【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

文字の大きさ
322 / 806
ルステイン狂想曲。

水が交わる時。

 その日、ルステインの生産拠点ドワーヴンベースには、久方ぶりに訪れる“未知の風”が吹き込んでいた。

 好奇心に満ちた眼差し、軽快な足取り、そして何よりもその小さな身体から放たれる生き生きとした気配。小人ハーフリング族の一団が、地精ドワーフたちの誘導のもと、ベース内部を楽しげに歩き回っていた。

「ほぉお、これが鍛造炉ですか。ふふ、ちょっとした小屋くらいあるじゃありませんか!」

 代表を名乗る女性・クルムが目を輝かせる。小柄ながら、背筋は真っ直ぐで、動きに無駄がなく、どこか気品すら漂わせていた。

「火の使い方も洗練されている……あら、これ、わたし達でも真似できそうですね。フィナ、おまえ、どう思う?」
「はい、姉さま。きっと調整さえすれば、里でも応用できます!」

 小人ハーフリングたちは興奮気味に機械の歯車や木の足場を観察し、職人地精ドワーフたちに次々と質問を浴びせていた。ヂョウギが誇らしげに胸を張っているのも納得だった。

 一方、その後ろに控えるようにして歩いていたのが、水竜人ドラコニアン族の数名だった。全身に薄い青鱗を持ち、涼やかな雰囲気を纏う彼らは、騒がしいハーフリングたちとは対照的に、静かに周囲を観察していた。
 その中に、一人の若者がいた。
 ティルシェード。
 彼は青い髪をゆるく結び、整った人間に近い顔立ちに冷たい視線を宿していたが、時折どこか懐かしむような表情を見せた。
 ちょうどその時ロイック兄さんとお姉さん達が地精ドワーフ達と打ち合わせに来ていて、それを見学していた。
…そして、彼の姿を見たジェンは、言葉を失った。

「…ティル、なの?」

 水場のそばで手を洗おうとしていたジェンの声は、まるで風のささやきのように小さく、それでも確かに、ティルシェードの心に届いた。
 ティルはゆっくりと振り向き、その瞳を大きく見開く。

「…ジェン?」

 二人の間に沈黙が流れる。すぐにティルシェードが、ほんのわずかだが足を踏み出した。

「まさか…あなたが、僕の…姉さん?…姉さん、ありがとう…生きててくれてよかった」

 その言葉をジェンはただ静かに頷いて受け止めた。

「…生きてて、よかった」

 それだけを言うとジェンは目を伏せたまま、そっと弟の手を握った。

 僕は少し離れた場所から二人のやり取りを見守っていた。まるで時間が止まったかのような空気に誰も口を挟めなかった。

 だが、その静寂を破ったのはクルムだった。

「まぁ、血縁の再会ですか?それはめでたい!旅ってのは不思議なもので、思わぬ人と巡り合わせてくれるものなんですねぇ」

 にこやかに笑うクルム。その表情には種族の違いも過去の別れも、すべてを受け入れるような温かさがあった。
 ティルはジェンの隣で軽く頭を下げた。

「僕は、ティルシェード。水竜人ドラコニアン族の探索者です。今回の旅は、小人ハーフリング族との協定に基づいて、守護者として随伴しています。そして…ルステインの地下水脈が我々の生存圏になりうる可能性があると知り、それを見定めに来ました」
「なるほど、つまり移住も視野に入れてるの?」

 僕が問いかけると、ティルは静かに頷いた。

「はい。水竜人ドラコニアンである僕たちは、淡水の存在と安定した気候を必要とします。ルステインはそれに適していますし、地上との連携を深める必要もある。姉さんがここにいるとわかった以上、なおさらその価値は高まりました」
「ふふ…やっぱり似てる」

