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7歳の駈歩。
スサン商会王都支店開店。
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王都の中心部。煌びやかな大通りの一角に、スサン商会の新たな拠点『王都支店』がその堂々たる姿を現した。外観は古風で落ち着いた造りながら、その内装と設備は最先端。扉の向こうには、僕たち一家の夢と努力が詰まっている。
今日はそのオープン初日。そして同時に、盛大な祝賀会が開催される日でもあった。
「ロイック兄さん、本当にできたんだね……」
僕は胸を躍らせながら、商会の正面扉を見上げた。木彫の看板には、優雅な金文字で『スサン商会王都支店』と刻まれている。王都に数多くある商館の中でも、特にこの通りに店を構えることができるのは一握りの商人のみ。誇らしさと緊張が入り混じる。
ロイック兄さんは、そんな僕の背をぽんと優しく叩いた。
「お前のおかげでもあるよ、リョウ。ここまでこれたのは、家族全員で頑張ってきたからだ」
「うん…でも兄さんがいちばん頑張ってた」
王都支店の準備期間中、兄さんは昼も夜もなく奔走していたようだ。取引先との交渉、倉庫や工房の物件確保、看板の設置、工房の設計、従業員の教育、そして祝賀会の準備まで…僕から見ても、兄さんの働きぶりはまさに一流の商人だった。
その兄さんを支えたのは、三人のお姉さんたちだ。
「マリカ姉さん、ドレス似合ってるよ!」
「まあ、ありがとうリョウ。王都では品が大事ですの。にこっ」
いつも明るいマリカ姉さんは、パーティーの装飾や招待客の対応を仕切っている。彼女のセンスと華やかさは、上級貴族にも引けを取らない。
「リョウ、立食の流れはこちらで大丈夫でしょうか?」
ケリィ姉さんはいつも冷静。今日は料理や飲み物の運用面でスタッフと連携して動いていた。実務面ではまさに彼女の右に出る者はいない。
「…リョウ、案内役私やるから。道に迷う子いたら任せて」
最近姉さんと言うようになったジェン姉さんは水竜人で、少し寡黙だけどとても優しい。今日は従業員の補助や子どもたちの案内係として動いていた。青い髪がライトに照らされてきれいだった。
「ほんとに、すごいな…」
僕が感嘆の息を漏らすと、聞き覚えのある声が背後から飛び込んできた。
「やっぱりリョウだったか!」
振り返れば、学園に通っているストラ兄さんが満面の笑みで手を振っていた。その隣には、姉のミシェ姉さんとラーモンさんの姿も。
「リョウ!」
「ミシェ姉さん!ラーモンさんも!」
「うむ。この間ぶり。さっきそこでストラスト君に会ってな、一緒に来た」
「ストラ兄さん、久しぶり元気だった?」
「リョウ、なんか見ない間に色々な事になってるらしいな。後で話を聞かせてくれ」
兄弟全員が久しぶりにそろった。王都にいるとはいえ、こうして全員が一堂に会するのは実に久しぶりだ。祝賀会が始まる前から、僕の心は温かさで満たされていた。
そこへ、華やかな礼服に身を包んだマックスさんとレイアムさんが到着した。
「やあ、リョウエスト」
「マックスさん!」
「今日は君たち家族の努力を讃えに来たのだよ。君の商会が王都に拠点を構えたというのは、我がルステインの誇りでもある。レイアム、例の品を」
「ええ、こちらですわ。ロイックエン、リョウ。おめでとうございます」
レイアムさんから渡されたのは、見事な装飾が施された銀の筆記具セット。王都の文具職人が特注で仕上げた一品だ。
「すごい…!ありがとうございます!」
「書くことは考えることの一歩。君達の発想力が、これからの王国を導くことになるだろう。楽しみにしているよ」
やがて祝賀会が始まると、『スサンの天使』王都店は歓声と音楽で満ちた。料理はもちろん僕が監修した品。ルステインの特産を活かしつつも、色々な種族の食文化を取り入れた多種族料理が並んだ。
「これが噂の『スサン式燻製ポット』か…香りがすごい」
「こっちは『冷製ジュレ』だって!ひんやりしてて…うわ、うまい!」
「この『上位オークのロースト』はルステインがこの場にやってきたような一品だ!」
