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7歳の駈歩。
子供としての日。
朝修行をして過ごし、薄曇りの空の下、僕は翼猫のナビに見送られながら、のんびりと家を出た。制服なんてないし、登校時の鐘もないから、自分の足で時間に合わせて歩くだけ。今日はちょっと風が強いけれど、ナミリアの馬車の車輪の音が後ろから聞こえるのを待つのも、僕の朝の楽しみだ。
「リョウ!おはよう!」
窓を開けて顔を出したナミリアが、元気よく手を振ってくる。僕も笑って手を振り返すと、彼女の馬車はそのまま先に進んでいった。ナミリアは双子のお姉ちゃんになってさらに元気になったと思う。
「今日も元気でやすね」
「ほんとにね」
「リョウ様も元気にやってください」
「アインス、僕そんなに元気ないように見える?」
「なんというか、落ち着きすぎじゃないかと」
「そうかなあ」
「もっと子供らしくしても良いでやすよ」
「んー。子供らしくかー。難しい事言うね」
学校に着くと、もうヤルス君が門の前に立っていた。僕の従兄弟で、騎士爵家の子息。元気な彼は、いつも僕の肩をぽんと叩いて「今日もがんばろうな!」と声をかけてくれる。僕とは大事な約束をしている。
「おう、従兄弟よ。昨日の甘いパン、うまかったな。今日も何か作ってきたか?」
「今日は持ってきてないよ、学校におやつは禁止だもん」
でもそのあと、こっそりマスが焼いてくれた堅焼きパンのかけらを渡すと、ヤルス君は大喜びだった。教室の中では、ビッキー先生の講義が進む。魔法学、歴史、算術、それから『王都での礼儀』についての実践。大人の世界に入る準備として、僕らは小さな社交も学ばなければいけないらしい。
午前中の授業を終えると、僕たちはそれぞれの帰り道につく。学校には給食なんてないし、昼で授業は終わり。ヤルス君と僕は、今日も一緒に歩いてドワーヴンベースに寄っていくことにした。ナミリアは馬車で先回りしているだろう。ナミリアもドワーヴンベースが好きだし。後ろで青の技の何人かがガードしてくれてる。
「従兄弟よ!またあの子たちと遊びに行くのか?」
「うん、今日は新しく入ってきた小人族の子がいるんだって」
「おー、楽しみだな!」
ドワーヴンベースに着くと、そこはまるで異世界のようだ。地精、水竜人、火の民、獣人、小人の子供たちが入り交じって遊んでいる。砂埃が舞う広場では、泥団子の作り方を真剣に教えている水竜人の少年がいて、木登りを競う火の民の姉妹がいた。
ナミリアはすぐに輪の中に入り、年下の子たちの世話を焼きはじめる。
「ほら、帽子をかぶらないと陽に焼けちゃうわよ」
「ねえ、こっちの遊びもしようよ。危なくないから」
面倒見のよさは彼女の天性みたいなもので、僕はそれを見ているだけで心が温かくなる。ヤルス君はというと、火の民の子たちと木の枝で剣の模擬戦を始めていた。あちこちから笑い声が聞こえてくる。
僕はというと、草の上に寝転がって空を眺めた。――ここでは、商会長でも王国の料理番でもなくていい。ただの、リョウエスト・スサン。子供の僕だ。
「リョウエスト~、一緒に泥団子つくろ!」
「はーい」
僕は笑って起き上がると、小人族の小さな子の手を取って、泥だらけになりながら団子を丸めはじめた。
そうしてたっぷり遊んだ後、夕方になるとナミリアは自家用の馬車で帰り、ヤルス君も別の方角へと歩いていく。僕は一人で家へ向かって歩いた。
家に着くと、アニナが玄関で迎えてくれた。
「お坊ちゃま、おかえりなさいませ。手を洗って、すぐにご飯です」
「はーい!」
食卓には、マスが用意してくれた温かいスープと焼きたてのパン、塩漬けの魚と野菜の煮込みが並んでいる。家族みんなで「いただきます」を言ってから食べ始めると、今日の出来事を自然と話したくなってしまう。
「ナミリアは今日も面倒見がよかったよ。ヤルス君は剣ごっこでまた転んでた」
「ふふ、ヤルス君らしいわね。膝は擦りむいてなかった?」
ナビが椅子の下で喉を鳴らし、足元にすり寄ってくる。
食後は少しだけ本を読んで、アニナさんに「もう寝る時間ですよ」と言われて布団へ。部屋の窓から見える星空をぼんやりと眺めながら、僕は心の中でつぶやいた。
布団に入ってからも、僕はしばらくまどろんでいた。ナビがぴょんと布団の端に乗ってきて、丸くなって喉を鳴らす。ふかふかの毛並みと、規則的なゴロゴロという音が心地よくて、まるで子守唄のようだった。
今日は、大人の仕事や発明や料理をしていないけれど、いい一日だった。
明日は何をしよう。ナミリアと遊ぶ? それとも、地精の子たちと新しい遊びを考えようか? いや、久しぶりに小さな発明をしてもいいかもしれない。勉強も、料理も、遊びも、全部が僕の毎日だ。
