【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

文字の大きさ
372 / 689
8歳の旅回り。

お爺さんと観光。

しおりを挟む
 朝、家の前に止まった馬車から、威厳と優しさをあわせ持つ老人が降り立った。僕はすぐに玄関を飛び出して迎えに行く。

「お爺さん! 久しぶり!」
「おう、リョウエスト。大きくなったなあ。…ふむ、顔つきが少しお母さんに似てきたか?」

 懐かしい声に、僕は自然と笑顔になる。ラジュラエンお爺さん…かつてスサン商会の会長を務め、今は王立学園で考古学と歴史を教える名物教師だ。

「今回は学園の仕事?それとも観光?」
「まあ、両方じゃな。ストラストの様子を直接知らせに来たのと、お前にルステインの案内を頼みたくてな」
「もちろん!案内役は任せて」

 それからお父さんに挨拶したお爺さんは、居間で軽くお茶を飲みながら話を始めた。

「ストラストは、文句なしの成績トップじゃ。剣も術も申し分ない。そして…王子の推薦で、生徒会に入る話も出ておる」
「えっ、生徒会? すごい…」
「しかもな。ウルリッヒ王子とは本当に仲が良い。貴族、平民とも分け隔てなく接しておる。あやつの交渉力は天性のものじゃよ」
「…ストラ兄さん、やっぱりすごい」

 僕がため息交じりに言うと、お爺さんは笑った。

「ふむ、お前もなかなかどうして。この国に大きな変革をもたらしておるではないか。案内してくれるのを楽しみにしておるぞ、リョウエスト」

 翌日。僕はお爺さんを連れて、ルステインの町を歩いていた。

「ほう…この通り、以前は廃れておったはずだが、活気づいたな」
「ここは元々古い鍛冶屋が並んでたところ。今は魔道具技師の通りになってるの」

 お爺さんは建物の構造や看板の文字をじっと見て、うなずいた。

「ふむ、機能美と遊び心が共存しておる。良い町並みじゃ。あれは…エストサーモスの展示か?」
「うん。スサン商会製」
「魔法道具を生活に溶け込ませるとは、お前の発想か?」
「うーん、僕だけじゃない。色んな人の知恵。お爺さんが残してくれた商会の土台があったからだね」
「ほほう。それは誇らしいのう」

 僕はふと、以前とは比べ物にならないほどの笑顔を見せるお爺さんに気づいた。

「ねえ、お爺さん、嬉しそう」
「…うむ。正直、わしの時代には叶わなかったことが、今お前らの手で次々に実現されておる。嬉しくないはずがなかろう」

 そう言って目を細めたお爺さんは、ふと何かに気づいて立ち止まった。

「あれは……紙芝居屋?何だあれは?子供たちが群がっておる」

 僕が商業登録したやつだ。

「あ、うん。最近できた娯楽のひとつ。昔話をわかりやすくしてる」
「…素晴らしい。歴史や知識を娯楽にして広めるとは、まさにわしの理想じゃ」

 午後、僕たちはルステインの図書館へ向かった。元は古い商会の持ち物だった建物を改装したものだ。

「ほう…蔵書の管理が行き届いておるな。そして、子供でも手に取れる高さに本が並んでおる」
「教育用の書も多い。誰でも読めるようにしたいって、皆で意見を出して整備した」
「うむ…これは、学園の図書館よりも、開かれておるな」

 お爺さんはしばし本棚の前で立ち尽くしたあと、小さな声でつぶやいた。

「リョウ…わしは今、とても嬉しい。わしが願った『歴史の継承』は、形を変えてこの町に生きておる。誇らしいぞ」
「お爺さん…ありがとう。けど、それは、お爺さんがずっと歴史を教えてくれてたから。お兄さん達もお爺さんに学んだ」
「…そうか。ならば、わしの役目も無駄ではなかったな」
「全然無駄じゃないの」
「明日は…市場も案内してくれるか?」
「もちろん。あと、ちょっと珍しい大根料理も…」
「大根? 大根って何だ?」
「新しく見つけた野菜だよ。僕が見つけたんだ」
「はははは! なんとまあ。リョウエスト、お前には本当に驚かされる!」

