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ルステイン狂想曲。
森道計画の報告。
ルステイン城。レイさんに案内されて執務室の前に来ると、今日説明する事を頭の中で反芻した。ここまで勝手にやっちゃったからなあ。僕は深呼吸して、革表紙の報告書をしっかりと抱えて、扉をノックしたよ。
「入れ」
低く通る声。だが冷たくはないね。その一言だけで、僕の胸の奥に残る緊張は少しだけ和らいだ。
扉を押して入ると、マックスは執務机の向こうで書類に目を通していた。3人の子持ちとなってますます頑張っているのかな。レイアムさんの調子はどうだろうか。双子は元気なのか。様子を聞きたいけど報告が先だね。
マックスさんは顔を上げ、そしてわずかに目元を緩める。
「よくきたな。レイアムも子供達も元気だ。お前の食事指導のおかげだ」
「恐縮です、マックスさん、今日は、ご報告があってまいりました」
「…リョウ、いつもの感じで良いぞ。どんな内容でもお前の報告なら耳を傾けよう。何せ、レイアムからお礼をしろとせっつかれているからな」
彼は恩義を忘れない人だ。威厳の陰に、そういう『優しさ』が見える。
「ストークからの手紙はどこまで?」
「獣人達を雇い入れてドワーヴンベースに配属して、新しい物流を考えているって事までかな」
「じゃあ今回の報告は、獣人による輸送路の初試験を行った事だね。成功、といっていい結果が得れたの」
「ほう…聞こうか」
マックスさんの視線が鋭くなる。僕は持参した地図と記録用紙を広げた。
「今回の運送試験では、獣人たちが得意とする『獣の操り』を最大限に活かしたの。使役獣にはヤク牛、大狼、そして一部では鷹なんかも活用した。道は森を抜ける危険な区画が多かったけど、彼らは事前に獣の習性と地形を熟知して動かしてたよ」
マックスさんは地図の上を指先でたどりながら、眉をひそめた。
「このルート……旧時代の商人すら避けた経路だ。そこを?」
「うん。風精の協力で『魔法的目印』も配置した。だから森の中でも方向を見失わずに済むの。風と葉の囁きを読む風精たちの導きがあれば、従来の倍の速度での移動が可能なんだよね。今回は試験運搬として、保存食料・薬草類・加工道具などを運んだんだけど到着時、破損ゼロなの」
僕はマックスさんの表情を見た。彼は顎に手をあて、静かに頷いていた。
「それは…確かに成果だな。従来の『王道』に頼らぬ運送路、か。異種族の力を融合して築いた道…」
「僕たちは、種族の垣根を越えて生きる未来を目指してるの。地精の技術、風精の導き、そして獣人の敏捷と本能。それを繋ぐのがヒト族であるべきだと思ってる」
しばしの沈黙のあと、マックスさんは椅子から立ち上がり、背後の大きな窓の前に歩み寄った。そこからはルステインの街並みと、遠く林の稜線が見えた。
「…私が子供の頃、ルステインは『人間の街』だった。外の種族はどこか恐れの対象だった。父上が融和政策を打ち出して大量に多種族を入れた。そして今や、地精と風精と獣人がこの地に一大拠点を持ち、未来を語っている」
彼は窓越しに、何かを確かめるように言った。
「…それを成したのが、六歳の子どもだと誰が信じる?」
「信じてくれなくても構わないの。実現した事実は、もうここにあるからね」
僕の答えに、彼はわずかに肩を震わせて笑った。
「まったく…お前は相変わらず面白い子どもだ」
彼は再び机に戻り、今度は筆を手に取った。
「リョウエスト・スサン、お前の商会の動き、そして異種族の協力関係をルステインとして正式に認可しよう。加えて、この運送路計画『森道計画』とでも名づけようか…これを地方発の実験制度として、王都にも打診してみよう」
「…本当に?」
「ああ。私も領主として、お前に乗った。お礼の代わりじゃないが私もこの計画に参加して未来を見てみたくなったよ。」
その言葉に、胸の奥が温かくなるのを感じた。僕は深く頭を下げた。
「ありがとうございます。マックスさん」
「期待しているぞ、リョウエスト。お前の道が、未来を導く風となることを」
「うん!」
マックスさんは椅子に深く座る。
「リョウ、こちらからも素晴らしい報告があるんだ」
「どんな?」
「スクワンジャー前公爵様から手紙が届いた。スクワンジャー前公爵様の兄、つまり先王陛下と一緒に『安らぎの宿』に訪れてくださるようだ。お前に接待を頼む、と言っている。4号館のオープン、つまり来年の社交シーズンの終わりに訪れるようだ。よろしく頼むぞ」
「わかった。先王様ご夫妻とスクワンジャー前公爵様ご夫妻?」
「そうだ」
「やったね、マックスさん」
「ああ。先王様が気に入れば一気に貴族の間に広まるだろう。楽しみで仕方ないよ」
「あ、僕の方も報告が」
「なんだ?」
「ビットリーノ・ビットっていう吟遊詩人知ってる?」
「知ってるぞ。有名じゃないか」
「あの人がルステインの歌作ってくれるんだって」
「なんと。まさに追い風が吹いているな」