こうして僕は、商会長でもなく料理番でもなく、ただの「僕」として、子供らしい一日を満たされた気持ちで終えたのだった。
「リョウ!おはよう!」
窓を開けて顔を出したナミリアが、元気よく手を振ってくる。僕も笑って手を振り返すと、彼女の馬車はそのまま先に進んでいった。ナミリアは双子のお姉ちゃんになってさらに元気になったと思う。
「今日も元気でやすね」
「ほんとにね」
「リョウ様も元気にやってください」
「アインス、僕そんなに元気ないように見える?」
「なんというか、落ち着きすぎじゃないかと」
「そうかなあ」
「もっと子供らしくしても良いでやすよ」
「んー。子供らしくかー。難しい事言うね」
学校に着くと、もうヤルス君が門の前に立っていた。僕の従兄弟で、騎士爵家の子息。元気な彼は、いつも僕の肩をぽんと叩いて「今日もがんばろうな!」と声をかけてくれる。僕とは大事な約束をしている。
「おう、従兄弟よ。昨日の甘いパン、うまかったな。今日も何か作ってきたか?」
「今日は持ってきてないよ、学校におやつは禁止だもん」
でもそのあと、こっそりマスが焼いてくれた堅焼きパンのかけらを渡すと、ヤルス君は大喜びだった。教室の中では、ビッキー先生の講義が進む。魔法学、歴史、算術、それから『王都での礼儀』についての実践。大人の世界に入る準備として、僕らは小さな社交も学ばなければいけないらしい。
午前中の授業を終えると、僕たちはそれぞれの帰り道につく。学校には給食なんてないし、昼で授業は終わり。ヤルス君と僕は、今日も一緒に歩いてドワーヴンベースに寄っていくことにした。ナミリアは馬車で先回りしているだろう。ナミリアもドワーヴンベースが好きだし。後ろで青の技の何人かがガードしてくれてる。
「従兄弟よ!またあの子たちと遊びに行くのか?」
「うん、今日は新しく入ってきた小人族の子がいるんだって」
「おー、楽しみだな!」
ドワーヴンベースに着くと、そこはまるで異世界のようだ。地精、水竜人、火の民、獣人、小人の子供たちが入り交じって遊んでいる。砂埃が舞う広場では、泥団子の作り方を真剣に教えている水竜人の少年がいて、木登りを競う火の民の姉妹がいた。
ナミリアはすぐに輪の中に入り、年下の子たちの世話を焼きはじめる。
「ほら、帽子をかぶらないと陽に焼けちゃうわよ」
「ねえ、こっちの遊びもしようよ。危なくないから」
面倒見のよさは彼女の天性みたいなもので、僕はそれを見ているだけで心が温かくなる。ヤルス君はというと、火の民の子たちと木の枝で剣の模擬戦を始めていた。あちこちから笑い声が聞こえてくる。
僕はというと、草の上に寝転がって空を眺めた。――ここでは、商会長でも王国の料理番でもなくていい。ただの、リョウエスト・スサン。子供の僕だ。
「リョウエスト~、一緒に泥団子つくろ!」
「はーい」
僕は笑って起き上がると、小人族の小さな子の手を取って、泥だらけになりながら団子を丸めはじめた。
そうしてたっぷり遊んだ後、夕方になるとナミリアは自家用の馬車で帰り、ヤルス君も別の方角へと歩いていく。僕は一人で家へ向かって歩いた。
家に着くと、アニナが玄関で迎えてくれた。
「お坊ちゃま、おかえりなさいませ。手を洗って、すぐにご飯です」
「はーい!」
食卓には、マスが用意してくれた温かいスープと焼きたてのパン、塩漬けの魚と野菜の煮込みが並んでいる。家族みんなで「いただきます」を言ってから食べ始めると、今日の出来事を自然と話したくなってしまう。
「ナミリアは今日も面倒見がよかったよ。ヤルス君は剣ごっこでまた転んでた」
「ふふ、ヤルス君らしいわね。膝は擦りむいてなかった?」
ナビが椅子の下で喉を鳴らし、足元にすり寄ってくる。
食後は少しだけ本を読んで、アニナさんに「もう寝る時間ですよ」と言われて布団へ。部屋の窓から見える星空をぼんやりと眺めながら、僕は心の中でつぶやいた。
布団に入ってからも、僕はしばらくまどろんでいた。ナビがぴょんと布団の端に乗ってきて、丸くなって喉を鳴らす。ふかふかの毛並みと、規則的なゴロゴロという音が心地よくて、まるで子守唄のようだった。
今日は、大人の仕事や発明や料理をしていないけれど、いい一日だった。
明日は何をしよう。ナミリアと遊ぶ? それとも、地精の子たちと新しい遊びを考えようか? いや、久しぶりに小さな発明をしてもいいかもしれない。勉強も、料理も、遊びも、全部が僕の毎日だ。
こうして僕は、商会長でもなく料理番でもなく、ただの「僕」として、子供らしい一日を満たされた気持ちで終えたのだった。
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