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ルステイン狂想曲。
閑話・王様の感嘆。
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コリント王国、王都コリント。
執務室の窓辺に立ち、ドナハルト・ロ・コリント王は黙然と報告書を読み込んでいた。堂々たる威厳を備えた王は、鮮やかな青のマントをまとい、手には自らの印章の刻まれた書簡を握る。
「…6歳の子どもが、これを?」
呟きは驚きと、わずかな警戒、そして抑えがたい好奇心が交じっていた。報告書に記されているのは、名誉子爵相当の王国の料理番、そしてリョウエスト生産商会の代表たる少年、リョウエスト・スサンに関する情報。わずか6歳にして王国に活版印刷50機、ガリ版印刷50機を納入し、それに加えて革新的な道具…ライフジャケット、魔法瓶、防水布を納品したというのだ。
しかもそれらは、異種族の協力を得て大量生産・輸送され、すべて納期内に王都へ届けられた。
「すごい…これは本当に、すごいことだ」
王座の奥で控えていた侍従が、思わず顔を上げる。
「陛下、何か?」
「いや、これだよ。リョウエスト・スサン。やはりただ者ではないな」
活版印刷。これまで王国では手作業で写本されてきた公文書、布告、法令…それらの迅速な伝達を叶える技術。しかも、ガリ版はより簡易な印刷を可能にし、地方領主や商家での使用に適している。
「この印刷機だけでも軍事・行政・教育に多大な恩恵をもたらす。献上品を見た時には驚いた。だが、完成品にもっと驚いた。そしてリョウエストはそれだけにとどまらなかった」
王は新たな報告書を取り上げた。そこには、リョウエスト発明のライフジャケットにより救命率が劇的に向上したこと。魔法瓶が軍の遠征で重宝されていること。防水布が野営や建築にまで応用され始めていることが記されていた。
「ドワーフと小人たちが開発を担い、エルフが工芸面と魔術面を支え、火の民と水竜人、獣人が運搬を引き受けた。まさに異種族の総力戦…相変わらずやってる事がおかしくないか?」
王は息を吐いた。転生者というアドバンテージがあるとしても6歳の少年が、それを為したという現実。
もはや、時代は変わり始めている。
「陛下、あのお子は料理番でもございますよね…?」
「そうだ。ワインとパンの発展に寄与しているのはお前も知ってるだろう。そして王都の大舞踏会や宴席で出された料理の数々…あれは、リョウエストの考案した品だ。お前も見ただろう?あの料理の数々を。しかも本人に聞いたら味だけでなく、栄養設計、保存性、調理効率まで計算されているらしい」
「…あの年齢で?」
「あのあどけない見た目に反して、内面はまるで百戦錬磨の老将だな。私達が思いもよらない事を思いつくのだ。まさに『三面八臂』よ」
王は立ち上がり、窓の外に広がる王都を見渡す。貴族街には既にリョウエストが生み出した製品が数多く納入されている。今後スサン商会の支店ができれば、民衆が列をなすであろう。
変化の波は、もはや王都にも届いているのだ。
「リョウエスト・スサン……あやつを国が保護すべきだと思っていたが今はそうは思わない。いや、そうではない。むしろ、あやつが示す未来に、我々が歩みを合わせねばなるまい。そうすれば我が国は良くなるであろう」
異種族たちとの共栄。戦ではなく、協力と交易による発展。彼が掲げているものは、まさに王が目指していた「人と種を越えた調和の王国」そのものだった。
「近いうちに…あやつと、また正式に会談したい。あやつが望む未来を、王国として全力で支えねば」
ドナハルトは静かに命じた。
「リョウエスト・スサンに、王の感謝状と金貨1000枚。加えて、彼の商会が望む工房拡張地を無償で与えよ。王の印章を添えろ」
「御意」
王は、初めて笑った。厳しくも柔らかなその笑みは、未来の希望を見据える者の顔だった。
