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7歳の駈歩。
今年の大舞台。
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王城最大のホールが、ついにその扉を開いた。天井には星のように煌めく光珠が浮かび、四方の柱には魔法道具で作られた光花がゆるやかに咲いている。
今年も、王国の全ての貴族が一堂に会する大舞踏会、社交シーズンのフィナーレにふさわしい、威信と伝統、そして遊び心に満ちた宴の始まりである。
会場の中央には、今年も僕が設計した劇場型オープンキッチンがどっしりと構え、舞踏の合間に華やかな料理を振る舞う舞台となっている。そこに立つのは、全員コスプレ姿の料理人と給仕たち。魔法使い、鍛冶屋、モンスター、冒険者、巫女、そして精霊風衣装など。まるで幻想劇の登場人物たちが、そのまま厨房に入ってしまったかのようだった。
もちろん、僕もそこに立つ。料理と演出を司る『表の顔』として。
そして『裏の司令塔』を担うのはフィグさん。王国特別料理人であり、裏の全工程をお願いしている。料理ギルドから派遣された人を仕込み班、火入れ班、盛り付け班に振り分け、あらゆる細部にまで目が行き届くようがんばっていた。
やがて、王様が立った。
王様は、昨年からこの大舞踏会を自らの管轄下とし、「総合演出・プロデューサー」という立場で指揮している。今年も、その演出変更の発表に皆が注目していた。
「我が国を支える皆の者よ。今年も社交シーズンを締めくくるこの舞踏会が訪れた。我が王国の誇るべき貴族たち、そして種族を超えた友人たちよ…」
王様は朗々と語る。後ろには王妃様とウルリッヒ様、ルマーニ様そして先王とその妃も、後ろに並んでいた。
「今年は更なる幻想の夜を求め、演出を刷新した。去年のオープンキッチンを進化させ演者としての料理人と給仕を加えた。今宵、君たちはただ食べるのではない。料理と物語の魔法の夜に包まれるのだ!」
喝采があがる。そこへ、舞台上に配置された照明が灯り、全てのスタッフがコスプレ姿で登場した。給仕たちは笑顔で手を振り料理人たちは武器にも見える調理道具を構えて敬礼をする。警備役の騎士や侍従、侍女、王立交響楽団もコスプレしている。去年のような紹介はやめにした。だって十分目立っているもの。
「それでは、始めよう。大舞踏会、開宴!」
こうして、宴の幕が上がった。
幕が上がると、最初に照明が灯ったのは劇場型オープンキッチンの舞台。そこに並ぶのは、火を操るように中華鍋を振る鍛冶屋の料理人、薄くスライスした肉を宙に舞わせる軽業師のシェフ、そして音楽に合わせて包丁を踊らせる魔術師の女料理人たち。
「演出料理開始!」
僕がそう合図を出すと、最初の料理として「白魚の雪の一皿」が舞台に現れる。冷気をまとった白い皿に、小さな白魚のカルパッチョと氷花の葉が並べられ、上には香り高い霧が魔法で漂う。まるで冬の森に迷い込んだような演出に、客席から感嘆の声が聞こえる。
今回の演出料理はすべて、味と視覚、そして音と香りで物語を奏でることを目的にしている。そのため、料理人たちにはいつも以上の創造性と演技力が求められた。だが、王宮料理人から選ばれしスタッフたちは皆、自らの役になりきっていた。
たとえば魚料理のコーナーでは、冒険者の料理人が、釣り竿を模した長い箸で『空飛ぶスズキのグリル』をプレートへと『釣り上げる』演出。これには貴婦人たちも「まあ、勇ましいわ」と笑顔で頷いていた。
その一方で、会場の中央では貴族たちが舞を始めていた。
各派閥の領主や貴族たちがそれぞれの得意な立ち位置にいて、それでも表面上は笑顔を浮かべている…けれど、僕にはわかる。ほんの少しの刺激で、火花が散りそうな空気があることを。
その火種を封じ込めるのが、僕の『演出』という役割でもある。
「…ブュッフェ全体的に減ってきたの!」
僕は裏に回ってフィグさんに伝える。彼女は眉一つ動かさずに「了解」と応え、即座に調理班へと号令をかける。
