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7歳の駈歩。
エフェルト公爵は今年も驚いた。
エフェルト公爵の夜会は、王都でも屈指の格式を誇る一大イベントだ。
今年もその招待状が届き、僕はマックスさんとレイアムさんと一緒に、夜の帳の中、煌びやかに灯された公爵邸に到着した。上位のゲストの迎え方で迎えてもらうから非常に嬉しい気持ちになる。
エフェルト公爵とはこれまでにも何度も顔を合わせている。僕を友人だと公言してくれていて、気さくで情に厚く、何より料理とものづくりが好きな人だ。だから、僕のこともすごく可愛がってくれる。今日も前々からお願いされていた肉料理の一品を作る。またも珍味の指定だが仕上がった味は素晴らしいものになったと思う。
広大なホールには、すでにたくさんの招待客が集まり、夜会の前のフルコース、ウルリッヒスタイルが始まろうとしていた。僕は自分の特別席へ案内される。またマックスさんと公爵の間の席だった。
「おお、リョウエスト君、よく来てくれたな」
にこやかにエフェルト公爵が僕に手を差し伸べる。僕はきちんと立ち上がり、お辞儀をしてそれに応えた。
「招いていただき、ありがとうございます、公爵閣下。今日の料理、すごく楽しみにしてます!」
「ふふ、それは良かった。実は、リョウエスト君に合わせて特別に組ませてもらったんだ。君のアイディアもふんだんに盛り込まれてるからね」
料理長がその声を聞いてにこりと笑い、サーブが始まった。
前菜は「パリパリチキンのサラダ」。香ばしく焼き上げられた鶏皮のパリパリ感と、ハーブを効かせた野菜たちの相性が抜群。シンプルだけど丁寧な仕込みがわかる。僕は一口ごとに「うん、いい感じ」と小さく頷いていた。
次に出てきたのは「コリント鍋」。これは僕が以前提案したスープ料理で、王国各地の野菜と薄切り肉、特製スパイスで煮込んだ優しい味。公爵領で採れた根菜が特に甘くて、美味しい。
魚料理は「スズキのムニエル」。香ばしくソテーされた身に、レモンバターソースがたっぷりかけられていて、僕の席の隣でもレイアムさんが「まあ、これは素晴らしいわ」と笑顔になっていた。ムニエルも登録して良かったよ。
そして、ここからが今日の目玉だ。
肉料理の前に、料理長が僕の席までやってきて囁いた。
「例のアバーン肉、仕上げてありますよ。臭み消しも完璧です」
僕はにっこりして頷いた。
エフェルト公爵が立ち上がる。
「今年も王国の料理番リョウエスト・スサン君に特別に肉料理を作ってもらった。今年は何やら面白い珍味が食べられるそうだ。最初からネタバレしても良いという。リョウエスト君、何の肉だい?」
「はい。エフェルト公爵領に多く棲息する魔獣アバーンです!」
「あれは臭みが強いよ」
「臭くない?」
「大丈夫なの?」
「えー。無理かも」
そう言った声を多く聞かれた。
「みなさま、騙されたと思って味見をお願いします。損はさせないの」
僕はそう言う。
「わかった。食べてみようではないか!王国の料理番の料理を味わおう」
エフェルト公爵様はそう言って席に着いた。
アバーンという魔獣の肉は、普通は臭くて食べられないとされている。でも、エフェルト公爵領ではアバーンが多く出没し、処理次第では貴重なタンパク源にもなる。そこで僕は、地元特産の牛乳と、薬師なら簡単に手に入るスパイスで下処理することで、旨みだけを引き出す方法を提案していた。
出てきたのは、艶やかなソースをまとった「アバーンのミルクソテー」。一口食べると、ふわっと広がるコク、全く臭みはなく、むしろ上質なジビエのような味わいだった。
「こいつは…っ、リョウエスト君、本当に驚いたぞ」
エフェルト公爵が本気で感動した顔をしていた。周りの人も驚いている。
「公爵領のアバーンが資源になるとは思わなかったでしょう? 牛乳もスパイスも地元のもので完結できるから、これから兵糧としても使えるの」
そう言うと、公爵は「いやはや、君には何度頭を下げても足りん」と笑い、隣のマックスさんも「私もこの味には感服しました」としみじみ呟いていた。
メインは「味噌カツ」。これはコリントで密かに人気が出てきている料理で、濃厚な味噌ダレがカツに絡んでご飯が欲しくなる味。エフェルト公爵が昨年味噌の味を知ってから研究させていたものだ。僕のちょっとした話からこれを作ってしまうとはすごい。なお、サラダはシンプルにキャベツの千切りだった。良いね!
