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ルステイン狂想曲。
ドワーフの旅の終わり。
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即金で土地を手に入れた僕はその足でスサン商会に戻りお父さんに地精の事を伝え、助けを求めた。お父さんや商会員達はあちこち商会を回って毛布や生活必需品を集めてくれ、それを青の技達が宿舎となる場所である旧紡績ギルド会館に運び入れてくれた。僕は大工の棟梁の娘であるヴェリーに依頼して、中の改装を急ピッチで進めてもらった。ヴェリーにはエールの大樽を贈ったが、それは同胞に呑ませてやってくれと言われ、地精達を大勢集めて工事をしてくれた。
旅をしてきた地精達が門からルステインの中に入ると、そこには50名を超える地精達が待っていた。
「同胞たちよ。お前達の槌音を聞きつけて我らは待っておった。歓迎する」
「おお。ありがとう。ワシらは地精自治領から来た。まずは我らが統領となるリョウエスト様にお会いしたい。案内してくれるだろうか?」
「槌を持つものたちよ。まずは旅の疲れをゆっくり癒してくれとあの方は言っている。宿舎を用意してもらった。そちらに案内する」
「わかった。案内をよろしく頼む」
地精達は行進して大通りを進む。それをルステインの兵士達が守っている。街の人々はぽかーんとしてそれを見守る。中には商売っ気を出して酒を売り歩く者もいる。あっという間に酒がなくなり嬉しい悲鳴をあげていた。
地精達は街の中心部にある一つの建物の前で止まる。紡績ギルドと書かれている建物の前である。
「紡績ギルドと書かれているがこれはどういう事だ?」
「ここは撤退したギルドの会館だ。中に入ってみるが良い、お前達の生活するスペースができている」
「みな、入ってみようではないか」
「「「おう」」」
中に入ると簡素だが人数分のベッドと毛布がおかれている。あちこち部屋を見て回ると風呂まで用意してあった。
「しばらく窮屈だがここで我慢してくれ」
「急拵えですまん。時間があればもう少し頑張れたんだが」
「入り口に大樽が二つ置いてある。まずはそれで息を吐いてくれ」
ルステインの地精達は旅をしてきた地精達にそう言う。
「いや。十分だ。槌の兄弟達のおかげで我らは屋根のある所で寝られる」
「いくらかかった?代金を支払おう」
「本当だ。散財をさせちゃ地精の名が廃る」
そう聞くとルステインの地精達はこう答えた。
「なあに。俺たちは今回大工で入っただけだ」
「大樽一樽は持ってきたがな」
「あとはあの方が全て金を出した。釘一本払わせてくれなかったよ」
「おお、あの方が…」
「なんて地精心がわかるお人なのだ」
「しかし、支払わなければわが名が廃る」
「いや、あの人はそんな事を気にするお方ではない。働きを見せてくれればいい、とおっしゃっていたよ」
「なんと…我が生涯を賭けるに値する人だ」
「あの方はどんな仕事をなさるんだ?」
「そう思うと思ってあの人が制作なさった物を持ってきた。まずはその凄さを語りながら息を吐こうじゃないか」
「おお、そうだな、酒で息を吐こうじゃないか。口も滑らかになるぞ」
「わかった。みなに旅装を解かせる」
「ジョッキは持ってきたか?」
「もちろんだ。恥はかきたくないからな」
「あははは。さすが兄弟だ」
地精達は旅装を解き皆で大樽の前に集まる。
「皆とりあえずジョッキを持って並べ」
「一樽は兄弟からだが一樽はあの方からの差し入れだ。ありがたく呑むように」
「アタシらの事を考えてくださってここまでやってくれた方だ。ありがたく思いな」
「「「「おう」」」」
地精達は酒を酌みその場で腰を下ろす。
「ジョッキを掲げよ。さあ、呑もう。明日の為の活力じゃ」
「一杯のんだら手酌でやりな。さあ、呑もうぞ明日の為に」
「一杯飲んだらもう一杯、今日の疲れを明日に持ち越すな。さあ、呑もうぞ」
「「「「おう」」」」
地精の独特な節回しのあと酒を掲げ一気に杯をあおる。男も女も関係なく歓声を上げた。
「うめー」
「おい、これ相当高いやつだぜ」
「すげえな。俺たちは歓迎されてる。ありがたい」
「ああ。美味しい。極楽だわここは」
「美味えな」
「旅をしてきてよかった」
「ああ、泣きそうだ」
地精達は口々にそう言う。
「それは良かった」
大樽の側には子供が執事らしい男と立っていた。ヂョウギとブルッグとボリビエが気づき前に出てきて跪く。
「「「統領!」」」
あわてて他の者達も跪く。
「「「「統領!」」」」
「みんな、楽にして。酒は美味しく呑むものだよ。僕は統領じゃなくてリョウエスト。よろしくね」
「はいリョウエスト様。ワシたちはグンヴォル様に言われてここまで来ました。これからの道をお示しください」
「あれ?ヂョウギ伯爵?どうしたの?」
「ワシはもう伯爵はやめました。リョウエスト様を統領と仰ぎ仕事をしろと言われここまで来たのです」
「なるほど、じゃあ指示するね。明日はみな、呑みながら過ごして。代表者は明日僕の工房に来てね。これからの話をしたいから」
「「「「おう」」」」
「明後日か明々後日から、仕事があるからゆっくりしてね。それから酒造ギルドから、毎日一樽酒が届くと思うから誰か受け取って」