「次、デザート準備、三分後に投入!」
僕が叫ぶと、オープンキッチンで今度はフルーツと氷の魔法道具が一斉に稼働を始める。幻想的なフローズン演出と共に、香りと色彩の共演がはじまるのだ。
宴の熱が、最高潮に向かっていくのを僕は感じていた。
舞踏会もいよいよ終盤。
灯りが少しだけ落とされ、代わりに天井のクリスタルが月光を反射して、会場中に星のような光をばらまいていた。
この光は、ダンスさんが僕の案を元に、魔法道具の照明とプリズムガラスを組み合わせて作った仕掛けだ。誰かが「まるで夜空の中にいるみたいだ」とつぶやき、他の貴族たちも見上げたまましばし動きを止めた。
その間に、最後の演出に移る。
給仕たちが静かに整列し、魔法のスモークがふんわりと床を流れ始める。スモークの中を進むのは、リョウエスト商会が開発した特製ワゴンに積まれた「星のデザートプレート」。
果実のタルト、氷菓、魔法で発光するベリーのジャムを添えたクリーム。コスプレ姿の料理人や給仕たちが、一列になって音楽に合わせて舞いながらそれを配っていく。
王様はその光景を見て立ち上がると、杖を一度だけ床に突いて、全員の視線を引きつける。
「皆の者、ご苦労であった。この大舞踏会が今年も無事に開催できたことを嬉しく思う。今年もまた我が国の未来を担う者たちが、料理と演出を通じて、種族を越えた交わりを築いた。その功績、王として深く感謝する」
場内に拍手が響く。僕はフィグさんと深く頭を下げた。コスプレ姿の給仕たちや料理人たちも、次々と頭を下げる。
舞踏会の終盤。会場に設けられた円形の舞台では、各種族の衣装に身を包んだ舞踏団が、それぞれの民族舞踊を披露する。地精の太鼓、風精の弦楽、水竜人の水舞、火の民の火舞が次々と舞台を彩る。
貴族たちも、舞踏団に混じって次第に一体となっていく。
派閥に分かれていた者たちが、今は互いに腕を取り合い、ひとつの円になって踊っている。
宴の終わりが近づき、最後の締めくくりとして、再び王様が壇上に立つ。
「来たる年もまた、この大舞踏会が開かれることを願って。今宵を共に祝ってくれた全ての者に、祝福あれ」
その声と同時に、天井のプリズムから無数の魔法の火花が降り注いだ。
会場は拍手と笑顔に包まれる。
来年は、もっとすごいものを用意しよう。
今年も、王国の全ての貴族が一堂に会する大舞踏会、社交シーズンのフィナーレにふさわしい、威信と伝統、そして遊び心に満ちた宴の始まりである。
会場の中央には、今年も僕が設計した劇場型オープンキッチンがどっしりと構え、舞踏の合間に華やかな料理を振る舞う舞台となっている。そこに立つのは、全員コスプレ姿の料理人と給仕たち。魔法使い、鍛冶屋、モンスター、冒険者、巫女、そして精霊風衣装など。まるで幻想劇の登場人物たちが、そのまま厨房に入ってしまったかのようだった。
もちろん、僕もそこに立つ。料理と演出を司る『表の顔』として。
そして『裏の司令塔』を担うのはフィグさん。王国特別料理人であり、裏の全工程をお願いしている。料理ギルドから派遣された人を仕込み班、火入れ班、盛り付け班に振り分け、あらゆる細部にまで目が行き届くようがんばっていた。
やがて、王様が立った。
王様は、昨年からこの大舞踏会を自らの管轄下とし、「総合演出・プロデューサー」という立場で指揮している。今年も、その演出変更の発表に皆が注目していた。
「我が国を支える皆の者よ。今年も社交シーズンを締めくくるこの舞踏会が訪れた。我が王国の誇るべき貴族たち、そして種族を超えた友人たちよ…」
王様は朗々と語る。後ろには王妃様とウルリッヒ様、ルマーニ様そして先王とその妃も、後ろに並んでいた。
「今年は更なる幻想の夜を求め、演出を刷新した。去年のオープンキッチンを進化させ演者としての料理人と給仕を加えた。今宵、君たちはただ食べるのではない。料理と物語の魔法の夜に包まれるのだ!」
喝采があがる。そこへ、舞台上に配置された照明が灯り、全てのスタッフがコスプレ姿で登場した。給仕たちは笑顔で手を振り料理人たちは武器にも見える調理道具を構えて敬礼をする。警備役の騎士や侍従、侍女、王立交響楽団もコスプレしている。去年のような紹介はやめにした。だって十分目立っているもの。
