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ルステイン狂想曲。
閑話・ヤルスの決意。
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僕の名はヤルセラ・ナフェル。リョウエスト・スサンとは従兄弟だ。僕の家は騎士爵の系譜で、父も祖父も領主マクシミリアン様に仕える身だ。でも最近、リョウが起こしていることを見ていると…正直、ちょっと焦っている。
今日はいつもの初等学校。朝、校庭の広がるグラウンドに集合した子どもたちの中に、従兄弟はいつもと変わらずいた。少し背が高くて、白金の髪を揺らしている。見た目はのんびりしてるけど常になんか考えてるやつなんだ。僕は慌てて歩み寄った。
「従兄弟よ、おはよう! 昨日も王都から書簡届いたって?」
「おはよう、ヤルス君。うん。王様が印刷機の追加納入を望んでるらしいんだ。書簡に『王国の未来』って書いてあって、僕もびっくりしたよ」
リョウは普通の声でそう言う。僕はなんだか誇らしくもあり、劣等感もあった。
その時、ナミリア様が近づいてきた。領主の娘で、同じクラス。長い金髪を揺らしながら、満面に笑っている。
「リョウ、お父様から聞いたんだけど王様の書簡で登場人物にリョウって書かれてたらしいわね。私ちょっとドキドキしちゃったわ!良くやったね!」
ナミリア様は人懐こくて、その明るさはクラスの太陽のようだ。リョウは恥ずかしそうに目を逸らしながらも、ニッと微笑んだ。
「そうだね。王意なんて久しぶりに見たの。褒めてくれてありがとう。まあ、まだまだこれからだけど」
先生…ビッキー先生がやってきて、朝礼が始まった。白い長い髪を一つにまとめた、優しくて芯のある女性だ。声が大きくて、授業中に「リョウがすごいことをしたんだって?」と聞いて回った時も、先生は目を輝かせて僕たちの質問に答えてくれた。
「リョウエストくんね…すごい子よ。王国の料理番にして、発明家なんですよ。あの年齢で印刷機まで…人生の先輩たちが、もうね、『若き奇跡』って言ってましたよ」
僕はその言葉を聞いて、胸が苦しくなったけれど、同時にリョウを誇らしくも思った。
授業が終わると、僕とリョウは一緒に校庭へ。父レウフォ騎士爵と祖父も、ハッセルエン叔父さんも今日は授業参観に来ていた。得意な運動の授業で僕は少し意気がる。それに気づいたリョウが、僕の肩をぽんと叩いた。
「ヤルス君、君はすごい騎士の家系なんだから、君の強さもちゃんとあるよ。君は君で、君らしく頑張るだけなの」
リョウのその言葉は、僕の胸に静かな灯りをともした。そうだ、僕には僕の役割がある。僕だってちゃんと…。
授業参観では、ビッキー先生が「みんなの夢」を書く時間を設けた。ナミリア様は「将来、領主の補佐をする」と書いていた。僕は「騎士になる」と書いた。そしてリョウは、静かに紙に何か書いていた。後で聞いたら「人と種族をつなぐ架け橋になる」だって。
その言葉は、僕たちクラス全員が笑顔になるようなすごく大きな夢だった。僕も頑張ろう、騎士としての道を。リョウみたいに…英雄ってわけじゃないけれど、守るべきものがあるって素敵なことだと思ったんだ。
授業の後、父と祖父がふたりで話をしていた。
「リョウは…ただの才覚だけではない。異種族との調和を実現している。これは単なる発明家の資質ではないぞ」
「異種族の尊厳を認め、共に歩む…だがそれを、国王も容認し始めた。若きリョウが旗を振れば、ルステインどころか王国の形が変わってしまうかもしれん。爺としては誇らしいが危なっかしくて見てられんな」
祖父の声は深くて、でもそこには期待も恐れも混じっている。父もそれに応えるように、
「ヤルス、お前もよく見ておくのだ。リョウは、戦で奪うのではなく『協力と知恵』で結果を出している。その姿に、領も国も導かれるかもしれない」
僕はその言葉に、ジンと胸が熱くなった。リョウのように、僕も力を尽くして守る立場になりたい。
夕暮れ、家に帰って僕はリョウにお礼の手紙を書いた。
「従兄弟へ 今日はありがとう。君のおかげで僕も勇気がもらえたよ。僕は続くから。騎士になって君も守るから。ヤルスより」と。
リョウからは、
「ヤルス君、ありがとう。君の剣は、この国を守る盾になる。僕も君がいてくれて嬉しい。リョウより」
という返事が来た。
