【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

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8歳の旅回り。

お爺さんと観光。

 朝、家の前に止まった馬車から、威厳と優しさをあわせ持つ老人が降り立った。僕はすぐに玄関を飛び出して迎えに行く。

「お爺さん! 久しぶり!」
「おう、リョウエスト。大きくなったなあ。…ふむ、顔つきが少しお母さんに似てきたか?」

 懐かしい声に、僕は自然と笑顔になる。ラジュラエンお爺さん…かつてスサン商会の会長を務め、今は王立学園で考古学と歴史を教える名物教師だ。

「今回は学園の仕事?それとも観光?」
「まあ、両方じゃな。ストラストの様子を直接知らせに来たのと、お前にルステインの案内を頼みたくてな」
「もちろん!案内役は任せて」

 それからお父さんに挨拶したお爺さんは、居間で軽くお茶を飲みながら話を始めた。

「ストラストは、文句なしの成績トップじゃ。剣も術も申し分ない。そして…王子の推薦で、生徒会に入る話も出ておる」
「えっ、生徒会? すごい…」
「しかもな。ウルリッヒ王子とは本当に仲が良い。貴族、平民とも分け隔てなく接しておる。あやつの交渉力は天性のものじゃよ」
「…ストラ兄さん、やっぱりすごい」

 僕がため息交じりに言うと、お爺さんは笑った。

「ふむ、お前もなかなかどうして。この国に大きな変革をもたらしておるではないか。案内してくれるのを楽しみにしておるぞ、リョウエスト」

 翌日。僕はお爺さんを連れて、ルステインの町を歩いていた。

「ほう…この通り、以前は廃れておったはずだが、活気づいたな」
「ここは元々古い鍛冶屋が並んでたところ。今は魔道具技師の通りになってるの」

 お爺さんは建物の構造や看板の文字をじっと見て、うなずいた。

「ふむ、機能美と遊び心が共存しておる。良い町並みじゃ。あれは…エストサーモスの展示か?」
「うん。スサン商会製」
「魔法道具を生活に溶け込ませるとは、お前の発想か?」
「うーん、僕だけじゃない。色んな人の知恵。お爺さんが残してくれた商会の土台があったからだね」
「ほほう。それは誇らしいのう」

 僕はふと、以前とは比べ物にならないほどの笑顔を見せるお爺さんに気づいた。

「ねえ、お爺さん、嬉しそう」
「…うむ。正直、わしの時代には叶わなかったことが、今お前らの手で次々に実現されておる。嬉しくないはずがなかろう」

 そう言って目を細めたお爺さんは、ふと何かに気づいて立ち止まった。

「あれは……紙芝居屋?何だあれは?子供たちが群がっておる」

 僕が商業登録したやつだ。

「あ、うん。最近できた娯楽のひとつ。昔話をわかりやすくしてる」
「…素晴らしい。歴史や知識を娯楽にして広めるとは、まさにわしの理想じゃ」

 午後、僕たちはルステインの図書館へ向かった。元は古い商会の持ち物だった建物を改装したものだ。

「ほう…蔵書の管理が行き届いておるな。そして、子供でも手に取れる高さに本が並んでおる」
「教育用の書も多い。誰でも読めるようにしたいって、皆で意見を出して整備した」
「うむ…これは、学園の図書館よりも、開かれておるな」

 お爺さんはしばし本棚の前で立ち尽くしたあと、小さな声でつぶやいた。

「リョウ…わしは今、とても嬉しい。わしが願った『歴史の継承』は、形を変えてこの町に生きておる。誇らしいぞ」
「お爺さん…ありがとう。けど、それは、お爺さんがずっと歴史を教えてくれてたから。お兄さん達もお爺さんに学んだ」
「…そうか。ならば、わしの役目も無駄ではなかったな」
「全然無駄じゃないの」
「明日は…市場も案内してくれるか?」
「もちろん。あと、ちょっと珍しい大根料理も…」
「大根? 大根って何だ?」
「新しく見つけた野菜だよ。僕が見つけたんだ」
「はははは! なんとまあ。リョウエスト、お前には本当に驚かされる!」

 そう言って、お爺さんは笑った。笑い声は、どこか深い安心と誇りをたたえていた。
 夕暮れ。ルステインの我が家の食堂には、懐かしい笑い声が響いていた。

「ほう、これはまた…良い匂いじゃのう」

 テーブルの向こう、お爺さんがふわりと香る焼きパンとスープの香りに目を細めた。テーブルの上には、マスが手際よく準備した、温かくてどこか懐かしい家庭料理が並んでいた。

「本日は根菜の蒸し茹で、豆のソテー、アバーンのエストバーグに、人参と茸の炒め物だ」

 マスが説明すると、お爺さんはにっこりと微笑んだ。

「なんとまあ…高級でなくとも、心がこもっておる。こういう食卓が、一番落ち着くわい」
「さあ、冷めないうちに召し上がってください」

 母さんが笑顔で皿を差し出し、僕もフォークを手に取った。

「いただきます!」

 ぱくっと口にしたアバーンのハンバーグは、香辛料がほどよく効いていて、肉の旨味がぎゅっと詰まっていた。

「うわ…やっぱりアバーンって、美味しくなった」
「うむ、昔は臭みが強くてのう。まさかこんなに食べやすくなるとは…リョウエスト、お前の手腕か?」
「うん。ほんのちょっとだけ。下処理の方法を商会で教えた」

 お爺さんはワインのグラスを持ち上げて、朗らかに言った。

「やはり、こうして皆で囲む食事が一番じゃな。ルステインの味は…優しい」
「ほんとうに。お爺さんと食べる夕飯久しぶりですね」

 母さんも優しく言った。お爺さんがしみじみと口にする。

「家族とは、良いものじゃな…こうして肩肘張らずに、心を寄せ合う時が…人生で一番、贅沢じゃよ」
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