの上下。いわゆる革鎧ってやつだった。
「これ、どうしたの?」
「マダム・ルステインにサイズを聞いて革細工師に作ってもらったの。魔法技師使って防御力をあげているわ」
「これ、着るの?」
「そうです。早く着て私たちと一緒に今日は林に行くわよー」
「ああ。修行かあ」
「主よ、行かない選択肢はありません。準備して早速出かけましょう」
「うん、良いけど。ストーク」
「かしこまりました。ツヴァイを付けましょう」
「いらないわ。私たちがいるし」
「ストークさん、怒るよ」
「しかし…」
「ストーク、とりあえず2人いるから、大丈夫」
「かしこまりました」
「ナビは?」
「ナビはあなたの力の一部だから大丈夫だわ」
「問題は主がどこまで戦うかって話です。ナビに全てまかすのか、ナビの援護に入るのか、それとも自分一人で戦うのか。できれば一人で戦って欲しいです」
「わかった。とりあえず着るね」
レザーアーマーを着込む。結構動くのに邪魔だね。
「着たよー」
「じゃあ、行きましょう。場所は馬車で30分ほど走った林よ」
「何か出る?」
「小物の魔物と魔の亜人でも力のない者たちだわ」
「そこでまず戦闘訓練です」
「わかった。ストーク、アレクとボルクに馬車を用意させて」
「かしこまりました」
『収納』から伸縮する槍を出す。
「これで行く」
「良いわね。最初に槍というのは良い選択だわよ。間合いをとりやすいわ」
アレク、ボルクが馬車を回してくる。
「私も同道を」
「わかったわ。あなたは馬車を守る事、いいわね?」
「かしこまりました」
「行きましょう」
馬車はルステインの街中を走り、門から外へ出ていつもとは違う方向に走る。しばらく走ると木々が増え出し林となった。
「もう少し奥に行ったところで止まりましょう」
「ここはまだ魔物でないの?」
「でないわ。ここはよく薬草や植物採取で人がよく入り込んでいるところだもの」
「なるほど」
馬車が突然止まる。
「リョウ様、ま、魔物です!」
「行きましょう」
「うん」
降りると大きな鼠の魔物と小さな魔の亜人達が戦っている所だった。
「リョウ、あれと戦える?」
「なんとか」
「じゃあ、お願い」
「うん」
僕は亜人に狙いをつけて魔法を唱える。
『水の、刃』
一人の亜人に当たったが当たりどころが悪くそれほどダメージを与えられなかった。
『水の、槍』
同じ亜人に当たり右肩から先を消失させる。鼠の魔物は僕に気づいて狙いを僕に変える。飛びかかってきた。槍を構える。まだ距離があるのでもう一度魔法。
『風の刃』
不可視の刃が飛んでいく。鼠の魔物の足を傷つける。距離がつまってきた。白兵戦だ。しっかりと足を踏ん張り槍を構える。
「しっ!」
前突き。前足に当たり機動力を奪う。もう一度突き。顔に当たる。嫌な感触がするがまだ致命傷ではない。鼠は噛みつきに来るが大きく避け胸に突き。またも嫌な感触が槍から伝わる。鼠の魔物は絶命した。
今度は魔の亜人達が徒党を組んで襲ってくる。右腕を失ったものを合わせて3匹だ。一対一の状況を作らないと。
『風の嵐』
風の嵐で3匹を吹き飛ばす。一番近くにいるものに対して槍を構えてチャージする。喉に当たり首を貫く。槍を引き抜くと赤い血が吹き出し亜人は倒れ込む。あと二匹か。
「油断なく、油断なく」
そう言いきかせて相手の行動を見る右腕のない個体が左手で棍棒を握り走ってきた。槍を払う。足に当たり倒れ込む。すかさず頭に槍を刺す。苦悶の表情を浮かべる亜人。ぞくっと寒気がするが槍を更に押し込む。ぴくっと動くと動かなくなる。
「残り、一匹」
最後の亜人は逃げ腰だった。逃げないように森側に回り込む。槍を構える。逃げるのを諦めたのか亜人は左手に握った短剣を見せつけるように構える。あれ、元は誰かが使ってたものだな。そして亜人は右手に石を握り投げつけてきた。僕は冷静に避ける。亜人は走ってくる。槍を構え直して構えを取る。ナーディルさんに散々習った基本の構えだ。
「ギュへっ!」
亜人が飛びかかってくる。カウンター気味に左肩に一撃、素早く槍を引いて腹に一撃。亜人はよろけるが死んでいない。槍を引き抜く。亜人は膝をつく。ガラ空きの首に槍を当てる。亜人と睨み合いになる。亜人は短剣に目をやる。まだやる気か。僕は諦めて首を槍で貫いた。亜人は息をひゅっと出し絶命した。
僕は残心を残し油断なく周囲を見る。とりあえず何も動くものはない。力を抜く。疲れた。
「終わり」
「まあまあね。最初としては悪くない。むしろ命を躊躇なく奪えた事は称賛に値するわ」
「主は生まれながらの戦士のようだった」
「だけどね、まだまだだわ。狙いは粗いし無駄な動きが多い。最後の敵に情けは無用よね」
「魔の亜人と魔物は人類の不倶戴天の敵です。主よ情けは無用ですよ」
「ナビのような存在は稀よ。常に敵だと考えてほしいわ」
「わかった」
「あなたは鼻垂れの小僧でもなかったし軟弱でもなかった。これから鍛えたらあなたは良い戦士にも、良い魔術師にもなれる。これからがんばりましょ」
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