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7歳の駈歩。
上位オークとの戦い。
休日。僕は、ルステインの門を出て東の林へと向かった。家から馬車で30分ほどの場所にある静かな林は、街の喧騒から離れていて、訓練にはうってつけだ。今日はレザーアーマーを着込み、腰には槍を携えている。
付き添いはいつもの2人。エメイラと、ミザーリ。馬車はドライとフィアが守っている。
まずは斥候退治から。…このあたり、ゴブリンの気配がある。
僕は軽く地面に触れ、探索を意識して気配を探る。すると、すぐ近くに三体のゴブリンが潜んでいるのを感じ取った。
槍を構えて茂みに踏み込んだ。すると、獣のような声をあげてゴブリンたちが現れた。どれも背は低いが、ナイフや棍棒を持っていて油断できない。
『水の槍!』
掌から放った透明な槍が、水のしぶきを巻きながら飛翔し、最初の一体の胸を貫いた。残り二体は左右に分かれて迫ってくる。片方の動きを読んで体をひねり、脇腹を掠めるように躱してから一撃。二体目の喉元に槍が突き刺さり、短い悲鳴をあげて崩れた。
残る一体は、背後に回ろうとしていた。すぐに魔力を練り、もう一本の水の槍を形成。その瞬間、頭上から魔力の矢が放たれ、ゴブリンの胸に突き刺さる。
「ありがとう、エメイラ」
「反応が鈍かったわよ、リョウ」
微笑みながらそう言い、警戒を続けていた。
さらに林の奥へと進むことにした。目的は、自らの技を確かめること。そして、以前から噂になっていた「上位オーク」の存在をこの目で確かめることだった。
林の奥へと進むにつれ、空気が少しずつ変わっていくのを感じた。湿気が増し、風の流れが鈍くなる。
「…いるわね、あれはオークの臭い」
エメイラが低く言った。目を細めたミザーリも頷く。
「三匹、こちらに背を向けてる。斜面の下、倒木の陰」
僕はそう言いながら偽装を意識して茂みに身を潜め、僕は槍を構えて息を整えた。今度は魔法の力を抑えて、武術だけで挑む。
「行くよ」
僕は斜面を滑り降り、忍び足を意識して最初の一体の背中に槍を突き立てた。硬い筋肉を割って骨に届く感触。叫びをあげる前に回転して、二体目の膝裏に打ち込む。悲鳴とともに崩れた体を飛び越え、三体目の攻撃を回避してカウンター気味に槍を腹に突き刺す。
「さすがリョウ。やる時はやるのね」
「うん。でもまだ終わりじゃない。何か…嫌な気配がする」
直後だった。林の奥から、地鳴りのような音とともに、一際大きな影が現れた。緑の皮膚、厚い筋肉、そして全身を覆う粗野な鎧。上位オーク…あきらかに並の個体とは違う気配を放っている。
「……まずい」
僕はすぐに魔力を練り、『魔力の矢』を放った。
しかし、それは驚くほど鋭く体をひねって避けられた。
「避けた…!」
槍を構えて間合いを保つが、相手の速度は重さに見合わず速い。がむしゃらに振るわれた棍棒の一撃で、僕は吹き飛ばされそうになり、辛うじて木の陰に飛び込む。
「主よ、下がれ!」
ミザーリが叫び、投げナイフを放つ。しかし上位オークは身をかがめて避けると、そのまま僕に突進してくる。
足がすくみそうになる。頼みの『魔力の矢』は通じない。どうする――。
その時だった。
「ニャアアッ!」
空から白色の影が飛び出し、上位オークの顔面に飛びついた。
「ナビ!」
ナビはオークの顔にしがみついて爪を立て、ギャアギャアと鳴きながら暴れている。その隙に僕は距離を取り、再び魔力を練った。
(あと一発…!)
指先に力が集まる。ナビが振り落とされた瞬間、僕は全力で矢を放った。
放たれた『魔力の矢』は、空気を裂いて一直線に飛び、ちょうど顔面の横を振り向いたオークの喉元に突き刺さった。裂けた肉と骨の間に魔力が流れ込み、内部から爆ぜるように炸裂する。
「グォアァアッ!」
上位オークが絶叫し、よろめいた。ナビは無事に飛行して木の陰に隠れる。僕はその瞬間を逃さず、槍を強く握って駆けた。
「主よ無理するな!」
「今だ!」
突き出した槍は、オークの胸板を貫いた。手応えは重く、硬く、だが確かだった。
上位オークの体が崩れ落ちた。
一瞬、辺りの音がすべて止まったような錯覚に陥る。風が林を揺らし、遅れて鳥たちのさえずりが戻る。僕は大きく息を吐き、膝をついた。
「…勝った、のか?」
「リョウ、お見事」
エメイラがそう言い笑顔を見せる。ミザーリもやってきて、体力回復に効く薬草を出してくれる。
「無茶しすぎよ。ナビがいなかったら、危なかったわよ」
「……ほんとに。ありがとう、ナビ」
木の根元で尻尾を揺らすナビは、まるで勝ち誇ったように「にゃー」と鳴いた。よく見ると、鼻先にオークの血がちょっとだけついていて、誇らしげにしている。
「帰ろう、もう十分頑張った」
僕は槍を地面につきながら立ち上がり、ナビをそっと抱き上げる。その柔らかくあたたかな重みが、心の奥まで染みる。
帰り道は、来た時よりも静かだった。エメイラとミザーリは僕の少し後ろを歩き、何も言わずに周囲を警戒してくれていた。
その夜、アニナが温かいスープと柔らかなベッドを用意してくれた。ナビは僕の枕元で丸くなり、ぐっすりと眠っている。
