【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

文字の大きさ
387 / 689
8歳の旅回り。

種籾は残った。

しおりを挟む
 蒼く澄んだ朝。僕たち一行は馬車でフェルナ村へと向かっていた。御者のアレクとボルク、護衛のミザーリ、執事ストーク、青の技の六人、そしてエメイラとナビ。空気には新しい希望の匂いがあった。
 村に近づいたそのとき、ナビが何度も空中で鳴き、飛び回った。途中、湿地帯を抜けた先に広がる、一反ほどの田んぼ。黄金色の稲穂が、風にそよいでいる。

「これは…米なのか?」

 僕が震える声で言うと、領主代理の兵が村人を連れてきた。

「あなたが言っていた人ですね」

 と、若い村の女が笑顔を向ける。

「そうです。これは、米……?」

 稲の絵を描いて渡していたのを覚えていてくれたらしい。

「はい、アネーシャ神の天啓により発見し、大事に世代継承してきました」

 と続けた。

 村人のアネーシャさんへの信仰によって育まれた稲だった。神のお恵みと感謝が、代々の稲を守ってきたのだという。僕は胸が熱くなった。

「もしもよろしければ、一緒に収穫していただければ、分かち合えます」

 彼女が差し出した籠に、僕は笑顔で頷く。

「ありがとうございます。もちろん、皆で分けましょう」

 さっそく稲穂を鎌で刈り始めた。青の技の面々とエメイラも手伝う。ナビは小さな翼で稲穂を守るように飛び回り、ストークも慎重に手伝う。
 ミザーリは少し離れた場所で、村人と話しながら稲の様子を確認していた。

 黄金色の穂が一つまた一つと摘まれ、籠に積まれていく。一反分が、確かな実りとなっている。その美しさ、そして奇跡に、僕も言葉を失っていた。

 そのとき、僕はエメイラの視線を感じた。彼女もまた、神のご加護と人々の祈りがそこに生きていると感じ取っていたのだろう。
 田んぼの中で、僕たちはしばし無言で収穫を続けた。空には鳥の声と、希望の軽い風が吹いている。

 収穫の佳境に差し掛かったその時、アインスからの急報が届いた。

「刺客がこちらに向かっているでやす。名の一団の傀儡かその系列と思われます」

 僕は立ち上がり、周囲を見る。村人には危険を知らせず、静かに場所を移動することを提案した。

「稲を傷つけずに、少し離れた場所で構えましょう」

 ストークが馬車の位置を指示し、ミザーリとエメイラ、青の技の仲間と共に、村と稲田から離れた小高い丘へ移動した。ナビの輪を外すと巨大化して、威嚇するように空に飛び上がった。

 ほどなくして、闇から現れたのは数名の刺客。槍や短剣など、あからさまに僕たちを狙っていた。村人たちは不安そうに身を隠し、稲田に向かう人影は消えた。

 ミザーリが鋭く構え、エメイラが魔力を結界にし、青の技たちは各々の役割に徹した。アインスは冷静に指揮を執り、フィアが防御を固め、ゼクスが敵の後方を抑え、ドライとフュンフが側面封じ。
 ナビの巨大な姿と、僕の力を感じて、刺客たちは混乱した。

「行け!」

 一斉に突き出した武器と魔術で、侵入者たちは数人倒され、残った者たちは逃げ出した。乱戦の裂け目から、遠くに炎の灯が見える。右手がない…オグレルだ。

 虫のように軽薄な笑みを浮かべ、オグレルは燃え盛る松明を稲田に放った。火は瞬く間に、黄金の穂を包み込む。

「燃やすな!」

 ミザーリが叫び、僕も胸が締め付けられた。

「行かなきゃ…!」

 僕は駆け出す寸前、ミザーリがオグレルに突きかかった。彼女の怒りは、護衛を越えて、正義の刃となった。

 僕はミザーリに止めるよう合図しつつ、ナビたちと共に消火と対応に当たった。青の技も追撃し、数名を取り押さえた。大地に炎がじっとりと残った。
 オグレルは力尽きて倒される。ミザーリは槍を収め、僕は震える手でミザーリを支えた。

