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ルステイン狂想曲。
獣人達との邂逅。
王都での用事を終えた僕は、拠点であるルステインに戻る旅路を急いでいた…急がされていた。
馬車の周囲を固めるのはリョウエスト生産商会の地精達の乗る高速甲虫ゲゼルボンの群れ『ドワーヴンラゲージ』である。率いるのはヂョウギ。彼の号令一下、地精達によって開発された虫具と改造された騎虫装備で、普通の旅路を3泊4日に『効率よく』短縮させるという実に地精らしい事をこなしていた。毎度やりすぎなくらいに。
僕は前に座るストークと苦笑いしながらミザーリを見る。ミザーリは『火の民』。軽戦士にして斥候、そして薬師の彼女の紅い瞳と鋭利な感覚は、見えざる危険を察知する事ができる。ミザーリの腰元に揺れる外套の下には、火の民である事を示す尻尾が隠れている事を僕は知っている。ミザーリの瞳が突然鋭くなる。種族固有の能力である赤外線視覚が何かを捉えたのだろう。
「ヂョウギさん!アレク!ストップ!」
馬車の窓を開けてミザーリはヂョウギと馬車の御者アレクに声を上げる。ヂョウギは右手をあげ、隊に止まるように指示を出す。地精達は馬車の周りに集まり警戒に入る。
「熱源40以上。武装はまばら。焚き火を焚いてる」
「盗賊か?」
「わからない。警戒した方が良い」
また盗賊か。僕はそう思いながらミザーリを見る。
「主よ、ちょっと見てくる」
「よろしくね」
僕の斥候の師匠でもあるミザーリが斥候に出た。あっという間に偽装をし、林の中に入っていく。それを見てナビが追いかけようとするのを止めた。
しばらく待っているとミザーリが戻ってきた。
「難民の群れ。獣人族の群れが前で休憩している。主よ、どうする?」
「行ってみよう」
「そう言う事だ、ヂョウギさん、警戒しつつ進もう」
「了解した。皆のもの、警戒しつつ前に進むぞ」
前に進む。やがて、僕達は焚き火の持ち主に遭遇する…獣人の一団。
40数人の老若男女が背を丸め、獣皮と麻で織られた衣に身を包んでいた。狼耳を持つ者、猫のような尾を腰に巻きつけた者、大柄な熊族と思しき男は、肩に鉈を担ぎ、幼子を抱えた雌豹の若母を守っている。
「…お前達は誰だ?」
大柄な虎族の男が問いかける。金の縞模様を持つその体は鍛えられていたが、肩には幼子を抱え、背には荷を担いでいた。刃こぼれした段平を抜く様子はない。僕は馬車から降りて男と正対する。
「僕はリョウエスト・スサン。この集団の長をしている…どうしたの?居場所を失ったの?」
虎族の男は目を細めたがすぐに頷く。
「ああそうだ。自治領を出てきた…あそこにはもう俺らの住処がない」
「追われたの?」
「…そういうことだ」
群れの争いか。ペランス師匠に縄張り争いの話を聞いた事がある。言葉を選ぶように語る男だが、その背後では子どもたちが草を食み疲弊した女たちが手を取り合って休んでいる。戦ではない。だが、明らかな敗走だった。
「ストーク」
「はい、帰ったら城に許可をとりましょう。今更40人増えたところでガタガタ言わないと思います」
僕は頷く。
「ミザーリ」
「ああ。私が夜番に立つ。主よ地精を何人か貸してくれるか?」
僕は頷く。
「ヂョウギ」
「風精のついでに獣人の為にドワーヴンベースの居住区を広げましょう。3日で壁は立てれます。資金はまだ余裕があるから大丈夫です」
「無理しないように」
「なあに1日ほどの徹夜は大した事ありません」
僕は頷く。そして虎族の男に向き直る。
「ルステインに来ない? 仕事と、居場所を用意するの。僕の商会で働いてくれたら、住む場所も保障するよ」
沈黙が流れた。虎族の男は、仲間たちに視線を送る。やがて老婆が静かに頷き、子どもたちが希望の目を向けてきた。
「…あんたの言葉、信じていいのか?」
「僕は嘘をつかないよ。こう見えても貴族の端くれで生産商会の商会長だからね」
「そこにいるのは翼猫だな。我らの守護獣だ。その主であるあんたに最大限の敬意を払おう」
そうして僕達は獣人の一団を引き連れ再び旅路を進むこととなった。想定外の人数と夜営の準備、疲労した身体。3泊4日だった旅程は結局、4泊5日へと引き伸ばされた。
地精達は寝る間も惜しんで焚き火の場所を整備し、獣人の持っていた武器を整備している。ミザーリは夜警の間に子どもたちへ自分のナイフを渡し、武器の扱い方と警戒の基礎を教えた。僕は道中、獣人の歴史を聞き、将来的な協力体制の構築の構想を練りはじめる。
疲れる旅だった。ルステインに入るだけでも一苦労だった。でもこれで新しい活気が加わるね。
ヂョウギは、帰るなりさっそく図面を引き、『ドワーヴンベース』の一角を獣人たちのための『ビーストマン居住区』そして風精のための『エルフ居住区』にする設計に着手。地精と獣人と風精の共同エリアを想定した特殊建築案を打ち出し、地精を中心にやりすぎる集団となった彼らは共に働き、そして飲み、食うのであった。
