【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

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8歳の旅回り。

炎の民との決闘。

 火の民の領主のもとに落ち着いた数日後、僕はこの自治領の中にある「熱源発生装置」の生産基地を見に行きたいと申し出た。あの装置は僕たちの冬の暮らしを一変させるものだ。その開発と量産が始まっているこの地を、自分の目で確かめたい。

「リョウ様…私も同行いたします」

 ストークが即座に頷く。ミザーリも無言で隣に立ったが、彼女の表情はいつもと違っていた。

「…嫌か?」

 と僕が訊ねると、ミザーリは目を伏せて、ぽつりと答えた。

「…生まれた町です。あそこには、あまり戻りたくはないのです」

 それ以上は聞かなかった。

 青の技の数人とナビ、そしてエメイラも随行することとなり、馬車は赤黒い火山石の丘を抜け、町へ向かった。

 その町はかつてミザーリが育った町は、僕の思っていたよりもずっと活気にあふれていた。
 煙突から煙を上げる工房、真っ赤に熱された炉。熱源装置が整然と並び、ドワーフ、獣人、水竜人、小人、さまざまな異種族たちが作業にあたっていた。

「……すごい」

 僕は思わず声を漏らす。

 案内された技師長によると、この町は近年、異種族との協働によって大きく変わったという。製造効率も上がり、火の民だけの町ではなくなっていた。

「俺たちは昔のままでいたら、この装置は作れなかった」

 そう語る工場長の言葉に、僕は誇らしさと共に複雑な思いを抱いた。

 だが、そんな空気を裂くように一人の男が歩いてきた。


 その男は、火の民の鎧を身にまとっていたが、明らかにミザーリとは違う空気をまとっていた。

「久しぶりだな、ミザーリ」

 低く唸るような声。彼女は身を強張らせ、まるで刃を向けられたように沈黙した。

「……オグレル」

 ミザーリの声が震えていた。

 彼、オグレルは元衛兵団の戦士で、火の民の中でも最も排他的な一派に属していた。かつてミザーリを『外と交わりすぎる』として孤立させ、居づらくさせた原因の一端でもあるらしい。僕に会うという天啓がミザーリに降りなかったらミザーリは逃げる、という選択肢を取るしかなく、辛い思いをしていただろう。

 オグレルは、僕に目を向けると軽く嘲るように笑った。

「これが…子供か? 熱源装置の設計者? 笑わせるな。貴族か何か知らんが、火の民の誇りを汚すなよ」

 その背後には、彼と同調する数人の火の民がいた。工場の空気が一瞬、凍り付いたように静まった。

「言葉を慎め」

 エメイラが一歩前に出て、冷たい声で言った。しかしオグレルはにやりと笑う。

「貴族の護衛エルフか? 火の民に説教とは笑える。こいつらにここを好き勝手にされてたまるか」

 そして僕に向き直る。

「小僧、俺と“決闘”しろ。火の民の誇りを汚した責任をとってもらおうじゃないか。剣か、槍か、魔法でもいいぞ」

 ミザーリが一歩、踏み出した。眼には怒りが宿っていた。

「やめろ! 主はまだ子供なんだぞ!」
「僕がやる」

 僕はその言葉を遮って答えた。声が、自分でも驚くほど静かだった。

「僕が決闘を受ける。魔法で、やろう。火の民の誇りも、装置の未来も、僕が守る」

 ストークが一瞬驚き、ミザーリは血の気を引かせて僕を見た。だが、僕の目を見て、それ以上は止めなかった。



 決闘の場は町外れの広場に設けられた。古の儀礼に則り、魔法同士の対決。僕に対して、オグレルは片手に火球を練っていた。

「魔法で俺に勝てると思ってんのか、小僧」
「勝てるよ」

 そう言って、僕は深く息を吸い、両手を合わせた。

 集中。怒りではなく、静けさの中に魔力を流す。心の奥にある水面を揺らさぬようにして、僕は魔法を発動した。

『水の槍』

 思い切り魔力を込めた飛沫をあげる水の槍が虚空に現れ、一瞬のうちにオグレルの右腕を貫いた。

「ぐああああああああっ!!」

 叫び声が広場に響く。火球が地に落ちて散り、オグレルは膝をついた。右手は、肩から下がすでにない。

 誰もが息を飲んでいた。僕は歩み寄って、静かに言った。

「僕は、誰の誇りも否定しない。でも君が他人を貶して、その誇りを利用するなら、僕は君を否定する」

 ミザーリはただ、震える拳を握りしめながら僕を見つめていた。エメイラは軽く笑い、ナビは僕の足元に寄って、ぴたりと寄り添った。

「さあ、視察を続けよう。ここは僕たちみんなの未来を作る場所なんだ」

 火の民の町には、再び静かな炎の音だけが響いていた。

 決闘ののち、オグレルは火の民の自治評議会によって拘束された。

 町の衛兵たちは、彼がかつての衛兵団員でありながら、自治領に来訪した貴族、それも王の信任を受けるリョウエストに対して決闘を挑み、敗北し、公共の場で侮辱したことを重く見たのだ。

「オグレルは、火の民の誇りを語ったが、あれは『誇り』ではなく『憎悪』だった」と、評議員の一人は語った。

 最終的にオグレルは、『自治領外追放』と『再入国の永久禁止』、そして右手の損傷による『戦士としての資格剥奪』が決定された。彼の名は衛兵記録からも削除され、名誉も消失するという結果となった。

 処分の知らせを聞いたミザーリは、静かに目を閉じ、こう言った。

「私があの町を離れた理由が…やっと、町そのものによって正されたのですね」
「うん。でもそれは、あの町が変わり始めてるってことでもあると思う」

 と、僕は応じた。ミザーリは僕を一瞥し、微笑みを浮かべた。

「主が訪れたことも、大きな意味を持ったのでしょう。…ありがとう、私の町を変えてくれて」





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