「「「「おう」」」」
「ルステインの地精には忙しいかもしれないけど、手伝ってくれるかな?」
「「「おう」」」
「詳しいことは、うちのカダスやヴェリーを通してみなに伝えるのでよろしくね」
「「「おう」」」
「じゃあ、良い夜を。おやすみ」
旅をしてきた地精達が門からルステインの中に入ると、そこには50名を超える地精達が待っていた。
「同胞たちよ。お前達の槌音を聞きつけて我らは待っておった。歓迎する」
「おお。ありがとう。ワシらは地精自治領から来た。まずは我らが統領となるリョウエスト様にお会いしたい。案内してくれるだろうか?」
「槌を持つものたちよ。まずは旅の疲れをゆっくり癒してくれとあの方は言っている。宿舎を用意してもらった。そちらに案内する」
「わかった。案内をよろしく頼む」
地精達は行進して大通りを進む。それをルステインの兵士達が守っている。街の人々はぽかーんとしてそれを見守る。中には商売っ気を出して酒を売り歩く者もいる。あっという間に酒がなくなり嬉しい悲鳴をあげていた。
地精達は街の中心部にある一つの建物の前で止まる。紡績ギルドと書かれている建物の前である。
「紡績ギルドと書かれているがこれはどういう事だ?」
「ここは撤退したギルドの会館だ。中に入ってみるが良い、お前達の生活するスペースができている」
「みな、入ってみようではないか」
「「「おう」」」
中に入ると簡素だが人数分のベッドと毛布がおかれている。あちこち部屋を見て回ると風呂まで用意してあった。
「しばらく窮屈だがここで我慢してくれ」
「急拵えですまん。時間があればもう少し頑張れたんだが」
「入り口に大樽が二つ置いてある。まずはそれで息を吐いてくれ」
ルステインの地精達は旅をしてきた地精達にそう言う。
「いや。十分だ。槌の兄弟達のおかげで我らは屋根のある所で寝られる」
「いくらかかった?代金を支払おう」
「本当だ。散財をさせちゃ地精の名が廃る」
そう聞くとルステインの地精達はこう答えた。
「なあに。俺たちは今回大工で入っただけだ」
「大樽一樽は持ってきたがな」
「あとはあの方が全て金を出した。釘一本払わせてくれなかったよ」
「おお、あの方が…」
「なんて地精心がわかるお人なのだ」
「しかし、支払わなければわが名が廃る」
「いや、あの人はそんな事を気にするお方ではない。働きを見せてくれればいい、とおっしゃっていたよ」
「なんと…我が生涯を賭けるに値する人だ」
「あの方はどんな仕事をなさるんだ?」
「そう思うと思ってあの人が制作なさった物を持ってきた。まずはその凄さを語りながら息を吐こうじゃないか」
「おお、そうだな、酒で息を吐こうじゃないか。口も滑らかになるぞ」
「わかった。みなに旅装を解かせる」
「ジョッキは持ってきたか?」
「もちろんだ。恥はかきたくないからな」
「あははは。さすが兄弟だ」
地精達は旅装を解き皆で大樽の前に集まる。
「皆とりあえずジョッキを持って並べ」
「一樽は兄弟からだが一樽はあの方からの差し入れだ。ありがたく呑むように」
「アタシらの事を考えてくださってここまでやってくれた方だ。ありがたく思いな」
「「「「おう」」」」
地精達は酒を酌みその場で腰を下ろす。
「ジョッキを掲げよ。さあ、呑もう。明日の為の活力じゃ」
「一杯のんだら手酌でやりな。さあ、呑もうぞ明日の為に」
「一杯飲んだらもう一杯、今日の疲れを明日に持ち越すな。さあ、呑もうぞ」
「「「「おう」」」」
地精の独特な節回しのあと酒を掲げ一気に杯をあおる。男も女も関係なく歓声を上げた。
「うめー」
「おい、これ相当高いやつだぜ」
「すげえな。俺たちは歓迎されてる。ありがたい」
「ああ。美味しい。極楽だわここは」
「美味えな」
「旅をしてきてよかった」
「ああ、泣きそうだ」
地精達は口々にそう言う。
「それは良かった」
大樽の側には子供が執事らしい男と立っていた。ヂョウギとブルッグとボリビエが気づき前に出てきて跪く。
「「「統領!」」」
あわてて他の者達も跪く。
「「「「統領!」」」」
「みんな、楽にして。酒は美味しく呑むものだよ。僕は統領じゃなくてリョウエスト。よろしくね」
「はいリョウエスト様。ワシたちはグンヴォル様に言われてここまで来ました。これからの道をお示しください」
「あれ?ヂョウギ伯爵?どうしたの?」
「ワシはもう伯爵はやめました。リョウエスト様を統領と仰ぎ仕事をしろと言われここまで来たのです」
「なるほど、じゃあ指示するね。明日はみな、呑みながら過ごして。代表者は明日僕の工房に来てね。これからの話をしたいから」
「「「「おう」」」」
「明後日か明々後日から、仕事があるからゆっくりしてね。それから酒造ギルドから、毎日一樽酒が届くと思うから誰か受け取って」
「「「「おう」」」」
「ルステインの地精には忙しいかもしれないけど、手伝ってくれるかな?」
「「「おう」」」
「詳しいことは、うちのカダスやヴェリーを通してみなに伝えるのでよろしくね」
「「「おう」」」
「じゃあ、良い夜を。おやすみ」
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