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7歳の駈歩。
白いあいつの発見とおでん。
休日の朝、僕はルステイン近郊の林へと足を運んでいた。レザーアーマーと槍装備。今日はエメイラとミザーリと戦闘訓練だ。一旦2人と離れて探索を意識して林に入る。
木漏れ日の差す道なき道を歩いていると、土の中から白い何かが覗いていた。何かの根だろうか? 手で土を払うと、そこには――大根。それに酷似した野菜が一本、土の中から生えていた。
「これは……大根?」
まさか、と思った。僕の知識にある大根の特徴と、目の前のそれはほぼ一致している。この世界には見たことがない。農務書にも載っていない。鑑定する。
『大根…根菜。白い根の部分を主に食用とし、煮物、おろし、漬物など様々な料理に使われる。また、葉も栄養価が高く、炒め物や漬物などに利用される』
やっぱり大根だ。僕は敵がいない事を確認するとエメイラとミザーリを呼ぶ。
「どうしたの?」
「主よどうした?」
「新しい野菜を見つけたの。訓練はやめる」
「そうなのね。それは美味しいの?」
「美味しいよ。とりあえず工房に持っていこう。早速料理したい」
「主よ、そんなに焦るほどの味なんですか?」
「そう。早く戻ろう」
「わかったわよ。訓練は中止しましょう」
「ありがとうエメイラ」
急いで何本か収穫し、念のため土付きのまま持ち帰る。
工房に戻るとすぐに水で洗い、薄切りにして味見をした。少し辛味はあるが、甘みも強く、しっかりとした食感がある。これを使えば、料理の幅は一気に広がるだろう。
「よし、実験開始だ!」
まずは定番の「大根の煮物」。醤油に砂糖、昆布でだしをとり、弱火でじっくりと煮る。次は「大根サラダ」。薄切りを水にさらしてシャキシャキ感を残し、軽く塩もみしてごま油と酢で和える。さらに「大根の浅漬け」や「大根ステーキ」など、試作品を次々と作っていった。横でエメイラ達が喜んで食べてる。僕の分も残してもらいたい。
手応えはあった。これほど多用途で美味しい野菜は、ぜひ広めたい。そこで僕は、料理ギルドに赴き、大根料理のレシピとともに「新食材」として登録を申請した。
「これが大根なん?…なんと使い勝手の良い…!」
料理ギルドのマジスさんは目を丸くしながら、感嘆の声を漏らした。
大根の登録が無事に済むと、次に考えたのは「栽培」だ。僕一人の工房で栽培するには限界がある。王城の農務部に正式に申請すれば、広域に広められるかもしれない。広がってもらえば色んな料理がみんな食べられるのだ。
僕は収穫した大根の中から種の取れそうな数本を厳選し、一本は土に埋め、錬金術の経年変化で花を咲かせ、その後種を収穫した。残りは気をつけて丁寧に乾燥させる。そして手紙を添えて、王城の農務部宛に送った。
拝啓。王国農務部の皆様へ。
本日、ルステイン近郊の林にて、本王国では未確認の野菜を発見しました。名称は「大根」と申します。白く長い根菜で、煮物・漬物・炒め物などに適し、食味も優れております。
この野菜の種を同封いたします。試験栽培にて結果が良ければ、本王国の農業の多様化と食文化の発展に貢献するものと確信しております。
王国の料理番リョウエスト・スサン
数日後、農務部から返事が届いた。
「これはすばらしい発見だ。新野菜として試験栽培に着手する。成果が出れば、王都市場に出すことも視野に入れる」
文字からも興奮が伝わってくる。僕は笑みを浮かべつつ、次の構想へと気持ちを向けた。
そう、「おでん」だ。
出汁でじっくり煮た大根、昆布、卵、練り物たち。寒い季節にはぴったりの料理だ。実は、昆布は前に発見し、すでに料理素材として登録済みで、王様に進言して新たな産業として海藻採りが進められている。
だが問題は『練り物』だ。魚のすり身が必要なのだが、ルステインは内陸。魚がほとんど手に入らない。
そこで僕は、風精のアコンキットから譲ってもらった「鮮度保持の魔法道具」と、獣人たちの優れた輸送技術を組み合わせ、沿岸部から魚を取り寄せることにした。仕入れたのは白身魚。冷気を保つ魔法箱に詰め、馬車で2日かけて運ばれてきた。
加工所にてすぐにすり身にし、塩と調味料を加えて練り物を試作。揚げると香ばしい香りが立ち上がり、柔らかな弾力と塩味のバランスが絶妙だった。
「これで……おでんが作れる」
試作のおでん鍋を完成させ、大根、昆布、練り物、卵、牛すじを投入。弱火でじっくり煮る。香りだけでご飯三杯はいけそうだっ…ご飯ないけど。
味は完璧だった。だが問題はコストだ。魚の輸送に魔法道具と複数の馬車を使い、人件費もかさむ。おでん一杯で銀貨一枚では、庶民の料理として定着しない。
「うーん、やはり内陸では厳しいか……」
窓の外を見ながら、僕は小さく溜息をついた。解決策は必要だ。例えば、淡水魚での代用、近隣の湖の開発、または保存魚技術の向上…課題は山積みだが、可能性はある。
「おでんを、この国の定番に」
