【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

文字の大きさ
334 / 806
7歳の駈歩。

王城会議室にて。

 コリント王国、王城内の謁見の間を抜けた先にある重厚な会議室。その扉が静かに開かれると、場の空気がぴんと張り詰めた。

「それでは、ただいまより、リョウエスト商会による新製品の御前発表会を始めます」

 侍従の高らかな声と共に、僕は入場した。前よりなんか大事になってるなあ。並んで座る王様と王妃様、そして第一王子ウルリッヒ様、さらには宰相や重臣たちさらには官僚達の目が一斉に僕へと注がれた。

「リョウエスト商会、商会長リョウエスト・スサンなの。今日は王国の未来に役立つと信じる新たな発明と製品をご紹介するの」
「リョウエスト、よろしく頼む」
「はい、王様」

 まず最初に披露したのは、缶詰だった。

「こちらは密閉された容器に食材を封じて長期保存を可能にするもの。加熱・殺菌された中身は半年、あるいは一年以上も保存できる」
「保存…半年も?」

 農務大臣が思わず声を漏らした。王妃も、興味深そうに銀色の缶を手に取り、中身を確かめる。

「これは…お肉かしら?いい香りがするわ」
「はい。豚肉を使用した角煮なの。他にも野菜や魚の缶詰もあります」

 周囲にどよめきが広がる。戦時や災害時、遠征中の兵士たちに、温かく栄養のある食事を提供できるいう価値をわかってくれたみたいね。

「リョウエスト、それはルステインだけで生産できるのか?」
「いいえ。王国各地に製造所を設ければ地方でも生産できる。農産物の余剰分を利用することで農村の経済支援にも繋がるかも。利用料と専用の魔法道具は買って欲しい」
「それは購入しよう」

 そして、次に披露したのは、ウイスキー。

「これは…なんと申すのだ?」
「ウイスキーと言う。麦を糖化・発酵させ、蒸留し、樽で熟成させた酒です。こちらは、特製の大型蒸留器で作られる。ちなみに熟成はワインと同じように錬金術でやった。ここにあるのは8年物」

 琥珀色に透き通る液体を一口含んだ財務大臣が、目を見開いた。ふふふ。美味しいでしょ?

「…これは、酒か?いやこれは…ただの酒ではない!」

 王様がゆっくりと杯を取り口をつけた。そして一言。

「…見事だ」

 会議室全体が静まり返っちゃった。

「この味と香り、その製法、なによりこれまで誰も知らなかった酒が王国に現れたという衝撃。これはすごい事ですよ!」
 
 突然、外務大臣が叫ぶ。この人酒好きだもんね。

「このレシピを王国にさしあげます。蒸留器の図面もすべて無償でお渡しする。ウイスキーのレシピ使用料だけ下さい」
「なに…?」

 官僚の1人が驚きの声をあげる。そりゃ驚くよね。

「…黙れ」

 宰相が声を低くした。怖いな。僕は静かに答える。

「ウイスキーという新たな酒を王国のものとすることで各地の村や町にも新しい産業が生まれるの。王国全体の利益になると考えてる。その中でまた新しい商機を見つけられれば、それで十分…というか公開しないと地精ドワーフに怒られる」
「あははは」
「ははは」
「それは仕方ないな」

 会議室は笑いに包まれた。それが鎮まると王様が口を開く。

「有言実行だな。面白い」

 王妃様が微笑みを浮かべて言った。

「ではその発明好きの商会長さん。次は、どんな驚きが待っているのかしら?」

 王妃様、ナイスタイミング。

「はい。次にご紹介するのは、こちら。化粧品」

 僕が並べた小瓶には、淡い色のバームや、優しい香りのクリームが詰められている。色々考えたの。大変だった。

「これは、リップクリーム。唇の乾燥を防ぎ、艶やかに保つの」

「まぁ…!」と声をあげたのは、側にいた王妃様付き女官長の侍女さん。

「そしてこちらが、ハンドクリーム。荒れた手肌を潤し、滑らかに保つ。香りは数種類。お楽しみに」

 王妃様がそっと指先に取って塗る。

「あー。王妃様?良いの?」
「良いんです。試したかったのですもの。すばらしいわ…まるで、手が若返ったよう」
「そしてこちらが、口紅。ほんのりと色づき、自然な艶が出るの。紅花、紫根など天然の素材で作ったから安全」