その時、ふと、執務室の扉が軽くノックされた。
「入れ」
入ってきたのは、厳格で知られる老宰相。彼もまた、リョウエストに関する報告には何度も目を通していた。
「陛下、王都の印刷工房では早くも追加納入の希望が殺到しております。特に王立学園、軍部などが強く所望しており…」
「当然だ。むしろなぜ今までリョウエストのような者がいなかったのかと悔やむほどだな」
王は眉間に手を当て、感嘆と困惑を入り混ぜた声音で呟く。
「わずか6歳の少年に、王国中が揺さぶられている。だが…」
そこで口元を引き締めた。
「これは脅威ではなく、祝福だ。我々が長年かけて築いてきた王国の礎に、彼は新たな可能性を注ぎ込んだにすぎぬ。それを恐れるのではなく、活かさねばなるまい」
「まことに…リョウエスト殿の才知と人脈、調整力は…大人たちよりはるかに勝っておりますな」
「いや、才知だけではない。リョウエストの本当の強さは、その『信頼される力』にある。ドワーフと小人が技術を、エルフが魔術と工芸を、火の民と水竜人が人員を、獣人が輸送を…誰もが自ら進んで動いている。年齢や立場を超えて、だ」
王は静かに立ち上がり壁に掲げられた王国地図を見つめた。リョウエストの拠点があるルステイン領が中央から離れていてもそれはもはや“辺境”ではない。
「ルステインは、もはや王国の新たな心臓になりつつある…。あそこを守らねばなるまい。リョウエストを守り、支え、彼が築く未来を国全体で後押しせねばならん」
「軍部にも命じましょうか?」
「いや、軽々しく動かすな。あの子は戦を望まぬ。むしろ平和の道を、自らの力で拓こうとしている。故にこそ、我らも剣を抜く前に知恵と誠意を尽くすのだ…それでも刃が向く時のために備えだけはしておけ。青の技には動きを鈍らせぬよう伝えろ」
宰相は深く頷いた。
「それと…民に向けた布告の草案、急げ。リョウエスト・スサンの功績を讃えるとともに、異種族との連携がいかに国を強く豊かにするかを広く伝えよ。王がそれを誇りとすると、明記せよ」
「承知いたしました。国史に名が刻まれる布告となりましょう」
「刻まれるさ…リョウエストの名と共にな」
執務室の窓辺に立ち、ドナハルト・ロ・コリント王は黙然と報告書を読み込んでいた。堂々たる威厳を備えた王は、鮮やかな青のマントをまとい、手には自らの印章の刻まれた書簡を握る。
「…6歳の子どもが、これを?」
呟きは驚きと、わずかな警戒、そして抑えがたい好奇心が交じっていた。報告書に記されているのは、名誉子爵相当の王国の料理番、そしてリョウエスト生産商会の代表たる少年、リョウエスト・スサンに関する情報。わずか6歳にして王国に活版印刷50機、ガリ版印刷50機を納入し、それに加えて革新的な道具…ライフジャケット、魔法瓶、防水布を納品したというのだ。
しかもそれらは、異種族の協力を得て大量生産・輸送され、すべて納期内に王都へ届けられた。
「すごい…これは本当に、すごいことだ」
王座の奥で控えていた侍従が、思わず顔を上げる。
「陛下、何か?」
「いや、これだよ。リョウエスト・スサン。やはりただ者ではないな」
活版印刷。これまで王国では手作業で写本されてきた公文書、布告、法令…それらの迅速な伝達を叶える技術。しかも、ガリ版はより簡易な印刷を可能にし、地方領主や商家での使用に適している。
「この印刷機だけでも軍事・行政・教育に多大な恩恵をもたらす。献上品を見た時には驚いた。だが、完成品にもっと驚いた。そしてリョウエストはそれだけにとどまらなかった」
王は新たな報告書を取り上げた。そこには、リョウエスト発明のライフジャケットにより救命率が劇的に向上したこと。魔法瓶が軍の遠征で重宝されていること。防水布が野営や建築にまで応用され始めていることが記されていた。
「ドワーフと小人たちが開発を担い、エルフが工芸面と魔術面を支え、火の民と水竜人、獣人が運搬を引き受けた。まさに異種族の総力戦…相変わらずやってる事がおかしくないか?」