夢はまだ始まったばかりだ。だが、林で見つけた一本の大根が、ここまで話を広げるとは、誰が予想しただろう。僕はふと笑い、熱々のおでん鍋に箸を伸ばした。
木漏れ日の差す道なき道を歩いていると、土の中から白い何かが覗いていた。何かの根だろうか? 手で土を払うと、そこには――大根。それに酷似した野菜が一本、土の中から生えていた。
「これは……大根?」
まさか、と思った。僕の知識にある大根の特徴と、目の前のそれはほぼ一致している。この世界には見たことがない。農務書にも載っていない。鑑定する。
『大根…根菜。白い根の部分を主に食用とし、煮物、おろし、漬物など様々な料理に使われる。また、葉も栄養価が高く、炒め物や漬物などに利用される』
やっぱり大根だ。僕は敵がいない事を確認するとエメイラとミザーリを呼ぶ。
「どうしたの?」
「主よどうした?」
「新しい野菜を見つけたの。訓練はやめる」
「そうなのね。それは美味しいの?」
「美味しいよ。とりあえず工房に持っていこう。早速料理したい」
「主よ、そんなに焦るほどの味なんですか?」
「そう。早く戻ろう」
「わかったわよ。訓練は中止しましょう」
「ありがとうエメイラ」
急いで何本か収穫し、念のため土付きのまま持ち帰る。
工房に戻るとすぐに水で洗い、薄切りにして味見をした。少し辛味はあるが、甘みも強く、しっかりとした食感がある。これを使えば、料理の幅は一気に広がるだろう。
「よし、実験開始だ!」
まずは定番の「大根の煮物」。醤油に砂糖、昆布でだしをとり、弱火でじっくりと煮る。次は「大根サラダ」。薄切りを水にさらしてシャキシャキ感を残し、軽く塩もみしてごま油と酢で和える。さらに「大根の浅漬け」や「大根ステーキ」など、試作品を次々と作っていった。横でエメイラ達が喜んで食べてる。僕の分も残してもらいたい。
手応えはあった。これほど多用途で美味しい野菜は、ぜひ広めたい。そこで僕は、料理ギルドに赴き、大根料理のレシピとともに「新食材」として登録を申請した。
「これが大根なん?…なんと使い勝手の良い…!」
料理ギルドのマジスさんは目を丸くしながら、感嘆の声を漏らした。
大根の登録が無事に済むと、次に考えたのは「栽培」だ。僕一人の工房で栽培するには限界がある。王城の農務部に正式に申請すれば、広域に広められるかもしれない。広がってもらえば色んな料理がみんな食べられるのだ。
僕は収穫した大根の中から種の取れそうな数本を厳選し、一本は土に埋め、錬金術の経年変化で花を咲かせ、その後種を収穫した。残りは気をつけて丁寧に乾燥させる。そして手紙を添えて、王城の農務部宛に送った。
拝啓。王国農務部の皆様へ。
本日、ルステイン近郊の林にて、本王国では未確認の野菜を発見しました。名称は「大根」と申します。白く長い根菜で、煮物・漬物・炒め物などに適し、食味も優れております。
この野菜の種を同封いたします。試験栽培にて結果が良ければ、本王国の農業の多様化と食文化の発展に貢献するものと確信しております。
王国の料理番リョウエスト・スサン
数日後、農務部から返事が届いた。
「これはすばらしい発見だ。新野菜として試験栽培に着手する。成果が出れば、王都市場に出すことも視野に入れる」
文字からも興奮が伝わってくる。僕は笑みを浮かべつつ、次の構想へと気持ちを向けた。
そう、「おでん」だ。
出汁でじっくり煮た大根、昆布、卵、練り物たち。寒い季節にはぴったりの料理だ。実は、昆布は前に発見し、すでに料理素材として登録済みで、王様に進言して新たな産業として海藻採りが進められている。
だが問題は『練り物』だ。魚のすり身が必要なのだが、ルステインは内陸。魚がほとんど手に入らない。
そこで僕は、風精のアコンキットから譲ってもらった「鮮度保持の魔法道具」と、獣人たちの優れた輸送技術を組み合わせ、沿岸部から魚を取り寄せることにした。仕入れたのは白身魚。冷気を保つ魔法箱に詰め、馬車で2日かけて運ばれてきた。
加工所にてすぐにすり身にし、塩と調味料を加えて練り物を試作。揚げると香ばしい香りが立ち上がり、柔らかな弾力と塩味のバランスが絶妙だった。
「これで……おでんが作れる」
試作のおでん鍋を完成させ、大根、昆布、練り物、卵、牛すじを投入。弱火でじっくり煮る。香りだけでご飯三杯はいけそうだっ…ご飯ないけど。
味は完璧だった。だが問題はコストだ。魚の輸送に魔法道具と複数の馬車を使い、人件費もかさむ。おでん一杯で銀貨一枚では、庶民の料理として定着しない。
「うーん、やはり内陸では厳しいか……」
窓の外を見ながら、僕は小さく溜息をついた。解決策は必要だ。例えば、淡水魚での代用、近隣の湖の開発、または保存魚技術の向上…課題は山積みだが、可能性はある。
「おでんを、この国の定番に」
夢はまだ始まったばかりだ。だが、林で見つけた一本の大根が、ここまで話を広げるとは、誰が予想しただろう。僕はふと笑い、熱々のおでん鍋に箸を伸ばした。
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