 僕の隣にいたマリカ姉さんが笑った。

「…どこか、ジェン姉さまに似た雰囲気を感じましたの。瞳が特に…ふふ、お姉さま、よろしいですわね?」
「…ん。まあ、嬉しい…よ」

 ジェンは照れくさそうに視線をそらしたが、その尾はゆるく揺れていた。喜びが伝わってきた。

 一方、ハーフリングのクルムも、見学を終えて立ち止まっていた。

「ドワーヴンベース気に入りましたよ。道具も面白いし人もあたたかい。このままでは、うちの若い衆が『もう帰りたくない』と言い出すかもしれませんね」

 そう言って、くすくすと笑う。

「リョウエストくん。もしよろしければ私達もこの地に拠点を持たせていただけないでしょうか? 正式な判断は一族の評議に持ち帰ってからになりますが、可能性は十分にあると感じています」
「もちろん。歓迎するよ。ルステインは誰にとっても『居場所』であってほしい」

 僕はそう答えたよ。心からそう思っているし。

 異種族が集まって言葉を交わして知識を分け合い、未来を築いていく。僕の描く夢が、こうして少しずつ現実になっていくのを感じている。

 その夜僕は屋上からベースの灯りを見下ろしていた。ドワーフの焚き火に集まるハーフリングの子どもたち。水場で静かに月を仰ぐドラコニアンの一団。彼らの笑い声、囁き声が、風に乗って届いてくる。

「きっと、この先も色々あるけど…僕たちは、ちゃんと『前』に進める」

 夜空にそう呟いた時、ふいに隣に立ったティルシェードが言った。

「姉さんが…幸せそうでよかった。ありがとう、リョウエスト様」
「僕に『様』はいらないよ。家族なんだから」
「…ふふ。そうですね、『兄弟』」
感想 9

あなたにおすすめの小説

異世界転生したので、文明レベルを21世紀まで引き上げてみた ~前世の膨大な知識を元手に、貧乏貴族から世界を変える“近代化の父”になります~

夏見ナイ
ファンタジー
過労死したプラントエンジニアの俺が転生したのは、剣と魔法の世界のド貧乏な貴族の三男、リオ。石鹸すらない不衛生な環境、飢える家族と領民……。こんな絶望的な状況、やってられるか! 前世の知識を総動員し、俺は快適な生活とスローライフを目指して領地改革を開始する! 農業革命で食料問題を解決し、衛生革命で疫病を撲滅。石鹸、ガラス、醤油もどきで次々と生活レベルを向上させると、寂れた領地はみるみる豊かになっていった。 逃げてきた伯爵令嬢や森のエルフ、ワケありの元騎士など、頼れる仲間も集まり、順風満帆かと思いきや……その成功が、強欲な隣領や王都の貴族たちの目に留まってしまう。 これは、ただ快適に暮らしたかっただけの男が、やがて“近代化の父”と呼ばれるようになるまでの物語。

最強魔法は生活魔法!? ~異世界ではモンスター退治も生活のうち~

gagaga
ファンタジー
神の気まぐれにより異世界へと転移した主人公田辺竜太(大学生)が生活魔法を駆使して冒険したり町の人と触れ合ったりする物語です。 なお、神が気まぐれすぎて一番最初に降り立つ地は、無人島です。 一人称視点、独り言多め、能天気となっております。 なお、作者が気ままに書くので誤字脱字は多いかもしれませんが、大目に見て頂けるとありがたいです。 ただ、敢えてそうしている部分もあり、ややこしくてすいません。(^^;A ご指摘あればどんどん仰ってください。 ※2017/8/29 連載再開しました!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

子ドラゴンとゆく、異世界スキル獲得記! ~転生幼女、最強スキルでバッドエンドを破壊する~

九條葉月
ファンタジー
第6回HJ小説大賞におきまして、こちらの作品が受賞・書籍化決定しました! ありがとうございます! 七歳の少女リーナは突如として前世の記憶を思い出した。 しかし、戸惑う暇もなく『銀髪が不気味』という理由で別邸に軟禁されてしまう。 食事の量も減らされたリーナは生き延びるために別邸を探索し――地下室で、ドラゴンの卵を発見したのだった。 孵化したドラゴンと共に地下ダンジョンに潜るリーナ。すべては、軟禁下でも生き延びるために……。 これは、前を向き続けた少女が聖女となり、邪竜を倒し、いずれは魔王となって平和に暮らす物語……。