【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

文字の大きさ
325 / 806
ルステイン狂想曲。

閑話・美食の街ルステイン。

 ルステインに、かつてないほどの活気が満ちている。

 街の入り口に続く広い道を、各地からの馬車や荷車が連なり、その先の宿屋や広場には旅装束の者たちが絶えず流れ込んでいるんだ。日除けの下に並ぶ露店の香辛料の匂い、焼きたてのパンや干し肉の匂い、そしてなにより、あの香ばしく鼻腔をくすぐる、『リョウエスト料理』と『ルステイン料理』の匂いが、人々を魅了してやまないみたい。

「ここがリョウエスト様の『創作料理』を出す街か…!」
「王都じゃ高すぎて手が出なかったが、こっちは庶民向けの店もあるって聞いたぞ!」
「噂の『異種族の厨房』ってやつ、見てみたいな」

 ざわめく声、興奮した足取り。旅人、商人、そして上等な馬車から降り立つ貴族たちすらも、この片田舎だったルステインに押し寄せていた。ビットリーノ・ビットの『少年の街』が空前の大ヒットとなってお客様がどんどんやってくるようになったんだ。

 僕としては想像以上の反響に戸惑いもあったの。でもそれ以上に達成感を覚えている。異種族のみんなと話し合って色々と商業登録して、地精ドワーフたちと改良を重ねた厨房、獣人ビーストマンたちが担う搬送と素材管理、風精エルフの植物管理。全てが合わさり、『誰もが驚く食の街』が実現しつつあるからね。

「本日の目玉は、小人ハーフリング族直伝の『酒蒸しパン』と、獣人ビーストマンの狩猟肉を使った香草グリルです!」

 市場通りの一角、仮設された店の声が響く。店先では、地精ドワーフの親方が焼き具合を調整し、獣人ビーストマンの少女が肉を回し、風精エルフの青年が香草の香りを整えていた。

「これは…肉と香草の香りが生きてる!」
「このパン、ふわふわなのにもちもちしてる…何だこの技術…!」

 食べた者が一口ごとに驚き、隣の誰かに伝えたくなるほどの味。最近の『ルステイン料理』の核は、異種族との協働にあるんだ。素材、調理、保存、配膳、その全てが多種族の知恵で組み上げられている。そして食べた異種族の料理人が移住したり、アドバイスしたりしてさらに料理が多様化しているよ。

 一方で『リョウエスト料理』も負けていない。僕のレシピを作るから『リョウエスト料理』と名付けられたお店が今40軒近くあるんだ。代表的な店が『スサンの天使』で総料理長のムーヤさん、副料理長長のロマさんのファンは多くファンイベントが開かれる程だ。『リョウエスト料理』のお店は大人気でほとんど予約が取れない状況。お父さんや僕が最初出資した店は大盛況で儲かってる様子だけど、僕達と繋がりたいって言って借金の利息だけを支払ってる感じ。たまに様子を見に行くと神の様に崇められるから勘弁して欲しい。真面目な人ばかりなので味は保証するよ。


 広場の中央には、大鍋で煮込まれる「森の七草スープ」が振る舞われている。これは僕とラクラ薬師のレシピ。風精エルフの薬師とヒトの薬師が調合した薬草に、獣人ビーストマンたちの採ってきた野菜、地精ドワーフたちの鋳鉄鍋が生む均等な熱。これらが、かつてルステインに無かった温もりを生み出しているんだ。

「なんということだ…一口で、身体が楽になる…」
「うちの領にも輸入できないだろうか…」

 王都の南部から来たある侯爵が、鍋を見つめて唸った。グロッサム侯爵様ごめんなさい。

 そんなこんなで大体1日2000人以上の人がルステインを訪れているみたい。その内の4、5人、多い時は10人くらいが移住希望でくるみたいだよ。


 そして、夕刻。


 貴族区にある新築のルステイン迎賓館には、上品な服装の男女が集まりつつあった。僕も正装に着替え、マックスさんの元へ向かう準備をしていた。すごいよね、あまりにお客様が多くて迎賓館まで建っちゃったよ。マックスさんにしてみれば税収が上がってうはうはな状況らしいね。

「リョウ、よくやったな。まさかここまでの騒ぎになるとは思っていなかった」

 そう言って笑ったのは、ルステイン領主マックスさん。3人の子供が最近可愛くて可愛くて仕方ないらしい。

「マックスさん、僕としても予想以上なの。異種族たちが本気で作った食は、境界を超える…その証明だと思ってる」
「ふむ…リョウがくれたこの『食』というテーマは、実に良い。交易を超え、文化すらも動かし得る。それを王都に持ち込んだら、上級貴族も黙っていまい」

