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7歳の駈歩。
王妃様のお茶会。
王城への参内の日、ルステイン領主一行が馬車列を整え王都の石畳を進んでいた。僕、リョウエスト・スサンも新しく揃えた専用装束に身を包み、ストークに襟元を整えてもらっている。侍女姿のミザーリは僕の隣で、少しかしこまって静かに佇む。
馬車が城門を通り抜け、高い城壁を超えると、正面入り口に到達する。そこで馬車を降りて中に入る。謁見の間へと続く長い廊下に足音が響く。ルステインの貴族たち、マックスさんとその配下一同が並ぶ中僕は深呼吸をした。今日はマックスさんと僕だけが「直臣」として、王──ドナハルト・ロ・コリント陛下に直接ご挨拶できるのだ。
謁見の間の扉が開き、内陣に入る。高く澄んだ声音で、マックスさんと僕は挨拶した。
「王様。ルステイン領主マクシミリアン・ラ・ルステイン、家臣と共にまかり越してございます」
「王様。『王国の料理番』リョウエスト・スサン。まかりこしてございます」
こういうところが苦手な僕の声は緊張で震えかけていたけれど、しっかりと陛下の目を見て伝えた。彼は温かな微笑を浮かべ、静かに頷いた。
「よく来たな、マクシミリアン。そしてリョウエスト……お前たちが築いた各種族との友情は、王国の誇りだ。今年もお前たちの知恵と誠実を期待しているぞ」
「「はい、王様」」
「リョウエスト、今度の発表会を楽しみにしておるぞ」
「はい、王様。期待しておいて下さい」
「ほお、自信満々そうだな。楽しみだ。リョウエスト、そちは王国に多大なる貢献をしている。これも王国の誇りだ」
その言葉を聞いた僕の胸は、誇りと同時に責任感でいっぱいになった。陛下の前で、僕はただの子どもではいられない。今日もまた、僕は大人たちの中に立っている。
その後、侍従長のサイスさんの案内で、控えの間に移動した。サイスさんが静かに声をかける。
「リョウエスト様、王妃様がお目通りを望んでおられます。お茶会の準備で、お力を貸していただければと」
案内された先には、優雅な白のドレスをまとった王妃様が控えていた。王妃様は穏やかな微笑を浮かべながら、僕に語りかけた。
「リョウ、早速頼りに来ました。今年はお菓子をお願いしたいのです。あなたのエストサーモスを使った冷製デザートや、ルステイン料理のスパイス菓子など、新しい工夫があればぜひお出ししたくて。王妃友人のお茶会ですので、華やかにお願いできますか?」
「はい、王妃様。かしこまりました」
お茶会当日。王都の邸宅の一室に、絹張りの椅子と銀器が整えられ、軽いチューニングの竪琴の音がほのかに響く。僕は早朝から厨房で、ミザーリとストークに手伝ってもらい共にお菓子の最終仕上げをしていた。
冷製フルーツジュレ、スパイス入りフィナンシェ、プリンアラモードなどすべて、この社交シーズンの為にいままで僕が考え、試作してきた新作ばかり。魔法道具の布で保冷&湿度調整することにより当日でもふんわり瑞々しく仕上がる。この魔法道具の布は小人のクルムと風精のアコンキットの合作だ。錬金術でもやろうと思ったら出来るんだけど、魔力が魔法道具は要らないんだよね。
お茶会が始まると、王妃の友人たち、貴婦人たちが紅茶を片手に入室してくる。僕のお菓子がテーブルに並ぶと、やがて歓声が上がった。
「まあ、これがリョウエスト様のお菓子ですか!上品で、でもしっかり美味しいなんて!」
「冷製ジュレは魔法布のおかげなのかしら?口の中でひんやりと溶けるわ」
「このスパイスフィナンシェ、ほんのり温かくて…体にも心にも沁みるね」
僕は少し照れながらも、ひとりひとりに説明をした。
「これはヤク牛の乳から作ったバターを使った生地で、少し火の民の香辛料を効かせました」
「そうなのね。スパイス入りなんてはじめてよ」
「魔法布は、小人とエルフの職人と開発したもので、冷気や湿気の侵入を調整してくれます」
「冷たいはずだわ。素晴らしい工夫よ」
貴婦人たちは感心しながらうなずいてくれ、僕の手をそっと握ってくれる方もいた。王妃様は休憩の合間に厨房まで来てくださり、僕とミザーリを優しくねぎらってくれた。
「素晴らしい…お菓子だけでなく、あなたの心遣いが伝わりますわ。これなら次回のお茶会でもぜひお願いします」
「はい。用事が無かったら」
「もう。あまり依存しないようにするわ。リョウの役に立つ人を選ぶから安心してね」
「ありがとうございます」
「今後ともお願いね」
「はい、王妃様」
お茶会が終わると、侍従長のサイスさんが丁寧に僕に告げた。
「リョウエスト子爵殿、王妃様より改めてお礼を申し上げよと。後ほど書簡をお渡しいたします。陛下も、貴方の名を褒めておられました。さすがルステインの誇り、リョウエスト様です」
「サイスさん、王妃様のお茶会って多い?」
「社交シーズンは多いと思います」
「そうかあ」
「他にやる事が多すぎますね。リョウエスト様は」
「出来るだけお役には立ちたいと思うのだけど」
「その辺は我らが調節しておきます。なるべく2、3日前にはご連絡いたしますようにしますので」
「よろしくお願いします」
王妃と貴婦人たちに囲まれた午後のひとときは、華やかで、でも僕にとっては『覚悟の時間』でもあった…王国の料理番としてはやらなきゃいけない仕事だからね。これからも、多くの人を笑顔にし、国をつなぐ『味と工夫の匠』としても歩み続けよう。そう心に誓いながらその場を後にした。