 王妃と数名の女性官僚が夢中になって試してる。ウルリッヒ様が小声で「これは売れるな」と呟いて近くの軍務大臣が吹き出していた。

「では最後のを紹介します。こちらは甜菜糖です」

 僕が差し出したのは、純白の砂糖のような粉末。

「これは、甜菜ビートと呼ばれる植物の根から抽出・精製した甘味料。寒冷地でも育つため、南のサテラージャ国に頼らずとも甘味を国内で生産できるの。知られずにかなりの所で食べられているみたい」

 その瞬間、財務大臣と農務大臣の視線が鋭くなった。怖い。

「甘味の自給…それは…交易の依存を減らせるということか?」
「はい。そして甜菜の搾りかすは家畜の飼料にもなるの」

 砂糖は王国でも取れるけど絶対量が少ないの。サテラージャ国や他の国から輸入してるんだよね。

「これらの製造は、どのように…」
「はい。リップクリームやハンドクリームはドワーヴンベースで小人ハーフリングが作ってる。蒸留器や缶詰の製造には地精ドワーフの技術がある。で、風精エルフの森から香料や薬草の供給も受けていて、火の民サラマンダー水竜人ドラコニアン獣人ビーストマンが、遠隔地からの材料運搬を担ってくれている」

 その言葉に、ウルリッヒ様が頷いた。

「異種族の協力を得て、ここまでの流通網を構築したということか。7歳で、ここまでのことを成すとは…」
「…年齢は問題ではないということだな」

 と、宰相が小さく呟いた。

「リョウエスト。お前の手によって、この王国にまた新たな光が差し込もうとしておる」

 王様はそう言い、そして微笑んでこう続けた。

「これほどの知恵と才覚を、王家に惜しみなく提供する姿勢、王族である我らも、学ぶべき点が多い。今後とも力を貸してくれるか?」
「はい、王様」

 
感想 9

あなたにおすすめの小説

異世界転生したので、文明レベルを21世紀まで引き上げてみた ~前世の膨大な知識を元手に、貧乏貴族から世界を変える“近代化の父”になります~

夏見ナイ
ファンタジー
過労死したプラントエンジニアの俺が転生したのは、剣と魔法の世界のド貧乏な貴族の三男、リオ。石鹸すらない不衛生な環境、飢える家族と領民……。こんな絶望的な状況、やってられるか! 前世の知識を総動員し、俺は快適な生活とスローライフを目指して領地改革を開始する! 農業革命で食料問題を解決し、衛生革命で疫病を撲滅。石鹸、ガラス、醤油もどきで次々と生活レベルを向上させると、寂れた領地はみるみる豊かになっていった。 逃げてきた伯爵令嬢や森のエルフ、ワケありの元騎士など、頼れる仲間も集まり、順風満帆かと思いきや……その成功が、強欲な隣領や王都の貴族たちの目に留まってしまう。 これは、ただ快適に暮らしたかっただけの男が、やがて“近代化の父”と呼ばれるようになるまでの物語。

最強魔法は生活魔法!? ~異世界ではモンスター退治も生活のうち~

gagaga
ファンタジー
神の気まぐれにより異世界へと転移した主人公田辺竜太(大学生)が生活魔法を駆使して冒険したり町の人と触れ合ったりする物語です。 なお、神が気まぐれすぎて一番最初に降り立つ地は、無人島です。 一人称視点、独り言多め、能天気となっております。 なお、作者が気ままに書くので誤字脱字は多いかもしれませんが、大目に見て頂けるとありがたいです。 ただ、敢えてそうしている部分もあり、ややこしくてすいません。(^^;A ご指摘あればどんどん仰ってください。 ※2017/8/29 連載再開しました!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

[完]異世界銭湯

三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。 しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。 暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…