 マックスさんはコップを掲げた。

「マックスさん、これって大舞踏会でやっていいもの?」
「リョウの料理だけで良いと思う。まだ異種族に不信感があるバカ貴族が多いしな。しかし陛下はこの動きを喜んでいるぞ」
「なるほど。難しいね」
「リョウ、お前に我がルステインは大きく助けられた。私個人としても、恩を返すつもりだ。この一連の異種族の動き、王都に繋ぐ準備を進めよう。数年後には大舞踏会でできるようになるだろう」
「ありがと」


 夜が訪れ、ルステインの料理街には明かりが灯り始めていた。

 店の前にはまだ行列。地精ドワーフたちは「このまま徹夜で仕込むぞ!」と息巻き、獣人ビーストマンたちは「夜明け前の搬送なら得意だ」と誇らしげに笑っていた。

 その隙間、ふと一人の少女が母親に尋ねた。

「お母さん、どうしてここは『いろんな人』が仲良くしてるの?」
「…それはね、『食べること』は誰でもするからよ。誰でもお腹は空くし、美味しいものを食べれば笑顔になるから」

 それを聞いた少女がにっこり笑った。




 この空の下、何百年と続く争いの歴史がある。
 けれどその夜、ルステインには種族の境界はなかった。火の民サラマンダーも、小人ハーフリング族も、水竜人ドラコニアン族も、地精ドワーフも、風精エルフも、そしてヒトも。皆が一緒の鍋を囲み、笑っていた。その料理名は『コリント鍋』だ。
 

 
感想 9

あなたにおすすめの小説

異世界転生したので、文明レベルを21世紀まで引き上げてみた ~前世の膨大な知識を元手に、貧乏貴族から世界を変える“近代化の父”になります~

夏見ナイ
ファンタジー
過労死したプラントエンジニアの俺が転生したのは、剣と魔法の世界のド貧乏な貴族の三男、リオ。石鹸すらない不衛生な環境、飢える家族と領民……。こんな絶望的な状況、やってられるか! 前世の知識を総動員し、俺は快適な生活とスローライフを目指して領地改革を開始する! 農業革命で食料問題を解決し、衛生革命で疫病を撲滅。石鹸、ガラス、醤油もどきで次々と生活レベルを向上させると、寂れた領地はみるみる豊かになっていった。 逃げてきた伯爵令嬢や森のエルフ、ワケありの元騎士など、頼れる仲間も集まり、順風満帆かと思いきや……その成功が、強欲な隣領や王都の貴族たちの目に留まってしまう。 これは、ただ快適に暮らしたかっただけの男が、やがて“近代化の父”と呼ばれるようになるまでの物語。

最強魔法は生活魔法!? ~異世界ではモンスター退治も生活のうち~

gagaga
ファンタジー
神の気まぐれにより異世界へと転移した主人公田辺竜太(大学生)が生活魔法を駆使して冒険したり町の人と触れ合ったりする物語です。 なお、神が気まぐれすぎて一番最初に降り立つ地は、無人島です。 一人称視点、独り言多め、能天気となっております。 なお、作者が気ままに書くので誤字脱字は多いかもしれませんが、大目に見て頂けるとありがたいです。 ただ、敢えてそうしている部分もあり、ややこしくてすいません。(^^;A ご指摘あればどんどん仰ってください。 ※2017/8/29 連載再開しました!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

子ドラゴンとゆく、異世界スキル獲得記! ~転生幼女、最強スキルでバッドエンドを破壊する~

九條葉月
ファンタジー
第6回HJ小説大賞におきまして、こちらの作品が受賞・書籍化決定しました! ありがとうございます! 七歳の少女リーナは突如として前世の記憶を思い出した。 しかし、戸惑う暇もなく『銀髪が不気味』という理由で別邸に軟禁されてしまう。 食事の量も減らされたリーナは生き延びるために別邸を探索し――地下室で、ドラゴンの卵を発見したのだった。 孵化したドラゴンと共に地下ダンジョンに潜るリーナ。すべては、軟禁下でも生き延びるために……。 これは、前を向き続けた少女が聖女となり、邪竜を倒し、いずれは魔王となって平和に暮らす物語……。