 そう言って、お爺さんは笑った。笑い声は、どこか深い安心と誇りをたたえていた。
 夕暮れ。ルステインの我が家の食堂には、懐かしい笑い声が響いていた。

「ほう、これはまた…良い匂いじゃのう」

 テーブルの向こう、お爺さんがふわりと香る焼きパンとスープの香りに目を細めた。テーブルの上には、マスが手際よく準備した、温かくてどこか懐かしい家庭料理が並んでいた。

「本日は根菜の蒸し茹で、豆のソテー、アバーンのエストバーグに、人参と茸の炒め物だ」

 マスが説明すると、お爺さんはにっこりと微笑んだ。

「なんとまあ…高級でなくとも、心がこもっておる。こういう食卓が、一番落ち着くわい」
「さあ、冷めないうちに召し上がってください」

 母さんが笑顔で皿を差し出し、僕もフォークを手に取った。

「いただきます!」

 ぱくっと口にしたアバーンのハンバーグは、香辛料がほどよく効いていて、肉の旨味がぎゅっと詰まっていた。

「うわ…やっぱりアバーンって、美味しくなった」
「うむ、昔は臭みが強くてのう。まさかこんなに食べやすくなるとは…リョウエスト、お前の手腕か?」
「うん。ほんのちょっとだけ。下処理の方法を商会で教えた」

 お爺さんはワインのグラスを持ち上げて、朗らかに言った。

「やはり、こうして皆で囲む食事が一番じゃな。ルステインの味は…優しい」
「ほんとうに。お爺さんと食べる夕飯久しぶりですね」

 母さんも優しく言った。お爺さんがしみじみと口にする。

「家族とは、良いものじゃな…こうして肩肘張らずに、心を寄せ合う時が…人生で一番、贅沢じゃよ」
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて森に捨てられた悪役令嬢を救ったら〜〜名もなき平民の世直し戦記〜〜

naturalsoft
ファンタジー
アヴァロン王国は現国王が病に倒れて、第一王子が摂政に就いてから変わってしまった。度重なる重税と徴収に国民は我慢の限界にきていた。国を守るはずの騎士達が民衆から略奪するような徴収に、とある街の若者が立ち上がった。さらに森で捨てられた悪役令嬢を拾ったことで物語は進展する。 ※一部有料のイラスト素材を利用しています。【無断転載禁止】です。 素材利用 ・森の奥の隠里様 ・みにくる様

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

ペットになった

ノーウェザー
ファンタジー
ペットになってしまった『クロ』。 言葉も常識も通用しない世界。 それでも、特に不便は感じない。 あの場所に戻るくらいなら、別にどんな場所でも良かったから。 「クロ」 笑いながらオレの名前を呼ぶこの人がいる限り、オレは・・・ーーーー・・・。 ※視点コロコロ ※更新ノロノロ

極限効率の掃除屋 ――レベル15、物理だけで理を解体する――

銀雪 華音
ファンタジー
「レベル15か? ゴミだな」 世界は男を笑い、男は世界を「解体」した。 魔力も才能も持たず、万年レベル15で停滞する掃除屋、トワ。 彼が十年の歳月を費やして辿り着いたのは、魔法という神秘を物理現象へと引きずり下ろす、狂気的なまでの**『極限効率』**だった。 一万回の反復が生み出す、予備動作ゼロの打撃。 構造の隙間を分子レベルで突く、不可視の解体。 彼にとって、レベル100超えの魔物も、神の加護を受けた聖騎士も、ただの「非効率な肉の塊」に過ぎない。 「レベルは恩恵じゃない……。人類を飼い慣らすための『制限(リミッター)』だ」 暴かれる世界の嘘。動き出すシステムの簒奪者。 管理者が定めた数値(レベル)という鎖を、たった一振りのナイフで叩き切る。 これは、最弱の掃除屋が「論理」という名の剣で、世界の理(バグ)を修正する物語。気になる方は読んでみてください。 ※アルファポリスで先行で公開されます。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

処理中です...