「それでは、始めよう。大舞踏会、開宴!」
こうして、宴の幕が上がった。
幕が上がると、最初に照明が灯ったのは劇場型オープンキッチンの舞台。そこに並ぶのは、火を操るように中華鍋を振る鍛冶屋の料理人、薄くスライスした肉を宙に舞わせる軽業師のシェフ、そして音楽に合わせて包丁を踊らせる魔術師の女料理人たち。
「演出料理開始!」
僕がそう合図を出すと、最初の料理として「白魚の雪の一皿」が舞台に現れる。冷気をまとった白い皿に、小さな白魚のカルパッチョと氷花の葉が並べられ、上には香り高い霧が魔法で漂う。まるで冬の森に迷い込んだような演出に、客席から感嘆の声が聞こえる。
今回の演出料理はすべて、味と視覚、そして音と香りで物語を奏でることを目的にしている。そのため、料理人たちにはいつも以上の創造性と演技力が求められた。だが、王宮料理人から選ばれしスタッフたちは皆、自らの役になりきっていた。
たとえば魚料理のコーナーでは、冒険者の料理人が、釣り竿を模した長い箸で『空飛ぶスズキのグリル』をプレートへと『釣り上げる』演出。これには貴婦人たちも「まあ、勇ましいわ」と笑顔で頷いていた。
その一方で、会場の中央では貴族たちが舞を始めていた。
各派閥の領主や貴族たちがそれぞれの得意な立ち位置にいて、それでも表面上は笑顔を浮かべている…けれど、僕にはわかる。ほんの少しの刺激で、火花が散りそうな空気があることを。
その火種を封じ込めるのが、僕の『演出』という役割でもある。
「…ブュッフェ全体的に減ってきたの!」
僕は裏に回ってフィグさんに伝える。彼女は眉一つ動かさずに「了解」と応え、即座に調理班へと号令をかける。
「次、デザート準備、三分後に投入!」
僕が叫ぶと、オープンキッチンで今度はフルーツと氷の魔法道具が一斉に稼働を始める。幻想的なフローズン演出と共に、香りと色彩の共演がはじまるのだ。
宴の熱が、最高潮に向かっていくのを僕は感じていた。
舞踏会もいよいよ終盤。
灯りが少しだけ落とされ、代わりに天井のクリスタルが月光を反射して、会場中に星のような光をばらまいていた。
この光は、ダンスさんが僕の案を元に、魔法道具の照明とプリズムガラスを組み合わせて作った仕掛けだ。誰かが「まるで夜空の中にいるみたいだ」とつぶやき、他の貴族たちも見上げたまましばし動きを止めた。
その間に、最後の演出に移る。
給仕たちが静かに整列し、魔法のスモークがふんわりと床を流れ始める。スモークの中を進むのは、リョウエスト商会が開発した特製ワゴンに積まれた「星のデザートプレート」。
果実のタルト、氷菓、魔法で発光するベリーのジャムを添えたクリーム。コスプレ姿の料理人や給仕たちが、一列になって音楽に合わせて舞いながらそれを配っていく。
王様はその光景を見て立ち上がると、杖を一度だけ床に突いて、全員の視線を引きつける。
「皆の者、ご苦労であった。この大舞踏会が今年も無事に開催できたことを嬉しく思う。今年もまた我が国の未来を担う者たちが、料理と演出を通じて、種族を越えた交わりを築いた。その功績、王として深く感謝する」
場内に拍手が響く。僕はフィグさんと深く頭を下げた。コスプレ姿の給仕たちや料理人たちも、次々と頭を下げる。
舞踏会の終盤。会場に設けられた円形の舞台では、各種族の衣装に身を包んだ舞踏団が、それぞれの民族舞踊を披露する。地精の太鼓、風精の弦楽、水竜人の水舞、火の民の火舞が次々と舞台を彩る。
貴族たちも、舞踏団に混じって次第に一体となっていく。
派閥に分かれていた者たちが、今は互いに腕を取り合い、ひとつの円になって踊っている。
宴の終わりが近づき、最後の締めくくりとして、再び王様が壇上に立つ。
「来たる年もまた、この大舞踏会が開かれることを願って。今宵を共に祝ってくれた全ての者に、祝福あれ」
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