【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

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7歳の駈歩。

マクシミリアン・ラ・ルステイン。

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私はマクシミリアン・ラ・ルステイン。王国から土地を預かる伯爵にして、リョウエスト・スサンの後見人でもある。

 ルステインではいま、大きな変化が始まろうとしている。公会堂の建設と、ウイスキー蒸留所の本格稼働。それは単なる建築や産業の話ではない。異なる種族が共に語り合い、共に働き、未来を紡ぐための舞台を築くという、前例のない挑戦だった。

 『異種族共栄の公会堂』。その案が初めてリョウエストから語られた時、私は正直に言って半信半疑だった。ドワーフ、エルフ、火の民、水竜人、獣人、ハーフリング、ヒト。それぞれ文化も言葉も風習も違う。それを『ひとつ屋根の下』にまとめるというのは、理想がすぎるのではないか、と。

 だが、私は目の当たりにしていた。異種族たちが見事な連携で働いている姿を。市場で異種族が並んで商品を売り、笑い合う光景を。

 ならば、それを一歩進めようではないか。

 計画にあたって私は、まず種族ごとの代表者たちと一対一の会談を重ねた。ドワーフのヂョウギ、エルフのラシェルアルテ、水竜人のティルシェード、火の民のミリカ、獣人のジレイガ。そしてヒトの若手商人たち。会議の中では、言葉の端に棘が混じることもあった。過去の争いの名残、誤解、偏見。だが話し合えば、少しずつ雪は溶けていった。

「我らの声を、王都に届けたい」
「文化の違いを学び合える場が欲しい」
「子どもたちが一緒に遊べる場所を」

 私はすぐに設計図を練り直させた。当初の『議事堂』ではなく、『多目的交流ホール』へと。議論の場、文化紹介の場、子どもたちの学び舎、そして災害時には避難所としての役割も果たすものにした。建築はドワーフと小人、内装はエルフと火の民、設営の物流は獣人と水竜人が担う。工期は三ヶ月。急だが、皆がそれを「やろう」と言った。

 そしてもう一つは『ウイスキー蒸留所』。

 これは、王都で発表されたリョウエストの新発明を受け、我がルステインで初めて本格展開される施設だ。甜菜糖から作る新たな酒。その香り、深み、そして可能性に、私は伯爵としての勘がざわついた。

 「これは、王国の財になる」

 だが、製造には設備も知識も必要だ。私はリョウエスト商会から技師を招聘し、さらに蒸留所の運営には異種族を積極登用する方針を打ち出した。伝統と革新、誇りと希望が交錯するプロジェクト。ルステインにとって、これは未来を拓く一歩となる

 ルステインの西丘陵地帯、冷涼な気候と清らかな水脈に恵まれた場所に用地を定めた。水源には水竜人が関心を示し、自ら潜って水質を確認してくれた。火の民の石工たちは、地熱と風の流れを計算し、発酵室の最適な配置を導き出した。

「ただの施設ではない。この酒が、我らの技術と誇りを伝えるものになる」

 そう言ったのは、ドワーフの老蒸留師だった。私が声をかけた時、彼は一度きっぱりと断ってきた。

「ワシの酒は、炎と鉄の味の火酒だ。甘ったるいウイスキーなど、認めん」

 だが数日後、その男はひとり、未完成の蒸留器を見に来た。

「リョウエストの発想は…面白い。ワシも年じゃ。最後に、新しい酒を見てみたい」

 そこからは早かった。工房はドワーフの鉄技術と炉で構成され、木樽の加工は小人とエルフの若者たちが担った。スモークウッドの選定は水竜人と獣人が協力し香りの実験にはリョウエスト商会の若手研究者が同行した。

 一方で、公会堂の建設も進んでいた。議場を円形にしたのは、誰かが『上』になることを避けるためだった。

「これが『わたし達の場所』だって子どもたちに言いたい」

 獣人の若い母親が、そうつぶやいたのを私は聞き逃さなかった。

 ルステインは、今では『多種族共存の試み』として王都からも注目されている。実際、王宮の宰相からも視察の要請が来ていた。だが私は、これを『見せ物』にしたくはなかった。共に暮らし、共に働き、同じ食べ物を食べることで培われる『実感』こそが、何よりの礎となる。

 視察は、蒸留所が初めて蒸留を迎える日、すなわち、『火入れ式』の日に合わせることにした。式では火の民の長老が炉に火を灯し、水竜人の代表が冷却水の流れを開き、リョウエスト商会に学んだ蒸留技術で、第一号の原酒が誕生するはず。

 蒸留所と共栄公会堂が完成した知らせが王都に届くと、その反響は予想以上だった。最初に声を上げたのは、宰相だった。

 「伯爵殿、あなたの領地はまるで王国の縮図のようだ」

 視察団の先発として王都から派遣されたのは、行政官と技術士官、そして行政部の役人たちだった。彼らはまず蒸留所を見て驚き、公会堂を見て黙り込み、最後に『スサンの天使』ルステイン本店でウイスキーと料理を口にして、ため息を漏らした。

「…地方が、これほどまでに文化を持つとは。中央が取り残されてはなりませんな」

 役人のひとりがそう言ったとき、私は複雑な思いにとらわれた。もちろん、誉め言葉なのだが、それが『想定外』として語られるのならば、我々はこれから何度もその『想定』を壊さねばならないのだろう。

 火入れ式の日、炉に火が入り、白い蒸気が立ち上る中で、第一号のルステイン・ウイスキーが誕生した。その瞬間、水竜人の青年がそっと口にした言葉が印象に残っている。

 「ここには、水がある。言葉がある。それに、乾杯する理由がある」

 王様も宰相もこの酒の背景にある『種族の協働』に感銘を受けたようで、王室文書に以下の記録が残されたと後で知った。

『ルステインにおける異種族共栄は、まさしく王国の理想を体現せり。今後、他地方にも模範として勧奨すべし』

 この一文を読んだとき、私は心の中で静かに、ひとりの少年の名を呟いた。

 リョウエスト・スサン。

 お前が火をつけたのだ。まだ幼いお前が投げ込んだ一石は、今や王国全体に波紋を広げている。お前が考えた技術、示した視点、育てた信頼、それがこのウイスキーと共に、王都の重鎮たちの胸にも染みているのだ。

 後日、私が王都に呼ばれた際王様自ら杯を差し出してくださった。

「マクシミリアン。お前の領地には、王国の未来がある。だが、焦るな。未来とは育てるものだ」

 私はその言葉を心に刻み、頭を深く垂れた。

 ルステインが成したことは、まだ小さな始まりに過ぎない。けれどもその始まりを、王国は確かに『希望』として受け止めてくれた。

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