馬車が城門を通り抜け、高い城壁を超えると、正面入り口に到達する。そこで馬車を降りて中に入る。謁見の間へと続く長い廊下に足音が響く。ルステインの貴族たち、マックスさんとその配下一同が並ぶ中僕は深呼吸をした。今日はマックスさんと僕だけが「直臣」として、王──ドナハルト・ロ・コリント陛下に直接ご挨拶できるのだ。
謁見の間の扉が開き、内陣に入る。高く澄んだ声音で、マックスさんと僕は挨拶した。
「王様。ルステイン領主マクシミリアン・ラ・ルステイン、家臣と共にまかり越してございます」
「王様。『王国の料理番』リョウエスト・スサン。まかりこしてございます」
こういうところが苦手な僕の声は緊張で震えかけていたけれど、しっかりと陛下の目を見て伝えた。彼は温かな微笑を浮かべ、静かに頷いた。
「よく来たな、マクシミリアン。そしてリョウエスト……お前たちが築いた各種族との友情は、王国の誇りだ。今年もお前たちの知恵と誠実を期待しているぞ」
「「はい、王様」」
「リョウエスト、今度の発表会を楽しみにしておるぞ」
「はい、王様。期待しておいて下さい」
「ほお、自信満々そうだな。楽しみだ。リョウエスト、そちは王国に多大なる貢献をしている。これも王国の誇りだ」
その言葉を聞いた僕の胸は、誇りと同時に責任感でいっぱいになった。陛下の前で、僕はただの子どもではいられない。今日もまた、僕は大人たちの中に立っている。
その後、侍従長のサイスさんの案内で、控えの間に移動した。サイスさんが静かに声をかける。
「リョウエスト様、王妃様がお目通りを望んでおられます。お茶会の準備で、お力を貸していただければと」
案内された先には、優雅な白のドレスをまとった王妃様が控えていた。王妃様は穏やかな微笑を浮かべながら、僕に語りかけた。
「リョウ、早速頼りに来ました。今年はお菓子をお願いしたいのです。あなたのエストサーモスを使った冷製デザートや、ルステイン料理のスパイス菓子など、新しい工夫があればぜひお出ししたくて。王妃友人のお茶会ですので、華やかにお願いできますか?」
「はい、王妃様。かしこまりました」
お茶会当日。王都の邸宅の一室に、絹張りの椅子と銀器が整えられ、軽いチューニングの竪琴の音がほのかに響く。僕は早朝から厨房で、ミザーリとストークに手伝ってもらい共にお菓子の最終仕上げをしていた。
冷製フルーツジュレ、スパイス入りフィナンシェ、プリンアラモードなどすべて、この社交シーズンの為にいままで僕が考え、試作してきた新作ばかり。魔法道具の布で保冷&湿度調整することにより当日でもふんわり瑞々しく仕上がる。この魔法道具の布は小人のクルムと風精のアコンキットの合作だ。錬金術でもやろうと思ったら出来るんだけど、魔力が魔法道具は要らないんだよね。
お茶会が始まると、王妃の友人たち、貴婦人たちが紅茶を片手に入室してくる。僕のお菓子がテーブルに並ぶと、やがて歓声が上がった。
「まあ、これがリョウエスト様のお菓子ですか!上品で、でもしっかり美味しいなんて!」
「冷製ジュレは魔法布のおかげなのかしら?口の中でひんやりと溶けるわ」
「このスパイスフィナンシェ、ほんのり温かくて…体にも心にも沁みるね」
僕は少し照れながらも、ひとりひとりに説明をした。
「これはヤク牛の乳から作ったバターを使った生地で、少し火の民の香辛料を効かせました」
「そうなのね。スパイス入りなんてはじめてよ」
「魔法布は、小人とエルフの職人と開発したもので、冷気や湿気の侵入を調整してくれます」
「冷たいはずだわ。素晴らしい工夫よ」
貴婦人たちは感心しながらうなずいてくれ、僕の手をそっと握ってくれる方もいた。王妃様は休憩の合間に厨房まで来てくださり、僕とミザーリを優しくねぎらってくれた。
「素晴らしい…お菓子だけでなく、あなたの心遣いが伝わりますわ。これなら次回のお茶会でもぜひお願いします」
「はい。用事が無かったら」
「もう。あまり依存しないようにするわ。リョウの役に立つ人を選ぶから安心してね」
「ありがとうございます」
「今後ともお願いね」
「はい、王妃様」
お茶会が終わると、侍従長のサイスさんが丁寧に僕に告げた。
「リョウエスト子爵殿、王妃様より改めてお礼を申し上げよと。後ほど書簡をお渡しいたします。陛下も、貴方の名を褒めておられました。さすがルステインの誇り、リョウエスト様です」
「サイスさん、王妃様のお茶会って多い?」
「社交シーズンは多いと思います」
「そうかあ」
「他にやる事が多すぎますね。リョウエスト様は」
「出来るだけお役には立ちたいと思うのだけど」
「その辺は我らが調節しておきます。なるべく2、3日前にはご連絡いたしますようにしますので」
「よろしくお願いします」
王妃と貴婦人たちに囲まれた午後のひとときは、華やかで、でも僕にとっては『覚悟の時間』でもあった…王国の料理番としてはやらなきゃいけない仕事だからね。これからも、多くの人を笑顔にし、国をつなぐ『味と工夫の匠』としても歩み続けよう。そう心に誓いながらその場を後にした。
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