 炎が去り、稲田を見ると焼け焦げた黒の中に、黄金の穂が辛うじて残っていた。僕たちは静かに肩を並べた。村人たちが恐る恐る畑に戻ってきて、状況を見守っていた。

「種籾を分け合いましょう」

 村長が穏やかに言った。

「あなたが話していた方ですよね。私たちも神の恵みに感謝しています。残った種籾を半分、あなたと分けます」

 僕は涙をこらえて頷いた。

「ありがとうございます。必ず、ここから再び育てる」

 ミザーリが隣で静かに首を振り、微笑んだ。

「ありがとう…主が来てくれて、良かった」

 ストークとエメイラも村人を落ち着かせ、青の技は防御網を整理し、帰りの馬車の用意を始めた。ナビは静かに地面に下り、僕に寄り添った。輪をつけて小さいサイズにする。

「この種籾をルステインに運び、安全に保管しよう。そして、研究も進めよう」

 僕は声を絞り出すように言った。

「未来の米として、王国のみんなに届けたい」

 エメイラが柔らかく言った。

「あなたが描いた未来、少しずつね」

 村は少しずつ、神のご加護と希望の種を受け入れているようだった。僕たちは火のような夕焼けの中、馬車に戻りながら誓い合った。

「また来年も、ここで一緒に収穫できますように」

 僕の言葉に、ミザーリが笑って頷いた。

 馬車は再び火の民の領都へ向かって動き出した。その背中に、黄金色の穂と奇跡の記憶が刻まれていた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて森に捨てられた悪役令嬢を救ったら〜〜名もなき平民の世直し戦記〜〜

naturalsoft
ファンタジー
アヴァロン王国は現国王が病に倒れて、第一王子が摂政に就いてから変わってしまった。度重なる重税と徴収に国民は我慢の限界にきていた。国を守るはずの騎士達が民衆から略奪するような徴収に、とある街の若者が立ち上がった。さらに森で捨てられた悪役令嬢を拾ったことで物語は進展する。 ※一部有料のイラスト素材を利用しています。【無断転載禁止】です。 素材利用 ・森の奥の隠里様 ・みにくる様

極限効率の掃除屋 ――レベル15、物理だけで理を解体する――

銀雪 華音
ファンタジー
「レベル15か? ゴミだな」 世界は男を笑い、男は世界を「解体」した。 魔力も才能も持たず、万年レベル15で停滞する掃除屋、トワ。 彼が十年の歳月を費やして辿り着いたのは、魔法という神秘を物理現象へと引きずり下ろす、狂気的なまでの**『極限効率』**だった。 一万回の反復が生み出す、予備動作ゼロの打撃。 構造の隙間を分子レベルで突く、不可視の解体。 彼にとって、レベル100超えの魔物も、神の加護を受けた聖騎士も、ただの「非効率な肉の塊」に過ぎない。 「レベルは恩恵じゃない……。人類を飼い慣らすための『制限(リミッター)』だ」 暴かれる世界の嘘。動き出すシステムの簒奪者。 管理者が定めた数値(レベル)という鎖を、たった一振りのナイフで叩き切る。 これは、最弱の掃除屋が「論理」という名の剣で、世界の理(バグ)を修正する物語。気になる方は読んでみてください。 ※アルファポリスで先行で公開されます。

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

ペットになった

ノーウェザー
ファンタジー
ペットになってしまった『クロ』。 言葉も常識も通用しない世界。 それでも、特に不便は感じない。 あの場所に戻るくらいなら、別にどんな場所でも良かったから。 「クロ」 笑いながらオレの名前を呼ぶこの人がいる限り、オレは・・・ーーーー・・・。 ※視点コロコロ ※更新ノロノロ

【完結】テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

処理中です...