貴族、商人、街の名士たちが一皿ごとに歓声をあげる。厨房のスタッフも、支店開設に伴いドワーフやエルフの職人が加わっており、その技術力は料理の細部にまで息づいていた。
祝賀会の熱気がひと段落し、『スサンの天使』王都店の奥にある応接室には、ほのかなランプの明かりが満ちていた。そこには、僕と兄のロイック兄さん、ストラ兄さん、そして姉のミシェ姉さんが座っていた。静かな夜の中、兄弟水入らずの時間だ。
「…なあ、リョウ。お前、ほんとにすごいよ」
ストラ兄さんがぽつりとつぶやいた。
「噂で聞いてたけど…商会の運送や新商品、あれ本当にお前の案だったんだろ?」
「うん。でも一人じゃ無理だったよ。みんなが助けてくれた。お父さんもロイック兄さんも、それに兄さんたちの奥さんも、各種族の人達も」
ロイック兄さんは軽くうなずいて、頬を掻いた。
「でもリョウがいなきゃ僕もここまで来れなかった。あの新商品たち…正直、最初は理解できなかったよ。けど動き出せば、商人も職人も、貴族も兵士も動かされる。それがお前のすごさだ」
「でも俺、まだ七歳だよ? 本当は分かんないことばっかりなんだ。怖いこともあるし、うまくいかないこともある」
僕の言葉に、ミシェ姉さんが優しく笑った。
「それでいいのよ、リョウ。私たちは家族。怖くなったら支える。分からなくなったら話し合う。あなたは一人じゃないの…今日、ラーモンも感動してたのよ。『弟くんが未来を作ってる』って」
「ふふ…ラーモンさん、そんなこと言ってたの?」
兄弟みんなが笑った。久しぶりに、心からの笑い声だった。
僕たちはそれぞれ違う道を歩んでいる。ロイック兄さんは商会の大商人として、王都やルステインの人々と向き合いながら商売の最前線に立っている。ストラ兄さんは学園で学問を修めながらスサン商会と王国の未来のために何ができるかを考えている。ミシェ姉さんは貴族の家に嫁ぎ、今では次期領主の奥方として新しい家族を築いていこうとしている。
そして僕は、料理番として、商会長として、まだ見ぬ未来に向かって走っている。
「これからもきっと、大変なことがいっぱいあると思う。でも僕絶対に諦めたくないの。みんなと一緒に、『良くなる未来』を見たい」
「…頼もしいな、弟よ」
ロイック兄さんがぐっと拳を握った。
「じゃあ、俺たちも頑張らないとな」
「ええ。私も、リョウに恥じない姉でいられるようにしないとね」
ランプの火が揺れ、四人の影を壁に映した。その影は重なり合いながら、まるで一つの大樹のように見えた。
今日はそのオープン初日。そして同時に、盛大な祝賀会が開催される日でもあった。
「ロイック兄さん、本当にできたんだね……」
僕は胸を躍らせながら、商会の正面扉を見上げた。木彫の看板には、優雅な金文字で『スサン商会王都支店』と刻まれている。王都に数多くある商館の中でも、特にこの通りに店を構えることができるのは一握りの商人のみ。誇らしさと緊張が入り混じる。
ロイック兄さんは、そんな僕の背をぽんと優しく叩いた。
「お前のおかげでもあるよ、リョウ。ここまでこれたのは、家族全員で頑張ってきたからだ」
「うん…でも兄さんがいちばん頑張ってた」
王都支店の準備期間中、兄さんは昼も夜もなく奔走していたようだ。取引先との交渉、倉庫や工房の物件確保、看板の設置、工房の設計、従業員の教育、そして祝賀会の準備まで…僕から見ても、兄さんの働きぶりはまさに一流の商人だった。
その兄さんを支えたのは、三人のお姉さんたちだ。
「マリカ姉さん、ドレス似合ってるよ!」
「まあ、ありがとうリョウ。王都では品が大事ですの。にこっ」
いつも明るいマリカ姉さんは、パーティーの装飾や招待客の対応を仕切っている。彼女のセンスと華やかさは、上級貴族にも引けを取らない。
「リョウ、立食の流れはこちらで大丈夫でしょうか?」
ケリィ姉さんはいつも冷静。今日は料理や飲み物の運用面でスタッフと連携して動いていた。実務面ではまさに彼女の右に出る者はいない。
「…リョウ、案内役私やるから。道に迷う子いたら任せて」
最近姉さんと言うようになったジェン姉さんは水竜人で、少し寡黙だけどとても優しい。今日は従業員の補助や子どもたちの案内係として動いていた。青い髪がライトに照らされてきれいだった。
「ほんとに、すごいな…」
僕が感嘆の息を漏らすと、聞き覚えのある声が背後から飛び込んできた。
