【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

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8歳の旅回り。

王国記録保全法制定。

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「これはただの法案ではありません。王国の『記憶』そのものを護るための、盾です」

 僕は、王国会議室に響く自分の声に少しだけ震えを覚えながらも、一言一言を噛み締めて語った。

 王様、王妃様、各派閥の重鎮、異種族の領主たちが集っていた。背筋を正すと、地精ドワーフ伯、風精エルフ伯、火の民サラマンダー伯、水竜人ドラコニアン伯、獣人ビーストマン伯、そして小人ハーフリング伯がうなずいた。

「我らも支持する」

 低く通る声で地精ドワーフ伯が言う。

「名が奪われ、歴史がねじ曲げられることは、我らの民にも起こり得ることだ。そなたの案は、すべての民のためのものだ」

「歴史の記録が消されることは、未来をも奪う。風精エルフとして、我が文書保管所の知識が不当に消される危険を看過するわけにはいかない」
 
 風精エルフ伯の声は澄んでいて、それでいて重みがあった。
 火の民サラマンダー伯が続けて、

「火のように強く、しかし瞬く間に消える『名』だからこそ、燃え尽きる前に記録として遺す意味があるのだ」

 それを受けて、水竜人ドラコニアン伯は静かに言葉を置く。

「流れ去るものも、留めようとする意志があるなら、記憶になる。それがこの法の本質と、我は感じる」

 獣人ビーストマン伯は牙を見せて唸るように言った。

「名を消す?我らの誇りを否定するも同じだ。そのような陰謀は許されぬ」

 最後に小人ハーフリング族伯が小さな声で、それでも力強く言った。

「ちびだと見逃される。でも、ちびの知恵は深い。ぼくらは『見てた』。書いて、残すよ」

 6伯爵は僕の声を受け立ち上がってくれた。ありがたい。続いて呼び出された三派閥の長はどうだろうか?

 そのとき、席を立ったのは中立派のエフェルト公爵だった。静かに、しかし力強い声が響く。

「この法に異を唱える理由が、私にはない。リョウエスト君の言うとおり、記録を護ることは、王国の礎を護ることに等しい」

 続いて、スクワンジャー公爵が席を立つ。優雅な身のこなしで、少し首を傾げて笑いながら、

「氷菓を食べながらこの件を聞いた時、私は思いました。『未来を凍らせぬよう、今、動かねばならない』と。王党派として、私は賛成致します」

 貴族派のゼローキア侯爵だけは沈黙を守っていたが、誰もが彼の動向に注目する中、彼はふと視線を僕へ向けると、薄く笑った。

「…おもしろい、実に。貴様はますます、私の想像を超えていく」

 その言葉の真意は誰にもわからなかったが、否定の意志がない以上、黙認と受け取られた。

 最後に、玉座の王様が立ち上がった。

「王国の記録は、王国の魂そのものである。リョウエスト、お前の提案、王命として施行させよう」

 一斉に響く拍手の中、僕はようやく安堵の息を吐いた。

 法案が王命により制定されたその日から、王国の空気は静かに変わり始めた。

「記録保全法、か……まったく、お坊ちゃんの先手には驚かされるばかりでやす」

 アインスが王城の回廊を歩きながら言った。

「これで『名の一団』も、そう簡単には動けねえ…下手に記録を消せば、目立つ時代になりやす」

 僕は首をかしげた。

「そんなに……あの一団は、記録を改ざんして動いてるの?」
「ええ、リョウ様」

 フィアが口を挟む。女性ながら、言葉の切れ味は鋼のようだった。

「『名』にまつわるあらゆる痕跡を断ち切ること。それが彼らのやり口です。記録の巻き戻しや消去、噂の書き換え、目撃証言の抹消すら…」

 実際、今回の法案成立までの間にも、王都の一部の記録庫では『意図的な書類の抜き取り』が見つかっていた。誰がやったのかは不明のままだが、青の技と王城の書記局が連携して封鎖と確認を急いだ。

 その日の夜、エフェルト公爵から密書が届いた。王国北方の公文書館にて、ある貴族家の『系譜』が抜き取られていたというのだ。

「…我が領の文書庫の鍵を複製した痕跡がありました。犯人は明らかに、内情を熟知した者」

 それはもはや、単なる記録改ざんではなかった。貴族そのものの『存在』が、まるでなかったかのように加工されつつあったのだ。

「リョウエスト様、名の一団が本格的に動き始めている可能性があります」

 ヤート調査商会の長、ヤートが報告に現れた。物腰柔らかな男だが、裏社会での情報収集と分析にかけては王国内でも五指に入る。

「彼らは、王国の中に根を張る『別の系統』とも連携しているようです。組織は緩やかで、構成員の入れ替わりも激しい…しかし、『名を奪う』という目的だけは一致している」

 許さない。

「アインス、動いて。フィア、ゼクス、全員に。法が成立した今、王国は彼らの動きを記録として追える。ならば、それを武器にする」
「へい。じゃあ、『裏側』での掃除を開始しやす。消される前に、逆に書き記してやりまさぁ」 

 アインスが笑った。怖いくらいに頼もしく、怖いくらいに真剣な笑みだった。

「まるで、『名前を守る騎士団』ですね」

 フィアのつぶやきに、僕はうなずいた。

「それでいい。僕の『名』も、みんなの『名』も…これから生まれてくる誰かの『名』も、決して奪わせない」

 王命によって、王国文章保全法が正式に施行された日の翌朝。王都には、例年以上の静謐さと緊張が漂っていた。法令の掲示板には、文書保全委員会の設置や違反時の罰則、記録書の複写保存制度などが詳しく記されている。

「法が動き出したな」

アインスが僕の元で呟いた。

「これで『名の一団』は直接記録を削除できなくなる。だが、工作を止められるかは別問題でやす」。
「フィア、ゼクス、フュンフ、準備はいいか?」
「準備はできておる」
「すぐ行動できる」
「判然とした証拠を揃えてやる」

 青の技ブルーアーツの仲間たちが答える。その声は誓いそのものだった。

 その夜、ヤート調査商会と青の技ブルーアーツの合同調査チームが、名の一団の潜伏先と見られる裏ギルドの倉庫に突入した。

「名の一団の『名守』部門確保。改ざん済み記録の原本も多数回収。証人も拘束した」

 ツヴァイがわりと冷静に言った。

「裏帳簿、偽名名簿、買収履歴、一連の手口が見える形で揃っているでやす」

 アインスが補足しながら報告を続ける。

 それらの証拠は、直ちに王国文書保全委員会へと提出され、公的な内部調査が開始された。
 宰相は公表に先立って、慎重に文面を整えるよう指示している。

 翌日王様が席に着くと、王命の書が掲げられた。

「名の一団の構成員数名を正式に摘発する。王の名において、法の名を汚した者には、記録抹消ではなく、歴史的裁きを行う」

 前日まで陰で蠢いていた者たちは、一夜にして明るみに露出した。記録を守る者と、記録を奪おうとする者の戦いは、人知れず激化していた。

 記録の保全が、王命によって全国にまで広がる成就は、リョウエストと仲間の異種族、そして青の技ブルーアーツと王国の官僚たちの連携の成果だった。
 王国は名の一団に対して、確かな牽制と制度防壁を築いたのだ。

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