【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

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7歳の駈歩。

料理も舞台芸術も心に残るものを。

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 僕は王宮の南棟にある舞踏会用会議室で演出チームとの打ち合わせを進めていた。社交シーズンを締めくくる大舞踏会が、いよいよ目前に迫っている。

「やるよ。劇場型オープンキッチン」

 言うと、集まったスタッフの顔がぱっと明るくなった。昨年の大成功がまだ記憶に新しいの。料理人たちが王宮の舞踏会場で調理を披露したもの。それを今年も、さらにグレードアップして届けるつもりだ。なんと舞台中央でやるんだ。

「それで、厨房設備の増設と安全設計なんだけど、ダンスさんに連絡を取ってくれるかな?」

 舞踏会専門の設営を担う工廠部のダンスさん。僕の要望にいつも応えてくれる心強い職人さんだ。

 「もう連絡済みです。来週には現地視察だそうです。あの人はリョウ様が絡む仕事だと動きが速いです」

 ストークの言葉に、思わず僕も笑う。舞踏会に向けて、一人ひとりが信頼できる仲間たちだ。今年はさらに『秘策』がある。

「それで、コスプレの衣装なんだけど」
「ええ。王様の許可が下りました。本当におやりになるのですね?」

 呆れ顔のサイスさんの肩を叩きながら、僕は衣装の束を取り出した。料理人や給仕たちのために、ファンタジーや民間伝承をモチーフにした衣装を用意したのだ。といっても過度なものではない。調理やサービスに支障が出ない範囲で、来場者の目を楽しませ、会話のきっかけになるように考えた。

「おやりになるのですか…ミニドラゴン給仕係、星の魔法使いの料理人、それから…」
「それ、本気でやるのか…?」

 料理長が項垂れて言う。

「うん。でも料理の味と実力が本物だから大丈夫。仮装じゃない、演出だよ」
「私もやるんですよね?」

 今年もワイバーン便出来た王国特別料理人のフィグさんが言う。フィグさん、フィグさんの衣装ちゃんとあるよ。

 ダンスさんが王宮にやってきたのは、それから二日後だった。工廠部の責任者である彼は、いつものタンクトップのまま、図面の束を脇に抱えて現れた。

「舞踏会の厨房、去年の設計図にいくつも改良を加えてきた。リョウエスト商会の地精ドワーフの鍛冶チームもすでに合流済みだ」
「ありがとう、ダンスさん!」
「礼を言うのは早いさ。設営の本番はこれからだ。リョウエスト様が『お客さまの目の前で炎が上がっても安心な構造』を求めるから、素材選定からやり直したんだぞ」

 確かに、演出のひとつとして『フランベ』を多用する予定だった。炎が勢いよく立ち上る調理法は、料理の魅力を最大限に引き出せるが、舞踏会場という特殊な空間では安全性が最優先だ。

「魔法道具の強化ガラスの防炎板、魔素吸収布、それと換気の魔法道具も使って、前よりずっと安全にする。安心してくれ」
「うん。お金はいくらでも使っていいよ」

 どうせ余ってるし。
 その日のうちに設営班が舞踏会場に入り、魔法と技術の粋を集めた劇場型オープンキッチンが舞台中央に組み立てられはじめた。職人たちが炉の調整を行い、地精ドワーフの鍛冶師が金属器具の微調整にかかり、風精エルフの魔法技師が式の調律を進めていく。

「やっぱり、ルステインで培った人脈ってすごいな……」

 ダンスさんがぼそりと呟く。僕は静かにうなずいた。

 そして準備の合間に、僕は調理人たちとメニューの試作に入った。僕の料理の要素を取り入れながらも、王都の上級貴族の舌にも通用するものに昇華させるため、細かな調整が必要だった。

「フィグさん、なんか大事になっちゃった」
「リョウさんが悪いと思いますよ」

 笑いながらも、フィグさんは試作の手を止めない。今年のブュッフェもなかなかの逸品ぞろいになりそうだ。

「こっちも仮装用の衣装は揃いました。給仕班も明日からリハーサルに入れます」

 衣装係のマダムルステインとその弟子達が報告に来る。僕の無理矢理なお願いを聞き入れ、大勢の衣装を一手に仕切っていた。

「マダムありがとう。ミニドラゴンの尻尾、ちゃんと揺れるようにしてくれた?」
「もちろんです。ふわふわです!」

 料理、設備、演出、衣装。舞踏会を構成するすべての要素が、着実に形になっていく。

「さあ、あと一週間。最高の夜を創ろう!」

 仲間たちの声が応えるように舞踏会場に響き、準備は最終段階へと入っていく。




 舞踏会当日の朝、王城のダンスホールは、まるで魔法のように装飾されていた。工廠部が手がけた劇場型オープンキッチンは、赤と金を基調にした優雅な装いで、厨房というよりまるで舞台そのもの。魔法道具の照明がそれを照らし、各料理台の上には淡く発光するルーンの刻まれた飾り布が揺れていた。

 給仕や料理人たちは、今年の秘策である「コスプレ衣装」に身を包み、準備を整えていた。猫耳付きの小人ハーフリング衣装に身を包んだ給仕の少年が照れたように立っている横では、竜の翼を模した背中飾りをつけた料理長が、堂々と鍋を振るっていた。

「これ、本当にやって大丈夫かな…?」

 僕が控え室でそう呟くと、隣にいたフィグさんが笑いながら答える。

「いいじゃないですか。楽しんだもん勝ちってやつですよ。リョウさんが言ったじゃないですか。『料理も舞台芸術も、心に残るものを』って」

 確かに言った。だからこそ、僕は小さく深呼吸してからホールに足を踏み出す。
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