378 / 806
8歳の旅回り。
第二回新作発表会。
王城の重厚な扉が音もなく開かれ、豪奢な会議室に入った僕は、深く一礼した。玉座には王様と王妃様、その隣にはウルリッヒ王子、左右には宰相、大臣、そしての官僚たちが並んでいた。今年は去年よりさらに人数が増えている。一斉に僕の方を見る。ちょっと緊張するな。
「本日はお時間を頂き、ありがとう、ございます。ルステインよりやってきた、リョウエスト・スサン。本日は第二回となる、新作発表をさせていただきます」
「うむ。リョウエスト。始めてくれ」
「はい、王様」
まず、僕が取り出したのは真鍮と木材で組まれた簡易望遠鏡だった。
「こちらは、遠方の物を拡大して見るための道具、『簡易望遠鏡』。魔力透過を助けるレンズを使って、日中はもちろん、夜間の星や遠景も明瞭に見えるの」
「おお…」
王妃様が身を乗り出す。
「わたくしにも見せてくださるかしら?」
「もちろん」
僕は望遠鏡をそっとお渡しする。
王妃様がレンズを覗き込んだ瞬間、声を上げた。
「まあ! 城の塔の細工までくっきりと見えるなんて!」
「これで敵の接近を早期に察知できるのでは?」
軍務大臣が声を上げた。
「その通り。物見塔や見張り番の装備にも応用できるの」
「魔力が必要ですか?」
宰相が静かに問う。
「微量で済むの。子供でも扱える程度の魔力負荷で、日照下なら無補助でも機能する」
「実に優れている…」
続いて、僕は光触媒消臭装置を取り出した。器の内部には透明な魔力反応板の魔法道具がはめ込まれている。
「こちらは、空気中の臭気成分を分解する装置。陽光か人工光があれば常時作動するの。試しにこちらの臭気瓶を見て欲しい」
封を開けた瓶から立ち上った悪臭に、数名の官僚が眉をひそめる。
「これはひどい…!」
僕が装置を瓶の上に置き、光を当てると、数秒で匂いが消えていく。
「…なくなった?」
王妃様が目を見開く。
「臭いが、どこにも…これは魔法では?」
内務大臣が口を開く。
「魔法ではなく、自然反応なの。これがあれば地下室、牢獄、病院、果ては食堂まで衛生環境が改善されるの」
「このまま王都中に配備したいものだ…」
宰相が呟いた。
「貴族の邸宅でも匂いは問題になりますからな」
外務大臣が言う。
「これは画期的でしょう」
「そうですな」
大臣2人がそう話している。
僕は頷いてから、三つ目を示す。
「次にご紹介するのは、簡易気象装置なの。これは周囲の空気の変化から、風向・気圧・湿度を検知する。急な雨や風を予測するための指標となるの」
「航海や農地管理に良さそうですね」
農務大臣が前のめりになって質問する。
「これは誰でも扱えるのか?」
「魔力ゼロでも使用可能です。天気の変化を色と音で知らせる仕様にしてある」
「村単位でも置けるな…!」
農務担当官が頷いた。
「軍でも使えるぞ!戦には天候が大いに影響されるのだ!」
軍務大臣がそう言って目を輝かせる。
会議室の空気が徐々に熱を帯びてきた。王様がそっと口元に手を当て、僕をじっと見た。
「リョウエスト。君はまだ8歳の子供だったはず…この発明群、誰が設計している?」
「はい、王様。基本設計はすべて僕がやってる。でも、試作と量産にはリョウエスト商会がやってる」
「これは未来の扉だな…」
ウルリッヒ殿下がふっと笑って言った。
「リョウエスト。お前が王都に生まれていたら、我が王立学園が君を手放さなかったと思うよ」
「殿下、恐れながら、王立学園は『今から』でも口説いてこられるかもしれませんよ?」
王妃様が楽しげに言い、会場に笑いが広がった。
「…それでは、中庭にて、さらに大きな発表をお見せします」
僕は会議室を後にし、次なる実演へと向かう。
王城の中庭には、すでに白布をかけた実演台と、特別仕様の馬車が設置されていた。
王様と王妃様、ウルリッヒ殿下、宰相、大臣らが会議室から移動してきて、僕の説明が再び始まる。
「こちらでは、日常生活に関わる新製品をいくつかご紹介いたします。まず、『化粧水』と『洗髪用液(シャンプー)』です」
側に控えた女性使用人が、王妃様の許可を得て小瓶を渡す。
「王妃様、こちらの化粧水をご覧ください。香り付きのタイプと、無香タイプがございます」
王妃様が香りを嗅いだ瞬間、驚いたように目を見開いた。
「…この香り、まるで春の野花の中にいるよう…これを肌に使うの?」
「はい。肌に潤いを与え、乾燥を防ぎ、年齢によるしわを目立ちにくくする効果もあります」
「本当かしら…?」