王は息を吐いた。転生者というアドバンテージがあるとしても6歳の少年が、それを為したという現実。
もはや、時代は変わり始めている。
「陛下、あのお子は料理番でもございますよね…?」
「そうだ。ワインとパンの発展に寄与しているのはお前も知ってるだろう。そして王都の大舞踏会や宴席で出された料理の数々…あれは、リョウエストの考案した品だ。お前も見ただろう?あの料理の数々を。しかも本人に聞いたら味だけでなく、栄養設計、保存性、調理効率まで計算されているらしい」
「…あの年齢で?」
「あのあどけない見た目に反して、内面はまるで百戦錬磨の老将だな。私達が思いもよらない事を思いつくのだ。まさに『三面八臂』よ」
王は立ち上がり、窓の外に広がる王都を見渡す。貴族街には既にリョウエストが生み出した製品が数多く納入されている。今後スサン商会の支店ができれば、民衆が列をなすであろう。
変化の波は、もはや王都にも届いているのだ。
「リョウエスト・スサン……あやつを国が保護すべきだと思っていたが今はそうは思わない。いや、そうではない。むしろ、あやつが示す未来に、我々が歩みを合わせねばなるまい。そうすれば我が国は良くなるであろう」
異種族たちとの共栄。戦ではなく、協力と交易による発展。彼が掲げているものは、まさに王が目指していた「人と種を越えた調和の王国」そのものだった。
「近いうちに…あやつと、また正式に会談したい。あやつが望む未来を、王国として全力で支えねば」
ドナハルトは静かに命じた。
「リョウエスト・スサンに、王の感謝状と金貨1000枚。加えて、彼の商会が望む工房拡張地を無償で与えよ。王の印章を添えろ」
「御意」
王は、初めて笑った。厳しくも柔らかなその笑みは、未来の希望を見据える者の顔だった。
その時、ふと、執務室の扉が軽くノックされた。
「入れ」
入ってきたのは、厳格で知られる老宰相。彼もまた、リョウエストに関する報告には何度も目を通していた。
「陛下、王都の印刷工房では早くも追加納入の希望が殺到しております。特に王立学園、軍部などが強く所望しており…」
「当然だ。むしろなぜ今までリョウエストのような者がいなかったのかと悔やむほどだな」
王は眉間に手を当て、感嘆と困惑を入り混ぜた声音で呟く。
「わずか6歳の少年に、王国中が揺さぶられている。だが…」
そこで口元を引き締めた。
「これは脅威ではなく、祝福だ。我々が長年かけて築いてきた王国の礎に、彼は新たな可能性を注ぎ込んだにすぎぬ。それを恐れるのではなく、活かさねばなるまい」
「まことに…リョウエスト殿の才知と人脈、調整力は…大人たちよりはるかに勝っておりますな」
「いや、才知だけではない。リョウエストの本当の強さは、その『信頼される力』にある。ドワーフと小人が技術を、エルフが魔術と工芸を、火の民と水竜人が人員を、獣人が輸送を…誰もが自ら進んで動いている。年齢や立場を超えて、だ」
王は静かに立ち上がり壁に掲げられた王国地図を見つめた。リョウエストの拠点があるルステイン領が中央から離れていてもそれはもはや“辺境”ではない。
「ルステインは、もはや王国の新たな心臓になりつつある…。あそこを守らねばなるまい。リョウエストを守り、支え、彼が築く未来を国全体で後押しせねばならん」
「軍部にも命じましょうか?」
「いや、軽々しく動かすな。あの子は戦を望まぬ。むしろ平和の道を、自らの力で拓こうとしている。故にこそ、我らも剣を抜く前に知恵と誠意を尽くすのだ…それでも刃が向く時のために備えだけはしておけ。青の技には動きを鈍らせぬよう伝えろ」
宰相は深く頷いた。
「それと…民に向けた布告の草案、急げ。リョウエスト・スサンの功績を讃えるとともに、異種族との連携がいかに国を強く豊かにするかを広く伝えよ。王がそれを誇りとすると、明記せよ」
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