そして、最後は「フルーツロールケルディス」。これは僕が考案したデザートで、フルーツの酸味と甘さを絶妙にバランスさせた生地で、クリームと一緒に巻いたもの。会場では「おいしい!」の声があちこちであがっていた。
こうしてフルコースが終わると、いよいよ夜会本番だ。
貴族たちが踊り、語らい、商談を交わす中、僕は様々な人たちと挨拶を交わしていった。すでに子どもではなく、「王国の料理番、そして商会長リョウエスト・スサン」として認識されているのを肌で感じる。
中でも、エフェルト公爵との話は長く続いた。
「リョウ君、君はまるで我が国の灯火だ。新しい道を照らしてくれる、静かな炎だよ」
「公爵閣下、僕はただ、美味しいものを届けたくて頑張ってるだけなの」
「それが素晴らしいんだよ。誰もが忘れかけてた、大切なことを思い出させてくれる。君とまた、このように語り合えて嬉しいよ」
その言葉が、胸に深く沁みた。
夜会の最後には、僕の元にレイアムさんがやってきて、やわらかい微笑みとともに囁いた。
「あなたは、まだ7歳なのに……本当にすごい子ね。ミシェレルがあなたを誇りに思ってる理由が、わかる気がするわ」
僕は照れくさくて、うまく返せなかったけれど、その夜はとてもあたたかかった。
夜会を終えた帰り道、公爵邸を振り返りながら、僕はそっと呟いた。
「次は、どんな料理を出そうかな……」
今年もその招待状が届き、僕はマックスさんとレイアムさんと一緒に、夜の帳の中、煌びやかに灯された公爵邸に到着した。上位のゲストの迎え方で迎えてもらうから非常に嬉しい気持ちになる。
エフェルト公爵とはこれまでにも何度も顔を合わせている。僕を友人だと公言してくれていて、気さくで情に厚く、何より料理とものづくりが好きな人だ。だから、僕のこともすごく可愛がってくれる。今日も前々からお願いされていた肉料理の一品を作る。またも珍味の指定だが仕上がった味は素晴らしいものになったと思う。
広大なホールには、すでにたくさんの招待客が集まり、夜会の前のフルコース、ウルリッヒスタイルが始まろうとしていた。僕は自分の特別席へ案内される。またマックスさんと公爵の間の席だった。
「おお、リョウエスト君、よく来てくれたな」
にこやかにエフェルト公爵が僕に手を差し伸べる。僕はきちんと立ち上がり、お辞儀をしてそれに応えた。
「招いていただき、ありがとうございます、公爵閣下。今日の料理、すごく楽しみにしてます!」
「ふふ、それは良かった。実は、リョウエスト君に合わせて特別に組ませてもらったんだ。君のアイディアもふんだんに盛り込まれてるからね」
料理長がその声を聞いてにこりと笑い、サーブが始まった。
前菜は「パリパリチキンのサラダ」。香ばしく焼き上げられた鶏皮のパリパリ感と、ハーブを効かせた野菜たちの相性が抜群。シンプルだけど丁寧な仕込みがわかる。僕は一口ごとに「うん、いい感じ」と小さく頷いていた。
次に出てきたのは「コリント鍋」。これは僕が以前提案したスープ料理で、王国各地の野菜と薄切り肉、特製スパイスで煮込んだ優しい味。公爵領で採れた根菜が特に甘くて、美味しい。
魚料理は「スズキのムニエル」。香ばしくソテーされた身に、レモンバターソースがたっぷりかけられていて、僕の席の隣でもレイアムさんが「まあ、これは素晴らしいわ」と笑顔になっていた。ムニエルも登録して良かったよ。
そして、ここからが今日の目玉だ。
肉料理の前に、料理長が僕の席までやってきて囁いた。
「例のアバーン肉、仕上げてありますよ。臭み消しも完璧です」