夜、母がその手紙を読んで、目を細めて言った。
「あなたたち、いいコンビね。戦と知識、力と優しさ…これがこの国の未来なのかもしれないわ」
次の日の午後、僕は母に許しをもらって、リョウがいるドワーヴンベースに行った。地精や獣人、風精や火の民、小人、水竜人までが出入りしている「多種族の交差点」みたいな場所だ。
門をくぐると、庭で見慣れない布を干している火の民のおばさんに会った。防水布の試作品だと聞かされた。青みがかったその布は、特殊な液体で加工されているらしく、濡れても一切水が染みないらしい。
「おや、坊ちゃんのご親戚? リョウ様なら裏庭で水竜人族と話してますよ」
火の民の優しいおばさんが教えてくれた。
裏庭では、リョウが一人の青い肌の青年…水竜人族の青年と話していた。彼が何度か話題にしていた『ティルシェード』さんかもしれない。話は真剣そのものだったけど、僕が近づくと、ふたりとも笑顔で迎えてくれた。
「おう、ヤルス君。ちょうどいいところに来たよ。いま、地下水脈の運用について相談してたんだ」
「…あんたが噂のヤルスか。剣の道を目指してるって?」
ティルさんの声は低くて渋い。でも、どこか優しさがあった。
「うん、僕はリョウみたいにはなれないけど、自分の役割を果たしたいんだ。リョウを守れるように」
リョウは少し驚いた顔をして、それから照れくさそうに笑った。
「ありがとう。でもね、ヤルス君、僕は守ってもらうだけじゃないよ。君と並んで、共に戦うんだ」
庭の石に腰を下ろして、ふたりで夕暮れを見ながら話をした。リョウは夢を語った。
「僕ね、ただ発明を広めたいわけじゃないんだ。印刷機や魔法瓶も、道具としての価値だけじゃない。それに異種族の文化を混ぜて、ひとつの社会をつくる。それが本当の目的だよ」
「…難しそうだな。でも、従兄弟が言うとできる気がしてくる」
「ヤルス君。君のお父さんやお爺様、すごい人たちだよ。そんな人たちに育てられた君がいるなら、この道はきっと安全だ」
そんな風に言われて、僕は初めて本当の意味でリョウを『すごい』と思った。ただ知識や発明だけじゃない。彼は、相手の可能性を見て、それを信じてくれる。
それがきっと、リョウエスト・スサンという人物の最大の力なんだ。
やがて空が暗くなり、帰る頃。門まで送ってくれたリョウが、ふいにこう言った。
「ヤルス君、僕はこの街を未来の中心にしたいの。そして君にもその未来を一緒に築いてほしいの。頼んだよ」
「…ああ。絶対にやる」
今日はいつもの初等学校。朝、校庭の広がるグラウンドに集合した子どもたちの中に、従兄弟はいつもと変わらずいた。少し背が高くて、白金の髪を揺らしている。見た目はのんびりしてるけど常になんか考えてるやつなんだ。僕は慌てて歩み寄った。
「従兄弟よ、おはよう! 昨日も王都から書簡届いたって?」
「おはよう、ヤルス君。うん。王様が印刷機の追加納入を望んでるらしいんだ。書簡に『王国の未来』って書いてあって、僕もびっくりしたよ」
リョウは普通の声でそう言う。僕はなんだか誇らしくもあり、劣等感もあった。
その時、ナミリア様が近づいてきた。領主の娘で、同じクラス。長い金髪を揺らしながら、満面に笑っている。
「リョウ、お父様から聞いたんだけど王様の書簡で登場人物にリョウって書かれてたらしいわね。私ちょっとドキドキしちゃったわ!良くやったね!」
ナミリア様は人懐こくて、その明るさはクラスの太陽のようだ。リョウは恥ずかしそうに目を逸らしながらも、ニッと微笑んだ。
「そうだね。王意なんて久しぶりに見たの。褒めてくれてありがとう。まあ、まだまだこれからだけど」
先生…ビッキー先生がやってきて、朝礼が始まった。白い長い髪を一つにまとめた、優しくて芯のある女性だ。声が大きくて、授業中に「リョウがすごいことをしたんだって?」と聞いて回った時も、先生は目を輝かせて僕たちの質問に答えてくれた。
「リョウエストくんね…すごい子よ。王国の料理番にして、発明家なんですよ。あの年齢で印刷機まで…人生の先輩たちが、もうね、『若き奇跡』って言ってましたよ」
僕はその言葉を聞いて、胸が苦しくなったけれど、同時にリョウを誇らしくも思った。
授業が終わると、僕とリョウは一緒に校庭へ。父レウフォ騎士爵と祖父も、ハッセルエン叔父さんも今日は授業参観に来ていた。得意な運動の授業で僕は少し意気がる。それに気づいたリョウが、僕の肩をぽんと叩いた。