「そう。お客さん増えるね。僕も上級貴族の皆さんに手紙を書こうと思ってる」
「よし、頼むぞ」
「うん」
「入れ」
低く通る声。だが冷たくはないね。その一言だけで、僕の胸の奥に残る緊張は少しだけ和らいだ。
扉を押して入ると、マックスは執務机の向こうで書類に目を通していた。3人の子持ちとなってますます頑張っているのかな。レイアムさんの調子はどうだろうか。双子は元気なのか。様子を聞きたいけど報告が先だね。
マックスさんは顔を上げ、そしてわずかに目元を緩める。
「よくきたな。レイアムも子供達も元気だ。お前の食事指導のおかげだ」
「恐縮です、マックスさん、今日は、ご報告があってまいりました」
「…リョウ、いつもの感じで良いぞ。どんな内容でもお前の報告なら耳を傾けよう。何せ、レイアムからお礼をしろとせっつかれているからな」
彼は恩義を忘れない人だ。威厳の陰に、そういう『優しさ』が見える。
「ストークからの手紙はどこまで?」
「獣人達を雇い入れてドワーヴンベースに配属して、新しい物流を考えているって事までかな」
「じゃあ今回の報告は、獣人による輸送路の初試験を行った事だね。成功、といっていい結果が得れたの」
「ほう…聞こうか」
マックスさんの視線が鋭くなる。僕は持参した地図と記録用紙を広げた。
「今回の運送試験では、獣人たちが得意とする『獣の操り』を最大限に活かしたの。使役獣にはヤク牛、大狼、そして一部では鷹なんかも活用した。道は森を抜ける危険な区画が多かったけど、彼らは事前に獣の習性と地形を熟知して動かしてたよ」
マックスさんは地図の上を指先でたどりながら、眉をひそめた。
「このルート……旧時代の商人すら避けた経路だ。そこを?」
「うん。風精の協力で『魔法的目印』も配置した。だから森の中でも方向を見失わずに済むの。風と葉の囁きを読む風精たちの導きがあれば、従来の倍の速度での移動が可能なんだよね。今回は試験運搬として、保存食料・薬草類・加工道具などを運んだんだけど到着時、破損ゼロなの」
僕はマックスさんの表情を見た。彼は顎に手をあて、静かに頷いていた。
「それは…確かに成果だな。従来の『王道』に頼らぬ運送路、か。異種族の力を融合して築いた道…」
「僕たちは、種族の垣根を越えて生きる未来を目指してるの。地精の技術、風精の導き、そして獣人の敏捷と本能。それを繋ぐのがヒト族であるべきだと思ってる」
しばしの沈黙のあと、マックスさんは椅子から立ち上がり、背後の大きな窓の前に歩み寄った。そこからはルステインの街並みと、遠く林の稜線が見えた。
「…私が子供の頃、ルステインは『人間の街』だった。外の種族はどこか恐れの対象だった。父上が融和政策を打ち出して大量に多種族を入れた。そして今や、地精と風精と獣人がこの地に一大拠点を持ち、未来を語っている」
彼は窓越しに、何かを確かめるように言った。
「…それを成したのが、六歳の子どもだと誰が信じる?」
「信じてくれなくても構わないの。実現した事実は、もうここにあるからね」
僕の答えに、彼はわずかに肩を震わせて笑った。
「まったく…お前は相変わらず面白い子どもだ」
彼は再び机に戻り、今度は筆を手に取った。
「リョウエスト・スサン、お前の商会の動き、そして異種族の協力関係をルステインとして正式に認可しよう。加えて、この運送路計画『森道計画』とでも名づけようか…これを地方発の実験制度として、王都にも打診してみよう」
「…本当に?」
「ああ。私も領主として、お前に乗った。お礼の代わりじゃないが私もこの計画に参加して未来を見てみたくなったよ。」
その言葉に、胸の奥が温かくなるのを感じた。僕は深く頭を下げた。
「ありがとうございます。マックスさん」
「期待しているぞ、リョウエスト。お前の道が、未来を導く風となることを」
「うん!」
マックスさんは椅子に深く座る。
「リョウ、こちらからも素晴らしい報告があるんだ」
「どんな?」
「スクワンジャー前公爵様から手紙が届いた。スクワンジャー前公爵様の兄、つまり先王陛下と一緒に『安らぎの宿』に訪れてくださるようだ。お前に接待を頼む、と言っている。4号館のオープン、つまり来年の社交シーズンの終わりに訪れるようだ。よろしく頼むぞ」
「わかった。先王様ご夫妻とスクワンジャー前公爵様ご夫妻?」
「そうだ」
「やったね、マックスさん」
「ああ。先王様が気に入れば一気に貴族の間に広まるだろう。楽しみで仕方ないよ」
「あ、僕の方も報告が」
「なんだ?」
「ビットリーノ・ビットっていう吟遊詩人知ってる?」
「知ってるぞ。有名じゃないか」
「あの人がルステインの歌作ってくれるんだって」
「なんと。まさに追い風が吹いているな」
「そう。お客さん増えるね。僕も上級貴族の皆さんに手紙を書こうと思ってる」
「よし、頼むぞ」
「うん」
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