僕はにっこりして頷いた。
エフェルト公爵が立ち上がる。
「今年も王国の料理番リョウエスト・スサン君に特別に肉料理を作ってもらった。今年は何やら面白い珍味が食べられるそうだ。最初からネタバレしても良いという。リョウエスト君、何の肉だい?」
「はい。エフェルト公爵領に多く棲息する魔獣アバーンです!」
「あれは臭みが強いよ」
「臭くない?」
「大丈夫なの?」
「えー。無理かも」
そう言った声を多く聞かれた。
「みなさま、騙されたと思って味見をお願いします。損はさせないの」
僕はそう言う。
「わかった。食べてみようではないか!王国の料理番の料理を味わおう」
エフェルト公爵様はそう言って席に着いた。
アバーンという魔獣の肉は、普通は臭くて食べられないとされている。でも、エフェルト公爵領ではアバーンが多く出没し、処理次第では貴重なタンパク源にもなる。そこで僕は、地元特産の牛乳と、薬師なら簡単に手に入るスパイスで下処理することで、旨みだけを引き出す方法を提案していた。
出てきたのは、艶やかなソースをまとった「アバーンのミルクソテー」。一口食べると、ふわっと広がるコク、全く臭みはなく、むしろ上質なジビエのような味わいだった。
「こいつは…っ、リョウエスト君、本当に驚いたぞ」
エフェルト公爵が本気で感動した顔をしていた。周りの人も驚いている。
「公爵領のアバーンが資源になるとは思わなかったでしょう? 牛乳もスパイスも地元のもので完結できるから、これから兵糧としても使えるの」
そう言うと、公爵は「いやはや、君には何度頭を下げても足りん」と笑い、隣のマックスさんも「私もこの味には感服しました」としみじみ呟いていた。
メインは「味噌カツ」。これはコリントで密かに人気が出てきている料理で、濃厚な味噌ダレがカツに絡んでご飯が欲しくなる味。エフェルト公爵が昨年味噌の味を知ってから研究させていたものだ。僕のちょっとした話からこれを作ってしまうとはすごい。なお、サラダはシンプルにキャベツの千切りだった。良いね!
そして、最後は「フルーツロールケルディス」。これは僕が考案したデザートで、フルーツの酸味と甘さを絶妙にバランスさせた生地で、クリームと一緒に巻いたもの。会場では「おいしい!」の声があちこちであがっていた。
こうしてフルコースが終わると、いよいよ夜会本番だ。
貴族たちが踊り、語らい、商談を交わす中、僕は様々な人たちと挨拶を交わしていった。すでに子どもではなく、「王国の料理番、そして商会長リョウエスト・スサン」として認識されているのを肌で感じる。
中でも、エフェルト公爵との話は長く続いた。
「リョウ君、君はまるで我が国の灯火だ。新しい道を照らしてくれる、静かな炎だよ」
「公爵閣下、僕はただ、美味しいものを届けたくて頑張ってるだけなの」
「それが素晴らしいんだよ。誰もが忘れかけてた、大切なことを思い出させてくれる。君とまた、このように語り合えて嬉しいよ」
その言葉が、胸に深く沁みた。
夜会の最後には、僕の元にレイアムさんがやってきて、やわらかい微笑みとともに囁いた。
「あなたは、まだ7歳なのに……本当にすごい子ね。ミシェレルがあなたを誇りに思ってる理由が、わかる気がするわ」
僕は照れくさくて、うまく返せなかったけれど、その夜はとてもあたたかかった。
夜会を終えた帰り道、公爵邸を振り返りながら、僕はそっと呟いた。
「次は、どんな料理を出そうかな……」
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