「ヤルス君、君はすごい騎士の家系なんだから、君の強さもちゃんとあるよ。君は君で、君らしく頑張るだけなの」
リョウのその言葉は、僕の胸に静かな灯りをともした。そうだ、僕には僕の役割がある。僕だってちゃんと…。
授業参観では、ビッキー先生が「みんなの夢」を書く時間を設けた。ナミリア様は「将来、領主の補佐をする」と書いていた。僕は「騎士になる」と書いた。そしてリョウは、静かに紙に何か書いていた。後で聞いたら「人と種族をつなぐ架け橋になる」だって。
その言葉は、僕たちクラス全員が笑顔になるようなすごく大きな夢だった。僕も頑張ろう、騎士としての道を。リョウみたいに…英雄ってわけじゃないけれど、守るべきものがあるって素敵なことだと思ったんだ。
授業の後、父と祖父がふたりで話をしていた。
「リョウは…ただの才覚だけではない。異種族との調和を実現している。これは単なる発明家の資質ではないぞ」
「異種族の尊厳を認め、共に歩む…だがそれを、国王も容認し始めた。若きリョウが旗を振れば、ルステインどころか王国の形が変わってしまうかもしれん。爺としては誇らしいが危なっかしくて見てられんな」
祖父の声は深くて、でもそこには期待も恐れも混じっている。父もそれに応えるように、
「ヤルス、お前もよく見ておくのだ。リョウは、戦で奪うのではなく『協力と知恵』で結果を出している。その姿に、領も国も導かれるかもしれない」
僕はその言葉に、ジンと胸が熱くなった。リョウのように、僕も力を尽くして守る立場になりたい。
夕暮れ、家に帰って僕はリョウにお礼の手紙を書いた。
「従兄弟へ 今日はありがとう。君のおかげで僕も勇気がもらえたよ。僕は続くから。騎士になって君も守るから。ヤルスより」と。
リョウからは、
「ヤルス君、ありがとう。君の剣は、この国を守る盾になる。僕も君がいてくれて嬉しい。リョウより」
という返事が来た。
夜、母がその手紙を読んで、目を細めて言った。
「あなたたち、いいコンビね。戦と知識、力と優しさ…これがこの国の未来なのかもしれないわ」
次の日の午後、僕は母に許しをもらって、リョウがいるドワーヴンベースに行った。地精や獣人、風精や火の民、小人、水竜人までが出入りしている「多種族の交差点」みたいな場所だ。
門をくぐると、庭で見慣れない布を干している火の民のおばさんに会った。防水布の試作品だと聞かされた。青みがかったその布は、特殊な液体で加工されているらしく、濡れても一切水が染みないらしい。
「おや、坊ちゃんのご親戚? リョウ様なら裏庭で水竜人族と話してますよ」
火の民の優しいおばさんが教えてくれた。
裏庭では、リョウが一人の青い肌の青年…水竜人族の青年と話していた。彼が何度か話題にしていた『ティルシェード』さんかもしれない。話は真剣そのものだったけど、僕が近づくと、ふたりとも笑顔で迎えてくれた。
「おう、ヤルス君。ちょうどいいところに来たよ。いま、地下水脈の運用について相談してたんだ」
「…あんたが噂のヤルスか。剣の道を目指してるって?」
ティルさんの声は低くて渋い。でも、どこか優しさがあった。
「うん、僕はリョウみたいにはなれないけど、自分の役割を果たしたいんだ。リョウを守れるように」
リョウは少し驚いた顔をして、それから照れくさそうに笑った。
「ありがとう。でもね、ヤルス君、僕は守ってもらうだけじゃないよ。君と並んで、共に戦うんだ」
庭の石に腰を下ろして、ふたりで夕暮れを見ながら話をした。リョウは夢を語った。
「僕ね、ただ発明を広めたいわけじゃないんだ。印刷機や魔法瓶も、道具としての価値だけじゃない。それに異種族の文化を混ぜて、ひとつの社会をつくる。それが本当の目的だよ」
「…難しそうだな。でも、従兄弟が言うとできる気がしてくる」
「ヤルス君。君のお父さんやお爺様、すごい人たちだよ。そんな人たちに育てられた君がいるなら、この道はきっと安全だ」
そんな風に言われて、僕は初めて本当の意味でリョウを『すごい』と思った。ただ知識や発明だけじゃない。彼は、相手の可能性を見て、それを信じてくれる。
それがきっと、リョウエスト・スサンという人物の最大の力なんだ。
やがて空が暗くなり、帰る頃。門まで送ってくれたリョウが、ふいにこう言った。
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