馬車の周囲を固めるのはリョウエスト生産商会の地精達の乗る高速甲虫ゲゼルボンの群れ『ドワーヴンラゲージ』である。率いるのはヂョウギ。彼の号令一下、地精達によって開発された虫具と改造された騎虫装備で、普通の旅路を3泊4日に『効率よく』短縮させるという実に地精らしい事をこなしていた。毎度やりすぎなくらいに。
僕は前に座るストークと苦笑いしながらミザーリを見る。ミザーリは『火の民』。軽戦士にして斥候、そして薬師の彼女の紅い瞳と鋭利な感覚は、見えざる危険を察知する事ができる。ミザーリの腰元に揺れる外套の下には、火の民である事を示す尻尾が隠れている事を僕は知っている。ミザーリの瞳が突然鋭くなる。種族固有の能力である赤外線視覚が何かを捉えたのだろう。
「ヂョウギさん!アレク!ストップ!」
馬車の窓を開けてミザーリはヂョウギと馬車の御者アレクに声を上げる。ヂョウギは右手をあげ、隊に止まるように指示を出す。地精達は馬車の周りに集まり警戒に入る。
「熱源40以上。武装はまばら。焚き火を焚いてる」
「盗賊か?」
「わからない。警戒した方が良い」
また盗賊か。僕はそう思いながらミザーリを見る。
「主よ、ちょっと見てくる」
「よろしくね」
僕の斥候の師匠でもあるミザーリが斥候に出た。あっという間に偽装をし、林の中に入っていく。それを見てナビが追いかけようとするのを止めた。
しばらく待っているとミザーリが戻ってきた。
「難民の群れ。獣人族の群れが前で休憩している。主よ、どうする?」
「行ってみよう」
「そう言う事だ、ヂョウギさん、警戒しつつ進もう」
「了解した。皆のもの、警戒しつつ前に進むぞ」
前に進む。やがて、僕達は焚き火の持ち主に遭遇する…獣人の一団。
40数人の老若男女が背を丸め、獣皮と麻で織られた衣に身を包んでいた。狼耳を持つ者、猫のような尾を腰に巻きつけた者、大柄な熊族と思しき男は、肩に鉈を担ぎ、幼子を抱えた雌豹の若母を守っている。
「…お前達は誰だ?」
大柄な虎族の男が問いかける。金の縞模様を持つその体は鍛えられていたが、肩には幼子を抱え、背には荷を担いでいた。刃こぼれした段平を抜く様子はない。僕は馬車から降りて男と正対する。
「僕はリョウエスト・スサン。この集団の長をしている…どうしたの?居場所を失ったの?」
虎族の男は目を細めたがすぐに頷く。
「ああそうだ。自治領を出てきた…あそこにはもう俺らの住処がない」
「追われたの?」
「…そういうことだ」
群れの争いか。ペランス師匠に縄張り争いの話を聞いた事がある。言葉を選ぶように語る男だが、その背後では子どもたちが草を食み疲弊した女たちが手を取り合って休んでいる。戦ではない。だが、明らかな敗走だった。
「ストーク」
「はい、帰ったら城に許可をとりましょう。今更40人増えたところでガタガタ言わないと思います」
僕は頷く。
「ミザーリ」
「ああ。私が夜番に立つ。主よ地精を何人か貸してくれるか?」
僕は頷く。
「ヂョウギ」
「風精のついでに獣人の為にドワーヴンベースの居住区を広げましょう。3日で壁は立てれます。資金はまだ余裕があるから大丈夫です」
「無理しないように」
「なあに1日ほどの徹夜は大した事ありません」
僕は頷く。そして虎族の男に向き直る。
「ルステインに来ない? 仕事と、居場所を用意するの。僕の商会で働いてくれたら、住む場所も保障するよ」
沈黙が流れた。虎族の男は、仲間たちに視線を送る。やがて老婆が静かに頷き、子どもたちが希望の目を向けてきた。
「…あんたの言葉、信じていいのか?」
「僕は嘘をつかないよ。こう見えても貴族の端くれで生産商会の商会長だからね」
「そこにいるのは翼猫だな。我らの守護獣だ。その主であるあんたに最大限の敬意を払おう」
そうして僕達は獣人の一団を引き連れ再び旅路を進むこととなった。想定外の人数と夜営の準備、疲労した身体。3泊4日だった旅程は結局、4泊5日へと引き伸ばされた。
地精達は寝る間も惜しんで焚き火の場所を整備し、獣人の持っていた武器を整備している。ミザーリは夜警の間に子どもたちへ自分のナイフを渡し、武器の扱い方と警戒の基礎を教えた。僕は道中、獣人の歴史を聞き、将来的な協力体制の構築の構想を練りはじめる。
疲れる旅だった。ルステインに入るだけでも一苦労だった。でもこれで新しい活気が加わるね。
ヂョウギは、帰るなりさっそく図面を引き、『ドワーヴンベース』の一角を獣人たちのための『ビーストマン居住区』そして風精のための『エルフ居住区』にする設計に着手。地精と獣人と風精の共同エリアを想定した特殊建築案を打ち出し、地精を中心にやりすぎる集団となった彼らは共に働き、そして飲み、食うのであった。
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