ウルリッヒ殿下が興味深げに聞く。
「リョウエスト、それは魔法の薬か?」
「いえ。素材は自然由来です。水竜人の持つ海藻知識、エルフの香料知識、そして僕たちヒトの調合技術を掛け合わせて開発しました」
「…これは王宮の商会でも扱うべきだな」
宰相が小声で言う。
「では次に、シャンプーです。泡立てて髪に馴染ませ、洗い流すだけで、汚れや匂いを落とせます」
「まさか、髪を剃らずに済むとは!」
軍務大臣が冗談混じりに叫び、場に笑いが起きた。
「これで剣士や騎士たちも頭を洗えるぞ」
騎士団長も頷く。
「それに…良い香りだな」
「はい。王宮の浴場にもご提供できるよう準備を進めているの。早めに楽しんでもらえるようにする」
「本日はお時間を頂き、ありがとう、ございます。ルステインよりやってきた、リョウエスト・スサン。本日は第二回となる、新作発表をさせていただきます」
「うむ。リョウエスト。始めてくれ」
「はい、王様」
まず、僕が取り出したのは真鍮と木材で組まれた簡易望遠鏡だった。
「こちらは、遠方の物を拡大して見るための道具、『簡易望遠鏡』。魔力透過を助けるレンズを使って、日中はもちろん、夜間の星や遠景も明瞭に見えるの」
「おお…」
王妃様が身を乗り出す。
「わたくしにも見せてくださるかしら?」
「もちろん」
僕は望遠鏡をそっとお渡しする。
王妃様がレンズを覗き込んだ瞬間、声を上げた。
「まあ! 城の塔の細工までくっきりと見えるなんて!」
「これで敵の接近を早期に察知できるのでは?」
軍務大臣が声を上げた。
「その通り。物見塔や見張り番の装備にも応用できるの」
「魔力が必要ですか?」
宰相が静かに問う。
「微量で済むの。子供でも扱える程度の魔力負荷で、日照下なら無補助でも機能する」
「実に優れている…」
続いて、僕は光触媒消臭装置を取り出した。器の内部には透明な魔力反応板の魔法道具がはめ込まれている。
「こちらは、空気中の臭気成分を分解する装置。陽光か人工光があれば常時作動するの。試しにこちらの臭気瓶を見て欲しい」
封を開けた瓶から立ち上った悪臭に、数名の官僚が眉をひそめる。
「これはひどい…!」
僕が装置を瓶の上に置き、光を当てると、数秒で匂いが消えていく。
「…なくなった?」
王妃様が目を見開く。
「臭いが、どこにも…これは魔法では?」
内務大臣が口を開く。
「魔法ではなく、自然反応なの。これがあれば地下室、牢獄、病院、果ては食堂まで衛生環境が改善されるの」
「このまま王都中に配備したいものだ…」
宰相が呟いた。
「貴族の邸宅でも匂いは問題になりますからな」
外務大臣が言う。
「これは画期的でしょう」
「そうですな」
大臣2人がそう話している。
僕は頷いてから、三つ目を示す。
「次にご紹介するのは、簡易気象装置なの。これは周囲の空気の変化から、風向・気圧・湿度を検知する。急な雨や風を予測するための指標となるの」
「航海や農地管理に良さそうですね」
農務大臣が前のめりになって質問する。
「これは誰でも扱えるのか?」
「魔力ゼロでも使用可能です。天気の変化を色と音で知らせる仕様にしてある」
「村単位でも置けるな…!」
農務担当官が頷いた。
「軍でも使えるぞ!戦には天候が大いに影響されるのだ!」
軍務大臣がそう言って目を輝かせる。
会議室の空気が徐々に熱を帯びてきた。王様がそっと口元に手を当て、僕をじっと見た。
「リョウエスト。君はまだ8歳の子供だったはず…この発明群、誰が設計している?」
「はい、王様。基本設計はすべて僕がやってる。でも、試作と量産にはリョウエスト商会がやってる」
「これは未来の扉だな…」
ウルリッヒ殿下がふっと笑って言った。
「リョウエスト。お前が王都に生まれていたら、我が王立学園が君を手放さなかったと思うよ」
「殿下、恐れながら、王立学園は『今から』でも口説いてこられるかもしれませんよ?」
王妃様が楽しげに言い、会場に笑いが広がった。
「…それでは、中庭にて、さらに大きな発表をお見せします」
僕は会議室を後にし、次なる実演へと向かう。
王城の中庭には、すでに白布をかけた実演台と、特別仕様の馬車が設置されていた。
王様と王妃様、ウルリッヒ殿下、宰相、大臣らが会議室から移動してきて、僕の説明が再び始まる。
「こちらでは、日常生活に関わる新製品をいくつかご紹介いたします。まず、『化粧水』と『洗髪用液(シャンプー)』です」
側に控えた女性使用人が、王妃様の許可を得て小瓶を渡す。