訓練は、ただの力試しではなかった。自分の限界と、仲間の支え、そしてナビの大切さを知る機会だった。
付き添いはいつもの2人。エメイラと、ミザーリ。馬車はドライとフィアが守っている。
まずは斥候退治から。…このあたり、ゴブリンの気配がある。
僕は軽く地面に触れ、探索を意識して気配を探る。すると、すぐ近くに三体のゴブリンが潜んでいるのを感じ取った。
槍を構えて茂みに踏み込んだ。すると、獣のような声をあげてゴブリンたちが現れた。どれも背は低いが、ナイフや棍棒を持っていて油断できない。
『水の槍!』
掌から放った透明な槍が、水のしぶきを巻きながら飛翔し、最初の一体の胸を貫いた。残り二体は左右に分かれて迫ってくる。片方の動きを読んで体をひねり、脇腹を掠めるように躱してから一撃。二体目の喉元に槍が突き刺さり、短い悲鳴をあげて崩れた。
残る一体は、背後に回ろうとしていた。すぐに魔力を練り、もう一本の水の槍を形成。その瞬間、頭上から魔力の矢が放たれ、ゴブリンの胸に突き刺さる。
「ありがとう、エメイラ」
「反応が鈍かったわよ、リョウ」
微笑みながらそう言い、警戒を続けていた。
さらに林の奥へと進むことにした。目的は、自らの技を確かめること。そして、以前から噂になっていた「上位オーク」の存在をこの目で確かめることだった。
林の奥へと進むにつれ、空気が少しずつ変わっていくのを感じた。湿気が増し、風の流れが鈍くなる。
「…いるわね、あれはオークの臭い」
エメイラが低く言った。目を細めたミザーリも頷く。
「三匹、こちらに背を向けてる。斜面の下、倒木の陰」
僕はそう言いながら偽装を意識して茂みに身を潜め、僕は槍を構えて息を整えた。今度は魔法の力を抑えて、武術だけで挑む。
「行くよ」
僕は斜面を滑り降り、忍び足を意識して最初の一体の背中に槍を突き立てた。硬い筋肉を割って骨に届く感触。叫びをあげる前に回転して、二体目の膝裏に打ち込む。悲鳴とともに崩れた体を飛び越え、三体目の攻撃を回避してカウンター気味に槍を腹に突き刺す。
「さすがリョウ。やる時はやるのね」
「うん。でもまだ終わりじゃない。何か…嫌な気配がする」
直後だった。林の奥から、地鳴りのような音とともに、一際大きな影が現れた。緑の皮膚、厚い筋肉、そして全身を覆う粗野な鎧。上位オーク…あきらかに並の個体とは違う気配を放っている。
「……まずい」
僕はすぐに魔力を練り、『魔力の矢』を放った。
しかし、それは驚くほど鋭く体をひねって避けられた。
「避けた…!」
槍を構えて間合いを保つが、相手の速度は重さに見合わず速い。がむしゃらに振るわれた棍棒の一撃で、僕は吹き飛ばされそうになり、辛うじて木の陰に飛び込む。
「主よ、下がれ!」
ミザーリが叫び、投げナイフを放つ。しかし上位オークは身をかがめて避けると、そのまま僕に突進してくる。
足がすくみそうになる。頼みの『魔力の矢』は通じない。どうする――。
その時だった。
「ニャアアッ!」
空から白色の影が飛び出し、上位オークの顔面に飛びついた。
「ナビ!」
ナビはオークの顔にしがみついて爪を立て、ギャアギャアと鳴きながら暴れている。その隙に僕は距離を取り、再び魔力を練った。
(あと一発…!)
指先に力が集まる。ナビが振り落とされた瞬間、僕は全力で矢を放った。
放たれた『魔力の矢』は、空気を裂いて一直線に飛び、ちょうど顔面の横を振り向いたオークの喉元に突き刺さった。裂けた肉と骨の間に魔力が流れ込み、内部から爆ぜるように炸裂する。
「グォアァアッ!」
上位オークが絶叫し、よろめいた。ナビは無事に飛行して木の陰に隠れる。僕はその瞬間を逃さず、槍を強く握って駆けた。
「主よ無理するな!」
「今だ!」
突き出した槍は、オークの胸板を貫いた。手応えは重く、硬く、だが確かだった。
上位オークの体が崩れ落ちた。
一瞬、辺りの音がすべて止まったような錯覚に陥る。風が林を揺らし、遅れて鳥たちのさえずりが戻る。僕は大きく息を吐き、膝をついた。
「…勝った、のか?」
「リョウ、お見事」
エメイラがそう言い笑顔を見せる。ミザーリもやってきて、体力回復に効く薬草を出してくれる。
「無茶しすぎよ。ナビがいなかったら、危なかったわよ」
「……ほんとに。ありがとう、ナビ」
木の根元で尻尾を揺らすナビは、まるで勝ち誇ったように「にゃー」と鳴いた。よく見ると、鼻先にオークの血がちょっとだけついていて、誇らしげにしている。
「帰ろう、もう十分頑張った」
僕は槍を地面につきながら立ち上がり、ナビをそっと抱き上げる。その柔らかくあたたかな重みが、心の奥まで染みる。
帰り道は、来た時よりも静かだった。エメイラとミザーリは僕の少し後ろを歩き、何も言わずに周囲を警戒してくれていた。
その夜、アニナが温かいスープと柔らかなベッドを用意してくれた。ナビは僕の枕元で丸くなり、ぐっすりと眠っている。
訓練は、ただの力試しではなかった。自分の限界と、仲間の支え、そしてナビの大切さを知る機会だった。
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