「やっぱりリョウだったか!」
振り返れば、学園に通っているストラ兄さんが満面の笑みで手を振っていた。その隣には、姉のミシェ姉さんとラーモンさんの姿も。
「リョウ!」
「ミシェ姉さん!ラーモンさんも!」
「うむ。この間ぶり。さっきそこでストラスト君に会ってな、一緒に来た」
「ストラ兄さん、久しぶり元気だった?」
「リョウ、なんか見ない間に色々な事になってるらしいな。後で話を聞かせてくれ」
兄弟全員が久しぶりにそろった。王都にいるとはいえ、こうして全員が一堂に会するのは実に久しぶりだ。祝賀会が始まる前から、僕の心は温かさで満たされていた。
そこへ、華やかな礼服に身を包んだマックスさんとレイアムさんが到着した。
「やあ、リョウエスト」
「マックスさん!」
「今日は君たち家族の努力を讃えに来たのだよ。君の商会が王都に拠点を構えたというのは、我がルステインの誇りでもある。レイアム、例の品を」
「ええ、こちらですわ。ロイックエン、リョウ。おめでとうございます」
レイアムさんから渡されたのは、見事な装飾が施された銀の筆記具セット。王都の文具職人が特注で仕上げた一品だ。
「すごい…!ありがとうございます!」
「書くことは考えることの一歩。君達の発想力が、これからの王国を導くことになるだろう。楽しみにしているよ」
やがて祝賀会が始まると、『スサンの天使』王都店は歓声と音楽で満ちた。料理はもちろん僕が監修した品。ルステインの特産を活かしつつも、色々な種族の食文化を取り入れた多種族料理が並んだ。
「これが噂の『スサン式燻製ポット』か…香りがすごい」
「こっちは『冷製ジュレ』だって!ひんやりしてて…うわ、うまい!」
「この『上位オークのロースト』はルステインがこの場にやってきたような一品だ!」
貴族、商人、街の名士たちが一皿ごとに歓声をあげる。厨房のスタッフも、支店開設に伴いドワーフやエルフの職人が加わっており、その技術力は料理の細部にまで息づいていた。
祝賀会の熱気がひと段落し、『スサンの天使』王都店の奥にある応接室には、ほのかなランプの明かりが満ちていた。そこには、僕と兄のロイック兄さん、ストラ兄さん、そして姉のミシェ姉さんが座っていた。静かな夜の中、兄弟水入らずの時間だ。
「…なあ、リョウ。お前、ほんとにすごいよ」
ストラ兄さんがぽつりとつぶやいた。
「噂で聞いてたけど…商会の運送や新商品、あれ本当にお前の案だったんだろ?」
「うん。でも一人じゃ無理だったよ。みんなが助けてくれた。お父さんもロイック兄さんも、それに兄さんたちの奥さんも、各種族の人達も」
ロイック兄さんは軽くうなずいて、頬を掻いた。
「でもリョウがいなきゃ僕もここまで来れなかった。あの新商品たち…正直、最初は理解できなかったよ。けど動き出せば、商人も職人も、貴族も兵士も動かされる。それがお前のすごさだ」
「でも俺、まだ七歳だよ? 本当は分かんないことばっかりなんだ。怖いこともあるし、うまくいかないこともある」
僕の言葉に、ミシェ姉さんが優しく笑った。
「それでいいのよ、リョウ。私たちは家族。怖くなったら支える。分からなくなったら話し合う。あなたは一人じゃないの…今日、ラーモンも感動してたのよ。『弟くんが未来を作ってる』って」
「ふふ…ラーモンさん、そんなこと言ってたの?」
兄弟みんなが笑った。久しぶりに、心からの笑い声だった。
僕たちはそれぞれ違う道を歩んでいる。ロイック兄さんは商会の大商人として、王都やルステインの人々と向き合いながら商売の最前線に立っている。ストラ兄さんは学園で学問を修めながらスサン商会と王国の未来のために何ができるかを考えている。ミシェ姉さんは貴族の家に嫁ぎ、今では次期領主の奥方として新しい家族を築いていこうとしている。
そして僕は、料理番として、商会長として、まだ見ぬ未来に向かって走っている。
「これからもきっと、大変なことがいっぱいあると思う。でも僕絶対に諦めたくないの。みんなと一緒に、『良くなる未来』を見たい」
「…頼もしいな、弟よ」
ロイック兄さんがぐっと拳を握った。
「じゃあ、俺たちも頑張らないとな」
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