「王妃様、こちらの化粧水をご覧ください。香り付きのタイプと、無香タイプがございます」
王妃様が香りを嗅いだ瞬間、驚いたように目を見開いた。
「…この香り、まるで春の野花の中にいるよう…これを肌に使うの?」
「はい。肌に潤いを与え、乾燥を防ぎ、年齢によるしわを目立ちにくくする効果もあります」
「本当かしら…?」
ウルリッヒ殿下が興味深げに聞く。
「リョウエスト、それは魔法の薬か?」
「いえ。素材は自然由来です。水竜人の持つ海藻知識、エルフの香料知識、そして僕たちヒトの調合技術を掛け合わせて開発しました」
「…これは王宮の商会でも扱うべきだな」
宰相が小声で言う。
「では次に、シャンプーです。泡立てて髪に馴染ませ、洗い流すだけで、汚れや匂いを落とせます」
「まさか、髪を剃らずに済むとは!」
軍務大臣が冗談混じりに叫び、場に笑いが起きた。
「これで剣士や騎士たちも頭を洗えるぞ」
騎士団長も頷く。
「それに…良い香りだな」
「はい。王宮の浴場にもご提供できるよう準備を進めているの。早めに楽しんでもらえるようにする」
あなたにおすすめの小説
異世界転生したので、文明レベルを21世紀まで引き上げてみた ~前世の膨大な知識を元手に、貧乏貴族から世界を変える“近代化の父”になります~
夏見ナイ
ファンタジー
過労死したプラントエンジニアの俺が転生したのは、剣と魔法の世界のド貧乏な貴族の三男、リオ。石鹸すらない不衛生な環境、飢える家族と領民……。こんな絶望的な状況、やってられるか! 前世の知識を総動員し、俺は快適な生活とスローライフを目指して領地改革を開始する!
農業革命で食料問題を解決し、衛生革命で疫病を撲滅。石鹸、ガラス、醤油もどきで次々と生活レベルを向上させると、寂れた領地はみるみる豊かになっていった。
逃げてきた伯爵令嬢や森のエルフ、ワケありの元騎士など、頼れる仲間も集まり、順風満帆かと思いきや……その成功が、強欲な隣領や王都の貴族たちの目に留まってしまう。
これは、ただ快適に暮らしたかっただけの男が、やがて“近代化の父”と呼ばれるようになるまでの物語。
最強魔法は生活魔法!? ~異世界ではモンスター退治も生活のうち~
gagaga
ファンタジー
神の気まぐれにより異世界へと転移した主人公田辺竜太(大学生)が生活魔法を駆使して冒険したり町の人と触れ合ったりする物語です。
なお、神が気まぐれすぎて一番最初に降り立つ地は、無人島です。
一人称視点、独り言多め、能天気となっております。
なお、作者が気ままに書くので誤字脱字は多いかもしれませんが、大目に見て頂けるとありがたいです。
ただ、敢えてそうしている部分もあり、ややこしくてすいません。(^^;A
ご指摘あればどんどん仰ってください。
※2017/8/29 連載再開しました!
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ひだまりのFランク冒険者
みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。
そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。
そんな中
冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。
その名は、リルド。
彼は、特に何もない感じに毎日
「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。
この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
子ドラゴンとゆく、異世界スキル獲得記! ~転生幼女、最強スキルでバッドエンドを破壊する~
九條葉月
ファンタジー
第6回HJ小説大賞におきまして、こちらの作品が受賞・書籍化決定しました! ありがとうございます!
七歳の少女リーナは突如として前世の記憶を思い出した。
しかし、戸惑う暇もなく『銀髪が不気味』という理由で別邸に軟禁されてしまう。
食事の量も減らされたリーナは生き延びるために別邸を探索し――地下室で、ドラゴンの卵を発見したのだった。
孵化したドラゴンと共に地下ダンジョンに潜るリーナ。すべては、軟禁下でも生き延びるために……。
これは、前を向き続けた少女が聖女となり、邪竜を倒し、いずれは魔王となって平和に暮らす物語……。